資金ショートとは?原因と6つの対策を紹介

経営・ビジネス
更新日:

会社は赤字になったとしても、運転資金があれば、ただちに倒産することはありません。しかし資金ショートが起きてしまうと、黒字の場合でも倒産しかねません。経営者にとって、資金ショートを起こさないための管理は、極めて重要な仕事のひとつと言えます。本記事では、資金ショートの概要、赤字や債務超過との違い、資金ショートが起こる原因について明らかにしたうえで、その対策について解説します。

日本M&Aセンターでは、M&Aをはじめ様々な経営課題の解決に向けて専門チームを組成し、ご支援を行っています。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

資金ショートとは?

資金ショートとは、手元資金が不足し、支払い不能な状態に陥ることを指します。
例え売上を上げていたとしても、取引先からの入金がなく、手元に資金が残っていない場合は資金ショートに該当します。
したがって、財務諸表が黒字か赤字かは、必ずしも資金ショートの直接の原因になるわけではありません。

企業が資金ショートに陥ると、取引先や従業員への給与等の支払いができなくなり、倒産してしまう恐れがある危険な状態です。なお、支払い不能な状態に陥ってからの期間や不足金額の多寡に関わらず、支払いができなくなったその瞬間から、資金ショートに陥ったと判断されます。

この記事のポイント

  • 資金ショートの主な原因は売上減少、売掛金の回収遅れ、資金繰り管理不足など。
  • 資金ショートを未然に防ぐためには、資金繰り状況の把握、在庫管理の徹底、コスト削減、支払いサイクルの見直しが重要である。
  • 融資や資産売却、ファクタリングを活用して資金調達を行うことも有効だが、計画的な管理が求められる。

⽬次

[非表示]

赤字との違い

赤字とは、一般的に1事業年度における会計上の利益がマイナスとなること、つまり事業における支出が収入を上回っている状態を指します。一般的に企業は売上や費用の計上を、現金の入出金があった時点ではなく、収入や支出額が確定した時点で行います。

したがって、会計上の利益が赤字であることと、現金残高の増減に直接の関係はさほどありません。逆に言えば、赤字であっても運転資金さえ潤沢にあれば、当面の間資金ショートは起きないと言えます。

債務超過との違い

債務超過とは、借入れなど負債総額が資産総額を上回る状態を指します。

債務超過が続けば債務の弁済によって現金が減少していきますが、資金そのものは残っている場合支払いは可能であり、ただちに資金ショートを起こすことはありません。
会計上の赤字が累積して陥るのが債務超過であるのに対し、資金ショートは会計上の利益とは関係なく生じる点で、両者は大きく異なります。

資金ショートによる黒字倒産とは

前述の通り、資金ショートは、黒字であったとしても倒産を引き起こしやすくなります。

会計上は黒字であっても、入金より出金が先であるなどの理由で資金ショートが起きてしまうと、取引先への支払いや従業員の給料の支払いを遅らせなければなりません。
しかし、こうした事態を1回でも起こしてしまうと社会的信用を失い、取引先との契約解除や、従業員の退職につながるリスクが生じます。また、自社の経営状態に関する悪い噂が広まる可能性もあります。
この一連の事態がきっかけとなり、やがて事業が立ち行かなくなり、倒産に至る可能性も考えられます。

資金ショートに陥る主な原因


資金ショートに陥る企業に共通する主な原因は、以下の4つです。

売上の減少

売上が減少すると固定経費に相当する利益が稼げなくなるため、当面の間は運転資金などでしのげても、資金が社外へ流出し続けてしまいます。
急激な売上の減少はもちろんですが、緩やかな減少であったとしても長期的にその状態が続けば、当然ながら資金ショートにつながってしまいます。

