「後継者不在率」が2023年、過去最低53.9%に。TDB 全国「後継者不在率」動向調査

調査データ
更新日:

⽬次

[非表示]

企業の後継者問題は改善傾向が続いています。本記事では、2023年の後継者不在の状況について、2023年11月21日に公表された帝国データバンクの調査結果をもとにご紹介します。

出典元:帝国データバンク・全国企業「後継者不在率」動向調査(2023)

日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多くのM&A・事業承継をご支援しています。中小企業のM&Aに精通した専任チームが、お客様のM&A成約まで伴走します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

- 後継者不在率が過去最低53.9%に。後継者問題は改善傾向続く
- 三重県が3年連続で全国最低水準。改善度合いは都道府県ごとに違いも
- 役員・社員を登用した「内部昇格(35.5%)」が「同族承継(33.1%)」を上回る
- 「M&Aほか(20.3%)」「外部招聘(7.2%)」など親族外承継の割合も上昇傾向が続く

後継者不在状況(2023年)

大手信用調査会社の帝国データバンクが公表した全国企業「後継者不在率」動向調査(2023)によると、「後継者がいない」または「未定」とした企業は14.6万社にのぼり、 全国の後継者不在率が53.9% となったことがわかりました。
(※データベースで事業承継の実態について分析可能な全国・全業種約27万社を対象とした調査)

後継者不在率の推移

後継者不在率は6年連続で前年の水準を下回り、調査を開始した2011年以降、過去最低を更新しました。

同調査では、後継者不在率が低下している要因として「各自治体や地域金融機関をはじめ事業承継の相談窓口が全国に普及したこと」「第三者へのM&Aや事業譲渡、ファンドを経由した経営再建併用の事業承継など支援体制が整備・告知されたこと」により、「現経営者のみならず、候補者候補においても事業承継の重要性が認知・浸透されてきたこと」も要因の一つとして挙げられています。

後継者不在率、都道府県別で改善傾向に違いも

後継者不在率が60%を下回る都道府県の数は35と過去最多を更新し、全国的にも後継者問題は改善傾向へと向かっています。

都道府県別後継者不在率

特に三重県の後継者不在率は30.2%と、3年連続で後継者不在率が全国で最も低くなりました。

三重県の後継者不在率が低い背景として、同調査では「地域金融機関などが密着して支援を行っていることに加え、経営や商圏が比較的安定している企業が多い」などの理由から「親族が経営を引き継ぎやすい環境が整っている」ことが挙げられています。

一方、後継者不在率が最も高い鳥取県(71.5%)、次いで秋田県(70.0%)はいずれも70%台となり、全国平均を大幅に上回りました。

後継者不在率が低下した都道府県の数は36に上ったものの、その数は前年の41に比べて減少するなど、改善度合いは地域によって違いがあることもわかりました。

また、全業種の後継者不在率は前年を下回ったものの、業種別では建設業(60.5%)、製造業(45.5%)などの違いが見られます。

経営者の就任は「内部昇格」が「同族承継」を上回る

過去5年で行われた事業承継のうち、経営者の就任経緯別でみると、2023年(速報値)の事業承継は、血縁関係によらない役員・社員を登用した「内部昇格」が35.3%と、これまで最も多かった「同族承継(33.1%)」を上回りました。

経営者の就任経緯

このほか、買収や出向を中心にした「M&Aほか(20.3%)」、社外の第三者を代表として迎える「外部招聘(7.2%)」など、親族外承継の占める割合が、コロナ禍以降上昇傾向が続いています。

このように事業承継は親族間承継の急激な低下を背景に「脱ファミリー」の動きが加速している、と帝国データバンクは分析しています。

後継者候補の属性は「非同族」がトップ

後継候補が判明した全国約12万社の後継者属性は、前年に続き「非同族(37.5%)」が最も多い結果になりました。

一方「子ども」の割合は33.1%で、「配偶者」と合わせて引き続き3社に1社以上は身内への事業承継を予定しているものの、割合はいずれも前年から低下しています 。

「内部昇格」や「外部招聘」によって社長に就任した企業では、後継候補を「非同族」とした割合が8割超と高く、特に外部招聘では非同族の割合が9割を占めるなど、社外の第三者を経営に招き入れる傾向が強まっています。

「同族承継」でも後継候補を身内以外の第三者となる「非同族」に定めた割合が大きく、ファミリー企業でも親族外への事業承継化の傾向が増えていると言えます。

今後は、後継者が決定した後のフォロー・サポート体制も重要に


一方で、帝国データバンクが集計している『後継者難倒産』動向調査(2023年12月8日公表)によると2023年1-11月で累計509件発生しており、12月を残して年間の最多件数を更新しています。

代表者の病気や死亡により事業継続がままならないケースのほか、「後継者育成」に頓挫し、承継完了が間に合わずに自社単独での事業継続を断念するリスクが高まっています。

今後は事業承継中のアクシデントやトラブルの発生による事業承継の中止・とりやめを回避する取り組みが重要になるとみられ、後継者決定後のフォロー・サポート体制の充実が求められると帝国データバンクは分析しています。

後継者不在・事業承継のご相談は日本M&Aセンターへ

日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多くのM&A・事業承継をご支援しています。中小企業のM&Aに精通した専任チームが、お客様のM&A成約まで伴走します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

M&A マガジン編集部

M&A マガジン編集部

日本M&Aセンター

M&Aマガジンは「M&A・事業承継に関する情報を、正しく・わかりやすく発信するメディア」です。中堅・中小企業経営者の課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしていきます。

この記事に関連するタグ

「後継者不在・事業承継」に関連するコラム

中小企業がM&Aを行う背景や目的とは?手法や成功のポイントをわかりやすく解説

M&A全般
中小企業がM&Aを行う背景や目的とは?手法や成功のポイントをわかりやすく解説

急速に高齢化が進み、2025年問題が目前に迫る中、中小企業によるM&Aの件数は増加傾向にあります。本記事では、中小企業のM&Aの現状とその目的、用いられる手法、中小企業のM&Aを成功に導くポイントについて紹介します。[mokuji]M&A・事業承継のお問合せはこちら日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多くのM&A・事業承継をご支援しています。中小企業のM&Aに精通した専任チ

事業承継・引継ぎ補助金とは?中小企業庁が解説!

