2代目社長が事業承継を成功させるポイントとは?
創業者が立ち上げた事業を引き継ぎ、育てていく役割が求められる2代目社長には多くの悩みがあります。2代目社長が事業を時代に合わせ進化させ、さらなる成長を遂げるケースがある一方で、残念ながら経営に躓いてしまうケースも少なくありません。
本記事では、創業者が2代目社長に事業を引き継ぐ際に注意すべきこと、成功につなげるポイントをご紹介します。
この記事のポイント
- 2代目社長は、創業者の事業を守り発展させるために新しい知識を常に学ぶ必要があり、ワンマン経営を避けることが重要。
- 事業承継には後継者の適性を見極め、十分な教育と社内の良好な人間関係を築くことが成功の鍵となる。
- 2代目社長は創業者の模倣を避け、時代に応じた経営理念の見直しや組織づくりを行い、信頼できる相談先を見つけることが重要である。
⽬次
2代目社長への承継を成功させるポイント
2代目社長が創業者から受け継いだ事業を大きく育てられるようにするためには、事業承継に向けた創業者のサポートは欠かせません。その中でも重要なポイントは以下の通りです。
後継者候補の素質・適性を十分に検討する
経営者には様々な知識や経験だけでなく、ビジョンをもって従業員をまとめ上げる能力が必要です。これらは後天的な努力によって身に付くものもありますが、適性・素質に大きく左右されるものも含まれます。
したがって後継者を選ぶ際には、後継者としての素質や適性の有無をしっかりと見極めたうえで決断することが大切です。
また、2代目社長はこの先何十年も経営者として采配を振る可能性があります。そのため現在の基準だけで判断するのではなく、時代の変化への対応力なども見据えたうえで、後継者としてふさわしい人物を選ぶことが大切です。
後継者教育に十分な時間をかける
一般的に事業承継の準備には、後継者が経営力を発揮していくための育成期間も含めると、5~10年程度の時間が必要だと言われています。経営者の平均引退年齢が70歳前後であることから考えると、60歳頃には準備を始めなければなりません。
また、後継者は自社の事業に関する専門知識はもちろんのこと、実務経験や一般的な経営知識、社内や取引先とのコミュニケーションの構築などもしておかなければなりません。
こうした準備に十分な時間をかければ、スムーズな承継が期待できます。反対に、日々の業務に追われて後継者教育に十分な時間をかけられなければ、2代目社長の成功が遠のくことになります。
事業承継までに後継者が経営しやすい状況をつくる
一般的に中小企業では、株主の多くが創業者およびその親族のケースが多く見られます。
したがって株主である親族が亡くなると、その株式は相続財産となり、最終的には相続人によって相続されることになります。その際、複数の相続人に株式が相続されると、株式が分散します。
株式が分散した状況のままで2代目に継がせてしまうと、権力が十分に集中できないため、経営が難しくなってしまいます。また金融機関からの借入金が多いと、個人保証を嫌って事業承継そのものが進まない恐れもあります。
したがって2代目社長への承継をスムーズに進めるためには、創業者は事業承継を行う前に状況を整理し、後継者が経営しやすい状況をつくっておくとよいでしょう。
社内での良好な人間関係を構築しておく
親族内承継と親族外承継いずれの場合でも、創業者を支持してきた古参の従業員が2代目社長に対し、反発することは珍しくありません。しかし、社内で従業員との円滑なコミュニケーションがとれなければ2代目社長は孤立し、経営に悪影響が出てしまうでしょう。
こうした状況を回避するために、後継者には承継前に社内で十分な勤務実績を積ませ、2代目社長として従業員から認知されやすい土壌を醸成しておくことが大切です。
2代目社長として成功するためのポイント
以上、創業者が気をつけるべきポイントを見てきましたが、反対に2代目社長自身が成功のために意識しておきたいポイントをご紹介します。
創業者を意識しすぎない
先代社長(創業者)と2代目社長とでは、求められる役割が違います。先代社長は何もないところから事業を立ち上げて会社を大きくさせた一方で、2代目社長はそれらを受け継いで守り、大きく育てていく必要があります。役割はもちろんですが、必要とされる能力も大きく異なります。
