【不動産業界向け】リフォーム会社のM&A iOffice 代表取締役 五十棲剛史氏レポート

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日本M&Aセンター不動産業界チームです。
株式会社iOffice 代表取締役 五十棲 剛史 氏による不動産業界、特にリフォーム会社の領域に関してレポートをお届けします。

執筆者紹介 株式会社iOffice 代表取締役 五十棲 剛史 氏

京都生まれ。大手百貨店、コンサルティング会社を経て、1994年船井総合研究所入社。入社以来クライアントの業績アップ技術には長けており、「行列のできるコンサルタント」として、船井総研全コンサルタントの中で、11年連続コンサルタント実績NO.1など不滅の記録を数々樹立。その後、船井総研ホールディングスの事業開発取締役として、アドテク等の新規事業を手掛け全て成功に導いている。2018年3月24日退任後、「世界に通用するスタートアップ企業をつくる専門に支援をしたい」という思いで、iOfficeをスタート。

これから10年で、リフォーム会社は半減する!?

米国はスマートホームに本腰

1月7〜11日に、米国ラスベガスで開催されていたCES19(家電見本市)を視察してきました。
私が今回感じたのは、スマートホーム関連の多さです。
CESでは消費者向けのハードウェアメーカーがどうしても目立ちます。

やはりサムソン、LGといった韓国系、そしてハイセンス、TCLといった日本人には知名度の低い家電メーカーに加え、百度、アリババというプラットフォームと思っていたソフトウェア会社までスマートホームに本腰になっているのです。

ところで皆さんは、スマートホームと言ってどんなイメージを浮かべるでしょうか?

アマゾンエコーや、グーグルホームといったAIスピーカーに声を掛けて、「今日の天気」とか、「聞きたい音楽」を聞く機械を思い浮かべる人もいるでしょう。または家庭用の人型ロボットやペット型ロボットなど、金持ちか、マニアの高額おもちゃ程度に思っている人も少なくはないでしょう。

少し最新の技術等に興味のある人でも、例えば、テレビや冷蔵庫などの家電製品とかスマートロックと言われる鍵がインターネットに繋がっていくいわゆるIoT製品というイメージを持っておられる方もいるでしょう。

何れにせよ、スマートホームと言っても自分たちの日々の業務とは程遠い、関係がないと思っておられる人が多いのではないでしょうか?

同業ではなく、巨大IT企業がライバルになる

しかしこれは大いなる間違いです。

CESでは、あらゆるハード、ソフトウェアにGoogleやAmazonが組み込まれていることをまざまざと見せつけられ、それは恐怖さえ覚えました。

私は、毎年のようにこうした世界の最新の状況を知るために、いろんな視察に出かけ、海外の企業とコミュニケーションを取っています。そこで外国人が日本の経営者に描くイメージは、「先が読めていない人が多い」「イノベーションに消極的」という話です。

問題は、この話を聞いて自分ことのように受け止めている経営者が実に少ないこと。それが何かいうと、今まで競争相手といえば、例えばリフォーム会社でしたら、せいぜい同業者か、または工務店や住宅メーカーなどの建築会社、または不動産業や家電量販やホームセンターでした。

しかし、これから競合といえば、想像もしていないIT企業それもプラットホームの会社になる可能性があります。

これは何を意味しているかというと、リフォームの市場をプラットフォーム企業、すなわちこれまで想像もしていなかった巨大IT企業が、市場の多くの牛耳る可能性が出てきたことです。

私の予想では、これから10年で従来型のリフォーム会社の半数以上が存続できないと見ています。

企業価値を高める戦略とは

企業価値を高める戦略とは(1)

中小企業の経営者にとって、自社の評価は“経営者自身の評価”といっても過言ではありません。
評価項目として代表的なものが、以下のような項目です。

  • 売上高
  • 利益
  • 企業価値

売上高や利益は自社の決算書で確認できますから、経営者であれば当然目にする機会も多いと思います。しかし企業価値は、顧問税理士等に算定してもらわない限り、目にする機会は少ないのではないでしょうか。

私も以前コンサルティングをしていた頃、経営者からよくこんな相談を受けました。

「自分の会社を今借りに売るとしたら、いくらで売れるのか?」と。

ところがこの企業価値、M&Aを考えるなら高くしたいのですが、親族に事業承継をするなら相続税問題があるので下げたほうが承継しやすいのです。

当時、私は変な仕組みだと思っていました(案の定、最近事業承継税制ができ、株式の承継は限りなく無税でできることになっています)。

ですのでここでは、「企業価値を高めることが経営者の大きな評価」という視点で話を展開したいと思います。

この企業価値、上場企業やベンチャーでは、時価総額とニアリーイコールで語られます。細かく見れば違う点も多いのですが、ここではニアリーイコール企業価値(時価総額)ということにします。

ところで会社には、売上の割に企業価値(時価総額)が高くなる事業・ビジネスモデルと、そうでない事業・ビジネスモデルがあるのをご存知でしょうか?

