【2023年TOKYO PRO Market総括】東京プロマーケットの最新動向と今後の展望をJ-Adviserが解説

勝又 野々香

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勝又野々香

日本M&AセンターTPM事業部上場推進部

経営・ビジネス
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2023年TPM総括

本国内における今年の新規上場会社数は124社(前年比+13社)の見込みとなり、直近10年間では2021年に続き2番目に高い水準と、2023年は国内IPO市場が活況をみせた年となりました。

そのような中でも特に新規上場社数が急激に伸びているのが、東京証券取引所が運営する「TOKYO PRO Market」です。(東京プロマーケット、東証PRO、TPMなどとも呼ばれる)

本記事では、J-AdviserとしてTOKYO PRO Marketの上場指導・審査を行う日本M&Aセンターが国内新規IPO状況を踏まえながら、2023年のTOKYO PRO Market市場と今後の展望について解説します。

日本M&Aセンターでは、TOKYO PRO Market上場に関するご相談を無料で承っております。 「上場に興味がある」という経営者の方、ぜひお気軽にご相談ください。

【1】2023年の市場別国内新規IPOの状況

まず、国内市場全般における2023年の新規IPO状況を見ていきます。

2023年最も新規上場社数が多い市場は、東証グロースの65社となりました。

しかしながら、昨年2022年と比較すると、グロース市場への新規上場の動きはやや落ち込んだといえます。
2022年中、4月の市場再編前までに東証マザーズへ新規上場した会社が10社、市場再編後の東証グロースへ4月以降に新規上場した会社が60社のため、通年では合計70社となるためです。

グロースに次いで新規上場社数が多かったのが、32社が上場したTOKYO PRO Marketです。昨年2022年の新規上場社数21社から11社伸び、昨対比147%増と大きく飛躍しました。

上記から見るに、東証市場再編後に上場維持基準のハードルが高くなったために、TOKYO PRO Marketへ上場市場を変更した会社が一定数あったのではないかと推察されます。

【1-1】2023年 市場別新規IPO数

【東京証券取引所】
・グロース :65社
・スタンダード :21社
・プライム :2社
・TOKYO PRO Market :32社

【札幌証券取引所】
・アンビシャス :0社
・本則 :1社

【名古屋証券取引所】
・メイン :3社
・ネクスト :0社

【福岡証券取引所】
・Q-Board :0社
・本則 :0社

※札幌証券取引所・名古屋証券取引所・福岡証券取引所においては単独上場のみカウント。いずれもTOKYO PRO Marketから他市場へ上場した会社は含まない。

TOKYO PRO Market新規上場会社社数の推移

新規上場会社数

【2】2023年TOKYO PRO Market新規上場会社の状況

それでは、今年TOKYO PRO Marketに新規上場した会社にはどのような特徴があったのでしょうか。売上規模・業種・本社所在地の3つの観点から見ていきます。

【2-1】2023年TPM新規上場会社の売上規模

今年TOKYO PRO Marketに上場した各社の上場直前期における売上規模の最大値・最小値・中央値は以下の通りです。
・最大値:254億円(GTホールディングス株式会社)
・最小値:2.7億円(WizBiz株式会社)
・中央値:14.4億円

売上規模別の割合を見ると下図の通りです。
売上規模別

最も売上高が大きかったGTホールディングスは250億円超と、売上高だけで見れば一般市場上場会社クラスの規模感です。2023年1月に上場した大友ロジスティクスサービスも、売上高201億円であり200億超えの規模となっています。
一方で最も売上高の小さかったWizBizは3億円に満たない規模で、最大値と最小値の差をとると250億円にも及びます。
形式基準がないというTOKYO PRO Marketの市場設計を活かし、幅広い会社が上場できていることが分かります。
※形式基準:上場申請にあたりクリアしなければならない定量的な側面の基準のこと

売上高の中央値については14.4億円となりました。
売上規模別に見ると中央値通りの売上高10億~20億円規模の会社が10社と最も多くなっていますが、次いで多いのが売上高10億円未満の会社です。WizBizを含めて5億円未満の会社が3社ありました。

2022年にTOKYO PRO Marketへ新規上場した会社の売上高の中央値は26億円であったため、比較すると今年は小規模な会社の上場が多かったといえるでしょう。

【2-2】2023年TPM規上場会社の業種分布

今年は情報・通信業の会社が最も多く、9社が新規上場しています。東証グロースに多く上場している印象のある情報・通信業ですが、【1】で述べた通り東証グロースへの新規上場が昨対比で見るとわずかに落ち込んだことを踏まえると、9社の中にはTOKYO PRO Marketへ上場市場を変更した会社も一定程度含まれているのではないかと推察されます。
業種別分布

また、サービス業の上場会社が過半数以上を占める東証一般市場と比較すると、TOKYO PRO Marketは様々な業種が上場していることが分かります。

【2-3】2023年TPM規上場会社の本社所在地分布

今年TOKYO PRO Marketに上場した各社の本社所在地の内訳は以下の通りです。
本社所在地分布

地方企業が上場しているイメージの強いTOKYO PRO Marketですが、今年は32社中14社、全体の43%が東京本社の会社でした。しかしながら東証一般市場に上場している会社においては70%以上が東京本社であることと比較すると、引き続き地方からも上場会社が誕生している市場です。

