株式移転とは?メリット、手続きの流れ、税務をわかりやすく解説
組織再編を行うスキームの1つに株式移転があります。株式移転による持株会社化には様々なメリットがあり、多くの企業で導入されています。本記事では、株式移転のメリットやデメリット、手続きの流れなどを解説します。
この記事のポイント
- 株式移転は、既存会社が新設の持株会社に全株式を取得させる組織再編手法である。
- 株式移転のメリットには、既存会社の独立性を保つことができる点、多額の資金を準備する必要がない点などがある。
- 注意点には、手続きの複雑さや反対株主からの買取請求、株価下落リスクなどが挙げられる。
⽬次
※本記事では親会社、子会社について税法・税務に関連する箇所では「親法人」「子法人」と表記します。
株式移転とは?
株式移転とは「1又は2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させること(会社法2条32号)」と定義される、組織再編手法の1つです。
株式の移動により、既存会社は完全子会社となり、その株式を取得した新設の会社は完全親会社(持株会社)となります。
完全親会社は子会社の株式を受け取る対価として、自社の株式を子会社の株主(既存会社の旧株主)に交付します。その株式数は、株式交換比率によって算出されるため、それまで所有していた株式数と異なる場合があります。
このように株式移転を通じて、既存会社の旧株主は新設持株会社の株主となります。
株式移転により持株会社化しグループ経営を行うことで、経営効率化や組織再編の迅速化などを図ります。
株式移転の種類
株式移転では完全子会社が1社の場合(単独株式移転)と、複数社の場合(共同株式移転)、2つの場合があります。 「単独株式移転」「共同株式移転」それぞれについて見ていきます。
単独株式移転
単独株式移転とは、1社が単独で株式移転を行い、自社の全株式を新設会社に取得させて完全親子会社を形成する方法です。 単独株式移転の場合は、持株会社の下に事業会社が存在します。
一般的には「所有と経営の分離」を目的に、複数事業を保有する1社が純粋持株会社の機能を持つ親会社を新設し、各事業別に法人化する、持株会社化の移行プロセスの一環として行われます。
共同株式移転
共同株式移転とは、2つ以上の会社が共同で株式移転を行い、複数社の全株式を新設する会社に取得させて完全親子会社の企業グループを形成する方法です。
共同株式移転の場合は、各事業会社が持株会社の下に並列に存在します。そのため、各事業会社が対等な立場であることが強調される経営統合と言えます。
共同株式移転が行われる際には、いずれかの会社を取得企業、それ以外の会社を被取得企業として処理を行う必要があります。 取得企業の判断については後述の通り、「企業結合に関する会計基準」で詳細に定められています。
株式移転と株式交換の違い
株式移転と混同されやすい手法に「株式交換」があります。
株式交換とは「株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させること(会社法2条32号)」と定義される、組織再編手法の1つです。
株式交換は、子会社になる会社が、ほかの既存の会社に全ての株式を取得させて対価を得て、完全親子会社関係を成立させます。 株式移転とは、親会社が「既存の会社」か「新設の会社」か、という点で大きく異なります。
また、株式交換は既存の会社同士が行うため、買収を目的とする場合に用いられることも少なくありません。
株式交換の詳細については関連記事をご覧ください。
株式移転のメリット
株式移転の主なメリットは、以下の通りです。
既存会社の独立性を保つことができる
既存会社が完全子会社となる場合、法人格はそのまま維持されます。そのため、原則として各種契約や許認可などに影響が及ぶことはなく、組織体制にも変化はありません。
また、株主構成以外に大きな変化は見られないため、従業員の不安やモチベーション低下を回避しやすくなる、という点がメリットに挙げられます。
多額の資金を準備する必要がない
株式譲渡など他のスキームにより組織再編を行う場合、通常は多額の買収資金が必要になります。 金額によっては会社のキャッシュフローを悪化させる可能性もあるため、状況によっては諦めざるを得ないケースもあります。
しかし、株式移転では買収の対価を現金でなく新設会社の株式で支払います。株式を対価にすることでコストを抑制して組織再編できる点は大きなメリットとして挙げられます。
税制適格であれば税務上の優遇措置を受けられる
株式移転による組織再編は、税務上「適格株式移転」と「非適格株式移転」の2つに分類されます。
「適格株式移転」の要件を満たす場合、株式移転の完全子法人が保有する一定の資産は、時価評価されないため譲渡損益は発生せず、課税関係が生じることはありません。したがって、法人税などは課税されません。
しかし、要件を満たさず「非適格株式移転」になると、一定の資産が帳簿価額でなく、その時点での時価で評価されるため、帳簿価額と時価との差額がある場合に譲渡損益が生じ、評価益に対し法人税などが課税されます。
このように適格要件を満たして「適格株式移転」になれば、税務上の特例措置によって課税が発生しない点が大きなメリットです。適格要件は、支配関係(企業間の資本関係)の状況により異なりますが、対価としての支払いが株式のみであること、移転後も支配関係が継続されることなどがあります。
完全子法人の旧株主も同様に、税制適格要件を満たせば、株式移転に伴い課税が生じることはありません。
債権者保護手続が不要になる場合がある
株式移転により、完全子会社の法人格が維持され、その債務が完全親会社など他の会社に引き継がれないことから、株式を対価として実行する場合には債権者保護手続が不要となります。
ただし、完全親会社が完全子法人の新株予約権付社債を承継する場合には、完全子法人において債権者保護手続が必要(※)となります。
※根拠条文:会社法 第810条1項3号 債権者の異議
株式移転の注意点・デメリット
株式移転の主な注意点・デメリットは、以下の通りです。
複雑な手続きが必要
株式移転は、会社法によって必要な手続きが定められています。
例えば ・(共同株式移転の場合は)株式移転計画を各会社が共同で作成すること ・株式移転計画を承認させるために取締役会を開催すること
などが求められます(会社法362条・772条・773条)。
他にも様々な規定があり、複雑な手続きを必要とする点がデメリットとして挙げられます。
反対株主からの買取請求への対応
株式移転は、株主の異動によって完全親子会社を成立させる組織再編の手法です。
もし株式移転に反対する株主が出てきた場合、株主の権利を保護するために、適正な株価で株式の買取請求に応じなければなりません(会社法806条)。また、新株予約権についても同様の規定があります(会社法808条・809条)。
したがって、株価や株式数によっては相応の資金が必要となる点やスケジュールにも留意しましょう。
株価下落リスクがある
株式移転によって子会社間でシナジーが生じ、グループ全体の収益が上がれば、上場企業においては株価の上昇が期待できます。
しかし、子会社の収益が悪化すると、親会社である持株会社の株価も影響されて下落する可能性があります。このように、子会社の業績が親会社の株価に影響する点に注意が必要です。
株主構成の変化による影響・リスクがある
例えば複数の法人で共同株式移転を行う場合、それぞれの株主が、同じ持株会社の株主になります。そのため、状況によっては株主間で経営方針をめぐり意見が対立する可能性も考えられます。
このように株式移転によって株主構成が変化し、対立が生まれるなど将来的に生じる影響やリスクに留意しましょう。
株式移転の手続き・流れ
株式移転に関する各種手続きは、主に以下の8つの流れに沿って行われます。
①株式移転計画の作成
株式移転をする場合は、移転手続きなどを行う前に株式移転計画を作成しなければなりません。
株式移転計画では、主に以下の内容を定めます。
□ 完全親会社の定款に定める事項
□ 完全親会社の設立時の役員
□ 完全親会社の資本金及び資本準備金の額
□ 完全子会社の株主へ交付される株式数やその算定方法及び割り当てに関する事項
□ 完全子会社の株主へ交付される社債や新株予約権などの割り当てに関する事項
②事前開示書類の備置
完全親会社は、以下に定める日のうち最も早い日を起点に、完全親会社の設立から6ヶ月後までの間、一定の事項を記載した書面などを本店に備え置かなければなりません。
・反対株主の株式買取請求に係る通知又は公告のいずれか早い日