この建設不動産業界大手3社の数字を見てみましょう。

  • 積水ハウス   売上高 2.16兆円 時価総額 1.24兆円
  • 大林組      売上高 1.90兆円 時価総額 8,030億円
  • 三菱地所    売上高 1.19兆円 時価総額 2.76兆円

積水ハウスや大林組の主力事業である建設業は、一つの案件が非常に大きく、受託型の売り切りビジネスです。対して、三菱地所の最大の収益源はいわゆるビル等の継続型の家賃収入です。

例えばゼネコンは、今年大きなビルの建設の受注をしても、来年も同じような受注を獲得できるかはわかりません。一方、家賃収入が継続的に得られるビジネスは数年単位での契約が多く、その期間は収益が安定します。

前者をフロービジネスといい、後者をストックビジネスと言います。企業価値(時価総額)はストックビジネスの方が高く評価される傾向があります。

リフォーム事業は、多くが受託型のフロービジネスですから、一般的には売上の割に、企業価値は低く評価されがちです。

企業価値を高める戦略とは(2)

私は経営者の仕事は大きく分けて3つあると思います。

  • (1)売上(粗利)を継続的に上昇させること
  • (2)企業価値(時価総額)をアップすること
  • (3)優秀な後継者に会社を承継すること
    です。

この中で、⑴と⑶について意識している経営者は多いのですが、⑵の企業価値の上昇について意識しているのは上場企業やベンチャー経営者くらいで、中小企業の経営者は、日頃意識されていないでしょう。

しかし経営者としての頑張りのご褒美は、高い企業価値によってもたらされます。企業価値を高めたいと思われるなら、真剣にストック型のビジネスを検討されることをお勧めしています。

では、住宅不動産業界向けで、ストックビジネスとはどんなものがあるでしょうか?

代表的なものとして、不動産投資による家賃収入や不動産管理会社などがあります。

例えば不動産管理会社などは、売上規模が決して大きくなくても企業価値が高くなり、M&A市場でも人気で、売り出せばすぐに買い手がつくと言われているビジネスです。

とはいえ不動産投資も不動産管理も競争の激しいビジネスなので、スケールさせるには多少の資金力と時間が必要です。

そんな中、私が一押しでお勧めしているのが新電力小売りビジネスです。
2016年4月新電力の小売りが自由化されました。電力の自由化以後すでに様々な業界から新規参入があり、すでに500社は新規参入されています。

しかし電力市場は、国内で16兆円もある巨大市場です。リフォーム、注文住宅合わせた市場規模より大きいとされています。ですからこれからでも十分大きなビジネスに発展する可能性があります。

最初は、リフォーム新築等のOB客、社員、外注先等から始め、徐々に広げていきます。1万ユーザーを獲得すれば、年間売上15億円程度、営業利益も1億円近くは見込めるビジネスです。

しかも典型的なストックモデルのビジネスで、解約も少なく、毎月新規の獲得数がほぼそのまま積み上がるビジネスです。

また日本の電力は品質が安定しており、いざという時に東京電力などが動くということが法律上決まっています。

電力のプロがいなくても、サポートしてくれる会社と組めば、少人数で始められ、初年度から十分に利益を計上できるビジネスなのです。

デジタルマーケティング力で圧倒的1番になった会社が急成長する

リフォーム業界の歴史を見えると、その時代に急成長をした会社は、その時代の主力マーケティングを制したことが伺えます。

  • 80年代から90年代      訪問販売 朝日ソーラー、ペイントハウスなど
  • 90年代半ばから00年代    チラシ反響 OKUTA ニッカホームなど
  • 00年代半ばから      ショールーム来店型
  • 10年代から        店舗型

このような感じで推移してきました。

私は、前職の船井総研時代は、その業種の看板コンサルタントとして、チラシ反響やショールーム来店型のビジネスモデルで普及を担い、より業界の発展および健全化に努めてきたと自負しております。

時代は進み、現在はどの業界もデジタルマーケティングが主戦略になっています。
デジタルマーケを制する者が業界に旋風を巻き起こすことは、多くの業界において疑いのない事実になっています。