次いで多かったのは京都府で、4社が上場しました。また、和歌山県からは2023年1月26日にあさかわシステム株式会社・株式会社ミモナの2社が同時に上場し、和歌山県内からは初のTPM上場会社となりました。

【3】2023年J-Adviserの上場支援状況

TOKYO PRO Marketに上場するためには、J-Adviserを1社選定し、契約することが必要です。
2023年12月20日現在、全国で16社がJ-Adviser資格を取得しています。

今年8月には、ネット証券最大手であり一般市場新規IPO銘柄を多く取り扱うSBI証券株式会社がJ-Adviser資格を取得しました。そのことからも、TOKYO PRO Marketがいかに注目を集めつつあるかが見て取れます。

【3-1】2023年J-Adviser別新規上場会社担当数

2023年新規TOKYO PRO Market上場会社における、各J-adviserの担当社数は以下図の通りです。
J-ad実績数

当社日本M&Aセンターが最も多くのTOKYO PRO Market新規上場会社を輩出しました。

2019年7月のJ-Adviser資格取得以降、着実にTOKYO PRO Market実績を積み重ねており、これまでにTOKYO PRO Market上場申請を担当した数は25社にのぼります。

【4】2023年TOKYO PRO Market上場廃止した会社の状況

続いて、TOKYO PRO Marketへ新規上場した会社だけではなく、上場を廃止した会社についても分析していきます。

2023年は、昨年よりも2社多い6社がTOKYO PRO Marketの上場を廃止しました。

上場廃止理由の内訳は以下の通りです。
・一般市場への市場変更のため上場廃止 :4社
・全株式を譲渡し子会社化するため上場廃止 :1社
・その他事由による上場廃止 :1社

【4-1】TOKYO PRO Marketから一般市場への市場変更の動きが盛んに

昨年は、TOKYO PRO Marketから一般市場へのステップアップ上場を果たしたのは、名証ネクストに市場変更したアップコン株式会社1社のみでした。

今年は名証ネクストへの市場変更が1社、東証グロースへの市場変更が1社、東証スタンダードへの市場変更が2社の合計4社がステップアップ上場をしています。

特に注目すべき事例としては、2023年6月に東証グロース上場をしたブリッジコンサルティンググループ株式会社です。TOKYO PRO Marketから東証一般市場へ市場変更にかかった期間としてはこれまでで最短である1年1ヶ月でグロース上場を果たしました。

2009年の市場開設以降、これまでにTOKYO PRO Marketから一般市場へ市場変更した事例は10社のみ。うち4社が今年2023年の事例ということを考えると、いかにその動きが盛んだったかが分かるでしょう。

TOKYO PRO Marketから一般市場へ上場した会社一覧(2023年12月20日時点)
ステップアップ上場

【4-2】100億円越えのEXIT事例も発生

もう一つ興味深い事例となったのが、2023年8月に東証プライム上場銘柄であるヤマエグループホールディングス株式会社へ株式譲渡し、同社の完全子会社となった株式会社LUMBER ONEです。LUMBER ONEは完全子会社化に伴い、2023年8月16日にTOKYO PRO Market上場を廃止しています。

ヤマエグループホールディングスのIR資料(2023年7月18日公表)によると取得価額は100億円であり、LUMBER ONEの直近期における純資産額は36億円のため、PBRは3倍近くに及びます。TOKYO PRO Market上場会社であったことが間違いなく好条件でのM&A実行に寄与したと思われます。

【5】2023年の状況から導くTOKYO PRO Marketの今後の展望

これら直近の状況から、今後TOKYO PRO Market市場はどのように動いていくのか予測していきます。

①2024年4月には上場会社数100社到達はほぼ確実!

2023年12月末日時点でのTOKYO PRO Market上場会社数は90社の見込みです。

既にワンビ株式会社の新規上場が2024年1月11日に見込まれており、また2023年は1月~4月で11社が上場を果たしていたことから、遅くとも2024年4月には上場会社100社の大台に到達することはほぼ間違いないでしょう。

②一般市場上場のための「ステップアップ市場」としての位置付けが確立

【4-1】で述べた通り、今年に入って一般市場への市場変更事例が急増しています。
2023年9月に東証スタンダードへ市場変更した株式会社ジェイ・イー・ティは、2020年11月に日本M&AセンターとJ-Adviser契約を締結後、わずか半年足らずの2021年3月にTOKYO PRO Marketへ上場しました。

同社は元々JASDAQ市場(当時)に向けて準備していたものの、情勢の変化などを鑑み、まずは確実に上場できるTOKYO PRO Marketを目指すという選択を取りました。