こうした事態を防ぐためには、原価率を下げたり固定経費を減らしたりするのはもちろんのこと、事業拡大や新規事業参入などの抜本的な改革が必要です。

売掛金の回収遅れ

売掛金の回収より買掛金などの支払いが先である場合、手元の現金残高次第では、短期的な資金ショートに陥る可能性があります。

また製品を納品した後にトラブルが生じた結果、売掛金が予定日に支払われない場合や、取引先の経営状態が悪化により、売掛金の回収が難しくなることも考えられます。
売掛金を回収できない状態で、買掛金の支払いだけが発生すると、金額によっては現金残高が大幅に減る可能性も考えられます。

こうした事態が続き、有効な対策が打てずにいると、最終的には資金ショートに陥ってしまいます。

資金繰りの管理不足

収支のバランスが整った状態であれば、長期的に見ると現金は増加していきます。
しかし収支のバランスが崩れた状態で資金繰りの管理ができていなければ、現金が減少し続け、いつ資金ショートが起きてもおかしくない状態になってしまいます。こうした事態を防ぐためには、資金繰りの管理を定期的に行わなければなりません。

また決算書や試算表などから会計上の利益を見るのみで管理を怠ると、資金繰りの悪化に気が付かないことがあります。入金よりも出金の方が先となった結果、現金の手許残高がなくなってしまうと資金ショートが生じてしまうため、注意しなければなりません。

自然災害やトラブルなどによる想定外の出費

地震や台風などの自然災害、主要設備の故障、損害賠償などといったトラブルにともない想定外の出費が生じると、手元の運転資金だけでは対処できない場合があります。こうした状況下で思い通りの資金調達ができなければ、資金ショートが起きてしまいます。

このような事態を防ぐためには、日頃から運転資金にある程度余裕をもたせておくことが大切です。運転資金を融資によって調達する場合、金利を減らすためにできるだけ無駄のない程度の調達で済まそうと考える経営者も珍しくありません。ですが、手元の資金にあまり余裕がなければ、想定外の出費には対応できません。

そのため、日頃よりある程度余裕のある資金管理を行うように心がけましょう。

資金ショートを未然に防ぐための対策


資金ショートを回避するため、日ごろから取り組みたい対策は、以下の通りです。

資金繰り状況を正しく把握する

まず「手元にどれだけの現預金があり、どのタイミングで入金や支払いが発生するのか」を正確に把握する必要があります。
正確に把握できるのはおおよそ2~3ヶ月先程度でしょうが、それだけでも対策を考えるには十分な余裕ができます。

そのため毎月資金繰り表を作成して、数ヶ月先までの出入金を常に把握しておくと同時に、請求漏れや未払いの有無なども確認しておきましょう。

在庫管理を徹底する

不要な在庫がないかどうか、在庫管理を徹底し、過剰在庫は早目に処分するなどの対策を立てることも、資金ショートを防ぐためには重要です。
在庫を抱える期間が長くなればなるほど、保管にはコストがかかります。また、季節商品のように市場ニーズの変化が激しいものは、在庫が多いと多額の棚卸評価損が発生しかねません。

こうした事態を防ぐためには、定期的にセールを実施するなど在庫回転率をできるだけ上げるように工夫する必要があるでしょう。

コスト削減に取り組む

人件費、通信費、広告宣伝費などのコスト削減を徹底することも、業務の効率化や事業拡大のための推進力となります。可能な限りコスト削減の意識を持つことは重要です。

ただしコスト削減自体が目的となってしまうと、本当に必要なものまで削減してしまいかねないため、慎重な検討が必要です。

支払いサイクルを見直す

仕入や外注費などの支払いサイクル、つまり支払いタイミングを調整することも、有効な対策です。

例えば、支払いが翌月末であるのに対し、売上代金の入金が翌々月の5日である場合、毎月末に多額の資金が流出するため、月末・月初はいつも資金ショートが起きやすい状態に陥ってしまいます。
この場合、入金が支払いよりも先に来るようにサイクルを設定すれば、資金ショートが起きやすい状態を回避できます。

そのためには、支払いのタイミングが早いものについては相手先と交渉し、入金後に支払うように交渉すると良いでしょう。ただし、取引先の資金繰りなどの事情もあるため、交渉する際には信頼を損なわないように注意深く行わなければなりません。

