Think Owner's by Nihon M&A Center Inc.

竹内直樹の『成長戦略型M&Aの幕開け』

Think Owner'sプロジェクトリーダー竹内による、日々オーナー様と向き合う中で感じたこと、ぜひお伝えしたいこと、オーナー様の悩みなどを綴る。

地元の名士であるオーナーの覚悟

2018年3月14日

「Think Owner's」プロジェクトリーダーの竹内です。
先日このコラムで書いた、ある地方の会社に会いに行ってきました。(参考:経営者にとって「株価より大事なこと」

前回お会いしてから、1ヶ月ぶりでしょうか。
オーナーである会長とゆっくり話す機会がありました。

創業から約50年。グループ会社それぞれに歴史があります。
先代が創業してしばらくは、日本の安定成長期。会長の会社も着実に成長していたそうです。 。

「当時はずっと成長していたんだ。事業を拡大して、海外にも進出して、他社も買収した。銀行の勧めもあって、IPOも目指した。このままずっと成長していくものだと思っていたよ。」

グループの基盤はその頃に作られたそうです。

「でもね、ちょうど僕が社長になった頃からだったかな、環境が大きく変わってしまった。低価格商品がでてきて、価格破壊が起きたんだ。あっという間だったよ、画期的な商品だったからね。」

最初にお会いしてから半年経ちますが、初めて聞くお話です。

「いままでの価格では全然売れなくなった。でも、みんなで一丸となって、原価を下げることに成功したんだ。 何とか価格競争でも勝負できるようになった。」

いいものをできるだけ安く。日本のものづくりは本当にすごいですよね。

「さすがですね」と、私が言いかけたのと同時でした。
「それなのに、今度は海外企業と戦わなければならなくなった。海外製品は全然レベルが違うよ…。」

-先代の頃はよかったのに、自分になってからはなかなか上手くいかない

中堅・中小企業に迫りくる壁

多くの経営者の方が、同じ経験をされていると思います。それだけ、今、日本の中堅・中小企業は厳しい環境に置かれています。

「いままで自分なりにがんばってきた。立て直せるところは手を入れてきたつもりだ。いまはまだ、収益もある程度確保できている。でも、ここからどうしたらいいのか、自分だけでは分からなくなってきた。このままじゃだめなことだけは、分かっている。」

―呼吸おいて、会長は続けられました。

「あらゆる可能性を検討したい。全ての選択肢を教えてほしい。」
「でも、ひとつだけ約束してもらいたいことがある。従業員と取引先は絶対に守りたい。」

グループの離職率は、地域の平均よりもかなり低いそうです。
それだけ従業員を大事にされてきたのでしょう。

「従業員の方のためにも、会社を成長させて、給与を上げていかなきゃならないですよね。住宅購入や子供の教育、これからは介護にもお金がかかりますし。」と私が話をしたところ、会長から意外な言葉を返されました。

「いや違うんだよ、竹内さん。」

-地方の従業員に安心してもらうために、とにかく生き残らねば

「確かに会社の成長も大事だけど、地方では成長よりも安定のほうが重要なんだ。」
「もちろん、給料が上がるに越したことはない。 東京と違って、地方では“毎月必ず決まった日に給料がもらえる安心感”が大事なんだ。地方の生活はそこまでお金がかからないからね。でも、その一方で、ずっと働いていけるかどうか、ずっと給料をもらっていけるかどうか、に不安を感じる人たちも多い。私は従業員に安心を与えてあげたい。」

イメージ

いままで都市圏を中心に仕事をしてきた私にとって、全く予想外の言葉でした。

会長はこう続けました。

「従業員が安心して働くためには、会社が生き残らなければならないし、そのためには成長していかなければならない。…分かっているんだ。 だから今、あらゆる可能性を検討したい。全ての選択肢を教えてほしい。」 と。

「ゴルフだったり、釣りだったり、趣味が合えば地方は住みやすいよ。竹内さんも考えてみたら?今すぐにとは言わないけれど。」
会長はそうおっしゃってくれましたが、私の移住はまだまだ先になりそうです。