コラム

2024年 物流・運送業界のクロスボーダーM&A

杉木 俊斗

日本M&AセンターIn-Out推進部

海外M&A
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こんにちは、日本M&Aセンター 海外事業部の杉木です。東南アジアを中心としたクロスボーダーM&Aをお手伝いさせていただいています。
本コラムでは、物流・運送業界におけるクロスボーダーM&Aの2024年の展望について、ご紹介していきます。

「海外・クロスボーダーM&A」って、ハードルが高いと感じていませんか?  日本M&Aセンターは、海外進出・撤退・移転などをご検討の企業さまを、海外クロスボーダーM&Aでご支援しています。ご相談は無料です。

物流・運送業界におけるトレンドと2023年の振り返り

日本国内では、物流・運送業界をとりまく2024年問題への対策がいよいよ大詰めというタイミングです。

また、オーナーの高齢化や後継者不在による譲渡案件も増加の一途で、大手・中堅企業を中心として、事業承継によるM&Aを通じて地方の同業社を傘下に収めるケースが目立っております。もちろん国際物流業界においても、M&Aは活発なトレンドとなっております。

なお、2024年問題というのは、ドライバーの時間外労働時間の上限が年間960時間に制限されることにより発生する諸問題のことです。
詳細はM&Aマガジンでもお読みいただけます。

コロナ前から見られた海外・クロスボーダーM&Aの活発化

海外においては、コロナ前の2019年より、特定地域の物流ネットワークの強化を目的として、海外の大手船社や大手フォワーダーが、国外の同業社や周辺物流分野に強みを持つ会社を傘下に収める動きが活発となっておりました。

2021年のデンマーク物流大手のDSVパナルピナ社による、クウェート同業のアジリティー・パブリック・ウェアハウジング社の物流部門の買収などが、大型案件の代表事例の一つとして挙げられます。
参考:DVSパナルピナ、アジリティーの物流部門を41億ドルで買収(ロイター、2021年4月27日付)

2023年の物流業界クロスボーダーM&A

大型のM&A案件が一巡した事により各案件の規模こそは小さくなったものの、2023年も世界的に活発的なM&Aが行われました。

コロナ禍に生じた世界的なコンテナ・海上輸送運賃バブルにより、収益を得た船社やフォワーダーといった会社を中心に、特定エリアにおける物流ネットワークの補完を目的にM&Aを進めた事が背景でした。

日本企業によるクロスボーダーM&A

激しいグローバル競争の中で、国外における物流ネットワークの獲得や、新たな販路を求めて、クロスボーダーM&Aを行っているのは海外企業のみではありません。

日本企業における2023年のクロスボーダーM&A事例ですと、NIPPON EXPRESSホールディングス社による、オーストリアのカーゴ・パートナー社の株式取得が挙げられます。
参考:NIPPON EXPRESS ホールディングス、cargo-partnerの株式取得へ(M&Aマガジン、2023年5月12日付)

また、積極的なM&A戦略により海外事業の拡大を続けるロジスティード社による、オランダのトラック輸送会社であるファンデンボス・アンド・ファンダーレンマテリエル社の株式取得や、大和ハウス工業社によるシンガポールの低温物流を手掛けるストーベスト社の株式取得も発表されました。
参考:ロジスティード、オランダのトラック輸送会社の全株式取得(M&Aマガジン、2023年8月7日)
参考:大和ハウス工業、シンガポールのStorbest社を連結子会社化(M&Aマガジン、2023年6月1日付)

M&A戦略による海外の市場開拓と更なる事業拡大は、決して海外企業によるものだけでなく、日本企業も積極的に行っている事が伺えます。

物流・運送業界は2024年以降どうなるか

先述の通り、活発な動きがみられた2023年におけるM&Aの動向でしたが、今後も物流・運送業界におけるクロスボーダーM&Aによる事業拡大は引き続き行われるものと見込まれております。

世界的な人材不足

日本では、少子高齢化等の理由から物流・運送業界における人材不足が課題とされておりますが、世界的にも同様の問題が起こっております。

こうした人材不足の課題解決においても、M&Aは非常に有効な手段であり、一度クロスボーダーM&Aによって、事業拡大と人材不足の課題解決を経験した企業を中心としたエリア補完と人材確保のためのM&Aは行われるものと見ております。

先細る国内需要

日本においては、少子高齢化による国内需要の先細りが叫ばれておりますが、これは物流・運送業界に限った問題ではなく、製造業等の他の業界においても同様の事が言えます。

先細る国内需要に備えた製造業等の荷主企業も、特に成長発展の著しいASEAN諸国を中心にグローバル化を進めています。それに伴い、荷主企業の海外での需要確保と新規市場での需要開拓のために、今後も物流・運送会社の国際物流化も必然となってくるでしょう。

日本企業が外国企業を譲り受けるクロスボーダーM&Aは、物流・運送業界でもますます推し進められていくものと見ております。

日本M&Aセンターの海外・クロスボーダーM&A支援

日本M&Aセンターでは、中立な立場で、譲渡企業と譲受企業双方のメリットを考慮にいれたM&Aの仲介を行っております。また、日本企業による海外企業の買収(In-Out)、海外企業による日本企業の買収(Out-In)、海外企業同士の買収(Out-Out)も数多く手掛けてまいりました。
 海外進出や事業継承に関するお悩みはいつでもお問い合わせください。

「海外・クロスボーダーM&A」って、ハードルが高いと感じていませんか?  日本M&Aセンターは、海外進出・撤退・移転などをご検討の企業さまを、海外クロスボーダーM&Aでご支援しています。ご相談は無料です。

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データブック表紙

中堅企業の存在感が高まるASEAN地域とのクロスボーダーM&Aの動向、主要国別のポイントなどを、事例を交えて分かりやすく解説しています。日本M&Aセンターが独自に行ったアンケート調査から、海外展開に取り組む企業の課題に迫るほか、実際の成約データを元にしたクロスボーダーM&A活用のメリットや留意点もまとめています。

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著者

杉木 俊斗

杉木すぎき 俊斗しゅんと

日本M&AセンターIn-Out推進部

イギリスの大学を卒業後、大手鉄鋼商社にて海外営業と4年間のシンガポール駐在を経て、日本M&Aセンターに入社。海外事業部にてクロスボーダーM&Aに従事し、日系企業の海外進出をM&Aを通じてサポートしている。物流業・製造業が得意分野。

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