M&A支援機関登録制度とは?メリットや登録要件、流れを解説

M&A全般
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中小企業のM&Aを支援するM&A仲介会社やFAなどの事業者は近年増え続けています。一方で、すべての事業者が一定水準以上のサービスを提供できるとは言えない状況です。では、何を基準に会社を選べば良いのでしょうか。

こうした中小企業経営者の疑問に応え、安心してM&Aに取り組む基盤を構築するために設けられたのがM&A支援機関登録制度です。本記事では、M&A支援登録制度の内容やメリット、仲介会社選びにどのように役立つのかなどについて解説します。

日本M&Aセンターは中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録しているM&A仲介会社です。中小企業のM&Aに精通した専任チームが、お客様のM&A成約まで伴走します。

M&A支援機関登録制度とは?

M&A支援機関登録制度は、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築することを目的に、令和3年8月、中小企業庁によって創設された制度です。

制度が創設された同年4月28日、中小企業庁は中小企業を当事者とするM&Aを推進するため、今後5年間に実施すべき官民の取組を「中小M&A推進計画」として取りまとめました。

近年M&Aを支援する事業者が急増する一方で、支援する内容やサービスの品質が必ずしも一定でないことから、同計画では「M&A支援機関に対する信頼感醸成の必要性」が課題の一つとして掲げられました。

こうした状況をふまえ対応策として

①事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)において、M&A 支援機関の登録制度を創設し、M&A 支援機関の活用に係る費用の補助については、予め登録された機関の提供する支援に係るもののみを補助対象とすること

②登録したM&A支援機関による支援を巡る問題等を抱える中小企業等からの情報提供を受け付ける窓口も創設すること

という取組みが掲げられました。

本制度を通じ「中小M&Aガイドライン」の理解及び普及を促し、中小企業が安心してM&Aに取組めるようになることが期待されています。

この記事のポイント

  • M&A支援機関登録制度は、中小企業が安心してM&Aを行えるように、中小企業庁が令和3年に創設した制度で、信頼性向上を目的とする。
  • 登録機関は中小M&Aガイドラインに従い、顧客からの情報提供窓口を設ける必要があり、登録された機関は補助金の対象にもなる。
  • 支援機関の登録にはガイドライン遵守の宣言や料金表の提出が求められ、違反があれば登録取消や停止のリスクがある。

⽬次

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本制度の対象となるM&A支援機関


中小M&Aガイドラインにおける「支援機関」のうち、中小企業に対してフィナンシャル・アドバイザー(FA)業務又は仲介業務を行う者が対象とされています。

なお、FA業務又は仲介業務を専業で行う事業者に限らず、例えば仲介業務を行う金融機関なども対象に含まれます。

逆に、FA業務及び仲介業務を行わず、例えばDD(買収監査)業務のみを行う士業等の専門家などは対象に含まれません。

具体的には中小企業とFA業務又は仲介業務に係る契約を締結する者とし、譲渡側・譲受側に対するマッチング支援や中小M&Aの手続進行に関する総合的な支援を行う者、又は中小M&AのFA業務又は仲介業務に係る、相談料、着手金、中間報酬、成功報酬等の手数料を受け取って支援を行う者

※M&A支援機関登録制度公募要領 (令和5年度改訂版) より抜粋

M&A支援機関登録制度のメリット


本制度のメリットについて、支援機関側とM&Aを検討する中小企業の経営者側、それぞれの視点で見ていきます。

登録されている支援機関は「登録機関データベース(https://ma-shienkikan.go.jp/search)」などで一般公開されているため、支援を求める経営者に対し「信頼のおける機関」であることを訴求できます。

一方、支援を受ける中小企業経営者は、一定基準をクリアした登録支援機関の中から選択することで、M&Aを安心して進めることができます。(登録されている支援機関は一覧表や「登録支援機関データベース」にて検索することが可能です。)万が一、依頼した支援機関とトラブルになった場合は、後述の相談窓口に苦情などを受け付けてもらえるため、安心して依頼することができます。

