製造業×運輸業!未上場企業同士の、業界を超えたM&A成長戦略

中川 隼

著者

中川隼

日本M&Aセンター成長戦略部(2022年8月時点)

M&A全般
更新日:

⽬次

[非表示]

こんにちは。 「売るか買うかではない どこと組んで成長するか」の成長戦略型M&Aを推進する、成長戦略室 室長の中川隼です。 中小中堅企業はなぜM&Aをするのかというと、いまだに「後継者不足」「事業承継のため」といったイメージが強くありますが、それが全てではありません。

成長戦略

中堅中小企業も成長のためにM&Aを活用する時代

近年益々増えてきているのは、譲渡譲受け企業双方が「自社の成長のためパートナーを探す」というパターンです。結果として、同時に後継者問題が解決されることも多くあります。 その背景にあるのは、人口減少による市場縮小と人材不足です。 今までと同じ経営努力では、去年と同じ業績を維持できない。生き残るために成長し続けなければならない。そこに企業の規模は関係ありません。 「成長したい」という動機のもと、それを実現する手段を検討していくことになります。

岐阜県の成長戦略型M&A事例

ところで皆さまは、岐阜県のことをどのくらいご存知でしょうか。 中部地方に位置し面積の広さで全国7位のこの県は、名古屋からのアクセスも良く、美しい合掌造り集落で有名な白川郷など豊かな自然に恵まれています。特に盛んなのは製造業で、繊維・衣類、一般機械、金属製品などは、出荷額ベースで全国1位を誇ります。 岐阜は私にとって縁の深い場所です。M&Aコンサルタントとして活動し始めてからというのもの、岐阜県の企業のオーナー経営者様にお会いするため、毎月のように通っています。 先日、その岐阜で、非常に興味深いM&Aがありました。

(M&A概要) 岐阜のプラスチック製品製造・販売を行う企業が、関東の運輸業を買収

2018年2月20日、プラスチック製品製造・販売の岐阜プラスチック工業(岐阜県岐阜市)は、運輸業の橋爪運輸(群馬県伊勢崎市)の全株式を取得し買収した。 関東地域を中心に事業を手掛ける橋爪運輸は1997年設立、売上高15億円、トラック保有台数70台、従業員数154人。 岐阜プラスチック工業は、橋爪運輸の有する包装資材の配送ノウハウに加え、統合管理システム導入によりデータの一元管理を図る。事務処理の平準化、車輌別の運行管理などのIT技術の充実を図る。 ※岐阜プラスチック工業 ニュース&トピックスより要約

成長戦略型M&Aの観点からの考察

今回のM&A、両社にとってどのようなメリット・シナジーがあるのでしょうか。 譲受け企業にとっては、上記のリリースにもあるように、 1.包装資材の配送ノウハウを自社製品への活用 2.車輌別の運行管理のIT技術の充実 が期待できます。 異業種の仕組み・ノウハウを導入することが、自社の強みにつながることは多くあります。 群馬県の会社を譲受けたことにより、関東進出への足掛かりとなる面もあるでしょう。 譲渡企業にとってはどうでしょうか。 物流業全体をみると、深刻な人材不足と宅配便運賃の値上げにより、全体的な物流コストの上昇が続き、それによる物流効率化の必要性はますます高まっています。 それを裏付けるように、物流プラットフォームの台頭など、テクノロジーによる変化が活発です。 一方で、リーマンショック以降はM&Aによる業界再編も活発に行われています。業界の特性上新規顧客の開拓が難しいため、拡販よりもM&Aの方が早期に規模の拡大を図れるためです。 橋爪運輸にとっても、岐阜プラスチック工業の傘下にはいることで、以下の効果が期待できます。 1.安定的で保証された受注 2.プラスチック製品輸送への専門化 「おんぶにだっこ」ではなく、「お互いに補完しあい、成長できる関係」。これからの両社の成長が楽しみです。

売るか買うかではない どこと組んで成長するか

日々、M&Aで自社を譲渡したい、会社を譲り受けたい全国のオーナー経営者様とお会いしています。 皆さん一様におっしゃるのは、「会社を成長させたい」ということです。 一人でも多くの経営者様の想いに応えていくことが、私のミッションだと感じています。 次回は、「成長手段を考える オーガニック成長かレバレッジ成長か」についてお話できればと思います。 「M&A=勝つか負けるか」の時代は終わりました。これからは「どこと組んで成長するか」を考える時代です。 詳しいお話をご希望の方は是非、一度お問合せください。

著者

中川 隼

中川なかがわ つばさ

日本M&Aセンター成長戦略部(2022年8月時点)

