北海道における物流業界のM&A|北海道の物流・運送M&A解説

石倉 泰雄

日本M&Aセンター 北海道営業所

業界別M&A
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日本M&Aセンターの北海道営業所が北海道M&A・北海道事業承継の最新情報を執筆しております。
今回は「北海道における物流業界のM&A」についてご案内させていただきます。

1:物流業界の傾向

現在、物流業界を取り巻く環境は年々厳しいものになっています。
まず物流業界の経営者の平均年齢は60.3歳となっており、全業種の中で5番目の高さになっています。
※帝国データバンク全国「社長年齢」分析調査(2023年)より


当社でM&A成約をお手伝いさせて頂きました企業のオーナーの譲渡時の平均年齢も62.2歳となっております。
そのため今後も社長の「高齢リスク」にはさらなる警戒が必要となってきます。

また、後継者候補のご子息は大都市の大企業に勤めていることも多く、ご子息はいるものの実質的に後継者がいないという理由で当社に譲渡を相談されるケースが多い傾向にあります。

同時に地方の多くの企業がドライバーの採用に苦戦し、社員の高齢化も進んでいることが実情であり、社内の世代交代に遅れに伴う後継者不在の問題も発生しており「人手不足倒産」が後を絶たない状況が続いています。

また近年の燃料費高騰などにある「物価高」の影響を真っ先に受ける物流業界では、営業利益率を維持・向上することが難しくなっています。

さらに加えて「2024年問題(働き方改革による労働時間規制強化)」の影響による労働時間制限から売上や利益の減少、また価格転嫁の遅れから賃金アップの流れに追随できず、ドライバーの確保が難しい企業が多くなかなか設備投資に踏み切れないという経営者も多いです。

このように現状の課題解決に資する対策だけでなく、将来を見据えた効率化や業務改善が必要となってきております。

これらの影響もあり近年、大手~中堅物流企業の間で資本提携が盛んに行われています。
直近では上場企業同士のM&Aも行われており、この波が中堅中小企業にも波及し、さらに動きが活発になってきています。

譲渡企業にとっては事業のベストオーナーを選ぶことは生産性、ノウハウの共有、販路の拡大、規模の拡大による交渉力のアップとプラスの作用を生むことは多々あります。

自社の更なる成長の為に自前主義ではなく第三者との提携を選択する経営者が増えているのが実態です。

2.北海道物流業界の課題とM&A

北海道は、日本国内でも特に独特な地域特性を持つ物流市場です。

広大な面積を持ちながらも人口密度が低く、物流コストが高くなりやすいという課題を抱えています。

また、厳しい冬の気候やインフラの制約など、他地域では見られない特有の問題が多く、物流効率の向上が業界全体の喫緊の課題となっています。
そうした中で、物流企業の競争力強化を目指すための手段として、M&Aが注目されています。

ここからは、北海道の物流業界が直面する課題を考えたうえで、M&Aがこれらの課題に対してどのような解決策を提供し得るかについて考察していきます。

北海道物流業界の特有の課題

北海道における物流業界が抱える問題は、日本の他の地域と比較しても非常に独自性が強いです。
特に以下の4つの要素が、北海道の物流業界を取り巻く大きな課題となっています。

1.広大な土地と輸送効率の低さ

北海道の面積は日本全体の約22%を占め、広範囲にわたる地域に物資を配送する必要があります。
札幌市や旭川市といった主要都市を除けば、人口がまばらであり、1回の配送で多くの距離をカバーする必要があるため、トラック輸送に大きな負担がかかります。

また、輸送効率を高めるために配送拠点やルートの最適化が求められていますが、小規模な物流企業にとってはこうした効率化に投資する資金やノウハウが不足しています。

2.冬季の厳しい気候とインフラ制約

冬の北海道は積雪や凍結によって道路状況が悪化し、物流の遅延や停止が発生しやすくなります。
特に、道東や道北などの雪深い地域では、物資が予定通りに届かないことが頻発します。

こうした環境下では、特殊な装備を持った車両や、冬季用のインフラへの投資が必要となりますが、これも中小企業にとっては負担が大きく、効率的な物流の維持が難しい状況です。

3.ドライバー不足の深刻化

全国的に問題となっているトラックドライバー不足は、北海道でも顕著です。

広い地域を長距離運転することが求められるため、ドライバーの負担が大きく、離職率が高いことが課題となっています。
さらに2024年問題(働き方改革に伴う労働時間規制強化)により、労働時間が制限されることで、ドライバーの稼働時間が減少し、輸送能力がさらに低下するリスクがあります。

4.本州との連携の課題

北海道と本州を結ぶ物流は、青函トンネルやフェリー輸送に依存しています
しかし、青函トンネルは旅客列車との共用区間であり、貨物列車の輸送キャパシティには限界があります。

また、フェリー輸送は冬季の荒天による運休リスクが高く、安定した物流ルートの確保が課題となっています。

M&Aによる解決の可能性

こうした北海道特有の物流課題に対して、M&Aは有効な解決策となり得ます。特に次のような面で、M&Aを通じた業界再編や効率化が期待されています。

1.輸送効率の向上

広大な北海道での輸送を効率化するためには、規模の経済を追求することが必要です。
M&Aを通じて、複数の中小規模の物流企業が統合されることで、輸送拠点の集約やルートの最適化が進みます。

例えば、複数の企業がそれぞれ異なる地域での強みを持っていれば、統合後はそのネットワークを共有し、広域配送網の効率化を図ることができます
また、規模の拡大により、新しい輸送技術やシステムへの投資が可能となり、さらなる効率化が期待されます。

2.冬季のリスク対応とインフラ投資

雪や氷といった冬季特有のリスクに対応するためのインフラ投資も、M&Aによる資本力の強化で実現可能です。
例えば、除雪機能を備えた特殊車両や、冬季でも安定的に配送できる倉庫施設など、厳しい気候に対応するための設備導入が加速します。

これにより、冬季における物流遅延のリスクを最小化し、顧客満足度の向上を図ることができます。

3.ドライバー不足の緩和

M&Aはドライバー不足の解消にも寄与します。
企業規模が拡大することで、ドライバーの労働環境改善に向けた取り組みが強化され、より働きやすい職場環境が整備される可能性があります。

例えば、統合された企業がドライバーの教育・訓練プログラムを充実させたり、勤務シフトをより柔軟に管理できるようになれば、ドライバーの離職率が低下し、長期的に人手不足の緩和が期待できます。

4.本州との物流連携強化

本州との物流連携を強化するためには、フェリー運行企業や鉄道会社との連携強化が重要です。

M&Aを通じて、これらの企業と連携した統合輸送サービスを提供することが可能になります。
例えば、北海道内の物流企業が本州の鉄道貨物会社や港湾運営会社を買収する、あるいはすでに連携ができている大手の傘下に入ることで、輸送の効率化と安定性を確保することができます。

5.車両購入価格を下げられる可能性

大手企業の傘下に入ることで、車両購入価格が下がることが期待できます。

大企業は一度に多くの車両を購入するため、割引や特別価格で提供されることがあります。
また既存サプライヤーと長期的な取引関係を持っている企業だと、条件交渉を有利に進められるため低価格での購入が実現できます。

このように買い手企業の資金調達能力や交渉力によって、M&A後の車両購入コストが下がることは十分に考えられます。

3:北海道の物流/トラック運送企業のM&A成約事例

【譲渡企業】
社名: 株式会社宮本運輸(北海道)
事業内容: 貨物自動車運送業、クレーンリース業
売上高: 約3.7億円(2023年3月期) 社員数: 37名(2022年9月時点)
【譲受企業】
社名: 北海道トナミ運輸株式会社(北海道)
事業内容: 運送事業、普通倉庫業
売上高: 約50億円(2023年3月期) 社員数: 323名(2023年3月時点)

宮本運輸は原木をメインとする貨物自動車運送業。
一部クレーンリース業も行っている。

長らく人材不足の課題を抱えており、このままでは事業が継続できないところまで事態が深刻化し、採用力のある会社への譲渡を決意。
一方、北海道トナミ運輸株式会社は、運送事業や倉庫業を営む企業。札幌だけでなく、旭川、苫小牧の他にも東北、関東にも営業所があり幅広く展開している。
2023年6月にM&A成約。グループインしてわずか半年で採用に成功した事例になります。

4:まとめ

北海道の物流業界は、広大な地域、厳しい気候、ドライバー不足など多くの課題に直面していますが、M&Aを通じた業界再編がこれらの問題解決に貢献する可能性があります。

規模の拡大による効率化や資本力強化によるインフラ投資、ドライバー不足への対応など、M&Aは物流企業の競争力を高め、業界全体の成長を促進する一手となります。
もし不明点やご関心などございましたら、M&A仲介において国内最大の成約件数を誇る弊社にお気軽にご相談ください。

いかがでしたでしょうか?
今後も北海道支社から最新の業界情報をお届けさせて頂きます。

北海道のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

日本M&Aセンターでは、事業売却をはじめ、様々な手法のM&A・経営戦略を経験・実績豊富なチームがご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

石倉 泰雄

石倉いしくら 泰雄やすひろ

日本M&Aセンター 北海道営業所

石川県七尾市出身。専修大学商学部卒業後、新卒の人材採用支援事業をメインとするベンチャー企業に入社。延べ1,000名を超える大学生・社会人の就職活動の支援、コンサルに携わる。日本M&Aセンター入社後は北海道営業所に配属。父親が経営者だった経験から、事業承継、そして会社の発展に寄与し、経営者や経営に携わるご家族、従業員の方々の未来の人生を良くするためにM&Aサービスを提供している。​

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