2024年12月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

志賀 俊太

日本M&Aセンター業種特化1部/物流業界専門チーム

業界別M&A
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物流業界の2024年12月の公表M&A件数は10件

2024年12月における公表ベースでのM&A(合併・買収)は10件で、前年同月の6件と比較して4件の増加となった。
2024年は物流業界において多くの注目すべきM&Aが実行され、業界再編が大きく進展した年となった。

上場企業が買い手となる買収・資本参加3割

年間累計でみると2023年の物流業界におけるM&A件数が97件であったのに対し、2024年の実績は121件と2割以上の増加となった。

特に上場企業が買い手となる買収・資本参加が43件と3割超を占める結果となり、東京証券取引所による「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ改善要請」を背景として資本コストや株価を意識した経営戦略を示した。

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2024年物流業界は譲渡企業が大型化

もう一つ大きな特徴は買収対象となった譲渡企業の大型化が挙げられる。
MBO(経営陣による買収)とTOB(株式公開買付け)を含めると、5社の上場企業が株式の売却や上場廃止を発表した。

代表的な事例としては、ロジスティードによるアルプス物流の買収が挙げられるだろう。22年に米投資ファンドのKKRがロジスティードを買収した後、ロジスティードはアセット・ライト戦略を打ち出した。

物流センターの売却によりキャッシュをつくり、そのキャッシュをアルプス物流の買収資金に充てるという、歴史ある物流企業とファンドのタッグならではの戦略で、再上場に向けた企業価値の向上を図っている。

同様の狙いで、海外の投資ファンドが国内の大手物流企業を対象としたM&A戦略を打ち出してくることも考えられるため、大手物流企業といえども企業価値を向上させることが急務と言える。

中堅・中小の物流企業も、団塊の世代が全員後期高齢者となる「2025年問題」に直面する中で、依然として社会課題となっている後継者不在、より厳格化されるコンプライアンス(法令順守)など、多くの課題を解決するために能動的に情報を集めて業界の動向をウォッチしつつ、自社のポジショニングを検討していくことが重要だ。

日本M&Aセンターでは、事業売却をはじめ、様々な手法のM&A・経営戦略を経験・実績豊富なチームがご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

志賀 俊太

志賀しが  俊太しゅんた

日本M&Aセンター業種特化1部/物流業界専門チーム

1988年生まれ、東京都出身。明治大学政治経済学部卒業後、新卒で大手損害保険会社へ入社。大型トラックディーラーを担当し運送会社、バス会社向けの損害保険営業に従事した後、日本M&Aセンターに入社。現在は物流業界専門のM&Aコンサルタントとして年間300社を超える物流企業のM&A支援を行う。運行管理者資格保有(関東貨物第45840号)。

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