・新株予約権買取請求に係る通知又は公告のいずれか早い日
・債権者異議手続の催告又は公告のいずれか早い日
・上記手続きが不要な場合、計画書作成の日から2週間を経過した日
また完全子会社は、株式移転の効力が発生した日から6ヶ月を経過するまで当該書面を備え置きます。なお、開示する書面とは、主に以下の通りです。
□ 株式移転の対価の相当性に関する事項
□ 計算書類などに関する事項
□ 効力発生日における完全親会社の債務の履行の見込みに関する事項
③債権者保護手続
株式移転などの組織再編に対して異議がある場合は、会社に対して一定期間であれば申し立てができる旨を官報で公告するとともに、債権者に個別に催告を完全親会社の成立日1ヶ月前までに行います。
なお定款において、公告方法を官報でなく日刊新聞紙または電子公告で行うことが定められている場合は、官報と定款で定めた公告方法を行えば、債権者への個別催告を省くことができます。
④株券提出
完全子会社が株券を発行している場合、当該完全子会社は完全親会社の成立日までに株券を提出しなければならない旨を、成立日の1か月前までに官報で公告します。
⑤株式・新株予約権買取請求
株式移転などの組織再編に反対する株主または新株予約権者は、株式移転の効力が発生する親会社の成立日の20日前から前日までの間に、自己が所有する株式または新株予約権を、その発行会社に対して買い取り請求することができます。
⑥株主総会決議
株式移転を行うには、原則として株式移転の効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議で承認を得ることが必要です。
なお特別決議を成立させるためには、議決権の過半数を有する株主が出席した上で、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要となります。 ただし特別決議の定足数については、定款変更を行えば3分の1以上にすることも可能です。
⑦株式移転効力発生
株式移転の登記は、完全親会社の設立登記と完全子会社の変更登記を同時に行います。一般的に完全子会社が変更登記を行うことはあまり見られませんが、完全子会社の新株予約権を完全親会社が承継する場合は、完全子会社の登記申請(新株予約権の消滅による登記)が必要になるケースがあります。
なお、新会社設立の登記が行われた日が株式移転の効力発生日となります。
⑧事後開示
完全親会社と完全子会社の双方は、株式移転の効力発生日以後、遅滞なく法務省令で定められている書類を作成し、効力発生日から6ヶ月間会社の本店に備え置くことが定められています。
上記の手続きに加え、一定規模以上の企業や金融商品取引法の適用を受ける企業の場合、各種届出が必要となるため、組織再編に詳しく高度な専門知識と実務経験を有した専門家の協力を得ながら進めることをお勧めします。
株式移転の対価と企業評価
株式移転の対価として支払われるのは、原則として完全親法人となる持株会社が発行する株式です。
単独株式移転の場合は、完全子法人の株主がそのまま完全親法人の株主となるため、株式移転比率を決定するに当たって株価(時価)を算定する必要はなく、株式移転対価が問題となるケースは多くありません。
しかし共同株式移転の場合は、完全子法人の株主に対して割り当てられる完全親法人の株式の比率(株式移転比率)を、各子会社の株価(時価)を基に算定する必要があります。
その際、完全子法人の企業価値を反映した公正な数値である必要があるため、マーケットアプローチやインカムアプローチ、コストアプローチなどの手法によって、合理的に算定された企業価値評価を行います。
株式移転における取得企業と被取得企業
一般的にM&Aの会計処理では、対価を支払う側が「取得企業」とされますが、株式で対価を払う株式移転では、必ずしも株式を交付した企業が取得企業にならない場合があります。
20. 主な対価の種類が株式(出資を含む。以下同じ。)である企業結合の場合には、通常、当該株式を交付する企業(結合企業)が取得企業となる。ただし、必ずしも株式を交付した企業が取得企業にならないとき(逆取得)もあるため、対価の種類が株式である場合の取得企業の決定にあたっては、次のような要素を総合的に勘案しなければならない。
