競争激化する道内採用市場を生き抜く生存戦略型M&Aについて|北海道M&A
⽬次
- 1. 1:北海道人材動向と縮小する採用マーケット
- 1-1. 労働人口の動向と更なる人材不足化が危惧される業種群
- 1-2. 北海道の中小企業が抱える採用課題
- 1-3. 大卒、高卒初任給(月給)は6年間で約2万程度の値上げ。
- 1-4. 採用コストも約20万増加。
- 1-5. 中途採用における正社員の転職率は7年間で約2倍に増加。
- 1-6. 若手人材の早期離職化で約3人に1人が3年以内に転職する時代に。
- 1-7. 札幌市への人口集中と人材課題が起因となるM&Aの現状
- 2. 2:M&Aによる人材確保事例
- 2-1. 株式会社宮本運輸(北海道深川市)と北海道トナミ運輸株式会社(北海道札幌市)のM&A
- 2-2. 株式会社日栄工業(北海道苫小牧市)株式会社矢野電器(北海道勇払郡むかわ町)の2社譲渡と武ダホールディングス株式会社(北海道札幌市)のM&A
- 2-3. 株式会社市川ソフトラボラトリー(千葉県)とテクノホライゾン株式会社(愛知県)のM&A
- 3. 3:『北海道企業向けM&A DATA BOOK2024』のご案内
- 4. 最後に
- 4-1. 著者
今回は「北海道の採用マーケット動向とM&Aによる人材課題の解決事例」についてご案内させていただきます。
北海道においては近年の人材採用の難化が要因で、事業存続が危ぶまれる企業様も多く、人材確保を目的としたM&Aを行う事例が増えております。
本コラムでは、そういった採用課題解決のためのM&Aを「生存戦略型M&A」と題し、事例と共にご説明させていただきます。
1:北海道人材動向と縮小する採用マーケット
労働人口の動向と更なる人材不足化が危惧される業種群
リクルートワークス研究所「WorkReport2023」の未来予測レポートによると国内の労働人口は今後加速度的に減少し、全国統計で2030年に341万人余、2040年に1100万人余の労働供給が不足する見込みです。
北海道は2030年に約18万人、2040年に約89万人の労働人口が減少する方向で、札幌市の人口約196万人(2024年4月時点)の約半分に近い労働人口が道内全体から失われる予測が出ています。
特に不足が見込まれる3業種を例に挙げると、ドライバーなど輸送・機械運転・運搬職種で99.8万人(不足率24.2%)、建設職種で65.7万人(不足率22.0%)、介護職種で58.0万人(不足率25.3%)の供給がそれぞれ不足となる見込みとなっています。
※リクルートワークス研究所「WorkReport2023 未来予測2040労働供給制約社会がやってくる」より
同書においては機械化・自動化が進めば、これらに対しての解決策が生まれる可能性も示唆しており、ドライバーは運転のハンズオフ、アイズオフで運転業務から解放されるだろうと予測されます。
建設工事は自動化施工技術が進展すれば1人の作業員で複数台の重機を操ることが可能になり、介護事業では記録業務の自動記録活用や直接介助に関する負担もロボットスーツ活用で軽微化できる可能性もあります。
しかし、いずれも長期計画となるため、対象事業の企業様においては機械化・自動化の先行投資に耐えうる余力を残しておく必要があります。
上記3業種は現時点においても既に人材採用が難化する業種だけに、DX化が進んでも各社人材確保の競争は熾烈となる可能性は高く、該当業種以外も採用難化は例外ではありません。
北海道の中小企業が抱える採用課題
北海道の多くの企業が「人手不足」の課題を抱えています。
大卒、高卒初任給(月給)は6年間で約2万程度の値上げ。
新卒初任給は平成31年度には21万8千円だったものが、令和6年度には23万7千円(+1万9千円)とアップ。
高卒初任給も平成31年度17万4千円が令和6年度19万2千円(+1万8千円)に上昇しており、北海道内の大卒の平成31年度は20万8千円が令和6年で23万円(+2万2千円)となっていました。
(厚生労働省 北海道労働局 新規学卒者初任給情報 より)
採用コストも約20万増加。
就職みらい研究所の調査「就職白書2020」を見ると、2020年度における新卒・中途採用にかかる一人当たりの平均採用コストは増加。
- 新卒採用:93.6万円(+22.1万円)
- 中途採用:103.3万円(+21.3万円)
2018年度の調査では下記の結果が出ており、2年間で、新卒・中途採用ともに一人当たりの約20万弱の採用コストが増加していました。
- 新卒採用71.5万円
- 中途採用83.0万円
中途採用における正社員の転職率は7年間で約2倍に増加。
マイナビが行った「転職動向調査2024年版」を見ると正社員の転職率は全体で2016年3.7%から2023年7.5%に増加しています。
若手人材の早期離職化で約3人に1人が3年以内に転職する時代に。
2019年に入社し、その後3年未満で離職する割合は、中学卒でもっとも高く52.9%となった。
最終学歴別でもっとも離職率の低い大学卒でも、1年未満に離職した割合は10.6%、3年未満だと32.3%となっている。
(厚生労働省 規学卒就職者の離職状況 令和2年3月卒業者 より日本M&Aセンター作成)
人材の定着率は下がる一方で、採用コストの上昇が続き、採用未充足企業の割合も増加傾向にある状況です。
全道共同求人委員会の2024年度の発表によると、対象会員企業(5617社)のうち回答のあった 471社の分析の結果、自社の従業員数の充足度についてのアンケートでは人材が不足していると回答した企業が57・7%(昨年比2・4ポイント増)である状態で、採用が苦戦している状況が伺えます。
(全道共同求人委員会 共同求人委員会・採用意向調査 2024年度1月より)
札幌市への人口集中と人材課題が起因となるM&Aの現状
前述のように人材不足の課題や事業承継の課題を感じている企業も多く存在する北海道ですが、札幌市への人口集中も道内における人材不足要因となっています。
