【不動産業のM&A事例】M&Aで事業承継と組織の若返りを実現

業界別M&A
更新日:

⽬次

[非表示]

M&Aで事業承継と組織の若返りを実現

【譲渡企業様】
企業名:日研サッシ工業株式会社
業種:サッシ設計、組み立て加工、施工
売上:約9.5億円
オーナー様の年齢:76歳

【譲受企業様】
企業名:A社
業種:サッシ販売・施工
売上高:100億円以上

譲渡企業様の概要とM&Aの検討理由

住宅用・ビル用サッシの専門家集団

日研サッシ工業株式会社は、埼玉県さいたま市に工場及び営業本部を構え、一都三県を中心にサッシの設計、組立・加工、施工までを一貫請負する会社です。

戸建てやマンション用のサッシからビルのカーテンウォールまで、幅広い種類のサッシを扱うことができる点、仕様検討から設計・製造・施工まで社員一人ひとりがワンストップで対応可能な点が強みの会社です。

建設の入口から出口まで請け負えるため、サッシの卸や加工、施工のみで事業を展開している同業に比べ、差別化ができている優良企業です。

がん、リーマンショックを乗り越え、無借金の優良企業に

2003年、当時社長であった茂呂信市郎様は検査の結果、末期がんであることが判明しました。治療に専念するために、創業メンバーである当時の専務に会社の切り盛りを任せ、ご自身は4-5年にわたる闘病生活を送られました。

既存の治療方法だけでなく最先端の治療方法も模索しながら治療を継続され、その甲斐あって奇跡的な回復を果たされました。

回復後、茂呂様は会社に復帰されますが、それから間もなくリーマンショックが起こりました。日研サッシ工業が得意とするビルサッシ関連の得意先はゼネコンが多く、この時期に倒産してしまった取引先もありました。

茂呂様曰く、闘病生活に引けをとらないくらい大変な時期であったとのことです。しかし、この時期に無借金経営を目指すことを決意されそれを目指されて経営されたことで、M&Aをした2017年時点では売上9.5億円で実質無借金の状態を実現することができました。

後継者不在

日研サッシ工業は、茂呂様と当時の専務のお2人で創業された会社でした。

茂呂様にも前専務にもお子様はいらっしゃいますが、皆様それぞれ日研サッシ工業とは無関係の業界でお仕事をされており、後継者がいない状況でした。

そこで、会社を存続させるための手段としてM&Aの検討を開始し、最終的に日本M&Aセンターへご依頼頂くこととなりました。

譲受企業様の概要とM&Aの検討理由

住宅用サッシの販売・施工を展開
日研サッシ工業を譲り受けられたA社は、東海地区にて住宅用サッシの販売・施工を展開する会社です。

かねてより東京エリアでの事業強化とビル用サッシのノウハウの取り込みを志向していたことから、東京エリアで専門性の高いサッシ事業を行っていた日研サッシ工業に魅力を感じ、本件譲受をご希望されました。

本件M&Aで重要となったポイント

主要仕入れ先との関係性
茂呂様がお相手となる企業に望まれていたことの1つとして、日研サッシ工業の主要仕入れ先との関係を良好に継続してもらえる点があります。

サッシメーカーは寡占化・系列化が進んでおり、現在の事業を継続するうえで仕入れ先との関係継続は重要な要素だったからです。A社は、この主要仕入れ先との関係性が良好であったことから、茂呂様のご希望と合致しておりました。

経営者の人柄

また、トップ面談時にお会いしたA社社長のお人柄を素敵だと感じられたこともポイントであったと茂呂様はおっしゃっていました。

中堅・中小企業においては経営者の人柄が会社にもたらす影響は小さくなく、経営者同士のフィーリングがズレていないことはM&A後の統合作業の成功において大切な要素であるといえます。

最後は熱意

このようにA社に対して好意的な印象をお持ちであった茂呂様ですが、最後の決め手となったのはA社の本件M&Aに対する熱意の高さでした。

特に、日研サッシ工業株式会社が得意としているビル用サッシの仕事を高く評価してくれたことに熱意を感じ、この会社とであれば一緒になっても会社を大切にしてもらえると感じたそうです。

また、トップ面談後にA社社長より直筆の手紙を頂いたことからも、A社の真剣さを感じたとのことでした。

M&A後の変化

M&A後、日研サッシ工業については基本的に何も変わらず、仕事の内容・取引先・顧問税理士もそのままで、スムーズに事業承継を実現することができました。

A社からは人事交流として2名の方がいらっしゃり、顧客の引継などをされました。日研サッシ工業の従業員とも良好な関係を築きながら、業務を遂行されているそうです。

前述の主要取引先も含めた取引先との関係も変わることなく継続しているとのことです。

最後に

病、リーマンショック、そして企業の存続。様々な困難を乗り越えてこられた茂呂様に尊敬の念を感じるとともに、微力ながらそのお手伝いをできたことに喜びを感じる次第です。

