事業承継型M&Aとは?事業承継とM&Aの違い・メリットや注意点をわかりやすく解説
親族や従業員に後継者候補がいない「後継者問題」は、経営者にとって深刻な課題です。 後継者問題を解決する事業承継の手段のひとつとして、事業承継型M&Aがあります。
本記事では、事業承継型M&Aの仕組みや種類、メリット・デメリットについて解説します。事業承継に不安や悩みのある方は、ぜひ参考にしてください。
この記事のポイント
- 事業承継型M&Aは、経営権を第三者に譲渡することで企業の存続を図る手法であり、後継者不足に対応する有効な選択肢である。
- 事業承継型M&Aの利点として、従業員の雇用を維持、創業者利益の確保、個人保証からの解放などがある。
- 注意点としては、利害関係者へのしっかりとした説明が求められることや、事業承継先を自力で見つける難易度の高さがある。
⽬次
- 1. 事業承継型M&Aとは?
- 2. 事業承継とM&Aの違い
- 3. 事業承継の3つの種類
- 3-1. 親族内承継
- 3-2. 従業員承継
- 3-3. 第三者承継(M&A)
- 4. 事業承継の3つの経営資源
- 4-1. 人(経営)
- 4-2. 資産
- 4-3. 知的財産
- 5. 事業承継型M&Aをするメリット(売り手)
- 5-1. 事業承継先の選択肢を拡大できる
- 5-2. 従業員の雇用を維持できる
- 5-3. 創業者利益を確保できる
- 5-4. 個人の債務保証から解放される
- 6. 事業承継型M&Aをするメリット(買い手)
- 6-1. 人材を確保できる
- 6-2. 人材を確保できる
- 6-3. 技術やノウハウを承継・獲得できる
- 6-4. 新規事業へ投資・進出できる
- 7. 事業承継型M&Aをする2つの注意点
- 7-1. 希望条件に合った事業承継先を自力では見つけにくい
- 7-2. 利害関係者へしっかりと説明する必要がある
- 8. 事業承継型M&Aの事例
- 8-1. 老舗温麺メーカーがM&Aで医薬品卸売会社に譲渡|株式会社きちみ製麺
- 8-2. 将来の廃業を取りやめてM&Aで体制を整備|株式会社ハチロ
- 8-3. 廃業せずに会社を守れたM&Aの存在|有限会社青竜社塗装店
- 9. 事業承継型M&Aのお悩みは日本M&Aセンターにご相談ください
- 9-1. 著者
「会社を残したいけれど、後継者がいない」
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事業承継型M&Aとは?
事業承継型M&Aとは、経営権を第三者に譲渡することで企業の存続を図る手法です。 後継者不足が問題となっている中小企業において、事業承継型M&Aは効果的な解決策となります。親族や従業員に後継者がいない場合でも、外部の企業に譲渡することで事業を維持し、雇用を守ることができます。
事業承継型M&Aの他にも、「成長戦略型M&A」や「再生型M&A」があります。
成長戦略型M&Aは、M&Aを通じて他社の人材や設備などの経営資源を活用し、自社の成長を加速させることです。事業規模の拡大や成長速度の向上、経営資源の獲得などを目的としています。
再生型M&Aは、経営が困難な企業を対象にM&Aを行い、その企業を立て直す手法です。経営改善を進め、企業の価値を高めることを目的としています。
事業承継型M&Aは企業の存続を重視する一方で、成長戦略的M&Aは事業の拡大、再生型M&Aは再建と復活を目的としています。
このように、M&Aの手法には、目的や特徴に違いがあります。M&Aを検討している企業は、現状の課題や将来のビジョンを明確にし、自社に最適なM&Aを選択することが大切です。
事業承継とM&Aの違い
事業承継とM&Aは、目的や位置付けが異なります。
事業承継とは、現在の経営者が持つ企業の経営権や資産を、次世代の後継者に引き継ぐことです。企業の存続を確保し、従業員や取引先との関係を維持しながら、経営理念や企業文化を次世代に引き継ぐことが目的です。
一方、M&Aは企業同士の合併や買収のことで、事業承継方法のひとつとして位置付けられます。
