2024年8月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

志賀 俊太

日本M&Aセンター業種特化1部/物流業界専門チーム

業界別M&A
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物流業界の2024年8月の公表M&A件数は8件

8月における公表ベースでのM&A(合併・買収)は8件でした。
前年同月の7件と比較して1件の増加となります。

中堅・中小へ広がる物流業界再編の波

大手企業をメインプレーヤーとした物流業界における業界再編の波は、中堅中小企業に着実に広がりを見せている。
「創業100年・年商100億円」を掲げる八潮運輸は神奈川県に本社を構え自動車部品輸送に強みを持つ昭和運輸の全株式を取得して子会社化したことを発表した。

本件により、直近2年での公表ベースでのM&Aは5件目となる。
M&Aによる単純な足し算以上に売上高、従業員数ともに着実に成長を遂げている点から、掛け算のシナジーが十分に発揮されていることがうかがえる。

また、短期間に複数のM&Aを実行している企業はほかにもある。
CVS(コンビニエンスストア)センター運営、SM(スーパーマーケット)センター運営、問屋センター運営、外食チェーンセンター運営、全国小口共配事業などを行う南日本運輸倉庫は埼玉県に本社を構え、自動車用シートやヘッドレスト、自動車部品、菓子の外箱などを取り扱う不二運輸の買収を発表した。

2022年に買収した和幸流通サービス以降、4件目のM&Aとなる。
いずれの対象会社も、これまでは買い手側に回ることも考えられる売上高規模の優良企業が、譲渡を決断して中堅企業グループ傘下に入った点は特筆すべきポイントだろう。

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異業種企業とのM&A・優良企業グループ傘下に

物流機能に課題を抱え、M&Aを活用して解決を目指す企業は様々な業界に存在する

エディオンは中四国全域~近畿を営業エリアとし、160台超の車両を保有する室山運輸の全株式を取得して子会社化したと発表した。
かねて協力会社の一社として家電製品の運送、回収においてパートナー関係にあった。

労働時間規制に伴う人材、トラックの不足を物流企業の内製化で解決する事例は、今後も増えていくだろう。
業界再編が進行する中、『再編される側』よりも『再編を主導する側』になるために、差別化された明確な自社のポジションを築くとともに、業界の動向を常にウォッチしつつ、準備を怠らないことが重要といえる。

日本M&Aセンターでは、事業売却をはじめ、様々な手法のM&A・経営戦略を経験・実績豊富なチームがご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

志賀 俊太

志賀しが 俊太しゅんた

日本M&Aセンター業種特化1部/物流業界専門チーム

1988年生まれ、東京都出身。明治大学政治経済学部卒業後、新卒で大手損害保険会社へ入社。大型トラックディーラーを担当し運送会社、バス会社向けの損害保険営業に従事した後、日本M&Aセンターに入社。現在は物流業界専門のM&Aコンサルタントとして年間300社を超える物流企業のM&A支援を行う。運行管理者資格保有(関東貨物第45840号)。

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