※参考:株式会社ジェイ・イー・ティ 房野社長 TPM上場時インタビュー

その後2年6ヶ月を経てスタンダード上場を果たすまでに、同社の業績はJ-Adviser契約締結時と比較して2倍以上に成長しています。
JET社

同社のように、まずはTOKYO PRO Marketへ上場し東証上場企業としての信用力を得ることでビジネスを加速させ、十分に会社が成長してから本来目指していた一般市場へ上場する…といった「ステップアップ市場」としての位置付けが今後はますます確立してくるでしょう。

③TOKYO PRO Market上場をきっかけとしたM&Aがさらに加速

上場会社であることは、M&Aの買い手であっても売り手であってもどちらでも非常にプラスに働きます。

2023年は、11月末までに7社のTOKYO PRO Market上場会社がM&Aによる株式取得を実行しています。中でも株式会社揚工舎は、2023年1月と2023年5月にそれぞれM&Aを実行し、2社の株式を取得して子会社化するなど買い手として積極的なM&Aを行っています。
TOKYO PRO Market上場を通じて有力な買い手となることはもちろん、【4-2】でご紹介した株式会社LUMBER ONEの事例のように、TOKYO PRO Market上場を経ることで企業価値を高めてからより良い買い手を見つけて売却、という選択肢を取る企業も今後増えていくと思われます。

【6】TOKYO PRO Marketに上場したいと思ったら?

ここまでご説明したように、TOKYO PRO Marketは今年2023年に非常に活況をみせ、来年以降もますますの盛り上がりが確実視されています。
では、自社もTOKYO PRO Marketへの上場を検討したい!と思った時、まずは何から始めるのが良いのでしょうか。

まずはJ-Adviserに相談し、自社の現状を専門家視点で分析してもらいましょう

TOKYO PRO Market上場に向けて一度専門機関に相談したいと思った時、相談先としては主に ①東京証券取引所 ②監査法人 ③J-Adviser の3機関が考えられます。

その中では、まずはJ-Adviserに相談するのがおすすめです。

上場検討段階で東京証券取引所に相談をされる方もいらっしゃいますが、無料で丁寧に相談対応してもらえるものの、上場に向けた具体的な目標や課題が定まっていない状態で相談をしても明確なアドバイスがもらえない可能性があります。

監査法人についても同様で、上場検討段階のうちに相談してしまうと「会社の体制が整っておらず時期尚早」と見られてしまう可能性がありおすすめできません。

J-Adviserであれば、ほとんどの会社は上場検討段階であっても無料で相談に乗ってくれ、会社の状況を踏まえた最適な上場スケジュールの提案もしてもらえます。

また無料相談した結果、より詳細に自社の上場までの課題を明確にしたいという場合には、会社によってはIPOに向けたショートレビューサービス(予備調査)を提供しているところがあります。

日本M&AセンターのIPOショートレビューサービス「GO↗ PUBLIC」

どのJ-Adviser にTOKYO PRO Market上場について相談するべき?

では、複数あるJ-Adviserのうちどこに相談するのが最適なのでしょうか?

その検討にあたり最重視すべきは、やはり上場支援実績数でしょう。

現在16社が認定されているJ-Adviserですが、【3-1】の通り2023年に新規上場会社を担当しているのはそのうち6社しかありません。大手証券会社もJ-Adviser資格を取得しているもののこれまでの支援実績はなく、実際にTOKYO PRO Market上場支援に注力しているのはJ-Adviserの中でも限られた数社なのが実態です。

またJ-Adviser資格を有している会社には証券会社・非証券会社のいずれもありますが、一般市場への上場を見越している経営者様からすると、J-Adviser契約の段階から証券会社と契約を結んでおいた方が良いだろう…とお考えになるかと思いますが、必ずしもそうではありません。

実際に日本M&Aセンターでは、これまでに担当会社において3事例のステップアップ上場を実現しています(AIAIグループ、ブリッジコンサルティンググループ、ジェイ・イー・ティ)。

まずはTOKYO PRO Marketへ確実に上場することが次市場へのステップアップ実現には重要ですので、確かなTOKYO PRO Market上場支援実績を有するJ-Adviserを選びましょう。

日本M&Aセンター TOKYO PRO Market上場に関する無料相談実施中

上場推進課

J-Adviserである日本M&Aセンターでは、TOKYO PRO Market上場準備に関する無料相談を行っております。

無料相談では、実際にTOKYO PRO Marketへの上場支援に携わっている専門コンサルタントが直接お話をお伺いさせていただきます。
M&Aと合わせてのご相談にももちろん対応しております。

「自社が東京プロマーケットに上場する場合の最適な上場スケジュールを教えて欲しい」「もっと詳しく上場制度について教えてほしい」 「上場について全般的に質問・相談したい」…等ございましたら、まずはお問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。

プロフィール

勝又 野々香

勝又かつまた 野々香ののか

日本M&AセンターTPM事業部上場推進部

中小企業向け経営コンサルティング会社にて士業事務所向けのマーケティング支援に従事した後、日本M&Aセンターに入社。現在は、「真の地方創生」実現のために全国47都道府県でスター企業を誕生させるべく、TOKYO PRO Marketの認知度向上や上場支援のためのイベントの企画・運営に携わる。

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