大手金融機関にて中堅中小企業向けソリューションビジネスに従事した後、2011年日本M&Aセンター入社。累計80件以上のM&A成約に関与し、担当した業種は土木、建設、飲食、旅館、不動産、ビルメンテナンスと多岐に亘る。「成長戦略型M&A」の推進者として、全国各地でセミナー・相談会を行うと同時に、2020年にはかつてM&A実行を支援した企業の社外取締役に就任し経営に参画。財務面にかぎらず経営の本質的課題を見極め、改善策の検討実行までを支援している。

この記事に関連するタグ

「成長戦略」に関連するコラム

年商10億円以上の企業経営者200人に聞いた「引継ぎプラン」

年商10億円以上の企業経営者200人に聞いた「引継ぎプラン」

日本を支える中堅企業の経営者に一斉アンケートを実施国内の全企業の99%を占める「中小企業」。その中でも「中堅」規模の企業は、各地域経済をけん引する、あるいはその高いポテンシャルを秘めた存在です。日本M&Aセンターは、こうした中堅クラスの企業の経営者ご自身のこれからや、会社の今後についてのお考えをお聞きする、「経営者意識調査」を実施しました。経営や承継に関わる課題や、M&Aの活用等に関しての問いに選

現地法人とは?海外支店や駐在員事務所との違い、メリットやデメリットを解説

経営・ビジネス
現地法人とは?海外支店や駐在員事務所との違い、メリットやデメリットを解説

少子高齢化に伴う人口減少が進み、国内市場は徐々に縮小する中、海外に新たな市場を求め進出する企業は増えています。新たな販路を求めて海外進出を行う際に考えなければいけないのが、どのような形態でビジネスをスタートするかです。海外進出をするには、現地法人だけでなく、支店や駐在員事務所の設立などさまざまな選択肢があります。本記事では、現地法人の特徴を整理したうえで、支店や駐在員事務所との違いやメリット・デメ

【広報誌「MAVITA」Vol.3より】M&Aを戦略の中心に置く成長企業の現在地

広報室だより
【広報誌「MAVITA」Vol.3より】M&Aを戦略の中心に置く成長企業の現在地

「世界一のエンタメ企業」をビジョンに掲げ躍進を続けるGENDA。推進力の中心にM&A戦略があります。その狙いとは?日本M&Aセンターが発刊する広報誌「MAVITA」Vol.3で掲載した、M&Aを戦略の柱に躍進を続けるエンターテイメント企業GENDAの申真衣社長と、サーチファンドの仕組みを利用して経営者となり、事業承継後2年目にして売上高を2倍に伸ばしGENDAにグループインしたアレスカンパニーの大

著者インタビュー!『社長の決断から始まる 企業の最高戦略M&A』

広報室だより
著者インタビュー!『社長の決断から始まる 企業の最高戦略M&A』

日本M&Aセンターは、書籍『社長の決断から始まる企業の最高戦略M&A』を東洋経済新報社より発売しました。著者の柴田彰さんに、発刊の経緯と本書に込めた想いを聞きました。M&Aしかないとわかっていても、踏み出せない理由――本書は、経営者が押さえておくべき経営戦略の一つとして、M&Aの特に「譲渡」に特化した書籍です。なぜこのテーマで本を出そうと思われたのですか。日本には二つの大きな課題があります。一つ目

事業拡大とは?方法やメリット・デメリット、企業事例をわかりやすく解説

経営・ビジネス
事業拡大とは?方法やメリット・デメリット、企業事例をわかりやすく解説

市場環境の変化に柔軟に対応し、事業拡大を計画・実行に移すことが、これからの企業経営に求められています。本記事では、事業拡大の方法やメリットやデメリット、成功するためのポイントを紹介します。事業拡大とは?事業拡大は、企業が市場や業界で成長するために行う戦略の一つです。これは、売上や利益を増やすために、新たな市場や顧客層に進出したり、既存の製品やサービスを拡大したりすることを意味します。事業拡大の方法

コングロマリットとは?メリットや企業事例を紹介

M&A全般
コングロマリットとは?メリットや企業事例を紹介

不透明な時代を生き抜くための戦略として、コングロマリット型経営は注目されており、国内ではその動きが活発化しています。本記事では、コングロマリットの特徴やメリットなどについて解説していきます。コングロマリットとはコングロマリット(conglomerate)とは、異なる業種や産業に属する複数の企業が経営統合を行い、1つの大きな企業グループを形成することを指します。コングロマリットは、さまざまな事業分野

「成長戦略」に関連するM&Aニュース

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース