【2024年】IT業界の成長戦略型M&A事例紹介
⽬次
- 1. 技術の進化と革新
- 2. デジタルトランスフォーメーションの加速
- 3. イノベーションとスタートアップ
- 1. Pros Cons×コアコンセプト・テクノロジーの事例
- 1-1. 株式会社Pros Consについて
- 1-2. 業績推移
- 1-3. 譲渡企業メリット:
- 1-4. 1.事業の成長と発展
- 1-5. 2.戦略的な利益
- 1-6. 譲渡オーナー様メリット:
- 1-7. 1.財務的利益
- 1-8. 2.リスクの軽減
- 1-9. 株式会社コアコンセプト・テクノロジーについて
- 1-10. 両社のM&Aによる想定シナジー
- 2. まとめ
- 2-1. 著者
皆さん、こんにちは。日本M&AセンターIT業界専門チームの大西宏明と申します。
私は、前職ではIT業界のSIerの法人営業として従事しておりました。
当社に入社後はIT業界専任のM&Aチームに在籍し、引き続きIT業界に携わっております。
近年のIT業界は目覚ましい成長を遂げており、以下のトレンドで動いていると考えており、業界自体が急速に日々進化していると推測出来ます。
技術の進化と革新
人工知能(AI)、機械学習(ML)、ディープラーニングなどの新技術が、ビジネスプロセスの自動化や効率化、予測分析などに革新をもたらしております。
クラウドコンピューティングの普及により、インフラストラクチャーの柔軟性が向上し、スケーラビリティやリソースの効率的な利用も実現をしております。
デジタルトランスフォーメーションの加速
いわゆるDX化というキーワードを、近年良く耳にすることが増えたかと思います。DX化により、業務プロセスの再設計を通じ、競争力が強化されています。
デジタル化の進展に伴い、顧客ニーズの変化や市場の要求に迅速に対応する柔軟性が求められております。
イノベーションとスタートアップ
スタートアップ企業やベンチャーキャピタルの活動が活発化し、新たな技術やビジネスモデルのイノベーションが促進されております。
大手企業との提携やM&A活動を通じて、イノベーションの加速や市場への新規参入が図られております。
上記背景の中で、IT業界のM&Aに目を向けると、近年では、事業承継の目的だけに留まらず、変化の激しい業界に対応するために、M&Aを成長戦略として捉え、開発時間・コストの削減、新しい市場への参画、人材確保特などのメリットを想定した検討がより進んでおります。
今回は2024年に実施された成長戦略型のM&A事例を取り上げて紹介致します。
Pros Cons×コアコンセプト・テクノロジーの事例
今回のコラムでは2024年2月公表のIT業界M&Aの中で、株式会社コアコンセプト・テクノロジーによる株式会社Pros Consの子会社化の事例を紹介致します。
株式会社Pros Consについて
譲渡企業である株式会社Pros Consは、独自の良品学習 AI アルゴリズムを利用した自社開発ソフトウェア「Gemini eye」と外観検査装置を保有しており、製造業の大手企業向けにソフトウェア、ハードウェア両面から外観検査を自動化するソリューション(外観検査 AI ソリューション)を手掛けております。
設立日は2019 年 1 月 18 日でM&A実行まで約5年程度と、設立から間もないため、事業承継の課題は抱えられていないように見受けられます。
また、売上高・営業利益ベースでは以下の通り推移しており、業績が順調にもかかわらず、なぜM&Aによる譲渡を決意されたのでしょうか。(※1)
業績推移
・2020 年 12 月期: 売上高 32,984 千円 営業利益 6,332 千円
・2021 年 12 月期: 売上高 58,008 千円 営業利益 7,013 千円
・2022 年 12 月期: 売上高 104,588 千円 営業利益 24,334 千円
背景としては、M&Aを実行することで、譲渡企業様・譲渡オーナー様の両方にメリットがあるためと推測されます。
一般的に考えられるメリットでは、以下の通りです。
譲渡企業メリット:
1.事業の成長と発展
譲渡先が大手企業や成長企業である場合、技術やリソースを活用してM&Aにより新たな成長機会や市場へのアクセスを得ること出来ます。
2.戦略的な利益
譲受企業様との事業のシナジー効果や経済規模の拡大など、戦略的な利益をもたらすことが可能となります。
譲渡オーナー様メリット:
1.財務的利益
M&Aにより企業が買収される場合、譲渡オーナー様は譲渡対価を受け取ります。
これにより、新たなビジネスの立ち上げや個人的な目標の達成に資金を投資することが出来ます。
2.リスクの軽減
企業経営は常にリスクを伴いますが、企業の経営や運営に関わる責任を譲受企業に委ねることができ、リスクを分散させることが出来ます。これにより、企業経営に伴うストレスや責任から解放され、新たな生活やビジネスチャンスを模索することが可能となります。
株式会社コアコンセプト・テクノロジーについて
譲受企業である株式会社コアコンセプト・テクノロジーは2009年に設立され、社員数359名のDX支援、IT人材調達支援事業を行っている東証グロース上場の会社です。
2023/12期の売上高は、前年同期比31.4%増の159億2,100万円、営業利益は前年同期比55.6%増の17億4,400万円で営業利益率は11.0%となっており、高い成長率を誇っております。(※2)
今回のM&A実施の内容に関連する事業関連の取り組みの1つとして、プロダクトやソリューションの範囲を今後広げていく方針で、具体的には製造業の設計、生産に関するDX支援について、「Orizuru」という製造現場向けのスマートファクトリーソリューションをベースに改善・強化していく計画と記載がございます。(※2)
両社のM&Aによる想定シナジー
コアコンセプト・テクノロジー社のスマートファクトリーソリューション「Orizuru MES」にPros Cons社の外観検査 AI ソリューションを組み込むことで製品力の強化が期待でき、また、クロスセルや採用、人材育成のノウハウ提供等により Pros Cons 社の成長に貢献することで、両社の発展を実現できると判断したと記載がございます。(※1)
今回は「商品・サービスの拡充(クロスセルの実現)」を目的としたM&Aの実行と言えるでしょう。
コアコンセプト・テクノロジー社の「Orizuru MES」では、工作機械・検査機・ロボット・センサー等の製造現場とのデータ連携により、熟練作業者の技術の定量化等を行うことで、属人性低減・省力化による生産性向上を実現しております。
一方で、Pros Cons社は、外観検査の導入検討から運用まで独自開発のAIソリューションを有しており、M&A実行により、コアコンセプト・テクノロジー社の「Orizuru MES」の製品力強化に繋がり、製造現場での生産性向上により寄与出来ると考えられます。
このように、IT業界のM&Aは、業界の競争激化やテクノロジーの急速な進化に伴い、戦略的な成長や市場シェアの拡大を目指すための手段として、重要性を増しており、今回のように、譲渡企業様、譲受企業様の両方のシナジー効果が得られる成長戦略としてのM&Aに繋がったと推測出来ます。
(※1) 株式会社コアコンセプト・テクノロジー様2024年2月13日リリースの「株式会社 Pros Cons の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」参照
(※2) 株式会社コアコンセプト・テクノロジー様2024年2月13日リリースの「2023年12月期 第4四半期 決算説明資料」参照
まとめ
今回は成長戦略型のM&A事例についてご紹介致しましたが、上記のような成長戦略型のM&Aの問合せが特にIT業界では増えております。
実際に弊社の成約実績のデータではございますが、IT業界のオーナー様の譲渡時の平均年齢は55.6歳(最年少は25歳)と他業種と比べて約10歳以上若くて、設立から平均すると20 年を節目にM&Aへ至る企業様が多く、 オーナー様続投率が47%と約半数の方が退任されず、継続して売却後も企業の成長に携わっております 。
また、アメリカやヨーロッパではベンチャー企業が、M&Aで大手のリソースを活用することで、スピード感を持って成長することは当たり前となっており、IPOと並んで出口戦略として重要な事業戦略と位置付けられております。
今回の事例のような形で、企業成長の選択肢として、譲渡、譲受の両方のM&Aを検討してみてはいかがでしょうか。
弊社では、IT業界専門のM&Aチームがあり、IT業界のM&Aだけでも累計約400件以上の成約実績がございます。
譲渡企業様、譲受企業様、ステークホルダーなどのメリット・シナジーを意識したご提案に努めますので、是非とも弊社に一度ご相談頂けると幸いです。