【広報誌「MAVITA」Vol.4より】 心に残る成約式 vol.2

広報室だより
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<譲渡企業>株式会社きちみ製麺 代表取締役 吉見 光宣さん
<譲受け企業>八戸東和薬品株式会社 代表取締役 髙橋 巧さん(役職はM&A実行当時)

最終契約書が交わされるその日、日本M&Aセンターでは「M&A成約式」というセレモニーを執り行います。譲渡企業にとっては経営者人生の締めくくりです。譲受け企業にとってはM&Aを成功させる覚悟ができます。一つとして同じものがない「心に残る成約式」をご紹介します。(日本M&Aセンターが発刊する広報誌「MAVITA」Vol.4より転載)

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M&Aの背景


きちみ製麺の創業は1897(明治30)年。以来、120年以上にわたり温麺を作り続けてきた

2022年2月17日に行われたきちみ製麺と八戸東和薬品のM&A成約式。最後の記念撮影で譲受け企業の髙橋巧社長が希望したポーズは、吉見光宣社長をおんぶすることでした。「今後はきちみ製麺を背負って発展させていく。これが私が考える事業承継のかたち」と、決意を表現したのです。吉見社長も満面の笑顔でその想いに応えました。

宮城県白石市を中心に愛される郷土麺「白石温麺(しろいしうーめん)」。きちみ製麺は同市で120年以上にわたり温麺に特化して製造を続けてきました。歴史あるきちみ製麺をどんな会社に託すか、4代目の吉見社長が求めたのは今後もきちみ製麺を発展させるために新しいチャレンジができる会社でした。吉見社長もこれまで業界で初めて機械製法に取り組むなどチャレンジを続けてきたからです。そこでお相手に選んだのが、青森県八戸市でジェネリック医薬品の卸売業を営む八戸東和薬品でした。

成約式で吉見社長は「これまでは伝統産業がゆえに固定観念に縛られがちでしたが、これからは新しい要素を確実に取り入れて、きちみ製麺をより良い会社にしていってくれると確信しています」と挨拶しました。異業種だからこそ、きちみ製麺の個性を活かしながら継続させてくれるだろうと考えての決断だったのです。


「白石温麺(しろいしうーめん)」

一方で、譲り受ける八戸東和薬品にとっても大きなチャレンジでした。八戸東和薬品は、「事業承継」×「地域資源活用」×「社会課題」という事業コンセプトを掲げ、M&Aで事業承継に悩む企業に貢献したいと考えてきました。きちみ製麺と出会い、吉見社長の常に新しいことにチャレンジする姿勢に感服したという髙橋社長。「きちみ製麺の温麺を未来に残したい。さらに100年続く会社にしたい」と強く思い、トップ面談後にその素直な気持ちを手紙に綴り、吉見社長に渡したほどです。

成約式当日

両社にとって新たなチャレンジのスタートを祝う日となったM&A成約式。中盤には、長年吉見社長とともにきちみ製麺を盛り立ててきた妻の智恵専務が手紙を読みました。

「長いようであっという間の28年間でした。バブルがはじけて厳しい時代に入り、眠れない夜もたくさんありましたね。でも、従業員の生活を守るという強い意志で二人で頑張ってきました。今日、事業承継という最大の荷を下ろしたので、どうぞこれからはきちみ製麺の行く末を見守りながら身体を休めていただきたいと思います。長い間、大変お疲れ様でした」

妻の手紙に静かに耳を傾ける吉見社長。時おり天を仰ぎ、言葉をかみしめているようでした。


妻の手紙に涙を浮かべながら耳を傾ける吉見社長

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