【不動産業のM&A事例】M&Aで事業承継と組織の若返りを実現
⽬次
- 1. M&Aで事業承継と組織の若返りを実現
- 2. 譲渡企業様の概要とM&Aの検討理由
- 2-1. 住宅用・ビル用サッシの専門家集団
- 2-2. がん、リーマンショックを乗り越え、無借金の優良企業に
- 2-3. 後継者不在
- 3. 譲受企業様の概要とM&Aの検討理由
- 4. 本件M&Aで重要となったポイント
- 4-1. 経営者の人柄
- 4-2. 最後は熱意
- 4-3. M&A後の変化
- 5. 最後に
- 5-1. 著者
M&Aで事業承継と組織の若返りを実現
【譲渡企業様】
企業名:日研サッシ工業株式会社
業種:サッシ設計、組み立て加工、施工
売上:約9.5億円
オーナー様の年齢:76歳
【譲受企業様】
企業名:A社
業種:サッシ販売・施工
売上高:100億円以上
譲渡企業様の概要とM&Aの検討理由
住宅用・ビル用サッシの専門家集団
日研サッシ工業株式会社は、埼玉県さいたま市に工場及び営業本部を構え、一都三県を中心にサッシの設計、組立・加工、施工までを一貫請負する会社です。
戸建てやマンション用のサッシからビルのカーテンウォールまで、幅広い種類のサッシを扱うことができる点、仕様検討から設計・製造・施工まで社員一人ひとりがワンストップで対応可能な点が強みの会社です。
建設の入口から出口まで請け負えるため、サッシの卸や加工、施工のみで事業を展開している同業に比べ、差別化ができている優良企業です。
がん、リーマンショックを乗り越え、無借金の優良企業に
2003年、当時社長であった茂呂信市郎様は検査の結果、末期がんであることが判明しました。治療に専念するために、創業メンバーである当時の専務に会社の切り盛りを任せ、ご自身は4-5年にわたる闘病生活を送られました。
既存の治療方法だけでなく最先端の治療方法も模索しながら治療を継続され、その甲斐あって奇跡的な回復を果たされました。
回復後、茂呂様は会社に復帰されますが、それから間もなくリーマンショックが起こりました。日研サッシ工業が得意とするビルサッシ関連の得意先はゼネコンが多く、この時期に倒産してしまった取引先もありました。
茂呂様曰く、闘病生活に引けをとらないくらい大変な時期であったとのことです。しかし、この時期に無借金経営を目指すことを決意されそれを目指されて経営されたことで、M&Aをした2017年時点では売上9.5億円で実質無借金の状態を実現することができました。
後継者不在
日研サッシ工業は、茂呂様と当時の専務のお2人で創業された会社でした。
茂呂様にも前専務にもお子様はいらっしゃいますが、皆様それぞれ日研サッシ工業とは無関係の業界でお仕事をされており、後継者がいない状況でした。
そこで、会社を存続させるための手段としてM&Aの検討を開始し、最終的に日本M&Aセンターへご依頼頂くこととなりました。
譲受企業様の概要とM&Aの検討理由
住宅用サッシの販売・施工を展開
日研サッシ工業を譲り受けられたA社は、東海地区にて住宅用サッシの販売・施工を展開する会社です。
かねてより東京エリアでの事業強化とビル用サッシのノウハウの取り込みを志向していたことから、東京エリアで専門性の高いサッシ事業を行っていた日研サッシ工業に魅力を感じ、本件譲受をご希望されました。
本件M&Aで重要となったポイント
主要仕入れ先との関係性
茂呂様がお相手となる企業に望まれていたことの1つとして、日研サッシ工業の主要仕入れ先との関係を良好に継続してもらえる点があります。
サッシメーカーは寡占化・系列化が進んでおり、現在の事業を継続するうえで仕入れ先との関係継続は重要な要素だったからです。A社は、この主要仕入れ先との関係性が良好であったことから、茂呂様のご希望と合致しておりました。
経営者の人柄
また、トップ面談時にお会いしたA社社長のお人柄を素敵だと感じられたこともポイントであったと茂呂様はおっしゃっていました。
中堅・中小企業においては経営者の人柄が会社にもたらす影響は小さくなく、経営者同士のフィーリングがズレていないことはM&A後の統合作業の成功において大切な要素であるといえます。
最後は熱意
このようにA社に対して好意的な印象をお持ちであった茂呂様ですが、最後の決め手となったのはA社の本件M&Aに対する熱意の高さでした。
特に、日研サッシ工業株式会社が得意としているビル用サッシの仕事を高く評価してくれたことに熱意を感じ、この会社とであれば一緒になっても会社を大切にしてもらえると感じたそうです。
また、トップ面談後にA社社長より直筆の手紙を頂いたことからも、A社の真剣さを感じたとのことでした。
M&A後の変化
M&A後、日研サッシ工業については基本的に何も変わらず、仕事の内容・取引先・顧問税理士もそのままで、スムーズに事業承継を実現することができました。
A社からは人事交流として2名の方がいらっしゃり、顧客の引継などをされました。日研サッシ工業の従業員とも良好な関係を築きながら、業務を遂行されているそうです。
前述の主要取引先も含めた取引先との関係も変わることなく継続しているとのことです。
最後に
病、リーマンショック、そして企業の存続。様々な困難を乗り越えてこられた茂呂様に尊敬の念を感じるとともに、微力ながらそのお手伝いをできたことに喜びを感じる次第です。