したがって、先代社長の模倣だけでは、2代目社長として成功するのは難しいでしょう。社内に浸透する先代社長の方針、従来の方法などを尊重しながらも、それらを過度に意識しすぎると、上述の理由から失敗してしまいます。
必要に応じて経営理念を見直す
市場のニーズは時代によって変わります。特に近年は、その変化の幅も変わるスピードもこれまでにないほどです。こうした外部環境において、過去に策定した経営理念をいつまでも掲げていては、市場の変化から取り残されてしまいかねません。
したがって、時代が変わっても守るべきもの、変えなければならないものがあるということを意識して、必要に応じて経営理念そのものを見直すことも重要です。
自身のビジョンにあった組織づくりをする
2代目社長として事業を拡大させるためには、自身がもつビジョンの実現を目指すことが重要です。
そのためにまず行うべきなのが組織づくりです。ビジョンを実現するためにどのような組織が必要となるのかを考え、社内の体制をそれに合った形に変えていきましょう。ただし、他の役員や従業員との間であらかじめ十分なコミュニケーションをとって、意思統一をしておく必要があります。
信頼できる相談先を見つける
2代目社長として経営を行えば、会社の内外を問わず、あらゆる場所でさまざまな問題に取り組まなければなりません。経営者としての経験も実績も豊富な創業者とは違い、会社を引き継いでまだ日も浅い2代目社長には、何かあったときに相談できる相手が必要です。
しかし、日々の業務には守秘義務のあるものや社内の人間関係に関するものが含まれるため、そのような事情に対応できる相談先を見つけることは容易ではありません。高度な専門知識をもつ外部の有識者であれば、客観的な視点から適切なアドバイスをしてもらうことが期待できるでしょう。
2代目社長がビジネスを飛躍させた事例
創業者から受け継いだ2代目社長が、事業承継後にビジネスを飛躍させた事例を4つ紹介します。
事例①ジャパネットたかた
通信販売会社のジャパネットたかたの知名度を全国レベルに押し上げたのは、カリスマ創業者である髙田明氏です。実家が経営するカメラ店から独立する形で「株式会社たかた」を創業し、テレビショッピングによる通信販売で、1代にして「ジャパネットたかた」を全国レベルの知名度に押し上げました。
このジャパネットたかたを引き継いだのが、2代目の髙田旭人氏です。創業者である父とは違い、メディアへの露出を控え、カリスマ頼みの経営方針から脱却して売上を伸ばし、2021年には過去最高の売上高を計上するに至りました。
事例②ファーストリテイリング
父親が紳士服店「メンズショップ小郡商事」を営んでいた柳井正氏は、ジャスコを退職した後、実家の山口県宇部市に戻って家業を手伝うようになりました。その後、1984年にはユニクロ第1号店を広島市に出店し、7年後には商号をファーストリテイリングに変更。やがて、中国地方を中心とする衣料品チェーンの展開をスタートしました。
そして、1998年に発売したフリースが爆発的にヒットし、その後は日本国内にとどまらず世界的に店舗展開を行い、現在ではグローバルファッションブランドにまで成長しました。
事例③ヤマト運輸
ヤマト運輸は、1919年に小倉康臣氏が銀座で創業(大和運輸株式会社、現:ヤマトホールディングス株式会社)したのが始まりでした。創業者としてカリスマ性を発揮し、事業を拡大させた先代社長から会社を引き継いだ小倉昌男氏は、小口荷物の取り扱いをスタートしました。
当事は採算が合わないとされていた小口荷物の常識を打ち破り、単価を高く設定して個数をさばくことで事業化を成功させ、宅急便のサービスを開始しました。その後、事業は一気に拡大し、現在ではネットショッピングを支える宅配インフラを担う重要な役割を果たしています。
終わりに
創業者として、2代目社長に事業承継をすることはとても重要です。しかし、創業者と2代目社長では求められる能力が違うため、2代目社長ならではの難しさがあります。本記事でご紹介したポイントを見誤ると、会社が経営危機に直面するリスクもあります。
こうした状況を防ぐためには、外部に信頼できる相談先を見つけることが重要です。客観的かつ的確なアドバイスが受けられれば、創業者から受け継いだ事業をより大きく育てられるでしょう。