北海道企業の休廃業・倒産動向、最新トレンドについて

芳賀 優樹

日本M&Aセンター 北海道営業所 

株式会社東京商工リサーチ 北海道支社情報部長

監修

高崎慶

株式会社東京商工リサーチ 北海道支社 課長

業界別M&A
更新日:

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日本M&Aセンター北海道営業所の芳賀です。 本日は特別ゲストとして、世界最大の企業情報を提供し、企業の与信管理を支援している株式会社東京商工リサーチ(以下、TSR)北海道支社の立花様、高崎様をお招きし、北海道企業経営者に向けた「北海道企業の休廃業・倒産動向、最新トレンドについて」解説いただきます。

それでは早速、北海道にまつわる経営についてお話しします。

北海道内の休廃業と解散企業の動向について

北海道内の休廃業・解散企業数は2000年以降最多を更新

物価高や円安、ロシア・ウクライナ侵攻の長期化など、企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。北海道内の企業の休廃業・解散の状況はどうなっているのでしょうか。

「2023年の北海道内の休廃業・解散企業の件数は前年から20%増の2,780件で、集計を開始した2000年以降最多を更新しました。2021年に一時的に減少しましたが、2022年、2023年と再び増加に転じています」(TSR)

コロナに関連した金融支援や補助金などにより一時的に延命した企業もあったようですが、こうした支援措置の終了に伴って、休廃業・解散が増加しているようです。

産業別の休廃業・解散の傾向について

産業別、業歴別ではどうなっているのでしょう。

サービス業が多く、建設業を除く9つの産業で増加しています。業歴では、10年以上20年未満の企業が最も多くなっています。コロナ禍が長期化し業績回復が遅れるなかで、ライフステージ初期に事業継続を断念する企業が多いとみています」(TSR)

業歴と社長高齢化による事業承継の課題について

少子高齢化が進んでいますが、経営者の年齢に着目するとどうなっているのでしょうか。

「代表者の年齢別にみると、60代以上の経営者が84.7%を占めています。特に70代が43.1%と高く、後継者不在が原因で休廃業に至るケースもあるとみています」(TSR)

また、「70代以上の経営者が事業譲渡先を見つけられず、休廃業を選択せざるを得ないケースが増えている」という声もあります。TSRの立花氏は「親族、社内、M&Aといった第三者承継の選択肢を考える中で、なかなか譲渡先が見つからず、事業承継が進まないことも休廃業が増加する一因と考えられます」と話しています。

よくある例として以下のようなものがあるようです

「業歴がまだ浅く、創業社長が会社を引っ張っていく一方で、経営体制としては未熟な状態のため、第三者に譲渡できず休廃業に至るケースがあります。半面、組織体制がしっかりしている業歴の長い会社は、事業承継がスムーズに進む傾向があります」(TSR)

また、コロナ禍での補助金終了後、経営者が事業継続を断念するケースが増加していることにも触れておく必要があるのではないでしょうか。

北海道企業も注目!近年の倒産理由『人手不足倒産』

倒産の理由と人手不足、賃上げによる企業負担増加

倒産の理由として「人手不足」が注目されています。「2024年の倒産件数が前年を上回る見込み」(TSR)とされています。日本全体で人口が減少しており、労働人口の縮小は全国共通の課題ではないかと考えられます。

特に中小企業では賃上げが難しく、経営維持が困難な状況が続いています。最近のニュースでも話題に上がっている「賃上げ」に関して、高崎氏は「中小企業では賃上げが長期的な負担となり、業績に影響を与える可能性があります」と指摘しています。

産業別の人手不足状況について

「建設業、サービス業、運輸業で人手不足が顕著です。不足しているのは共通していますが、上記産業と比較すると不動産や製造業ではある程度の充足が見られています」(TSR)

2024年問題」が影響し、特に建設業や物流業界、医療業界で人手不足が深刻化しています。「人がいないと仕事ができないという状況が強まっている」(TSR)という話もあり、今後の対策が求められています。

中小企業の人材不足と賃上げの影響について

人材不足の課題を企業規模別で見ると、特に資本金1000万円未満の中小企業で人材不足が深刻というデータが出ています。「賃上げが長期的な負担となるだけでなく、新規採用が困難になるなど経営に影響を与えることが予測されます」(TSR)

どこまで賃上げが持続するのか、今後注視していく必要があります。立花氏は「利益が出ている企業は数%の賃上げを行い、社員に還元しているが、利益が出ていない企業は原資がない中で賃上げを行うことで、経営危機を早める恐れがあります」と話しています。

このように企業間の体力差による影響が拡がるのではないかという懸念もあります。

消費者だけでなく、働き手がいないと企業の存続が難しいことは変わりません。東京や本州に限らず、北海道内でも少子高齢化の中でますます激しくなるでしょう。高崎氏は「働き手となる人材の奪い合いが加速する可能性があります」と話しており、働きやすい環境を整えるなど、各企業は自社の魅力を伝える取り組みが必要になるのではないでしょうか。

外国人人材の活用・採用状況について

本州や九州ではコンビニなどで外国人人材の採用が進んでいるのが見受けられますが、北海道ではまだ少ないようです。「コロナや円安が外国人材の採用に影響を与えている」(TSR)と話しており、今後の動向が注目されています。

立花氏は「産業によっては外国人労働者に期待せざるを得ない状況が出てくる」と分析しています。外国人材の活用に積極的に取り組むことが課題となる企業も出てくるのではないでしょうか。現在の日本人比率や年齢構成から、ガラッと変わりほとんど外国人人材となる産業や企業も出てくるかもしれません。

後継者不足による倒産について

後継者不足が原因で倒産する企業が増加していると聞きます。 「2024年1月から10月の累計で全国では369件発生し、年間最多の500件を超える可能性があります」(TSR)

北海道企業の皆様も、後継者対策を早めに、そして事前に準備をしておきましょう

早めの相談を「後継者不在で倒産するケース」が増えている

「『後継者不在倒産』の一番の要因は、経営者の死亡や病気等の体調不良です。事業承継を希望していましたが、社長が高齢で準備が遅れ、実現する前に病気で亡くなるケースも多いと聞きます」(TSR) 事業承継のスタートが早ければ、こうはならなかったのではないでしょうか。

逆に「まだまだ若いし、元気に頑張れる」「まだまだ頑張ってもらわないと」という年齢を言い訳にする声もよくありますが、社長も社員も同様に、毎年年を重ねていきます。

経営者ご自身のお身体のことは後回しにされる会社が多いかもしれません。残される会社や社員、ご家族のためにも、早めに事業承継の準備を始めることが重要です。

事業承継のタイミングと準備について

社長の平均年齢が高くなっており、事業承継の準備が遅れるケースが多い中、事業承継のタイミングを考えていきましょう。

「2024年の北海道の社長の平均年齢は63.1歳で上昇傾向が続いています。また、経営者の年齢が高くなるほど、増収率が下がり、赤字企業が増えるというデータもあります」(TSR)

全国的には平均年齢は低い方に入るようですが、上記の平均年齢になる頃には、ある程度事業承継の方向性をつけておいた方が良いでしょう。

  1. 親族承継
  2. 社員承継
  3. M&A含む第三者承継

「事業承継の準備は早めに行うべき」だが、なぜ進まないのか

ご子息やご息女が継いでくれると思っていたが、首を縦に振らずに自分の道を行くケースもあると聞きます。大学で本州や東京に出て大きな会社に就職し、そのまま帰ってこないこともあるようです。

また、子供の数も昔より少なくなっています。同族承継ができなくなってきているのも、こうした理由があると思います。

本当に息子や娘が継いでくれるのか「家族会議」が大切

家族会議を開き、事業承継について話し合う機会を設けることが重要です。 お盆や年末年始など、帰省や集まるタイミングが減ってきているとは思いますが、ぜひ家族会議を行ってみましょう。

いざ話してみると、思いがけなかった創業者の想いや苦労話を聞くことができ、理解が深まります。「社長の考えって、ここまで広かったんだ。そういう選択肢や方向も考えていたんだ」といった気づきが得られるでしょう。

負債の引き継ぎとM&Aの有効性について

後継者不在の倒産において、社長の借金やローン(いわゆる負債)の引き継ぎが問題となるケースが多いです。「倒産した企業の負債額をみると、1億円未満が6割以上を占め、小規模な倒産が多く発生している状況に変化はありません」(TSR)と小規模零細企業の倒産が多くを占めています。