北海道の人口移動について、道内(札幌市除く)から札幌市への人口移動は一貫して転出超過しており、 2005~2020年で約8万5千人の転出超過。
札幌圏以外の人口低下要因に繋がっています。
道外と道内との関係では、2005~2020年で約1万7千人の転出超過の状況にあり、道内で人口一極集中化が顕著な札幌市でさえ、例外なく労働人口は減少しているのが現状です。
弊社におけるM&Aの検討理由の多くは人材不足に起因しており、譲渡企業側、譲受企業側の双方で上位の検討理由となっています。
- 譲渡理由の3位 人材不足
- 譲受理由の2位 人材確保
これらの理由が上位にくるのも、M&Aという選択が企業の採用課題に対する解決策になりえるからです。
2:M&Aによる人材確保事例
人材不足、採用課題の解決や人材確保によるシナジー創出を意図したM&Aはこれまで数多くの企業が行ってきました。
弊社においても採用戦略型M&Aの成功事例が多く存在している為、過去のM&A成約事例を下記にご紹介します。
叶えたかったのは高齢化するドライバー人材採用体制の強化。採用力のある会社にグループインしてわずか半年で採用成功した事例。
株式会社宮本運輸(北海道深川市)と北海道トナミ運輸株式会社(北海道札幌市)のM&A
実施時期:2022年7月
事例インタビュー記事はこちら
宮本運輸は原木をメインとする貨物自動車運送業。一部クレーンリース業も行っている。
北海道トナミ運輸株式会社は、運送事業や倉庫業を営む企業様。
札幌だけでなく、旭川、苫小牧の他にも東北、関東にも営業所があり幅広く展開。
譲受側のグループを巻き込んだ支援型M&AによりM&A後の外国人人材の受け入れまでの支援を実施した事例。
株式会社日栄工業(北海道苫小牧市)株式会社矢野電器(北海道勇払郡むかわ町)の2社譲渡と武ダホールディングス株式会社(北海道札幌市)のM&A
実施時期:2020年7月
事例インタビュー記事はこちら
株式会社日栄工業は、管工事、水道施設工事を行い、株式会社矢野電器は水道施設工事、空調設備工事、家電販売を行う。
武ダホールディングス株式会社は、経営コンサルタント業、総合建設業、不動産業、保育業、IT業、製造販売業、ガソリンスタンド業など幅広い事業を展開。
譲渡企業の人材制約と事業成長への資力的な限界を突破したIT業界の戦略的M&A実施事例。
株式会社市川ソフトラボラトリー(千葉県)とテクノホライゾン株式会社(愛知県)のM&A
実施時期:2021年6月
事例インタビュー記事はこちら
株式会社市川ソフトラボラトリーは、カメラ業界向け画像処理ソフトの開発・販売や、フォトレタッチソフトや学習用お絵描きソフトの開発・販売を手掛ける受託開発ソフトウェア業を行う企業です。
テクノホライゾン株式会社は、映像&IT事業とロボティクス事業を基盤に事業を展開。IT化が一層進む「教育」市場、セキュリティや自動車関連などのマーケットがさらに進化する 「安全・生活」市場、高度化が求められる「医療」市場、自動化ニーズが高まる「FA」市場を4つの重点市場と定め、グループシナジー効果を活かした製品やシステムを創出しています。
3:『北海道企業向けM&A DATA BOOK2024』のご案内
今後も北海道支社から最新の業界情報等をお届けさせて頂きます。
北海道のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。 買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。 また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。
1.北海道企業を取り巻く事業環境と各種データを用いた考察
2.2023年度日本M&Aセンターの北海道成約データから見えるM&Aトレンド
3.北海道企業がM&Aを選択する理由とは?
4.M&Aを実際に実施した北海道企業のインタビュー
5.2024年度北海道M&Aマーケットの未来予測
最後に
採用課題解決には、採用ブランディングだけでなく、従業員への汎用性ある業務機会提供や、賃金上昇に対応するための収益向上及び資力の確保。
そして、中長期的に対応不可欠な販管費削減に向けた業務の簡素化、自動化に伴うシステム導入などの先行投資も必要となります。
これらの対応が自助努力で難しい場合、成長戦略型のM&Aも視野に入れることを強く奨励いたします。
M&Aによる採用課題解決も経営戦略の選択肢に入れることで、成長戦略の幅は大きく広がります。
しかしながら、実行にあたっては慎重な行動が必要となるのもM&Aです。
例えば、採用課題を抱える企業様にとって、お相手選びは非常に重要です。
譲渡企業様側の社長継続有無やM&A後のポジション、現従業員の雇用体制や採用戦略の合意等々、お互いに合意すべき論点は多岐に渡ります。
また、従業員への周知タイミングを誤ったり、譲受企業の受け入れ態勢や譲渡企業とのシナジー効果が不十分な場合、M&A前後に人材が流失してしまう等の危険性もあり、M&Aの際には慎重な買収監査(デューデリジェンス)だけでなく、PMIの活用も重要になります。
今回人材不足が危惧される業種群の代表であった建設業とその関連業界、運送業界などに加え、ソフトウェア受託開発などを請け負うIT業界、警備業などを含む人材派遣事業、自動車整備業等も人材不足に起因するM&Aのご相談が特に多い業種となっています。
不明点やご関心などございましたらM&A仲介において国内最大の成約件数を誇る弊社に、お気軽にご相談くださいませ。
いかがでしたでしょうか?
今後も北海道営業所から最新の業界情報をお届けさせて頂きます。
北海道のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、お問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。