このように、事業承継は経営を引き継ぐ広い概念を表すのに対し、M&Aは事業承継を解決するための選択肢のひとつとして位置付けられ、特に後継者問題が深刻な企業にとっては有効な手段となるでしょう。
M&Aについて詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。M&Aの目的やメリット・デメリット、流れ、費用などについて詳しく理解できます。
事業承継の3つの種類
事業承継は、承継先によって、以下の3つに分類されます。
- 親族内承継
- 従業員承継
- 第三者承継(M&A)
それぞれの特徴について解説します。
親族内承継
親族内承継とは、現経営者の子どもや配偶者、兄弟姉妹などの親族が後継者となる事業承継の形態です。経営者が信頼できる家族に会社や事業を引き継ぐことで、企業の理念や価値観を次世代に伝えられます。
後継者の育成に十分な時間をかけられる点や関係者から心情的に受け入れられやすい点は、親族内承継の大きなメリットです。経営者は長期的な視点で後継者に経営スキルや企業文化を伝えられます。また、経営権や株式の移行時期についても家族間で柔軟に調整できるため、スムーズな事業承継が可能です。
一方で、後継者候補となる親族がいても、本人に会社を継ぐ意思や適性があるとは限りません。また、複数の後継者候補がいる場合、経営権を巡る争いが発生し、社内の分断につながる可能性もあります。
経営者と後継者候補の親族との間で十分な意思確認ができずに、後継者不在の状態に陥るケースが多いため、親族間で早期の意思確認と引継ぎが必要です。
【関連記事】親族内承継|事業承継ガイド
従業員承継
従業員承継とは、社内の従業員や役員が後継者として会社や事業の経営を引き継ぐ形態です。
企業内部での信頼関係を活かせる点が、従業員承継の大きなメリットです。後継者候補としては、経営者の右腕を担ってきた役員や従業員などが挙げられます。経営能力・資質を見極めて候補者を選定でき、会社に長く勤務する従業員であれば経営方針などの一貫性を保ちやすい点が特長です。また、長年共に働いてきた周囲の従業員からの賛同や協力を得られやすいため、事業の存続に対する安心感を周囲に与えられるでしょう。
ただし、後継者は多額の株式購入資金や債務保証のリスクを負担しなければいけません。後継者は多額の資金が必要になるため、大きな負担となります。この資金力問題を解決するためには、専門家のサポートを受けることが重要です。
このように、従業員承継は企業内の人材を活用できる効果的な方法ですが、資金調達や後継者育成などの課題に対処することが求められます。
【関連記事】従業員承継|事業承継ガイド
第三者承継(M&A)
第三者承継(M&A)とは、外部の第三者が新たな経営者となり事業を継続する形態です。親族や社内に適切な後継者がいない場合や、後継者候補が事業承継を希望しない場合に利用されます。
事業承継でM&Aを用いるメリットは、後継者を広く外部に求められる点です。親族や社内にこだわらず、会社や事業の発展に必要なスキルや資金力を持つ第三者に経営を託すことで、企業の価値を高められます。また、経営者は個人保証や資産の担保提供から解放され、事業売却で創業者利益の確保にもつながります。
しかし、希望条件に合った後継者候補を自社単独で見つけるのは現実的ではなく、専門家のサポートが欠かせません。経営方針が買い手企業に委ねられるため、事業の方向性が変わる可能性もあり、利害関係者への十分な説明と調整が必要です。
【関連記事】第三者承継|事業承継ガイド
事業承継の3つの経営資源
中小企業庁が公表している「事業承継ガイドライン」によると、事業承継の構成要素は人(経営)・知的財産・資産の3つの経営資源であると述べられており、これらを後継者へ適切に引き継ぐ必要があるとしています。
また、後継者が決定してから事業承継が完了するまでの移行期間は、以下のとおりです。後継者への移行期間は3年以上かかっているケースが半数を超えており、事業承継を検討している場合はできるだけ早期の準備が重要なことがわかります。
後継者への移行期間 | 割合 |
---|---|