融資や資産売却などで資金調達する

いつまでにいくら足りないのかが分かれば、その金額に相当する融資さえ受けられれば、資金ショートが回避できます。
ただし融資には審査があり、早くても1~2週間程度は要します。また融資の実行日についても審査から数営業日後になりますので、融資による資金調達を考える場合は、審査の申し込みをできるだけ早くしておかなければなりません。

また、土地や建物、機械、設備などの資産の中に、事業用に使われていない遊休資産が含まれている場合は、売却を検討してみると良いでしょう。

不要な資産であれば売却することで、現金調達だけでなく固定資産税や保守費用など維持費の削減も可能になります。

ファクタリングによる資金調達

一般に「ファクタリングサービス」は、企業が保有する売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービスを指します。
企業の資金調達の1つであり、ファクタリング事業者に債権を売却すると早期に現金化することができます。

ただし、受取手形の割引料に比べて手数料が高額になるケースが多く、取引先に通知される可能性があります。そのため、まず受取手形を割り引いて、それでも資金ショートの恐れがある場合にファクタリングを検討するのが良いでしょう。

終わりに

以上、資金ショートの概要についてご紹介しました。企業経営者は、自社が資金ショートに陥らないよう、常に細心の注意を払わなければなりません。一時的な資金ショートであっても、いったん取引先や従業員からの信頼を失ってしまえば、最終的に企業活動ができなくなる可能性もあるためです。

資金ショートを起こさないためには、これまで通り会計上の利益を確認しながら、同時にキャッシュフローの管理も並行して行わなければなりません。また資金ショートを防ぐ場合も、会社ごとに状況が異なるため、自社に合う最適な施策を選択することが大切です。

しかし、対策を間違えれば、かえって資金繰りを悪化させてしまう場合も考えられます。そのため専門家の意見を取り入れながら、対策を進めていくのが良いでしょう。

日本M&Aセンターでは、M&Aをはじめ様々な経営課題の解決に向けて専門チームを組成し、ご支援を行っています。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

M&A マガジン編集部

M&A マガジン編集部

日本M&Aセンター

M&Aマガジンは「M&A・事業承継に関する情報を、正しく・わかりやすく発信するメディア」です。中堅・中小企業経営者の課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしていきます。

この記事に関連するタグ

「資金調達」に関連するコラム

資金調達とは?経営者が知っておくべき方法、メリットやポイントを解説

経営・ビジネス
資金調達とは?経営者が知っておくべき方法、メリットやポイントを解説

資金調達とは?資金調達とは、企業経営に必要な資金を様々な方法で調達することを指します。各調達方法の種類、特長を経営者が把握し、いざという時に判断できるようにしておくことは不可欠です。資金調達は運転資金のほか、事業の立ち上げや拡大、投資、リスク管理など、事業の安定と成長を実現するための重要な手段です。この記事のポイント主な資金調達方法には自己資金、融資、出資、資産の現金化、補助金、クラウドファンディ

ベンチャーキャピタル(VC)とは?種類、メリット・デメリットを解説

経営・ビジネス
ベンチャーキャピタル(VC)とは?種類、メリット・デメリットを解説

ベンチャーキャピタル(VC)とはベンチャーキャピタル(VentureCapital:VC)は、成長段階にある新興企業やベンチャー企業に対して出資する組織を指します。多くの新興企業は、事業を立ち上げる初期段階で資金が十分ではないケースが多くあります。ベンチャーキャピタルは、これらの企業が成長し、新しいアイデアやサービスを市場に持ち込むための資金調達や経営支援を通じて企業の成長を支援し、その成果によっ

