PBR(株価純資産倍率)とは?PERとの違い、目安や見方を解説
PBR(株価純資産倍率)とは?
PBRは「Price Book-value Ratio」の略称で、企業の純資産と、株式の時価の差を評価し、現在の株価が割安か、割高かを調べる際に用いられます。日本語では株価純資産倍率と訳されます。
具外的には企業の株価をBPS(1株当たり純資産)で割って求めます。単位は「倍」です。
※BPS=株価÷発行済株式総数
この記事のポイント
- PBR(株価純資産倍率)が高いと株価が純資産に対して割高、低いと割安とされるが、業種によって解釈が異なるため注意が必要。
- PBRは企業の成長性や市場状況に影響されるため、長期的な視点での判断が重要である。
- 他の財務指標や業績と併せて総合的に評価し、正確な財務情報を基に分析することが求められる。
⽬次
PBRから何がわかる?
PBR は、株式の時価が1株あたりの純資産の何倍にあたるか、がわかるため、市場での評価の高さや経営状況、成長性を見定める際にも役立ちます。
一般的に、 PBRが高いほど株価が純資産に対して高く評価されている(割高) ことを表し、 PBRが低いほど、株価が純資産に対して低く評価されている(割安) ことを示します。
しかし、ベンチャー企業などは純資産が少ないためにPBRが高い傾向にあるなど、「PBRが高い=株価が割高」と判断できるものではないため、注意が必要です。
PERとの違い
PBRと関連のある指標に PER(Price Earnings Ratio:株価収益率) があります。
PERは、「株価が1株当たりの純利益(EPS)に対して、何倍になっているか」を示す指標です。
PBRもPERも、株価の妥当性を判断する際に用いられますが、PBRが「企業の資産価値」を評価の基準とするのに対し、PERは「企業の収益性」を評価の基準にする点で異なります。
PBRが注目される背景
東京証券取引所は、市場での評価が低く、PBR1倍割れが日本企業の約半数を占めていることを問題視し、2023年3月に上場企業約3300社に対し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しました。このことを機に、多くの企業がPBRに注目するようになりました。
その後2024年1月には「株価の改善に向けた具体策」を開示した企業のリストを公表するなど、現在各企業の改善策の開示・実行が進み、多くの企業でPBRは改善傾向が見られるものの、欧米の上場企業と比べて依然と低い状態にあります。
PBRの目安とは?
PBRは業種や市場の状況によって異なりますが、一般的な傾向としては以下のような目安があります。
PBRが1倍未満の場合
いわゆる「PBR1倍割れ」であり、株価が純資産に対して割安とされていることを意味します。これは、市場が企業の将来の収益性や成長性に対して懐疑的な見方をしている可能性があります。(ただし、企業の業績や将来の成長性を考慮する必要があります。)
■PBRの平均が1倍未満の業種(プライム市場 2024年7月時点)
業種 | PBRの平均 (プライム市場) |
---|---|
銀行業 | 0.5 |
パルプ・紙 | 0.6 |
鉱業 | 0.7 |
鉄鋼 | 0.7 |
電気・ガス業 | 0.7 |
非鉄金属 | 0.8 |
金属製品 | 0.8 |
輸送用機器 | 0.8 |
海運業 | 0.8 |
石油・石炭製品 | 0.9 |
PBRが1倍の場合
株価と会社の資産価値が等しく、株価が適正価格、妥当な評価判断されます。
■PBRの平均が1倍の業種(プライム市場 2024年7月時点)
業種 | PBRの平均 (プライム市場) |
---|---|
建設業 | 1 |
化学 | 1 |
陸運業 | 1 |
卸売業 | 1 |
繊維製品 | 1 |
ゴム製品 | 1 |
倉庫・運輸関連業 | 1 |
PBRが1倍以上の場合
株価が純資産に対して割高とされていることを示します。これは、市場が企業の将来の収益性や成長性に対して楽観的な見方をしている可能性があります。
■PBRの平均が1倍以上の業種(プライム市場 2024年7月時点)
業種 | PBRの平均 (プライム市場) |
---|---|
空運業 | 1.2 |
その他製品 | 1.3 |
食料品 | 1.3 |
ガラス・土石製品 | 1.4 |
医薬品 | 1.4 |
機械 | 1.6 |
電気機器 | 1.7 |
小売業 | 1.8 |
精密機器 | 1.8 |
情報・通信業 | 2.2 |
前述の通り、業種や業界によって数値が異なるため、PBRを見る際は同じ業種や業界の企業と比較することが大事です。
※平均PBRの出典:日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧」より抜粋
PBRの計算例
以下X社のケースを例に、PBRを算出してみましょう。
株価:2,000円
発行済株式総数:1万株
純資産:2,500万円
株価:10万円
BPSは【純資産 2500万円÷ 発行済株式数 1万株】で2,500円です。
よってX社のPBRは【株価 2,000円÷BPS 2,500円】で0.8倍と計算できます。
このように純資産と並べてみて、株価がどの程度かを見ることで、会社の純資産と並べてみた株価やM&Aの算定の妥当性を妥当か推測できます。
BPSは直前の期末の決算で報告された純資産額を基準とするため、リアルタイムで会社が持つ純資産額とは乖離する点に注意が必要です。
PBRを見る際の注意点
PBRを見る際には、以下の注意点に留意することが重要です。
業種や企業の特性を考慮する
PBRは業種や企業の特性によって異なる解釈が必要です。例えば、成長性が高いテクノロジー企業は、PBRが高くなる傾向があります。
一方で、成熟した産業や不景気に弱い業界では、PBRが低い場合があります。そのため、PBRを比較する際には同業他社や業界全体の傾向を考慮する必要があります。
財務情報の正確性を確認する
PBRは企業の財務情報に基づいて計算されるため、正確な情報が必要です。財務報告書や企業の公開情報を確認し、信頼性の高いデータを使用することが重要です。
また、特定の会計処理の影響や非財務要素も考慮する必要があります。
PBRだけで判断しない
PBRは単一の指標であり、企業の評価を完全に示すものではありません。他の財務指標や業績、業界の動向などと併せて総合的に判断することが重要です。
PBRだけで判断すると、企業の実態や将来の成長性を見落とす可能性があります。
長期的な視点を持つ
PBRは瞬時の市場評価を示す指標ですが、長期的な視点で判断することが重要です。企業の成長性や収益性の改善が将来的に反映される可能性があるため、PBRは単年度の数値だけでなく、時間の経過と共にどのように変化しているか、将来の見通しや戦略にも目を向ける必要があります。
経済や市場の状況を考慮する
PBRは株価と純資産の関係を示す指標ですが、経済や市場の状況も考慮する必要があります。景気や金融政策の変動、市場の需給バランスなどがPBRに影響を与える可能性があります。
これらの要素を考慮しながらPBRを分析することが重要です。
以上の注意点を踏まえて、PBRを適切に解釈し、企業の評価や投資判断に活用することが求められます。
終わりに
以上、PBRの概要についてご紹介しました。PBRは株価と純資産の関係を示す指標であり、企業の評価や投資判断に活用されます。
ただし、業種や企業の特性、財務情報の正確性、他の指標との総合的な判断が必要です。長期的な視点と経済・市場の状況を考慮し、PBRを適切に解釈しましょう。