1〜2年程度 | 11.3% |
3〜5年程度 | 26.9% |
6〜9年程度 | 13.8% |
10年以上 | 11.2% |
出典:中小企業庁ウェブサイト「事業承継ガイドライン」第3版 P.15
人(経営)
事業承継において「人(経営)」は、後継者となる新しい経営者だけでなく、従業員や取引先などの事業に関わるすべての人を指します。事業を次世代に引き継ぐためには、経営者がこれまでに培ってきた技術や経験だけでなく、取引先や金融機関との信頼関係も含めて承継しなければいけません。そのため、新しい経営者が決まれば事業承継が完了するわけではなく、事業を安定的に運営して発展させるためには、後継者の経営手腕や人心掌握力が求められます。
資産
事業承継において「資産」とは、事業を運営するために必要な財産を引き継ぐことを指します。 具体的には、以下の3つの資産があります。
- 自社株式
- 事業用資産(設備や不動産)
- 資金(運転資金や借入)
自社株式・事業用資産・資金の3つの資産を適切に承継することは、事業の安定的な運営を継続するために重要です。
知的財産
事業承継において「知的財産」とは、目には見えない無形の資産のことを指します。知的財産は、企業の長期的な成長や市場での優位性を支えるための重要な要素です。 具体的には、以下の無形資産が該当します。
- 企業文化
- ノウハウ
- 従業員の専門的知識・技術
- 経営者の評判・信頼性
- ビジネスネットワーク
- 顧客データ
- 知的財産権(特許・商標・著作権など)
- 行政許可
知的財産の承継は、企業が他社と差別化を図り、長期的に競争力を維持するための基盤となるため、資産の移転よりも慎重な対応が求められます。
知的財産は企業の競争力を支える重要な資産であるため、後継者が正しく引き継いで発展させるためにも、まずは現経営者が自社の強みや価値の源泉を的確に理解しておかなければいけません。
事業承継で引き継ぐ3つの経営資源については以下でさらに詳しく解説しています。
【関連記事】事業承継とは?わかりやすく基本を解説
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事業承継型M&Aをするメリット(売り手)
売り手と買い手のどちらも、事業承継型M&Aで得られるメリットがあります。売り手と買い手で自分が該当する立場から、どのようなメリットがあるかを事前に把握しておくことが大切です。
売り手が得られる主なメリットは、以下のとおりです。
- 事業承継先の選択肢を拡大できる
- 従業員の雇用を維持できる
- 創業者利益を確保できる
- 個人の債務保証から解放される
それぞれを詳しく見ていきましょう。
事業承継先の選択肢を拡大できる
M&Aは、親族や従業員の中に適切な後継者がいない場合に、外部の適任者を広く探す手段として有効です。
たとえば、親族内で後継者を見つけられない場合や、従業員が株式の買取資金を用意できない場合でも、M&Aを通じて外部から後継者を確保できます。適任者不在や資金不足などの課題を解決し、事業の存続と発展を図ることが可能です。
従業員の雇用を維持できる
M&Aを活用することで、売り手の従業員の雇用を維持できる大きなメリットがあります。後継者が見つからず、企業が廃業を選択すれば、従業員は職を失う可能性があります。廃業に伴って会社都合での解雇を余儀なくされると、従業員だけでなく生活を支える家族にとって、経済的に大きな影響を受けるでしょう。
M&Aでは、企業の経営を引き継ぐ買い手が、従業員の雇用も引き継ぐケースが一般的です。その結果、従業員はこれまでの職場で働き続け、唐突に失業するリスクを回避できます。また、買い手が経営基盤を持つ場合には、従業員にとって安定した職場環境が提供されることも少なくありません。
さらに、従業員の雇用が守られることで、取引先との関係性や顧客との信頼関係も維持されます。事業全体の安定性が確保されるだけでなく、企業を取り巻く多くの家族の生活を守ることにもつながります。
M&Aは、企業の存続を目的とするだけでなく、企業で働く人々の生活基盤を支える重要な手段です。