その予兆は、リフォーム業界でもスマホが普及し始めてきた頃から現れてきました。そして多くの会社がチャレンジしてきました。

しかし、チラシ反響やショールーム来店型を牽引してきた私は、10年代になり、主力業務が上場企業の取締役になったこともあり、現場から外れました。リフォーム業界のデジタルマーケ化を片方で見ながらも、デジタルマーケを強烈な武器として突出してくる会社が現れてこないのは、やや歯がゆい思いでした。

現在は、スタートアップ企業をスケールさせる実現するため、数社企業の取締役を仰せつかっています。

主にIT系の企業が多いので、まさにデジタルど真ん中の会社での仕事が中心です。スケール化させる上で、最も注力しているのがデジタルマーケです。そんな現場を見ている私からすると、リフォーム業界のデジタルマーケといえば、せいぜいWEBサイトを作るとか、リスティング広告をするとか、SEO対策をするとか、または「ホームプロ」のようなポータルに出店するとか、その程度の取り組みの会社ばかりです。

これでは十分だとは言えません。

住宅・リフォーム業界のビジネスモデルを再考する①

これまで指摘してきましたように、自社の企業価値を上げようと思うと、住宅業界もこれまでのショット中心のビジネスモデルに加え、如何にストック型のビジネスモデルを加えるかを真面目に検討する必要があります。

新築やリフォームの「請負」を主たる業務としてきた会社にとっては、毎月「チャリンチャリン」と入るストック型のビジネスモデルといっても、ピンとこない人が多いでしょう。

このコラムの1回目にラスベガスでCESの視察をしてきた話をしました。そのCESのアジア版が6月11~13日に上海であり、私はそれも視察してきました。

CESアジアの目玉は、まさしくスマートホームです。
私は、いずれスマートホームが一般化される頃には、住宅やリフォームの売り方もまるで変わり、ビジネスモデルそのものが変革するのではないかと予想しています。

スマートホームとは、わかりやすく言うと、住宅そのものをインターネットでつなぎ、そこに住む人々にとってより快適で、健康で、安心して暮らせるように、生活そのものを最適化して行くものです。

最近「モノからコトへ」ということをよく聞きます。これまで当たり前のようにモノを売っていた業界も、サービスを利用してもらい、その利用に合わせて課金するようにビジネスモデルを変革することが検討されています。

このように説明しても多くの方は、特に住宅業界ではピンとこないと思います。
しかし上記の説明を最近よく聞きませんか?

自動車業界では、「MaaS」という言葉を聞く機会が増えたと思います。
MaaSとは、Mobility as a Serviceの略で、直訳すると、「サービスとしての可動性、移動性」となります。

MaaSの似たような言葉としてSaaSが有名で、これはSoftware as a Serviceの略です。

例えば皆さんがよくお使いのマイクロソフトのWindows Officeも、CD-ROMなどのパッケージで売られていました。数年に一度、大きなバージョンアップをし、その度に買い換える必要がありました。

それが今やOffice 365としてインターネットを通じてサービスを利用できます。細かいバージョンアップは頻繁に行われ、利用者は固定の年会費を払うだけで、いちいち買い換えなくてもバージョンアップを行えます。

今、この発想を自動車に取り入れようとしているのが、MaaSです。自動車は大変革期の真っ只中で、10〜20年後には自動運転車が主流になると言われています。その時には、自動車をユーザーに売るのではなく、必要な時に必要な車をサービスとして利用してもらうというように、ビジネスモデルそのものの発想がまるで変わるのです。

執筆者紹介 株式会社iOffice 代表取締役 五十棲 剛史 氏

京都生まれ。大手百貨店、コンサルティング会社を経て、1994年船井総合研究所入社。入社以来クライアントの業績アップ技術には長けており、「行列のできるコンサルタント」として、船井総研全コンサルタントの中で、11年連続コンサルタント実績NO.1など不滅の記録を数々樹立。その後、船井総研ホールディングスの事業開発取締役として、アドテク等の新規事業を手掛け全て成功に導いている。2018年3月24日退任後、「世界に通用するスタートアップ企業をつくる専門に支援をしたい」という思いで、iOfficeをスタート。

著者

日本M&Aセンター 業種特化事業部コラム制作担当

日本M&Aセンター  業種特化事業部コラム制作担当 

業種特化事業部はIT、建設・設備工事、住宅・不動産、食品、調剤薬局、物流、製造、医療・介護といった各業界に特化し、日々新たな案件に取り組んでいます。各コンサルタントのノウハウや知見を集め、有益な情報発信に努めてまいります。

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