【調剤薬局業界M&A事例】1店舗40歳のオーナー社長・引退時に100本の真っ赤なバラの花束

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調剤薬局のM&A支援のリーディングカンパニーである日本M&Aセンターがご紹介いたします。
調剤薬局M&A事例。本日は下記2事例をご紹介いたします。

  • 引退時に100本の真っ赤なバラの花束
  • 1店舗、40歳のオーナー社長、なぜM&Aという選択をしたのか?

事例1:引退時に100本の真っ赤なバラの花束

【譲渡企業様】
・企業名⇒株式会社ミドリ薬局
・業種⇒調剤薬局
・売上(M&A当時)⇒約4億5000万円
・オーナー様のご年齢⇒69歳

【譲受企業様】
・企業名⇒阪神調剤グループ(アロスワン)
・業種⇒調剤薬局
・売上(M&A当時)⇒非開示
・オーナー様のご年齢⇒非開示

譲渡企業様の概要とM&Aの検討理由

2018年11月に阪神調剤HDに調剤薬局4店舗を経営していた会社を譲渡されたオーナーの成功事例の紹介です。

25歳の時に始めた10坪の薬局

オーナーの金澤氏は大学卒業あたりから、将来薬局を開きたいという希望を持っていました。

そんな中、製薬会社に勤めて2年ほど経ったとき、新聞で埼玉県に日本住宅公団の団地ができるとの記事を見つけ、現地を見に行くとそこは新設の駅ができ、住宅群が出来上がり街は活気にあふれていたそうです。

その新設駅と住宅群の間に建設中の貸店舗らしい建物があり、そこで開業をしたいとの気持ちに至り、後日その大家さんと不動産屋さんを訪ねられました。

しかし、当時の金澤氏は25歳。若者が店舗を借りたいと申し入れてもなかなか信用されませんでした。そこで、何度となく訪問し、更に義父を連れていき再度申し入れをして、何とか借りることができました。この10坪のお店で金澤氏と奥様のお二人でスタートされたのが始まりだそうです。

店舗展開と調剤薬局本格参入

事業が成長してくなかで、1店舗ではなく多店舗経営していくことが必要だと感じられるようになり、4店舗まで順調に伸ばしていきました。

しかし、その当時は大手ドラッグストアが積極的な出店攻勢をしており、自社店舗の近隣にも競合店舗ができ、やがて価格競争を強いられるようになりました。

そんな業界の流れもあり、地元でまだ院内処方の医院に対して、院外処方にするように働きかけて調剤薬局を展開するという方針に展開し、4店舗まで広げ、創業から40年間経営をしてこられました。

従業員や患者、ドクターの為にできること

ドラッグストアから調剤薬局にシフトをしてからは、安定して経営をしてくることができ、直近でも新店舗をオープンさせ、業績も右肩上がりで成長されてきました。

しかし、後継者が不在の中で自身(金澤氏)が70歳を迎えるにあたり、今後の会社の経営について考えることが多くなったと言われます。

今後、店舗展開をしていけるのか分からない中で、従業員に新しいポストを与えられるのかどうかや、今後必要とされるであろうITへの投資などを今後はさらに進めていかなければいけません。

加えて、今後の調剤薬局業界は2年ごとの報酬改定への対応がより難しくなり、根本的には社会保障費の削減の為に調剤報酬自体が削減されていきます。

このような将来の状況の中、従業員や患者、ドクターにとってなにが一番かと考えると、会社が良い状況のうちに将来的に長く貢献できる体制を整えることが必要ではないかと考えられました。

お相手を選ぶ上で大事にしたこと

譲渡を検討されるようになり、弊社含めて複数のM&A仲介会社のホームページなどを調べられたそうです。

その中で株式会社日本M&Aセンターは実績がNo1であること、「企業概要書」という何十ページにもなる企業の資料を作成することで、詳細に自社の理解を深めてもらえることなどから弊社を選んでいただきました。

加えて、後々情報が同業者・従業員・医薬品卸などに漏洩しないことも重要と考えられそうです。

候補先に関しては、金澤氏はとても優良な薬局を経営されていたこともあり、数十店舗から大手企業まで多くの企業から条件提示がありました。

どの企業からもとても良い評価をされており、その中から従業員の雇用や賃金が変化しないこと、企業風土など総合的に判断をされて阪神調剤HDグループを選ばれました。

100本の真っ赤なバラの花束


最終契約を終え、従業員とドクターに開示することが一番心配だったそうです。

従業員には全員に集まっていただき、金澤社長から説明をしたうえで、従業員からの質問に全て答えられました。全従業員が納得をし、退職を考える人は一人もいませんでした。

ドクターからは、「金澤社長がここまで決断したことはよくよく考えたうえでのことで、我々の日常の業務については今までと変わらないとの事なので。」とのことで納得をいただいたそうです。
また、後日引退時には特注の100本の真っ赤なバラの花束をドクターから贈られたそうです。

本件のポイント

本件において、成功したポイントとしては金澤氏が早めに情報収集を始めたことです。
実際に決断をされる前に情報収集や自社の株価評価を弊社に依頼をされていました。

だからこそ自社の現状を理解されていたことが、適切なタイミングで決断できた要因です。
今後も報酬改定等によって企業評価額が大きく変わる可能性も十分にあります。
だからこそ、現在検討している調剤薬局オーナーの方は早めの情報収集とおすすめいたします。

事例2:40歳のオーナー社長はなぜM&Aという選択をしたのか?

夫婦二人三脚で九州に出店

今回ご紹介するのは、2018年に40歳の若さで大手調剤薬局企業と手を組むことを決断したK薬局の成功事例です。

K薬局は九州の調剤薬局(1店舗、売上約1億)であり、オーナーのK氏が30歳の時に知人の紹介を機に開局した薬局でした。
K氏は九州の薬剤師一家の長男として生まれました。ご家族の影響もあり、薬剤師の道に進むことをかねてから決めており、2004年に国家資格取得し病院薬剤師を経験し、調剤薬局で薬剤師としても勤務をしていました。

勤務をしているうちに、「自分の思う薬局を自分の力で作り上げてみたい」という気持ちが芽生えており、知人からの紹介を一世一代のチャンスと考え、土地勘もない近隣の県で薬剤師である奥様と二人で地域に根差す薬局を開局しました。

家族との時間

開局以降薬局は順調に処方箋枚数が伸びており、経営も順調でした。処方元も非常に地域のために尽くす病院であったため、積極的に患者を受け入れていました。
その後数年たっても両社は順調で患者も増え、K社長夫妻も日に日に多くなる患者様への対応に忙殺される日々が続きました。

開局した県は薬剤師が少なく、簡単に採用ができる地域ではありません。そのため、患者様の増加はすべてK社長夫婦への負担となり、さらに追い打ちをかけるように、病院から規模を拡大したい旨の申し出があり、二人は限界を感じ始めました。

何かを変えなければならない。自分の思い描いた理想の薬局を完成させるためには、このままではいけない。そんな風に頭では悩んではいるものの、日々の業務に忙殺され、気が付けば月日がたっているという状況が続きました。

当時はお子様も生まれたばかりで、家族思いなK社長は地域に貢献したいという“経営者としての自分”とご家族を大切にしたい“一家の大黒柱としての自分”の葛藤が生まれていきました。

決断の時

2018年の年明けにたまたま機会があって占いをしたK社長でしたが、その結果が“今年は大きな決断をすべき年”だったそうです。それまで占いなどはあまり信じない性格のK社長が、漠然と今年は何かの節目になる年ではないか、と意識された瞬間でした。

そんな折に日本M&Aセンターのコンサルタントからの連絡があり、何かの縁だと思い話を聞いてみたのが始まりです。コンサルタントは熱心にK社長の話を聞き、社長にとって、従業員にとって、患者様にとって、処方元にとって、なによりご家族のために、大手と組んで経営をしていく選択肢を提案しました。

社長自身は納得感のあるストーリーでしたが、一緒に連れ添ってきた奥様がどのように考えるのか、それだけが気がかりでした。

意を決して奥様に相談すると、奥様から「何を悩んでいるの?今年は一大決心すべき年なんでしょ?それがこの決断に間違いないわ」とおっしゃったそうです。いよいよ、K社長夫妻のM&Aによる事業承継の検討がスタートしたのです。

K社長が今回の件で重要視したのは2つです。

  • ご家族との時間を作ること
  • 薬局経営を続けること

K社長自身、非常に都合のよい要望をだしていることは理解しているものの、やはり経営者としての自分と、家族を大切にしたい自分を両方大切にしたい、この気持ちは変えることができなかったそうです。

進めるうちに、はじめは数十社あった候補先が、一つ、また一つと希望に沿える企業は減っていき、正直諦めかけた時期もあったそうです。しかし、あきらめず候補先を模索した結果、全国でグループ全体で約300店舗規模の展開をする大手調剤薬局グループが名乗りをあげました。

K薬局という法人は残したまま、社長を継続しても問題なし、さらには人員をすぐに補充するので時間的な余裕もできる、まさに理想としていた働き方ができる相手でした。社長の希望をすべて満たせる企業がついに出てきたのです。

K社長夫妻は、その大手調剤薬局グループとともに歩む決断をしました。緊張するトップ面談、細かい質問が飛び交う買収監査、と続きましたが、非常にクリーンな経営をされてこられたK薬局はこれらのステップを特段の問題もなくクリア。スムーズに最終契約にいたりました。

本件M&Aで重要となったポイント

買い手からみたメリット

全国規模の企業でしたが、九州地方ではあまり店舗を持っていませんでした。いつかは九州地方にも店舗を構えたいと思っていた時に、K薬局と出会うことができました。

さらに地の利もない地域のため、K社長が引き続き社長として継続してくださることは買い手にとっても非常にメリットがあり、ゆくゆくは九州地方をまとめて経営してほしいという期待をK社長にかけています。

K社長の若い力で今後積極的に在宅やさらなる地域貢献のアイデアを出してもらい、自身は黒子に徹することで拡大をバックアップしたい。それが今回の譲り受けを決断した大手調剤薬局グループの想いです。

守るべきものをすべて守れる

K氏はまだ40歳という若さであり、いろいろとやりたいことがたくさんある方です。ワークライフバランスをとることができる相手であり、薬局にかかわるすべての人がハッピーになれる選択肢であったと感じました。

最後に

K社長は譲渡後1年たった今も、社長として経営を続けております。譲渡前にあった精神的な負担からは解放され、今では積極的に地域に根差した薬局を作り上げるために時間を費やせているそうです。またご家族との時間もしっかり作ることができており、まさに1年前に理想と考えていた生活を送っています。

“M&A”と聞くと 身売りや乗っ取り、という印象が浮かぶ方も多いと思います。自身が築き上げてきたものが無くなってしまうと感じる方もいるかもしれません。しかし、今回のK社長の事例を振り返ると、今後の調剤薬局業界のM&Aの在り方を示しているのではないかと感じます。

自分一人の力ではかなえられないことを、他社と手を組んで、集まることでそれをかなえていく、これがM&Aです。誰しも自身の理想とする会社像、人生像があります。
その理想に早く近づけるには一体どの方法が得策なのかを考えなければなりません。自助努力での成長、M&Aを利用しての成長、どちらが正解かはもちろんわかりませんが、大切なことは“すべての選択肢を洗い出す”ことです。
すべての選択肢を検討せずして自助努力をすることを否定してもいけませんし、M&Aを否定してもいけません。しっかりと情報を集めたうえで比較検討することが大切です。

そのような判断基準となる情報をお届けできるよう、調剤薬局業界の発展に寄与できるよう、今後も尽力していきたいと思います。

著者

日本M&Aセンター 業種特化事業部コラム制作担当

日本M&Aセンター  業種特化事業部コラム制作担当 

業種特化事業部はIT、建設・設備工事、住宅・不動産、食品、調剤薬局、物流、製造、医療・介護といった各業界に特化し、日々新たな案件に取り組んでいます。各コンサルタントのノウハウや知見を集め、有益な情報発信に努めてまいります。

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