上述の「要素」として主なものは以下の通りです(企業会計基準第21号第21項) 。 ・相対的な議決権比率の大きさ- ・最も大きな議決権比率を有する株主の存在- ・取締役等を選解任できる株主の存在- ・取締役会等の構成- ・株式の交換条件- ・企業の相対的な規模(総資産額、売上高、純利益など)-
また、結合当事企業が3社以上の場合、これらに加えていずれの企業が企業結合を最初に提案したか、についても考慮する必要があります(企業会計基準第21号第22項)。
株式移転の税務処理①
株式移転が税制適格と認められた場合(適格株式移転)は、税務上、非適格の場合と異なり、一定の資産(※)についての時価評価の規定は適用されないため、帳簿価額で引き継がれます。したがって、課税関係は生じません。
一方、株式移転が税制非適格と認められた場合(非適格株式移転)は、税務上、完全子法人の資産について時価評価されます。
そのため、完全子法人の一定の資産の含み損益が株式移転によって実現し、課税関係が生じます。
※時価評価を行う資産は、固定資産、土地、有価証券、金銭債権及び繰延資産(帳簿価額1,000万円未満のもの、等を除く。以下、同様)となります(法人税法62条の9、法人税法施行令123条の11) 。
株式移転の税務処理②
ここでは株式移転で発生する税金を完全子法人、完全親法人、完全子法人の旧株主、それぞれの視点で解説します。
完全子法人の税務
完全子法人の税金は、株式移転が「適格」か「非適格」かによって大きく分かれます。
適格株式移転の要件を満たしている場合、完全子法人の一定の資産は帳簿価格で引き継がれるため課税されません。
しかし非適格株式移転の場合、完全子会社の資産が時価で引き継がれるため、時価>簿価となる場合、その差額である評価益に対し法人税が課税されます。
完全親法人の税務
完全親法人には、株式移転が適格・非適格にかかわらず、課税関係は生じません。
完全子法人の旧株主の税務
完全親法人株式のみを受け取る場合、完全子法人の旧株主には課税が生じません。(完全親法人の株式の取得原価は、完全子法人株式の帳簿価額を引き継ぎます。)
しかし完全親法人株式以外の金銭などを対価として受け取るならば、譲渡損益に対して所得税の課税がなされます。(完全親法人の株式の取得原価は、株式移転時の時価となります。)
株式移転の税務(具体例)
株式移転を行った場合の税務の具体例を完全子法人、完全親法人、完全子法人の旧株主、それぞれのケースでご紹介します。
完全子法人の税務
完全子法人の税務は、適格株式移転と非適格株式移転で異なります。
適格株式移転の場合 完全子法人が保有する一定の資産に対し、時価評価の規定は適用されず、資産の含み損益は実現しないため、含み損益に対する課税が繰り延べられます。つまりこのケースでは、課税関係は生じません。
非適格株式移転の場合 完全子法人の一定の資産について、時価評価を行います。時価評価に係る損益については、法人の所得に影響します。
完全親法人の税務
完全親法人の税務も、株式移転が適格か非適格かによって異なります。
以下の条件で株式移転を行った場合、どのような税務処理を行うのかを確認してみましょう。
・A社、B社で共同株式移転を行う
・A社株式は、簿価1(時価2)で発行済株式数200株
・B社株式は、簿価2(時価3)で発行済株式数200株
適格株式移転の場合 適格株式移転では、旧株主保有時の直前の帳簿価格をそのまま引き継ぐため、
A社株式は 簿価1×200株=200 B社株式は 簿価2×200株=400
となります。
適格株式移転の場合、完全親法人側の税務は以下の通りです。
株式移転により増加する資本金等の額のうち資本金の額は、会社法その他の法令の規程等により決まります。
資本金以外の資本金等の額は、法人税法施行令8条1項11号に従い処理します。 上記では簡便的にまとめて払込資本として記載しています。(なお、完全子法人の株主が50人未満か50人以上かで完全子法人株式の取得価額の算定方法は異なります。)
非適格株式移転の場合 非適格株式移転では、完全子法人株式の時価を取得価額とします。 したがって、
A社株式は 時価2×200株=400 B社株式は 時価3×200株=600
となります。
非適格株式移転の場合、完全親法人側の税務は以下の通りです。
株式移転により増加する資本金等の額は適格株式移転と同様の規定となります。 上記では簡便的にまとめて払込資本として記載しています。いずれの場合も課税は発生しません。
完全子法人の旧株主の税務
完全子法人の旧株主の税務は、適格株式移転と非適格株式移転で異なります。
適格株式移転の場合 投資が継続しているものと扱われ、完全親法人の株式の取得原価(譲渡対価)は、完全子法人の帳簿価額(譲渡原価)となります。
この譲渡対価と譲渡原価が同額となり、株式譲渡損益は発生せず課税は発生しません。
例えば、完全親会社をA社、完全子会社をB社とし、B社株式(旧株式)の帳簿価額を100とした際の税務仕訳は下記の通りです。
非適格株式移転の場合 完全子法人の株主の処理として、次のように譲渡損益が生じるケース、生じないケースがあります。
【譲渡損益が生じるケース】 金銭等、株式以外の交付対価を受けた際に、完全子法人の株式を時価で譲渡したものとして譲渡損益が生じます。
例えば、完全親法人をA社、完全子法人をB社とし、A社株式の時価を150、B社株式(旧株式)の帳簿価額を100と、交付対価の現金を30、とした際の税務仕訳は下記となります。
【譲渡損益が生じないケース】 株式のみの交付を受けた場合においては、旧株式の帳簿価額が譲渡対価の額とされ譲渡損益は生じず、税務処理は適格株式移転の時と同様です。
株式移転を用いたM&A事例
株式移転を用いた事例を3つ紹介します。
エア・ドゥとソラシドエアの事例(共同株式移転による共同持株会社設立)
エア・ドゥとソラシドエアの両社は、共同株式移転による共同持株会社の設立を行いました。
「北海道の翼」であるエア・ドゥと「九州・沖縄の翼」であるソラシドエアの両社は、地域に根差した航空会社として発展していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって状況が大きく変化し、大きな変革を求められていたことが背景にあります。
そこで新たな付加価値の提供と、両社が有する経営資源を最大限に活かし、スケールメリットを発揮させることを目的として行われたのが、共同株式移転による共同持株会社の設立です。設立にあたっては、2022年6月の株主総会の承認を経て、同年10月3日に共同持株会社「株式会社リージョナルプラスウイングス」が設立されました。
参考:両社の共同リリース(2022年5月30日付)https://www.airdo.jp/corporate/release/2022/release-8867.html
日本通運の事例(単独株式移転による持株会社への移行)
日本における総合物流事業最大手の日本通運は、単独株式移転による純粋持株会社体制への移行を決断しました。労働力不足や働き方改革法案の成立を受け、グループ経営を強化し、管理体制を高度化するには持株会社体制へ移行していくことが最善であると判断されたためです。
持株会社への移行は、2021年6月の株主総会の特別決議で承認を得た後、同年12月に上場を廃止し、翌2022年1月4日に新たに設立した完全親会社「NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社」が上場することとなりました。 参考:日本通運リリース(2021年1月29日付)https://www.nipponexpress-holdings.com/ja/press/2021/images/20210129-1-1.pdf
終わりに
持株会社を設立し、その下にグループ企業を並列に配置する株式移転は、各事業会社間に上下関係が生まれないため各社の裁量がある程度自由に行える上に、経営の効率化やリスクの分散、グループ内の組織再編の迅速化など様々なメリットが期待できます。
また適格株式移転であれば完全子法人の一定の資は時価評価を行わないため、基本的には法人税などの課税関係も生じません。
しかし、企業グループのホールディングス化はグループ企業各社の自立性が強くなる反面、グループ全体の統率を執るのが難しくなる懸念もあり、グループ企業間の連携には十分に気を配らなければなりません。
また税制適格要件を満たすか否かの判断は高度な税務知識が必要となるため、株式移転を検討する際には、組織再編に詳しく高度な専門知識と実務経験を有した専門家の協力を得ながら進めることをお勧めします。