株式譲渡(M&A)所得vs給与所得
⽬次
- 1. 株式譲渡であれば所得税の税率は固定!
- 2. M&Aの方が手取りが多いという結果
- 3. 給与所得との比較詳細
- 3-1. 前提
- 3-2.
- 3-3. 1)役員給与を7年得た際の手取概算
- 3-4. 2)株式譲渡で会社を第三者に引き継いだ場合
- 4. 最後に
- 4-1. 著者
株式譲渡であれば所得税の税率は固定!
中小企業の社長の皆さまとM&Aのお話をしていると「私はオーナーとして会社から毎年3千万円の役員給与を得ている。もしも会社が2億円で売れたとしても、7年足らずで同じくらいの給与が得られるので会社を売ることにあまりメリットを感じない」とおっしゃる方がかなりいらっしゃいます。 掛け算で考えればその通りのようにも思えますが、実際はそれぞれの税金インパクトを考慮する必要があります。
M&Aの方が手取りが多いという結果
下記に詳しい前提と試算を挙げていますが、これによれば、株式譲渡の方が約2,000万円ほど手残りが多いという結果になりました。これは、給与所得と株式譲渡所得では適用される税率が異なることが大きな理由です。 給与所得は「総合課税」という形で所得税を計算します。所得が増えるほど税率が大きくなり、最高で約55%になります(所得税・住民税合計)。下記ケースですと所得税・住民税あわせて約50%となっています。 一方、株式譲渡所得は「分離課税」という形で所得税を計算します。所得の大きさに関わらず税率は一定で、所得税・住民税あわせて約20%となっています。 また、役員給与は数年にわたって受け取っていくことになるのに対して、株式譲渡はその実行のタイミングで対価が全て入ってくるという違いもあります。入った対価を運用できる点や、昨今の厳しい経済環境を考慮すると、株式譲渡の優位性を感じていただけるのではないでしょうか。
給与所得との比較詳細
前提
- 法人形態:株式会社
- スキーム:株式譲渡
- 株 主:社長でもあるオーナー個人が100%保有
- 資本金額:1,000万円
- 株 価:2億円(※仲介手数料等の諸費用は考慮しない)
- オーナーの役員給与:年3,000万円 (※給与所得控除200万円、基礎控除等の所得控除300万円と仮定)
1)役員給与を7年得た際の手取概算
a
給与所得
3,000万-200万
2,800万円
b
課税所得
a-300万
2,500万円
c
所得税
b×40%-280万
720万円
d
住民税
b×10%
250万円
e
税額計
c+d
970万円
f
手取イメージ
3,000万-e
2,030万円
●7年分の給与所得での手取イメージ f×7年→1億4,210万円
※上記は復興税を考慮せず
2)株式譲渡で会社を第三者に引き継いだ場合
a
株式譲渡対価
2億円
b
株式取得価額
1,000万円
c
株式譲渡所得
a-b
1億9,000万円
d
所得税・住民税
c×20%
3,800万円
f
手取イメージ
a-d
1億6,200万円
●株式譲渡所得(M&A)での手取イメージ 1億6,200万円
最後に
中小企業がM&Aに取り組む際には事業承継問題の解決を一番の目的とすることがケースとしては多いわけですが、せっかくであれば今までひたむきにお仕事に取り組んでこられた証を何らかの形で残せれば何よりですね。そのひとつとして、M&Aによりオーナーの皆さまのお手許に相応の対価を残すお手伝いができればと考え、日々業務に邁進しております。
日本M&Aセンター コーポレートアドバイザー室 雙木 達也(なみき・たつや、税理士)
コーポレートアドバイザー室とは? 日本M&Aセンターには、コーポレートアドバイザー室という士業専門チームがあります。CAと呼ばれるこの部署のメンバーは、公認会計士や税理士などの資格者のみが所属しており、M&Aコンサルタントが担当する譲渡希望の顧客企業1社1社についてすべて担当CAが必ずいます。M&Aを進める中で税務・会計面でスキーム構築などのサポートを行い、顧客にとっての最適解、すべての関係者にとっての効果の最大公約数化を目指すことをミッションとしています。法務室と並んで、いわばM&Aコンサルタントのアドバイザー的立場なのですが、もちろん直接お客様のもとへも訪問する、ミドルオフィスの位置づけです。 日本M&Aセンターでは、お客様の安心と業務品質向上のため、このようなチーム体制でサービスの提供を行っています。