著者

日本M&Aセンター 業種特化事業部コラム制作担当

日本M&Aセンター  業種特化事業部コラム制作担当 

業種特化事業部はIT、建設・設備工事、住宅・不動産、食品、調剤薬局、物流、製造、医療・介護といった各業界に特化し、日々新たな案件に取り組んでいます。各コンサルタントのノウハウや知見を集め、有益な情報発信に努めてまいります。

この記事に関連するタグ

「不動産業界」に関連するコラム

建設業界のM&A総まとめ【2019年】

業界別M&A
建設業界のM&A総まとめ【2019年】

建設業界とは業界定義建設業法によると、建設業は「元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業」と定められている。また、建設業界は住宅・商業施設などの建物を造る「建築」と、道路や鉄道、ダムなど、構築物の土台を造る「土木」の2分野から成り立っている。@cv_button事業特性建築業界の事業特性は、大きく分けて以下の4点である。受注生産方式入札制度多重下請け構造関係

【建設業界向け】江戸時代のアイドル鳶職人の株式相続

業界別M&A
【建設業界向け】江戸時代のアイドル鳶職人の株式相続

工事現場は鳶職に始まり鳶職に終わると言われるほどに重要な存在である鳶職人誰よりも先に現場に入り、現場の囲いを組み、建物基礎の鉄骨を建て、足場を組む。工事現場では、鳶職人はもっとも重要な存在です。@cv_buttonその役割は大きく分けると3種類、作業用の足場を組む足場鳶、鉄骨を専門に扱う鉄骨鳶、鉄骨を専門に扱う重量鳶があります。この様に現在は鳶職人といえば建設業界の専門家です。その歴史は遡ること江

2017年建設・不動産業界のM&A

業界別M&A
2017年建設・不動産業界のM&A

2017年の建設・不動産業界M&A一覧建設・不動産業のM&Aの成約件数(公表事例に限る)は、リーマンショックを契機に低迷していましたが、その後は5年連続で増加しています。@cv_button2011年といえば、「東日本大震災の復旧」のために公共工事が増加した年でしたが、この頃から業界の潮目が変わるとともに、M&Aの成約件数が増加しました。2017年は78件の成約が公表されており、リーマンショック前

不動産賃貸管理業界のM&A事例(後継者候補の退職・「会社継がない」息子の決断で頭が真っ白に)

業界別M&A
不動産賃貸管理業界のM&A事例(後継者候補の退職・「会社継がない」息子の決断で頭が真っ白に)

今回、不動産賃貸管理業界のM&A事例事例をご紹介させていただきます。後継者候補が急遽辞職してしまったオーナーの案件と、「会社継がない」息子の決断で頭が真っ白になったという案件をご紹介します。@cv_button案件1:後継者候補が急に辞めてしまったため、第三者承継を選択【譲渡企業】A社・所在地⇒関東・業績⇒年商1億円以上・事業内容⇒不動産賃貸管理・仲介・株主⇒和田社長(仮称)・従業員⇒約10名【譲

【不動産業界向け】リフォーム会社のM&A iOffice 代表取締役 五十棲剛史氏レポート

業界別M&A
【不動産業界向け】リフォーム会社のM&A iOffice 代表取締役 五十棲剛史氏レポート

日本M&Aセンター不動産業界チームです。株式会社iOffice代表取締役五十棲剛史氏による不動産業界、特にリフォーム会社の領域に関してレポートをお届けします。@cv_button執筆者紹介株式会社iOffice代表取締役五十棲剛史氏京都生まれ。大手百貨店、コンサルティング会社を経て、1994年船井総合研究所入社。入社以来クライアントの業績アップ技術には長けており、「行列のできるコンサルタント」とし

【不動産業のM&A事例】仕掛け型M&A・プロアクティブサーチ活用とM&A仲介の必要性

業界別M&A
【不動産業のM&A事例】仕掛け型M&A・プロアクティブサーチ活用とM&A仲介の必要性

今回は、譲り受け企業が譲渡企業に対しM&Aの提案を行うことからM&Aの交渉が始まるいわゆる「仕掛け型」のM&Aによる成約事例をご紹介します。当社では年間200組以上のM&Aの仲介をしておりますが、この仕掛け型による成約の割合は1%程度です。それほど仕掛け型でM&Aを成約させるのは難しいことなのです。しかし、M&Aが活発で、買い手となる企業が著しく多い業界においては、待っていても譲渡案件に巡り合える

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース