スノーピーク、MBO実施で非上場化へ
株式会社スノーピーク(7816) は、2024年2月20日開催の取締役会において、いわゆるマネジメント・バイアウト(MBO)の一環として行われる株式会社BCJ-80(以下「公開買付者」)による同社の普通株式に対する公開買付け(TOB)に関して、賛同の意見を表明するとともに、同社の株主に対して、本公開買付けへの応募を推奨することについて決議した。
なお、当該取締役会決議は、本公開買付け及びその後の一連の手続を経て同社株式が上場廃止となる予定であることを前提として行われたものである。
公開買付者は、Bain Capital Private Equity, LPが投資助言を行う投資ファンド及びそのグループ(以下、個別に又は総称して「ベインキャピタル」)により株式の全てを間接的に所有されている株式会社BCJ-79(以下「公開買付者親会社」)の完全子会社であり、対象者株式を所有し、対象者の事業活動を支配及び管理することを主たる目的として、2024年1月31日に設立された株式会社。なお、2月20日現在、ベインキャピタル、公開買付者及び公開買付者親会社は、対象者株式を所有していない。
【本公開買付けの実施を決定するに至った背景、目的】
スノーピークグループは、連結子会社15社及び持分法適用関連会社3社で構成されており、キャンプ用品を中心としたアウトドア製品、アパレル製品等の開発、製造及び販売を展開する。同社は、1958年7月に山井幸雄商店として設立された後、1996年12月に株式会社スノーピークに社名変更し、2014年12月に東京証券取引所マザーズ市場に上場、2015年12月に東京証券取引所市場第一部指定を受け、2022年4月4日の東京証券取引所の市場区分の変更に伴い、本日現在、東京証券取引所プライム市場に株式を上場している。
同社は主力として事業展開を行うアウトドア業界においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う行動制限下において高まっていたアウトドア・キャンプへの関心が、新型コロナウイルスの収束によって旅行等の多様なレジャーに向けられるようになり、アウトドア需要の高まりが一巡し、新型コロナウイルス感染拡大前の成長に戻ってきていると認識。更に、新興企業が参入しやすい市場環境であり、海外ローカルブランドや異業種(スポーツ用品、ホームセンター、アパレル等)企業の参入による競争激化の可能性がある中、2023年3月上旬、山井氏は、このような経営環境下は、事業の舵を大きく切って更なる成長に導く最適なタイミングであり、同社が飛躍し、企業価値を高めていくには、海外事業の一層の拡大やキャンプ用品関連事業という枠をも超えた事業の拡大が必要であると考えた。
そのためには、アウトドア文化が根付いている米国や欧州、オセアニアといった地域、及びキャンプを含むアウトドア文化が広く浸透しておらず、今後アウトドア分野の成長が期待できる中国を中心としたアジアパシフィック地域の海外需要を取り込んでいくことが不可欠であり、また、同社が既に事業を展開している米国、韓国、中国、台湾、欧州といった地域を中心に事業拡大を進めるとともに、迅速かつ戦略的な市場参入や効率性の観点からM&A等の手段を活用することも一案と考えられていた。
加えて、既存の体験型事業や「スノーピーク」のブランド戦略等については、シナジーが期待できるこれまでとは異なるビジネス領域をM&A等の手段も活用しながら取り込み発展させることが必須である。具体的なM&Aの対象としては、同社の企業理念である「The Snow Peak Way」(個々の主体性の尊重、自然指向、グローバル、イノベーション、ユーザー目線、地球への貢献、等を掲げる)と共通する理念・価値観やビジョン等を持つアウトドア関連用品のレンタル・リース、アクティビティ体験等のサービスを展開する企業等を想定しており、そのような企業を新たにグループに迎え入れることは、同社の成長を一段と加速させることにつながると見込まれる。
また、アクティビティを通じてユーザーのライフバリューを拡大させるという同社の基本的な考え方に沿っており、これまで築いてきたユーザーとのコミュニティの更なる強化や新規ユーザーのロイヤリティ向上に貢献できるような新規事業も検討されている。上記のように抜本的な変革、非連続的な成長を着実に推進するためには、これまで以上に機動的かつ積極的に必要な投資や経営施策を実行するとともに、優秀な人財を採用・確保していく必要がある。一方で、これらの施策を実行した際には、同社の中長期的な企業価値向上が期待できるものの、短期的には利益水準の低下、キャッシュ・フローの悪化等を招くおそれがある。
同社は上場会社であり、株主の利益に配慮した事業運営を行う必要があるため、株主に対して短期的には財務状況の悪化による株式の市場価格の下落といったマイナスの影響を及ぼす可能性のある施策を実施することは困難である。
そこで山井氏は、引き続き同社の経営に関与することを前提とし株式を非公開化した上で、機動的かつ柔軟な意思決定を可能とする株主と経営陣が一体となった強固かつ安定した新しい経営体制を構築し、当社の成長戦略・事業構造改革の実行及び事業の積極展開に取り組むことが最善の手段であるとの認識に至った。
また単独のリソースのみでは人財もノウハウも一定の限界があるものと認識しているとのことであり、同社の更なる成長に資する事業構造の変革及び企業価値向上を実現するためには、独自の経営努力に加え、外部の経営資源も活用することが有益であると考えた。
山井氏が、外部の経営資源のいかなる活用方法があるのかを含めて様々な戦略的オプションを検討している中、かねてより日本国内の投資先について調査・検討を行っていたベインキャピタルは、SMBC日興証券株式会社を介して山井氏との間で2023年5月中旬に面談の機会を得て、経営施策について幅広に意見交換を行った。
その後、山井氏は、ベインキャピタルが当社の事業に深い知見を有していることを認識し、引き続き意見交換を行うことが有用であると判断したことから、ベインキャピタルとの間で、同社の経営施策の方向性及び非公開化を含めた様々な資本政策についての協議を継続する方針とした。
山井氏とベインキャピタルは、2023年5月中旬から7月下旬にかけて、アウトドア用品業界の事業環境、当該環境を踏まえた経営施策の方向性、ベインキャピタルが実施する当社への経営支援として想定される内容及び最適な資本構成について、複数回にわたる意見交換を行った。
なお、山井氏は、ベインキャピタルとの協議と並行して、2023年4月上旬にSMBC日興証券を介して他のプライベート・エクイティ・ファンド1社とも複数回にわたって面談を行い、経営政策の方向性及び非公開化を含めた資本政策について提案を受けたものの、当該提案の内容、変化のスピードが速い事業環境の下で経営課題への早急な対応の必要性に鑑み、新たな第三者が同社の事業についての理解を深め、信頼関係を構築する時間的猶予は限られていること、また上場会社としての情報管理の観点からオークションプロセスによるパートナーの選定が難しいことを踏まえ、同社の今後の事業を成長させるためのサポートを受けるパートナーとしては、ベインキャピタルがより適切であると2023年8月下旬に判断した。
【本公開買付け後の経営方針】
ベインキャピタルは、本取引によりスノーピークを非公開化した後はコンサルティング・アプローチを活用した成長戦略・事業構造変革の設計・遂行や人的支援等を通じ、全面的に支援する意向があり、過去の投資実績の経験等を踏まえ、以下のような支援が可能であると考えている。
マーケティング強化による顧客のLTV向上
国内においては、既にロイヤリティの高い岩盤顧客を有している中で、更なる接点創出及びロイヤリティ向上を目的として、定期的な購買意欲の醸成・増進のための顧客属性・購買情報・商品データ等に応じたパーソナライズドマーケティングや、デジタル広告やSNS・オンラインコミュニティを活用したオムニチャネル戦略推進等のデジタル化を進めていく。
加えて、エンドユーザーだけでなく、リテーラーに向けたプロモーションや関係強化を図ることで、よりブランドの世界観を伝えられるような環境を整備していくことで、新規顧客の獲得から維持・ロイヤリティ向上までの流れを強化していくことを想定している。
海外においては、潜在顧客からの認知度の低さが課題であるため、ブランドの世界観を伝える旗艦店出店とマーケティング、認知度向上のための販売チャネル開拓やブランド訴求施策強化を推進していく。
中長期の成長に向けた人財及び組織基盤の強化
ベインキャピタルは、スノーピークの既存経営陣の継続を前提に投資を行うことを想定している。一方で、今後企業価値を最大化させる基盤として、戦略を迅速に実行していくための人財補強も必要に応じて重要になってくると考えている。
M&A及びPMIの支援
ベインキャピタルは、これまで国内において31件の投資実績で培ったノウハウ、知見、ネットワークを最大限活用し、M&A案件を支援する際には投資先の選定及びアプローチ、デュー・ディリジェンスの実行及び今後の成長計画の具体化、オペレーションとの統合に向けたPMI及び効率的なマネジメント体制の構築といった一連のプロセスを一気通貫で支援することを想定している。また、海外におけるM&Aについての支援も想定している。
本取引は、いわゆるマネジメント・バイアウト(MBO)に該当し、山井氏は本公開買付け成立後も継続して同社の代表取締役社長として経営にあたる。
ベインキャピタルは、本取引成立後の経営方針として、スノーピークに取締役を数名派遣することを検討しているが、現在の経営体制を原則維持することを予定しており、現経営陣に引き続き運営に主導的な役割を果たしてもらうことを想定している。
また、ベインキャピタルは、現時点では、本取引後、従業員の雇用につきましては現状どおりの雇用を維持することを予定しており、同社の役職員の給与・賞与等の削減やリストラクチャリング、大規模な人事異動等は想定していない。
【本公開買付けの概要】
公開買付者 株式会社BCJ-80
対象者 株式会社スノーピーク
公開買付期間 2024年2月21日(水曜日)から2024年4月12日(金曜日)まで(36営業日)
公開買付価格 普通株式1株につき、金1,250円
買付予定株数 27,250,863(株)
買付予定株数の下限 14,539,700(株)
買付予定株数の上限 設定せず
【決済の開始日】
2024年4月19日(金曜日)
【公開買付代理人】
SMBC日興証券株式会社