創業者利益を確保できる
創業者は、M&Aの活用によって、まとまった利益を確保できます。M&Aは株式譲渡されるケースが多いため、株式の譲渡代金は株主が直接受け取れます。特に中小企業では、株式の大半を経営者(オーナー)が保有しているケースが一般的です。そのため、企業を譲渡することで、経営者はその対価としてまとまった額を現金で受け取れます。
また、創業者利益は、経営者にとって引退後の生活資金や新規事業の立ち上げ資金として活用できるだけでなく、人生の次のステージに向けた安心材料ともなります。
このように、M&Aは、経営者にとって事業の存続を確保しつつ、自分の将来にも備えられる有効な手段です。
個人の債務保証から解放される
企業が金融機関から融資を受ける際、中小企業では経営者個人が債務の保証人になることが一般的です。経営者自身が会社の借入金に対して責任を負い、経営が悪化した場合には個人資産が差し押さえられるリスクを伴います。そのため、経営者にとって精神的にも経済的にも大きな負担となることが少なくありません。
しかし、M&Aで企業を他社に譲渡し、経営権を引き継ぐことによって、現経営者は債務保証の責任を免れます。
事業承継型M&Aをするメリット(買い手)
売り手だけでなく、買い手にもさまざまなメリットがあります。買い手が受けられる主なメリットは、以下のとおりです。
人材を確保できる
- 技術やノウハウを承継・獲得できる
- 新規事業へ投資・進出できる
それぞれのメリットについて解説します。
人材を確保できる
買い手は、M&Aの活用によって、人材を効率的に確保できるメリットがあります。
新しく人材を採用する場合、多くの時間やコストがかかることが一般的です。事業承継型M&Aでは売り手がすでに抱えている人材をそのまま獲得できるため、時間とコストの負担を軽減できます。特に、売り手が専門的なスキルを持つ従業員や経験豊富な経営陣を抱えている場合、M&Aを通じて人材を一度に確保できる点は大きなメリットです。
また、売り手が地域や業界で築いてきたネームバリューやブランド力が、買い手の知名度を高め、新たな人材の採用を容易にする効果も期待できます。さらに、既存の人材が持つノウハウや経験を活用することで、買い手は事業の運営や拡大をスムーズに進められます。
このように、M&Aは、売り手の人材を活かしながら、買い手の競争力を高める重要な手段です。人的資源を最大限に活用し、企業の発展につなげるための有効な選択肢と言えるでしょう。
技術やノウハウを承継・獲得できる
M&Aを活用することで、買い手は売り手が持つ貴重な技術やノウハウを効率的に取得できます。新規事業を始める場合や市場での競争力を強化したい場合には、専門的な知識や高度な技術が必要不可欠です。一から事業を始めるには多くの時間とコストがかかりますが、M&Aを通じて既存の技術やノウハウを直接承継することで、大幅な効率化が図れます。
また、技術やノウハウだけでなく、それらに付随する特許や商標などの権利や業務に必要な許認可の引き継ぎも可能です。その結果、事業運営に必要な基盤が整い、スムーズに新たな事業領域へ参入できるようになります。また、既に実績のある技術やノウハウを活用することで、競争優位性を短期間で高められます。
このように、M&Aは買い手にとって、既存の事業基盤を活かしながらさらなる事業の発展を目指すための効果的な手段です。技術やノウハウを取得することで、企業は新たな競争力を獲得し、成長を加速できます。
新規事業へ投資・進出できる
売り手はM&Aの活用で新規事業への投資や進出をスムーズにします。M&Aで取得する事業は、売り手がすでに収益化しているケースが多く、ゼロから事業を立ち上げるよりも効率的です。そのため、買い手は買収後の収益性や資金回収の見込みを具体的に立てやすく、リスクを抑えながら迅速な事業展開ができます。
また、M&Aによって獲得した既存の事業リソースやノウハウを活用することで、買収した事業を軸に新規市場の開拓や関連事業への拡張が期待できます。さらに、買収する事業がすでに確立された顧客基盤や信頼関係を持っている場合、その強みを引き継ぎながら事業展開を進められる点も大きなメリットです。その結果、新規事業のスタートアップにかかる時間やコストを削減し、競争力のあるポジションを迅速に確立できます。
