【2024年上半期総集編】盛り上がりを見せる食品M&Aについて
⽬次
- 1. 食品全業種で実施!2024年上期大手企業M&Aニュース
- 2. 連続買収する買手猛者の決定力とスピードの速さ
- 2-1. 大手食品企業のマルコメ
- 2-2. 大手食品卸企業の西原商会
- 3. in-out海外クロスボーダー事例
- 3-1. カゴメ(受け皿会社:KAGOME USA HOLDINGS INC.)×米国インゴマーパッキング
- 3-2. ワタミのシンガポール企業M&A
- 4. 【外食企業の王道M&A】強力なブランド力を持つ業態ポートフォリオ拡充ケース
- 4-1. 2024/01/01 壱番屋×LFD JAPAN 福岡もつなべ
- 4-2. 2024/03/04 GOSSO×大高商事
- 4-3. 2024/03/13 ブロコビリー×レ・ヴァン
- 4-4. 2024/04/01 TRIPLETS×新宿立吉
- 4-5. 2024/05/28 SRS×アミノ(アントキャピタルパートナーズ)
- 4-6. 2024/07/31 ロピアグループ×ソラノイロ
- 5. 新進気鋭 ベンチャーフードM&A事例
- 5-1. 2024/04/01 トランジットジェネラルオフィス×イートライフ
- 5-2. 2024/06/03 江崎グリコ×グリーンスプーン
- 5-3. 2024/07/26 ダイニングエッジ×otonomics
- 6. おわりに
- 6-1. 著者
当コラムは日本М&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は白鳥が過去一水準の盛り上がりを見せる食品関係のM&Aについて2024年上半期の事例に基づいて記載します。
食品全業種で実施!2024年上期大手企業M&Aニュース
2024年上半期は、新型コロナウイルスが収束し、第5類に分類されてから2年が経ち、食品業界のМ&Aの件数はコロナ以前の水準に戻ってきています。
大手のM&Aや資本政策でトップニュースになったものは以下のような案件がありました。
- 2024/03/01 コロワイド×日本銘菓総本舗(アドバンテッジパートナーズがサービスを提供するファンド投資先)
- 2024/04/18 ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)×いなげや
- 2024/05/17 コロワイドMD[コロワイド]×ソシオフードサービス[ソシオークホールディングス]
- 2024/05/21 カーライル・グループ運営ファンド(買付目的会社:クリスピー)×日本KFCホールディングス
- 2024/06/04 永谷園ホールディングス現経営陣(永谷泰次郎社長ら)、丸の内キャピタル第三号投資事業有限責任組合(丸の内キャピタル[三菱商事]運営ファンド)(買付目的会社:エムキャップ十二号) 永谷園ホールディングス
- 2024/06/17 キリンホールディングス×ファンケル TOB仕掛け
- 2024/07/25 ひいらぎホールディングス(Sunrise Capital IV<サンライズ・キャピタル>投資先)×ポポラマーマ
- 2024/07/26 ONODERA GROUP×なだ万(アサヒグループホールディングス孫会社)
上記をみてみますと、特徴としてはファンド絡みの案件、事業の選択と集中、経営陣によるMBO、再編がある程度進んでいる業種の買い手になりえる中堅ミッドキャップがグループイン。
業種をみるに菓子業界、外食業界、スーパー業界、給食業界、飲料業界、食に関わるすべての業種で網羅的にM&Aが実施された非常に活発だった上半期だったと言えます。
連続買収する買手猛者の決定力とスピードの速さ
大手食品企業のマルコメ、また大手食品卸企業の西原商会については、買収戦略が活発化している中で同期間にて連続買収を行っています。
大手食品企業のマルコメ
- 2024/01/10 マルコメ × 伏高
- 2024/07/10 マルコメ × タツノコ
マルコメ社は言わずとしれた日本を代表する味噌メーカーです。
周辺事業への拡大を目的として日本古来の発酵食品となる鰹節を専門に扱ってきた株式会社伏高の取得。
さらに海苔・青のり等の加工製造を専門に扱ってきた株式会社タツノコ社を連続で買収しました。
大手食品卸企業の西原商会
一方で西原商会については、この上半期でIT、製造業種の企業を4社グループインしております。
- ミイル(料理の写真を通じて「美味しい」を共有するスマートフォンアプリ/ウェブサービス)
- 狩野ジャパン(「皿うどん」や「ちゃんぽん」を製造する製麺製造会社)
- ミキヤ(北海道・函館を拠点にいかを主とした珍味「さきいか」や「あたりめ」の製造)
- アロウズ・システム(物流業界向けのシステム開発に豊富な実績を持つシステム開発会社)
いずれの買い手企業をとりましても本業ではない事業をグループインしているのにも関わらず、複数社買収しています。
M&Aを決めた案件をスピーディに進めていき、しっかりと買切ることは非常に大事だと思っています。
私の経験上、同業の案件でも連続買収は難しい一方で、この2社の意思決定力の高さがうかがえます。
in-out海外クロスボーダー事例
同期間、日本の会社が海外企業へのM&Aや資本提携を行った、in-outの案件も多くございました。(出資比率増額も含む)
