AIの発展とM&A
⽬次
- 1. AIによる業務変革
- 2. 日本国内でのAI技術を持つ企業との資本業務提携事例
- 3. 日本国外でのAI技術を持つ企業との資本業務提携事例
- 4. M&Aプロセスへの影響
- 5. M&AによるAI技術獲得のリスク
- 6. まとめ
- 6-1. 著者
皆さん、こんにちは。日本M&Aセンター IT業界専門チームの萩原友飛と申します。 私は、幼少期から将棋に打ち込んでおりました。私の少年時代は、棋書(将棋の本)を読んでの勉強がほとんどでしたが、10年ほど前からAIを使った勉強が主流となってきています。
AIでの研究をメインとして台頭してきている棋士には、ベテラン棋士はかなわないと言われるほど、AIでの研究は効率的かつハイレベルなものとなっています。
近年、AIの技術は急速に進化し、様々な産業や業界において革新的な変化をもたらしています。 AIの発展は、企業の競争力や成長戦略において重要な要素となっており、その一つの手段としてM&A(合併・買収)が活発に行われています。 本稿では、AIの発展とM&Aの関係について探求し、その影響と可能性について考察します。
AIによる業務変革
AI技術の進歩により、企業は新たなビジネスチャンスや競争優位性を追求する必要があります。AIは、大量のデータを高速かつ精度良く処理し、複雑なパターンや関係性を発見する能力を持っています。このようなAIの特性を活かすことで、企業は生産性の向上や業務の効率化、顧客体験の向上、新たなビジネスモデルの創出など、多くの利益を得ることができます。
AIの発展に伴い、企業はAI技術を獲得するための手段としてM&Aを選択するケースが増えています。 AI技術を持つ企業を買収することで、企業は技術力や専門知識を獲得し、市場競争において優位な立場を築くことができます。 また、AI技術を活用して新たなサービスや製品を開発することで、顧客ニーズの変化に対応し、競争力を維持することができます。
AI技術の獲得には、自社での研究開発や技術の育成に比べて時間とリソースが節約できるという利点があります。AI技術を持つ企業を買収することで、すでに確立された技術やノウハウを取り入れることができます。これにより、企業は迅速にAIの導入や活用を進めることができ、市場競争において先行者利益を得ることができます。
日本国内でのAI技術を持つ企業との資本業務提携事例
DX化やAIなどの先端技術の獲得のために資本業務提携をした事例として、株式会社ABEJAとヒューリック株式会社の事例をご紹介します。 株式会社ABEJAは、「ゆたかな世界を、実装する」を経営理念とし、「ABEJA Platform」を基盤に顧客企業の基幹業務のプロセスを変革し、ビジネスの継続的な収益成長の実現に伴走する「デジタルプラットフォーム事業」を展開しています。
ヒューリック株式会社は、『私たちは、お客さまの社会活動の基盤となる商品・サービスを提供することにより、永く「安心と信頼に満ちた社会」の実現に貢献します』を企業理念とし、東京都心にある不動産の保有賃貸業・投資開発事業を柱とする不動産会社です。
ヒューリック株式会社が展開するフレキシブルオフィス「Bizflex by HULIC」(以下「Bizflex」)にて利用しているプラットフォームアプリ(以下「Bizflexアプリ」)の機能を向上を目的としてDXに必要な工程をフルマネジメントサービスで請け負うデジタル版のEMSのノウハウを持っている株式会社ABEJAとの資本業務提携に踏み切りました。
今後の展開として、『株式会社ABEJAとヒューリック株式会社は、引き続き「Bizflexアプリ」の機能拡充・導入拡大を図るとともに、オフィスから得られる多様なデータを連携・活用し、テナントの利便性向上やオフィス運営効率化に資するサービスの開発や改善に活用してまいります。』と発表しています。
日本国外でのAI技術を持つ企業との資本業務提携事例
日本国外でのM&AによってAI技術を取り入れた事例としては、Google社によるDeepMind Technologies社の買収が挙げられます。
DeepMind Technologies社は、イギリスのスタートアップ企業であり、AI技術の研究開発に特化していました。 2014年にGoogle社がDeepMind Technologies社を買収したことで、AI分野におけるGoogle社の技術力と競争力が強化されました。