このように、既存の収益基盤を活かしながら、新規事業へ投資・進出できるため、M&Aは買い手にとって成長戦略の一環として効果的です。
事業承継型M&Aをする2つの注意点
M&Aを活用することでさまざまなメリットを受けられる反面、注意点などもあります。売り手にあるM&Aの主なデメリットや注意点は以下の2点です。
- 希望条件に合った事業承継先を自力では見つけにくい
- 利害関係者へしっかりと説明する必要がある
それぞれ詳しく解説します。
希望条件に合った事業承継先を自力では見つけにくい
M&Aを活用する場合、売り手にとって、希望条件に合った買い手を自力で見つけることは容易ではありません。事業を継続しながら、従業員の雇用維持や価格面などの希望条件を満たす事業承継先を探し、交渉を進めるには多大な労力と時間を要します。
事業承継先を自力で見つけるのに時間がかかるという課題を解決するためには、M&A仲介会社や専門家のサポートを受けることが不可欠です。信頼できる仲介会社であれば、売り手の条件やニーズに合致した買い手を探し出し、交渉や契約締結までのプロセスをスムーズに進めるためにサポートしてくれます。
このように、M&Aを成功させるためには、M&A仲介会社などの適切なパートナーを選び、専門的な知識とネットワークを活用することが求められます。
経験豊富なM&Aのプロが、上場企業・中堅中小企業、あらゆる規模・業界の経営課題解決に向けて、二人三脚で丁寧にサポートいたします。
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利害関係者へしっかりと説明する必要がある
M&Aを進める際、売り手は従業員や取引先などの利害関係者に対してしっかりと説明しなければいけません。説明が不十分だと、従業員のモチベーションが低下したり、取引先との信頼関係が崩れたりするリスクがあります。そのため、適切なタイミングで誠実に情報を共有し、関係者が安心できる環境を整えることが重要です。
従業員に対しては、事業承継の基本的な内容から丁寧に説明し、不安や疑問に対してしっかり向き合う姿勢が大切です。M&A後も「今までどおり働けること」を伝えることで、従業員の不安を和らげ、企業全体の安定性を保てます。
また、取引先や顧客に対しては、「事業が継続されること」や「サービスの品質が変わらないこと」を説明することで、M&A後も信頼を築いたまま、ビジネスを続けられるでしょう。
M&Aの詳細は契約締結後に開示されるケースが一般的ですが、発表のタイミングや表現には細心の注意が必要です。例えば、幹部社員などの関係者と事前に調整することで、利害関係者の混乱を防ぎ、スムーズに移行できます。
売り手がM&Aの適性を確認するための目安 M&Aを成功させるには、自社が買い手にとって魅力的であるかどうかを事前に確認することが重要です。
売り手にとってM&Aの適性があるのかどうかを確認するための主な目安は以下のとおりです。
- 売上高
- 利益
- 従業員数
- 組織
- ブランド力・技術力
- 取引先数
売上高や利益が安定しているかどうかは重要な指標です。赤字経営が続く場合は買い手が損失を補填するリスクを抱えるため、黒字経営を維持することで買収意欲を高められます。
また、社長や経営者一族が日常業務の大部分を担っている企業は、買収後の運営が難しくなることがあるため、従業員が主体的に事業を運営し、経営者が意思決定のみに関与する体制が整っている必要があります。
その他にも、他社が模倣できない独自の技術やノウハウやブランド力は、買い手にとって高い価値があります。このように自社の強みを明確にすることで、M&Aの成功が期待できます。
日本M&Aセンターでは、10,000社を超える買い手候補企業へヒアリングした買収ニーズを基に、高い精度で買い手候補となる企業をご提案いたします。入力は3項目のみ!そのままお問い合わせも可能です。
事業承継型M&Aの事例