また、本登録制度に登録されたFA・仲介事業者によるFA業務又は仲介業務に係る費用の一部は「事業承継・引継ぎ補助金」の補助対象になります。

M&A支援機関登録制度の運用状況

次に、M&A支援機関登録制度の運用状況についてご紹介します。中小企業庁財務課の発表によると、令和6年3月13日時点で支援機関として登録されているFA及び仲介業者は3,123件です(内訳は、法人は2,320件、個人事業主は803件)。

登録支援機関の内訳(※)で最も多いのは、M&A仲介会社(21.8%)であり、税理士(18.8%)、経営コンサル(14.5%)、FA(13.3%)などが続きます。

次に登録支援機関を事業規模別(※)で見ると、登録している支援機関の大半は数人と小規模な体制の事業者であることがわかります。

また、設立年代別(※)で見ると、大変は比較的最近設立されており、新規に参入してきた事業者が多いことがわかります。

※中小企業庁「M&A支援機関登録制度に係る登録フィナンシャル・アドバイザー及び仲介業者の公表(令和5年度公募(2月分))について」別紙2 より引用・抜粋

M&A支援機関制度の登録要件


M&A支援機関に登録するためには、以下の要件を満たす必要があります。

①中小M&Aガイドラインの遵守を宣言すること

M&A支援機関に登録するためには、中小M&Aガイドラインの行動指針に沿って業務を行わなければなりません。具体的には、依頼者との契約に基づいて義務を履行することや、依頼者の意思の尊重しつつ自らの利益を実現するように高い職業倫理を持つことなどが求められます。

中小M&Aガイドラインの各事項の遵守の宣言については、後述の登録申請時に申請フォームを通じて要件の充足を確認します。

②中小M&Aガイドラインを遵守していることについての宣言を、自社のホームページに掲載すること

また、誰でも閲覧できるホームページで、中小M&Aガイドラインを遵守している旨を掲載した上で登録申請を行います。

宣言を掲載する際は、遵守事項一覧の各事項をチェックしたもの、あるいは同等の内容を掲載しなくてはなりません。

もしホームページを解説していない場合は、遵守の宣言に関する資料を会社概要や事業概要パンフレット等に追加し、当該資料を登録事務局まで送付する必要があります。

③FA・仲介業者において定める料金表(料金を定めた規定類等)を提出すること

対象事業者は、報酬体系を明確にしたうえで、登録申請時に料金表を提出しなければなりません。

もし料金表などの定めがない場合は、直近の契約料金や事前見積もりとその算出方法・理由・考え方を示した資料で代替が可能です。但しし、算定根拠等が不明瞭な場合は、資料として認められない場合もあります。

④登録後の遵守事項の履行を誓約する

M&A支援機関登録制度には、登録するために求められる要件とは別に、登録後に遵守すべき事項が定められています。そのため、登録後の遵守事項を履行することを誓約しなければなりません。

⑤ 顧客中小企業者等による情報提供窓口への相談などの行動を制約しないこと

M&A仲介会社やFAは業務を行うにあたり、顧客との間で秘密保持契約を締結しています。したがって、M&Aに関する情報を外部に漏らすことは契約内容に抵触する恐れがあります。

しかし、顧客である中小企業の利益を守るために、M&A支援機関登録制度の情報提供窓口へ相談することを制限してはいけません。したがって、秘密保持義務契約に関係なく相談が行えるようにしなければなりません。

⑤登録を希望するFA・仲介業者は、秘密保持義務条項の規定内容に関わらず、顧客中小企業者等による情報提供窓口への相談等の行動を制約しないこと

上記以外にも、反社会的勢力と該当しないことや経済産業省が管轄する補助金交付の停止、指名停止措置を受けていないことなどが登録要件として求められます。

M&A支援機関への登録後の遵守事項

M&A支援機関へ登録した後、以下の項目を遵守する必要があります。

①中小M&Aガイドラインへの遵守宣言を自社ホームページに掲載する

M&A支援機関として登録された後は、自社のホームページに「遵守事項一覧」の各項目をチェックしたもの(あるいはそれと同等のもの)を、誰もが閲覧可能な場所に掲載する必要があります。したがって、自社の会員専用サイトなどはアクセスできる人が限られるため、こうした場所への掲載は認められません。

またホームページの用意がない場合は、パンフレット等に遵守宣言に関する資料を添付し、相談依頼者や顧客に対してその旨を説明しなければなりません。

参考:株式会社日本M&Aセンター「中小M&Aガイドライン(第2版)」の遵守について

②顧客に対し、中小M&Aガイドラインの遵守について説明する

仲介業務やFA業務の契約を顧客と締結するにあたり、顧客には、中小M&Aガイドラインの遵守について説明をしなければなりません。説明にあたっては、口頭でなく資料等を用いることが必要となります。ただし、資料に関しては必ずしも紙媒体である必要はなく、電子的資料などでも構いません。

なお、情報提供窓口に中小M&Aガイドラインの遵守に関する苦情や個別の相談が寄せられた場合は、その内容について事務局から登録事業者に対して確認が求められることがあります。

③中小M&Aの成約案件に関する実績報告を行う

登録事業者は毎年、前年度(前年4月1日から当年3月31日まで)の成約実績を、M&A支援機関登録事務局に報告しなければなりません。報告にあたっては、成約した事業者名や経営者の年齢、譲渡価格や売り手側の純資産・純利益、また手数料の金額等を報告する必要があります。

M&A支援機関に登録する流れ

M&A支援機関に登録する主な流れは、以下の通りです。

①公募要領等の確認

登録希望者は、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」のホームページにアクセスし、申請受付の開始や公募要領について確認します。
そのうえで、必要書類を準備するとともに、登録の要件である「中小M&Aガイドライン」の内容を確認しておきます。

②申請フォームからの申請

同ホームページの申請フォームから登録申請を行います。
なお、申請はWeb上の申請フォームのみであり、メールや郵送での申請は受け付けていません。

③申請内容の受付・審査

事務局による審査が行われ、要件を満たした場合は登録が承認されます。

④登録の通知

承認されたM&A支援機関のリストが中小企業庁のホームページで公表されます。登録の通知は公表以降行われます。

M&A支援機関登録に関する注意点


次のようなケースではM&A支援機関の「登録取消及び登録停止」「登録の抹消」が行われるため、登録後も注意する必要があります。

登録の取消し及び登録停止が行われるケース


- 中小M&Aガイドライン、若しくは登録M&A支援機関が登録又は登録継続を申請した際に遵守することを誓約した事項、その他公募要領に定めた事項に違反したとき、又は公募要領に定める登録要件に該当しなくなったとき。

- 登録M&A支援機関のM&A支援機関としての支援に関し、情報提供受付窓口に不適切な対応に係る相談等が寄せられるなど、顧客の利益を害する事実又はそのおそれがあると認められるとき。

- 不正の手段により当該登録又は登録継続を受けたとき。

- 反社会的勢力に該当し又は反社会的勢力との関係性が認められたとき。

- そのほか、登録制度の趣旨に照らし、登録を継続することが適切ではないと認められるとき。

登録が抹消されるケース


- 本人から登録の抹消の申請があった場合において、その申請を相当と認めるとき。

- 1年ごとに登録継続申請を行わず(登録継続申請に際して前年度の実績報告等を提出しない場合、又はその報告に不備があり、速やかにこれらの対応がなされない場合を含む。)、その期間の経過により登録がその効果を失ったとき。

- 登録M&A支援機関である個人が死亡し、又は当該機関である法人が合併、破産又はそれ以外の理由により消滅又は解散したとき。

- 第3条の規定により登録が取り消されたとき。

また、登録内容に変更がある場合は、速やかにM&A支援機関登録事務局までその旨を報告し、その指示に従わなければなりません。

※「M&A支援機関登録制度の取消し等に関する要領( 令和5年5月15日 中小企業庁財務課)」より引用・抜粋

終わりに

以上、M&A支援機関登録制度について概要をご紹介しました。

M&Aを支援する事業者は本登録制度により信用力が高まり、今後の事業展開に活用することができます。

また、M&Aを検討している中小企業の経営者は公的に登録されている支援機関の中から、安心して一緒にM&Aを進めるパートナーを検討することができます。

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