『調剤薬局業界再編M&Aの先頭を走り抜ける』アインホールディングス
⽬次
- 1. 業界再編の先頭を走り続ける
- 1-1. どんな企業も最初は1店舗
- 1-2. 自力出店からM&Aでの出店へ
- 1-3. 業界トップ企業へ
- 2. 今でも続く譲渡企業を大事にする社風
- 3. 業界のトップ企業として
- 3-1. 土屋薬品との提携
- 3-2. 未来への戦略
- 3-3. 著者
業界再編の先頭を走り続ける
どんな企業も最初は1店舗
アインホールディングスの創業は1980年、大谷社長は28歳でした。当初はドラッグストアの経営から始まり、医薬分業の流れとともに調剤薬局事業へ進出していった当社でありますが、大谷社長はドラッグストア3店舗を運営しているときから全国展開を視野にいれていました。
自力出店からM&Aでの出店へ
調剤薬局業界で医薬分業の促進が推進されていた2000年頃までは、ドクターへ直接院外処方の提案を行い順調に店舗数を増やしていくことができていました。
しかし、全国各地に同様のことを考えている調剤薬局チェーンが、似たようなスピードで似たようなやり方で拡大している状況の中、このままでは自分たちが得意としているエリア以外での出店は困難になっていくということで、スピーディーな全国展開を目指し、2001年頃M&Aに積極的に取り組む方針を打ち立てました。
業界トップ企業へ
M&Aに積極的に取り組んでいく方針を立てた約1年後、アインホールディングスにとって大きな転機となるM&Aが実行されました。
今川薬品との合併です。
今川薬品の44店舗が加わったことで、2003年3月期には合計130店舗の調剤薬局業界のトップ企業となりました。
それまでのM&Aは「業績不振の小さな企業を大手の企業が買収する」といったイメージがどうしても強かったのですが、今川薬品とのM&Aは「業界大手同士」「M&A後も看板はそのまま(約15年かけてようやく看板を変えた。)」「なにかを強制するのではなく、一緒に経営していく」ということで、調剤薬局業界の友好的M&Aの先駆けとなり、また、現在でも語り継がれている代表的な事例となっております。
今でも続く譲渡企業を大事にする社風
前述した今川薬品のM&Aの事例でもうひとつ当時としては珍しく特徴的なことがありました。譲渡企業である今川薬品の社長であった今川社長をアインファーマシーズの代表取締役会長に起用したことです。しかも、合併後の2002年から2010年までの8年間です。
今であれば、そういったスキームでの譲渡も珍しくなく、PMI(M&A実行後の統合業務。こちらについては近年のM&A業界の最重要ワードとなっておりますので別記事にて詳細ご説明したいと思います。)の観点からも有効性が多くの企業で認められています。
しかし、当時はM&Aで買収された企業の社長が譲受企業の会社の代表取締役会長に就任するということで大きな話題になりました。譲渡企業の社長、従業員を大切にすることがグループ全体の利益につながるということを、大谷社長は当時からわかっていたのでしょう。
そういったお考えが全社員にしっかり浸透しているようで、譲渡をお手伝いした企業の社長に譲渡後の状況についてお話をお伺いすると、みなさまから「本当にアインさんと一緒になってよかった。ありがとう。」とおっしゃいます。
また、2007年にM&Aにて株式を譲り受けた新潟地場のダイチク出身の大石美也氏を2015年にアインファーマシーズの代表取締役に起用するなど、出身企業にとらわれない人事評価制度を構築しているのも、M&A成功の秘訣であるように思います。
業界のトップ企業として
土屋薬品との提携
みなさま記憶に新しいことかと思いますが、2019年2月25日、アインホールディングスは長野県内36店舗、県下で強力なドミナントを形成している土屋薬品の全株式を譲受けることを発表しました。
売上は88億円と公表されていましたので、単純計算で1店舗あたりの売上は2.4億円の超優良調剤薬局チェーンです。おそらくですが、本件も土屋社長はそのまま子会社の社長として残るのではないでしょうか。
未来への戦略
前述のような各県のNo.1、もしくはそれに準ずる企業とのM&Aが今、増えています。当然、業界最大手のアインホールディングスは譲受候補先の筆頭となっていくでしょう。
アインホールディングスのグループステートメントは【まず、社員が幸せを感じられる会社でありたい。】という一文から始まります。もちろん、この「社員」にはM&Aで譲り受けた企業の社員の方も含まれます。こういった「人」を大事にする企業はM&A戦略も成功する傾向にありますので、アインホールディングスはM&A業界トップ企業へなれたのではないでしょうか。
今後10年間の調剤薬局業界は、大規模M&Aによって業界順位がどんどん入れ替わる、まさに戦国時代です。そんな中、「M&A巧者」であるアインホールディングスがどういった戦略で業界トップを守り続けていくのか、これからも情報を発信し続けていきたいと思います。