多くの企業は事業承継や成長戦略などの目的で事業承継型M&Aを活用し、会社の存続や成長を実現させています。ここでは、実際に日本M&Aセンターがご支援したお客様の事例をご紹介します。
老舗温麺メーカーがM&Aで医薬品卸売会社に譲渡|株式会社きちみ製麺
課題 | M&A後 |
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後継者不在 | ・引き続き自社の個性を活かしながら事業を展開している ・DX化による業務改善を行っている |
株式会社きちみ製麺(宮城県白石市)は、同市の郷土麺である白石温麺(しろいしうーめん)の製造業を120年以上営んできました。同社は後継者の不在が課題でしたが、事業承継の手法としてM&Aを活用しました。譲渡先として選んだのは、ジェネリック医薬品の卸売業を営む八戸東和薬品株式会社(青森県八戸市)です。
親族に会社の後を継ぐ意思があまりありませんでした。
異業種の発想で会社を発展させてくれることが買い手へ求める条件でしたが、DX化や業務効率化のノウハウが豊富にある会社とM&Aを実現させることで、製造・品質管理から商品開発の領域まで業務改善が着実に進んでいます。
相手企業に望む条件を明確化することで、自社の強みや個性を引き継いでくれる買い手を見つけ出せた事例です。
将来の廃業を取りやめてM&Aで体制を整備|株式会社ハチロ
課題 | M&A後 |
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後継者不在/外部環境の変化 | ・譲渡先への経営相談で意思決定がスムーズになった ・経営者候補を外部から採用できた |
株式会社ハチロは、北海道留萌市の地元地域に根差した建築設備の管工事業を営む会社です。創業者の父から事業を受け継いだものの、政府や地方自治体による公共事業の大幅削減で厳しい事業環境にあったことと、親族に会社を継ぐ意思がなかったことが大きな課題でした。
社長は廃業するしか選択肢がないと考えていました。しかし、従業員の完全雇用・技術者の確保・取引先の継続・事務所や機材の引き継ぎを前提条件とし、異業種も含め広範囲から探した結果、管工事を手がける三洋興熱株式会社(北海道帯広市)へ株式譲渡することになりました。
M&Aを活用した結果、買い手の尽力で後継者が入社し、オーナー自身は社長から決定権のある立場の会長になりました。事業承継としてM&Aを活用し、後継者の不在を解決した事例です。
廃業せずに会社を守れたM&Aの存在|有限会社青竜社塗装店
課題 | M&A後 |
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後継者不在/業績の低迷 | ・譲渡先の影響により営業力が向上した |
1948年の創業当時から地元地域に根差した住宅塗装業を手がけてきた青竜社塗装店(神奈川県大和市)は、2021年に従業員承継をして以来、営業力の課題に直面し業績が低下していました。
会長自身は、M&Aは大企業がするものであり、自分の会社の規模ではできないものだと思っていたようです。
しかし、熟考した結果、営業力を強みとする異業種のエス・プランニング株式会社(神奈川県横浜市)に譲渡しました。従業員には仕事内容や待遇が変わらないことを一人ひとりに直接伝えたことで安心してもらえたようです。
異業種とのM&Aで廃業を回避できた事例と言えるでしょう。
事業承継型M&Aのお悩みは日本M&Aセンターにご相談ください
近年では後継者の不在を理由にM&Aを活用する企業も増えています。親族や従業員だけでなく、第三者へ譲渡する事業承継型M&Aも有効な選択肢のひとつです。M&Aを検討している方は、仕組みやメリット・デメリットを把握したうえで進めましょう。
自分の会社を後世に残したいが後継者問題で悩んでいる方や、M&Aについての知識やノウハウがなくてどうしたらいいのかよくわからない方は、ぜひ一度日本M&Aセンターにご相談ください。
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