DeepMind Technologies社は、ディープラーニングを中心としたAI技術の開発に取り組んでおり、その成果は多くの分野で注目されていました。 特に、AlphaGoと呼ばれる囲碁のAIプログラムの開発によって世界的な注目を浴びました。
AlphaGoは、2016年に世界チャンピオンである李世乭(イ・セドル)に勝利し、囲碁界における大きな衝撃を与えました。
Google社はDeepMind Technologies社の買収により、AI技術を保有することで競争力を強化しました。 DeepMind Technologies社の研究成果を活用して、Google社は検索エンジンや音声認識、画像認識などの分野でAI技術を活用しています。
また、AlphaGoの成功を受けて、Google社はAI技術をゲーム以外の領域にも展開し、医療やエネルギーなどの分野での活用を進めています。
この事例からもわかるように、M&AによってAI技術を持つ企業を買収することで、企業は技術力や専門知識を獲得し、市場競争において優位な立場を築くことができます。 また、AI技術の研究成果を活用して新たなビジネス領域に進出することも可能です。
なお、Google社以外にも、Facebook社(現Meta社)がFace.comやOculus VR、Apple社がTuriやEmotient、Amazon社がKiva Systemsなど、AI技術を持つ企業を買収するケースが増えています。これらの企業は、AI技術を活用してソーシャルメディアの分析や仮想現実の開発、自動化された倉庫管理など、さまざまな分野で革新的なサービスや製品を提供しています。
M&AによってAI技術を取り入れた事例は、企業の競争力とイノベーション力を向上させるだけでなく、新たなビジネスチャンスを創出することも示しています。AI技術の進化とM&Aの関係は、今後もさらなる発展が期待されます。
M&Aプロセスへの影響
AIの発展により、M&Aのプロセスや戦略も変化しています。 AI技術を活用したデータ分析や予測モデルは、M&Aの意思決定を支援するための重要なツールとなっています。 AIは大量のデータを高速かつ精度良く処理することができるため、M&Aの評価やシナジーの予測、リスクの特定などに活用されています。
これにより、M&Aの成功率が向上し、より効果的な意思決定が可能となります。
M&AによるAI技術獲得のリスク
一方で、AIの発展とM&Aにはいくつかの課題やリスクも存在します。 まず、AI技術は急速に進化しているため、買収したAI企業の技術が陳腐化する可能性があります。 AIの技術は日々進歩しており、新たな手法やアルゴリズムが開発されています。そのため、買収後もAI技術の継続的な研究開発やアップデートが必要となります。
また、AI技術の特許や知的財産権の問題も重要なポイントです。AI技術を保有する企業が特許や著作権を適切に管理しているかどうかを確認する必要があります。 買収によって法的な問題が生じる可能性があるため、事前のデューデリジェンスが重要です。
さらに、AI技術の導入には高額な投資が必要となることも考慮すべきです。AIの開発や導入には、高度な専門知識や技術力、大量のデータ、高性能なコンピューティングリソースが必要です。これらの投資は企業にとって大きな負担となる可能性があります。
買収によってAI技術を獲得する場合、その負担を考慮し、リターンオンインベストメント(投資対効果)を慎重に評価する必要があります。
AIの発展とM&Aの関係は、単なる技術の獲得だけに留まりません。AI技術を持つ企業を買収することで、企業文化や組織の変革も促進されます。 AIの導入には、組織全体のデジタルトランスフォーメーションが必要となります。
AIの活用は、従来のビジネスプロセスや意思決定の方法に変革をもたらし、新たな働き方やビジネスモデルの構築を要求します。 M&AによるAI技術の獲得は、組織の変革を促進し、イノベーションの推進力となるでしょう。
まとめ
AIの発展とM&Aの関係は、今後も進化し続けることが予想されます。 AI技術はますます重要性を増し、企業の競争力や成長戦略において不可欠な要素となっています。
AI技術を保有する企業を買収することで、企業は技術力の強化や市場シェアの拡大、新たなビジネスチャンスの創出などを実現することができます。
しかしながら、AI技術の獲得には慎重な計画とリスク管理が必要です。 AIの発展とM&Aの関係を理解し、適切な戦略を構築することで、企業は未来のビジネス環境において成功を収めることができるでしょう。