経営者保証がついているケースや、会社の借金をそのまま息子たちが継いでも良いのか、負債を引き継ぐことに抵抗があるため、事業を引き継ぎたくないというケースもあります。 社内の場合でも同様に、株の引き継ぎもあり、負債も引き受けてもらうことで社員承継に失敗するケースもあります。

M&Aでは、経営者の連帯保証も含めて事業を第三者へ引き継ぐことができます。

近年M&Aの割合も増えていることはニュースでもご存知かと思います。 企業の中には、このままのペースで行くと3年で経営破綻してしまう業績ペースの会社が、M&Aによってグループ入りし、スポンサーの力で業績を回復させたという例も見てきました。その決断やタイミングは非常に重要だと感じています。

北海道での事業承継の相談環境の整備について、少しでも悩んだらお気軽にご相談いただける環境作りが必要です。 私たちを含めて、経営者の皆様が相談しやすい環境を整備することが今後の課題です。

北海道における新設法人の増加について

2023年のデータによると、北海道の新設法人は4,838社で、2年ぶりに増加に転じており、過去最多の件数になっていると聞きます。

「新設法人の増加は、コロナ禍で事業がうまくいかなくなったが、そこで勤めていた社員が独立するケースなど、さまざまな理由が考えられます。全国的にも同様の傾向が見られ、多くの企業が新たに起業していると言えるでしょう」(TSR)

地域の活性化という意味でも新設法人が増えているということ自体は良いことではないでしょうか

北海道で起業しやすい業種について

「北海道内では建設業が最も多く、次いで不動産業が多いです。一人親方や営業が始めやすいことも要因でしょう。サービス業は小資本で始められるため、起業しやすい業種とされている一方で、製造業は設備投資が必要なため参入障壁が高くなっています」(TSR)

法人格としては株式会社が多く選ばれますが、合同会社に対する抵抗感も残っており、資本金が少なくても株式会社を選ぶケースがまだあるようです。

北海道の経済状況と課題について

北海道新幹線の札幌延伸やラピダス関連のニュース、エスコンフィールドの活況など、道央エリアでのニュースが多く見受けられます。

「建設業において新幹線の札幌延伸が先延ばしになったことが、工場の建設に人員を回せるという声や、新幹線の延期で急がなくてよくなったなど、道内経済にどう影響するかという議論はまだ続いていると思います。札幌の再開発ラッシュに対して、全道にその恩恵が行き渡っていないという声もあり、地方の格差が広がる可能性があるとの意見もあります」(TSR)

中央に人口が集中することで地方での人材確保が難しくなる傾向は続くでしょう。 地域経済の活性化のために、地方企業との統合や協力も一つの選択肢として引き続き考えていく必要があります。 一方で、立花氏は「地方の経済も十分に魅力を感じられている企業がある」とも話しており、悲観的にならずに地方の可能性を見出すことが重要ではないでしょうか。

いかがでしたでしょうか? 今後も北海道営業所から最新の業界情報をお届けさせて頂きます。

北海道のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。 買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。 また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

日本M&Aセンターでは、事業売却をはじめ、様々な手法のM&A・経営戦略を経験・実績豊富なチームがご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

芳賀 優樹

芳賀はが優樹まさき

日本M&Aセンター 北海道営業所 

北海道札幌市出身。札幌東高等学校・北海学園大学卒業。国内大手クレジットカード会社を経て日本M&Aセンターへ入社。 2022年1月 東京本社 成長戦略部へ配属。全国のミッドキャップ企業を中心とした成長戦略型M&A業務を経験。 2024年4月 北海道営業所へ配属。地元経済の存続と発展に貢献し、北海道の未来を創ることをパーパスとしている。

監修

立花たちばな克則かつのり

株式会社東京商工リサーチ 北海道支社情報部長

1992年株式会社東京商工リサーチに入社し、 2002年北見支店長、2004年から現職。

高崎たかさきけい

株式会社東京商工リサーチ 北海道支社 課長

2014年株式会社東京商工リサーチに入社し、 企業の信用調査業務に従事。

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