広報室だより
事業承継・引継ぎ補助金とは?中小企業庁が解説!

本記事では、事業承継・引継ぎ補助金の概要と、本補助金の制度運用を担う、中小企業庁財務課の高橋正樹課長補佐による解説(※)、最新の公募概要をご紹介します。※本記事は2021年6月30日に公開された内容を編集しています。役職等は取材当時の内容です。事業承継・引継ぎ補助金とは事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継や事業再編、事業統合を促進し、日本経済の活性化を図ることを目的とした補助金です。具体的には、事業

会社の休業とは?メリットや注意点、休業・再開の流れを詳しく解説

経営・ビジネス
会社の休業とは?メリットや注意点、休業・再開の流れを詳しく解説

会社を休業させるには、経営者が宣言するだけでは認められません。必要な手続きを経て、初めて休業とみなされます。本記事では、会社を休業させることのメリットや注意点、手続きの流れについて詳しく解説します。会社のこれからを考えている場合、会社を存続させる方法について話を聞いてみませんか?様々な事業承継をご支援してきたコンサルタントがご相談を承ります。ご相談は無料、秘密厳守で対応します。無料相談はこちら会社

【中小企業経営者 事業承継・M&A意識調査】8割超が後継者候補未定も、事業承継を「重視している」は1割超にとどまる

広報室だより
【中小企業経営者 事業承継・M&A意識調査】8割超が後継者候補未定も、事業承継を「重視している」は1割超にとどまる

日本M&Aセンターは、2022年11月に40代以上の中小企業経営者400名を対象に、各社の経営状況や事業承継、M&Aに関する意識調査を実施しました。◆調査結果サマリー調査の結果、後継者候補が決まっていない企業は87.5%と8割を超えていますが、「事業承継を重視している」企業はわずか12.5%、「後継者不在を課題と感じている」企業も13.5%にとどまりました。多くの中小企業が後継者不在にもかかわらず

【M&A成約式】 上場企業とのM&Aで生産力向上、メイドインジャパンの製品力で成長促進へ

広報室だより
【M&A成約式】 上場企業とのM&Aで生産力向上、メイドインジャパンの製品力で成長促進へ

「メイドインジャパンの製品を世界に発信したい」という思いが合致したM&Aとなりました。野菜調理器製造事業を行う株式会社ベンリナー(以下、ベンリナー、山口県岩国市)は、印刷品製造業を営む三光産業株式会社(以下、三光産業、東京都)と資本提携を結びました。両社は、2022年12月22日、広島県内のホテルにてM&A成約式を執り行いました。握手を交わす三光産業株式会社代表取締役社長執行役員石井正和氏(左)と

【M&A成約式】将来的な後継者不在を解決し、社長と従業員の夢を実現するM&A

広報室だより
【M&A成約式】将来的な後継者不在を解決し、社長と従業員の夢を実現するM&A

「自分たちが設計したものを、見て触って動かしたい」という譲渡企業の社長と従業員の夢を実現するM&Aが成立しました。機械設計事業・制御設計事業を行うアイドラス株式会社(以下、アイドラス、山梨県中央市)は、省人化設備・自動化設備などの製造業を営む株式会社鳥取メカシステム(以下、鳥取メカシステム、鳥取県鳥取市)と資本提携を結びました。両社の所在地である山梨県と鳥取県は直線距離で実に約400キロ離れていま

「後継者不在・事業承継」に関連するM&Aニュース

ウィルグループ、CEspaceから自治体及び企業へのDX支援事業を承継

株式会社ウィルグループ(6089)は、完全子会社である株式会社CEspace(東京都中野区)の地方自治体及び企業へのDX支援事業に関して有する権利義務を、吸収分割により承継すること(以下:本会社分割)を決定した。ウィルグループを承継会社、CEspaceを分割会社とする吸収分割方式。ウィルグループは、人材派遣、業務請負、人材紹介を主とする人材サービス事業を行うグループ会社の経営計画・管理並びにそれに

トーカイ、佐藤から福祉用具貸与・販売事業等を承継

株式会社トーカイ(9729)は、佐藤株式会社(福岡県福岡市)の福祉用具貸与事業、福祉用具販売事業及び住宅改修事業(以下:福祉用具貸与・販売事業等)を会社分割により、承継することを決定した。佐藤を分割会社とし、トーカイを承継会社とする吸収分割方式。トーカイは、病院リネンサプライなど病院運営の周辺業務受託、宿泊施設などへの寝具類の貸与福祉用具の貸与及び販売等を行っている。佐藤は、壁装材・襖材など内装材

東京ガス、GHPを主とした各種サービス事業を熱供給事業子会社へ承継

東京瓦斯株式会社(9531、以下:東京ガス)は、GHP※を主とした各種サービス事業を会社分割によって、東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社(東京都港区)に承継させることを決定した。東京ガスを分割会社とし、東京ガスエンジニアリングソリューションズを承継会社とする吸収分割方式。東京ガスは、ガス事業等を行っている。東京ガスエンジニアリングソリューションズは、熱供給事業等を行っている。※GHP

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース