2024年9月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

荒瀬 貴文

日本M&Aセンター業種特化1部

業界別M&A
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物流業界の2024年9月の公表M&A件数は8件

9月における公表ベースでのM&A(合併・買収)は8件でした。
前年同月の7件と比較して1件の増加となります。

過去20年最多ペースで進む物流M&A

2023年1~9月のM&A件数は62件でしたが、2024年1~9月のM&A件数で90件を記録しており、ハイペースで実行されています。
9月の特徴的な事例は物流大手トランコムのMBO(経営陣が参加する買収)の発表です。

トランコムは米投資ファンドのベインキャピタルと組んでMBOを実施すると発表。
ベインキャピタル完全子会社のBCJー86(東京都千代田区)が全株式の取得を目指し、TOB(株式公開買い付け)を実施する。
TOBが成立すれば、トランコムの東証プライム市場への上場は廃止となる。

トランコムは物流業界全体が抱える課題に対し、抜本的な施策の実施が必要と認識していた。
非公開化により、M&AやASEAN(東南アジア諸国連合)への展開、事業の多角化、更なる経営の自由度を高めることを目的としているが、何よりも長期的に独自の強みを生かして成長を続けるために選んだ最良の方法だ。

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創業家・経営陣の手段として目立つMBO(マネジメントバイアウト)の選択

MBO(経営陣が参加する買収)も近年は目立っています。
岐阜県に本社を置くエスライングループは、創業家によるMBOについてTOBが設立したと発表。
24年に入り、TOBによる買収、創業家によるMBOや事業譲渡といった再編の動きが加速している。

物流企業各社の買収に関する動きを見ていると、規模の経済を求めて、意欲的な姿勢で買収への取り組みを強化している姿が浮き彫りとなっている。
実際に物流業界のM&A件数は10月時点で23年の総件数に迫っており、年間のトータル件数は過去20年で最多となることが見込まれている。

物流業界ではM&Aが活発化している傍ら、中堅中小の倒産件数が増加傾向にある。
業界全体が厳しい系家環境に直面しており、当社への会社譲渡相談件数はここ数年絵急増しており、来年はさらに増加するだろうと予想している。
このように物流業界が大きく変化している中、経営判断のタイミングを逃がさないために、全企業がM&Aを選択肢の一つとして視野に入れるべき時代に突入している。

日本M&Aセンターでは、事業売却をはじめ、様々な手法のM&A・経営戦略を経験・実績豊富なチームがご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

荒瀬 貴文

荒瀬あらせ  貴文たかふみ

日本M&Aセンター業種特化1部

運行管理者資格保有(関東貨物第46628号) 1994年生まれ、島根県出身。新卒で第一生命保険に入社、リテールセールに従事した後営業マネジメントに携わり、日本M&Aセンターに入社。物流業界専門チームにて主に物流企業のM&A支援に携わる。

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