カゴメ(受け皿会社:KAGOME USA HOLDINGS INC.)×米国インゴマーパッキング
世界第4位の米国トマト加工大手のインゴマーパッキングの会社の持ち分比率を20%→70%へ上げました。投資額は360億円です。
ワタミのシンガポール企業M&A
また外食大手のワタミ(東京都大田区)は、シンガポールで食品関連事業を手がけるリーダーフード・グループの3社を買収しました。
買収額は約9億8,400万円。買収したのはシーフードと肉類の輸入・保管・加工・包装・供給を一貫して手がける2010年設立のリーダーフードと、グループ企業のプレミアム・シーフード・サプライズ、リーダーフード・インダストリーズの3社。
ワタミは08年、シンガポールに現地法人ワタミフードサービス・シンガポールを設立しています。
シンガポールはアジアのハブとして担うメリットが大変多くございます。
以前私がシンガポールに特化した記事を書いておりますのでこちらも参考になさってください。
食品業界のシンガポールM&Aに関する記事はこちら
食品業界シンガポールM&Aのススメ
【外食企業の王道M&A】強力なブランド力を持つ業態ポートフォリオ拡充ケース
外食業界においては、以下の代表例にみられるような、認知度が高いブランドを取り入れて業態のポートフォリオを充実させる案件が多くみられました。
2024/01/01 壱番屋×LFD JAPAN 福岡もつなべ
LFDは、「博多もつ鍋 前田屋」を福岡市内で4店舗経営しております。
創業者の前田祐介氏は、「もつ鍋に、品格を」を軸としたブランド戦略を確立し、もつ鍋激戦区の博多エリアで着実に売上を伸ばしてきた有名店です。
壱番屋は過去にも2020年12月には北海道旭川市の有名ジンギスカン店「成吉思汗(ジンギスカン) 大黒屋」を子会社化。
2023年3月にラーメン店「麺屋たけ井」運営の竹井を子会社化しております。
2024/03/04 GOSSO×大高商事
GOSSO株式会社『0秒レモンサワー®仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭』や『ガーデンファーム』、『肉バルガブリコ』などの飲食店を全国に展開。
売手はちゃんぽん専門店『じげもんちゃんぽん』 などを首都圏中心に展開する企業です。
2024/03/13 ブロコビリー×レ・ヴァン
地元に密着した高いブランド力を持つレ・ヴァンをグループに加えて、とんかつ事業の営業拡大をする戦略だそうです。
2024/04/01 TRIPLETS×新宿立吉
『新宿立吉』:昭和50年に開店し、創業50年の歴史を持つ串揚げの老舗。
厳選された四季折々の旬の食材を目の前で揚げ、職人が一品一品提供するスタイルの串揚げ専門店です。
2024/05/28 SRS×アミノ(アントキャピタルパートナーズ)
アミノは、グルメ寿司業態「うまい鮨勘」を始めとした飲食店をた飲食店を東北地域中心に国内に31 店舗、海外に2店舗展開し、顧客からの高い支持を集めるグルメ寿司チェーンです。
2024/07/31 ロピアグループ×ソラノイロ
OIC グループは「食の総合流通業」として、食品専門スーパーマーケット「ロピア」をはじめ、生産・製造・貿易・卸・小売り・外食まで、幅広い事業を展開しています。
3年連続で「ミシュランガイド東京」に掲載されたラーメン店「ソラノイロ」代表・宮崎千尋氏は、ベジタリアンにも対応できるラーメン「ヴィーガン」の開発など食の可能性を広げる活動に取り組んできた有名店です。
新進気鋭 ベンチャーフードM&A事例
過去当チームでもお手伝いさせて頂いたフードベンチャー案件としては、『株式会社U-NEXT HOLDINGS×Xキッチン(旧:バーチャルレストラン) ※2023年8月』のようにフードベンチャーへの投資も増えてきております。
今年のベンチャー案件についてはキャッチコピーも合わせて確認ください。
2024/04/01 トランジットジェネラルオフィス×イートライフ
「クリエイティブモダンフレンチ」
2024/06/03 江崎グリコ×グリーンスプーン
「素材がそのまま届くたっぷり野菜のヘルシーおうちごはん」
2024/07/26 ダイニングエッジ×otonomics
夜アイス専門店「真夜中牧場」
売却している会社の共通しているのが、一言でイメージが湧くキャッチコピーを持っていることが共通項としてあげられます。
おわりに
ここまで記載してきましたように、本業の加速、業界再編、MBO、ファンドを活用した成長戦略ならびにファンドイグジット、業態・店舗獲得、フードベンチャーへの投資、等様々な切り口がありましたが結論としては食品のM&Aは大変活況であることがわかるかと思います。
2020年1月に端を発した新型コロナウイルスの件で業界は一遍したが完全にコロナ前の水準レベルに戻ってきているといえると思います。
買収、売却、上場、MBOなのか、企業戦略として資本提携をとっていく流れは今後も加速していくはずです。
このビッグウェーブに乗れるのかどうか、2030年代はより優勝劣敗がはっきりする時代となるでしょう。
その折返し地点の2025年を目前として、経営者の皆様におかれましてはまさにこのタイミングでぜひ大きな決断を行っていただくことをおすすめいたします。
いかがでしたでしょうか?
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