資金繰りとは?悪化する原因、改善策をわかりやすく解説

経営・ビジネス
資金繰りとは?悪化する原因、改善策をわかりやすく解説

資金繰りとは資金繰りとは、会社の収支を管理し、事業を円滑に行うために「資金」の過不足を調整することを指します。ここでいう資金は「現金」や「預金」などすぐに支払いに使えるものを指します。一方、売掛金や貸付金、不動産などはすぐ支払いに使えないため資産ではありますが、資金にはなりません。企業経営では、売掛金のように手元にお金が入ってくるまでに時間を要する場合があります。資金繰りによって適切に資金が管理さ

投資と融資、出資の違いとは?それぞれの特徴、メリットや注意点を比較して解説

経営・ビジネス
投資と融資、出資の違いとは?それぞれの特徴、メリットや注意点を比較して解説

様々な資金活用の方法資金活用の手法は様々ありますが、投資、融資、出資はそれぞれ異なる特徴を持ち、その違いを理解することが重要です。本記事では、投資、融資、出資それぞれの違いやメリット、デメリットについてご紹介します。この記事のポイント資金調達には、投資、融資、出資があり、それぞれ異なる目的と条件がある。融資は返済義務があり、出資は返済義務がないが、出資者が経営に影響を持つ可能性がある。資金調達をス

公募増資による資金調達とは?メリット、企業事例を解説

経営・ビジネス
公募増資による資金調達とは?メリット、企業事例を解説

企業が事業活動に必要な資金を調達する方法は、大きく分けると「融資」と「増資」の2種類です。融資は金融機関などから一定期間資金を借りて調達する方法で、あらかじめ定められた期限にしたがって元本を返済していきます。これに対し増資は投資家からの出資によって資金調達を行う方法で、融資のように返済をする必要がありません。また、出資を受けたお金は資本金となるため、自己資本比率は高まり、会社の信頼性も向上させるこ

事業計画書とは?書き方、押さえておきたいポイントを解説

M&A全般
事業計画書とは?書き方、押さえておきたいポイントを解説

事業計画書とは事業計画書とは、自社の事業の状況や、今後の具体的なアクションプランを示す計画書を指します。具体的にはビジネスの目標や戦略、資金調達方法、収益予測や市場状況などが記載されます。記載内容は作成時点におけるものであるため、定期的に更新、見直しをする必要があります。また、使用目的に合わせて記載する内容やボリューム、フォーカスすべき点を調整する場合もあるため、必ずしも毎回同じ形式で事業計画書が

「資金調達」に関連するM&Aニュース

住友ゴム工業、AIを活用した米・車両故障予知会社「Viaduct」へ出資

住友ゴム工業株式会社(5110)は、トータルフリートマネジメントサービスの実現に向け、AIを活用した車両故障予知ソリューションサービスを提供する米国のベンチャー企業であるViaductInc.(米国カリフォルニア州、以下「Viaduct社」)へ出資した。住友ゴム工業は、タイヤ事業やスポーツ事業、産業品事業をグローバルに展開する総合ゴム製品メーカー。Viaduct社は、AIを活用した車両故障予知ソリ

タクシー配車アプリ提供のGO、フリークアウトHDから資金調達

GO株式会社(東京都港区)は、株式会社フリークアウト・ホールディングス(6094)を割当先とする第三者割当増資(シリーズDエクステンションラウンド)による資金調達を決議した。GOは、タクシー事業者等に向けた配車システム提供などモビリティ関連事業を行う。フリークアウト・ホールディングスは、グループ会社株式保有によるグループ経営戦略の策定・管理を行う。GOが提供するタクシーアプリ『GO』は現在、累計1

HENNGE、SMS認証・プライバシーマークの取得運用効率化ツールを提供するSecureNaviへ出資

HENNGE株式会社(4475)は、SecureNavi株式会社(東京都中央区)への出資を実行した。HENNGEは、複数のクラウドサービスのID/パスワードを統合管理するクラウドセキュリティサービス「HENNGEOne」や、クラウド型メール配信サービス「CustomersMailCloud」を提供する。SecureNaviは、企業の情報セキュリティ対策を支援するソフトウェアの開発を行う。「情報セキ

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース