【調剤薬局業界再編M&A】日本調剤のM&Aから学ぶ

業界別M&A
更新日:

⽬次

[非表示]

あらゆる面で業界をリードする日本調剤

医薬分業に強い思いを抱き札幌で創業

医薬分業元年は1974年。それから間もなくして、「医薬分業」への強い思いで1980年に創業した日本調剤。

日本調剤株式会社三津原庸介社長は、「創業当時はマンツーマン出店が主で、メディカルセンター型(医療モール型)で医薬分業に取り組んできました。その後、大型病院の門前にも多くの店を構える形となり、店舗数もまもなく600店舗を超える。今後は面分業の時代に合わせた店舗展開も進めていく方針」といいます。

日本調剤IR資料より

より良いサービス提供のための大型店舗の推進

三津原社長は大型店舗を増やしている点について、「在宅や健康サポート機能など、薬局に求められるものが増えている中で、一定規模を確保した大型店舗でないと運営が難しくなっていると考えている」として、こう例示します。

「例えば、24時間対応を行う場合に女性の薬剤師一名で対応するのは現実的ではない。店舗を大きくし、薬剤師の人数を増やして回せるようにしていかないと、そうした新しい取り組みのためのリソースが厳しい。1店舗の規模が大きければローテーションもできる」

効率化のために店舗を大きくしているのではなく、患者により良いサービスを提供できる体制を求めた結果、一定規模の店舗の大きさと人員数を確保することに行きついたのが日本調剤です。

しかし、「大型店舗はコストがかかるのも事実で、これまでも医療モール型などはなるべく店舗面積を広く確保するようにしてきたが、固定費などかなり苦しい部分もあった」と三津原社長は言います。

M&Aを活用しながら未病・予防の取り組みを強化する

大型門前薬局を安定的に出店する一方で、メディカルセンター型(医療モール型)薬局と面対応薬局の機能を兼ね備えたハイブリッド型薬局の出店を積極化。

今後も、健康サポート機能等の付加価値のためにも、ある程度の店舗面積が必要と考えていることから、医療モール型や面薬局が中心となります。出店の基本方針は自力出店だが、M&A市場の動向に応じてM&Aも活用し、店舗規模と質を重視したM&A基準の下でM&Aを実施する、としています。

2030年に向け、高齢者人口の増加、分業の進展、医療の高度化など業界を取り巻く外部環境が大きく変化している中で、患者さま志向の薬局づくり、経営の効率化を進め、必要とされる薬局となることで調剤薬局事業を拡大していく計画です。

日本調剤IR資料より

店舗規模と質を重視した基準の下で、M&Aを実施する

M&Aでグループとなった水野薬局のシステムを採用

医療安全システムとして、日本調剤のグループ会社であり、日本初の調剤薬局である”水野薬局”が開発した、調剤レコーダー「調レコ」を、日本調剤の一部店舗でも導入を開始しました。

今後は大規模店舗を中心に配置の拡大を予定しています。「調レコ」は、処方せんの受付から薬の交付、服薬説明までの調剤過程を、複数のカメラによる高精細な画像で記録するシステムです。

「水野薬局は機械等を非常に大切に長く使っており、そうした姿勢に学ぶところがあった。クオリティマネジメントを追求していた水野薬局と日本調剤はシナジーがあった」と三津原専務は言います。

水野薬局は、1909年に当時の東京帝国大学(現在の東京大学)医学部前に「水野薬局」を開局し、1964年に日本で初めての調剤薬局である「水野調剤薬局」を開局しました。歴史ある薬局の伝統と技術を大切に譲受け、発展させています。

店舗数よりも内容・収益性を追求したM&A

日本調剤は、売上高約28億円の前述の水野薬局の買収に、約38億円を費やしました。

同業大手が平均すると1店舗あたり売上1億円~2億円程度の調剤薬局の買収を中心とするのに対し、日本調剤の目線は一段階高いものとなっています。

国は薬局に対して、服薬指導など医療機関としての機能向上を求めています。

日本調剤は1店当たりの収益性重視にカジを切り、慢性疾患の患者がリピーターになるようスマートフォンで管理する「電子お薬手帳」などの取り組みを急いでいます。

著者

日本M&Aセンター 業種特化事業部コラム制作担当

日本M&Aセンター  業種特化事業部コラム制作担当 

業種特化事業部はIT、建設・設備工事、住宅・不動産、食品、調剤薬局、物流、製造、医療・介護といった各業界に特化し、日々新たな案件に取り組んでいます。各コンサルタントのノウハウや知見を集め、有益な情報発信に努めてまいります。

この記事に関連するタグ

「調剤薬局」に関連するコラム

調剤薬局における親族継承のメリットとデメリット

業界別M&A
調剤薬局における親族継承のメリットとデメリット

日本M&Aセンター業界再編部調剤薬局業界専門グループの伊東勇一と申します。経営者として事業を長く続けていくこと。これは地域医療の一端を担う調剤薬局としても長く地域に貢献し続けることであり、多くの経営者が望まれていることかと思います。@cv_buttonただし、様々な苦境を乗り越えてきた経営者であっても、年齢の壁は乗り越えることはできず、いずれ事業承継が必要になります。事業承継は一般的に、親族承継・

薬価制度と日本の財政について

業界別M&A
薬価制度と日本の財政について

改定によって見直しが続く薬価薬局を経営していく中で重要な経営指標の一つに「薬価」があります。薬価、すなわち薬価基準制度とは、保険医療機関等の扱う医薬品の価格を公的に定めているシステムです。厚生労働大臣を通じて国が決定する薬価ですが、最近の薬価改定では医療費抑制のため薬価の引き下げが顕著となっています。さらに二年に一回であった薬価改定が2021年度から中間年も薬価の見直しを行うようになり、毎年改定に

日医工の上場廃止から考えるジェネリック医薬品卸業界の先行き

業界別M&A
日医工の上場廃止から考えるジェネリック医薬品卸業界の先行き

いつもコラムをご愛読いただきありがとうございます。日本M&Aセンター業種特化事業部の岡田拓海です。今回は「日医工の上場廃止から考えるジェネリック医薬品卸業界の先行き」についてお伝えします。@cv_button日医工の上場廃止が及ぼす医薬品卸業界への影響2022年12月28日、日医工株式会社は業績不振を理由に申請していた事業再生ADRが成立したことを発表しました。事業再生案として、国内投資ファンドの

2022年調剤薬局業界M&Aの振り返りと2023年の市場展望

業界別M&A
2022年調剤薬局業界M&Aの振り返りと2023年の市場展望

日本M&Aセンターの田島聡士と申します。2022年は、一部メーカーの製造不正を発端に生じたジェネリック医薬品の供給不足が、先発品も含めた医薬品の供給不足にまで発展し、地域に関わらず全国の薬局に大きな影響を与えました。この未曾有の医薬品不足に加え、毎年の薬価改定と2年に1度の報酬改定、近隣での競合店舗の出現など多種多様な問題に頭を抱える薬局経営者も増えています。ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源

Amazonが日本市場へ上陸する!?電子処方箋が引き起こす、調剤薬局の参入障壁の崩壊

業界別M&A
Amazonが日本市場へ上陸する!?電子処方箋が引き起こす、調剤薬局の参入障壁の崩壊

電子処方箋の導入で変わる、薬局のビジネスモデルいつもコラムをご愛読頂きありがとうございます。日本M&Aセンターの調剤薬局専門グループです。先日ニュースをみて衝撃を受けた方も多いかと思われますが、2023年Amazonが日本の処方薬販売への進出を検討しているとの報道がありました。確定した情報ではないにも関わらず、同業界の上場企業株価は急落し、競争激化への懸念が強まる形となっています。@cv_butt

ファーマシィとの資本提携で注目されるアインホールディングスの歴史と挑戦

業界別M&A
ファーマシィとの資本提携で注目されるアインホールディングスの歴史と挑戦

はじめに2022年5月9日、多くの調剤薬局業界関係者が驚いたのではないでしょうか。業界最大手のアインホールディングスが、中国地方を中心に100店の調剤薬局を持つファーマシィホールディングスの全株式を取得し、完全子会社化することを発表したのです。@cv_button取得額は非公表ですが、ファーマシィホールディングスの2021年3月期の売上高は約215億円で、アインホールディングスのM&Aとしても、過

「調剤薬局」に関連するM&Aニュース

くすりの窓口、ヘルパーリンクを同社前代表取締役に譲渡

株式会社くすりの窓口(5592)は、連結子会社の株式会社ヘルパーリンク(千葉県千葉市)の株式を、同社前代表取締役に譲渡することを決定した。くすりの窓口は、薬局・医療向けソリューションを提供している。ヘルパーリンクは、インターネットを利用したシニア層向け生活サポート、介護代行サービスのビジネスマッチングサイトの運営等を運営し、地域の登録サポーターを通じて生活サポートサービスを提供している。背景・目的

ファーマライズホールディングス、寛一商店グループから一部の調剤薬局事業を譲受け

ファーマライズホールディングス株式会社(2796)は、寛一商店株式会社・アサヒ調剤薬局株式会社・有限会社ハヤシデラ・有限会社共生商会・株式会社ハーベリィ科学研究所・株式会社ソフトリー・有限会社ライフプランニング・新潟医薬株式会社・有限会社さくら調剤薬局(以上、会社更生手続き中)及び株式会社メディカルアソシエイツ(以下、寛一商店グループ)から、一部の事業譲渡を受けることを決定した。また、同日、同社と

メディカル一光グループ、三重県薬剤師会から薬局2店舗を譲受け

株式会社メディカル一光グループ(3353)の連結子会社である株式会社メディカル一光(三重県津市)は、一般社団法人三重県薬剤師会(三重県津市)より2薬局を譲受けることについて決定した。メディカル一光は、調剤薬局事業・医薬品卸売事業を行う。三重県薬剤師会は、薬剤師を会員とする職能団体。事業(調剤薬局)譲受けの目的今回の譲受けは、メディカル一光グループの薬局事業のさらなる強化を目的としており、地域医療の

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース