外食業界は“このように”変化した、これからの外食企業の戦い方とは

高橋 空

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高橋空

日本M&Aセンター業種特化2部/食品業界専門グループ

業界別M&A
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日本M&Aセンター食品業界専門グループの高橋です。
当コラムは日本M&Aセンターの食品専門チームの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は、2020年の外食業界について振り返りながら、これからの外食企業の戦い方ついて執筆させて頂きます。

2020年の外食産業の変化について

外食市場は縮小 頼みの綱の中食市場も微増で終わる

新型コロナウイルスの影響で外食市場は前年対比で15%~20%ほど減少すると予測されます。
一方で不要不急の外出自粛要請などにより、中食市場は昨年よりも伸長したものの、プレイヤー数の増加ほど市場規模が伸び無かったため、中食市場はレッドオーシャン化していったことが想定されます。

そういった中、昨年は「消費者の消費行動の変化」により業態別の優劣の差が広がってしまという現象が発生しました。
主な「消費者の消費行動の変化」としては、

①消費行動のコンサバティブ化

外食の利用頻度が減少したため、少ない外食機会の中では保守的な消費行動になり、定番業態(焼肉・寿司など)やなじみ業態(常連が多い・業歴が長い)が好まれる傾向に。
また、年齢層の高い客層は新型コロナウイルスに対するリスク意識が高く減少幅が大きい傾向に。

②食事のラグジュアリー化

外食の利用頻度が減少したため、1回の外食に使う単価が増加する傾向及び、自炊からデリバリー・テイクアウト・通販へシフト。

③消費のローカル化

リモートワークの加速などにより、都市部の流入人口が減少し、郊外で消費をされるようになった。

④利用シーンのスモールナンバー化

新型コロナウイルスの感染を避けるために、少人数利用の業態が好まれる傾向に。

これらの変化は、新型コロナウイルスの影響による“一時的な変化”ではなく、“根本的なライフスタイル”の変化を引き起こしたものかと思われます。

また、その他の事業環境の変化として

  • 有効求人倍率が1倍の水準になり人材採用が比較的容易に
  • 撤退・廃業が加速し、物件情報が乱立
  • 借入は増えるが、事業収益が見込みづらい
    といったように、「人余り・物件余り・投資資金不足」となり、攻めれるチャンスが広がったが攻めらない“ジレンマ”を持っている企業様も多いのではないかと思います。

このようなパラダイムシフトが発生した中で、外食企業は未来に対して“戦い方”を変化させて行かなければ、次世代を勝ち残ることが難しい時代に突入したものと思われます。

外食企業はコロナによる転換期をどう乗り越えるか?

戦い方を変化させた主な外食企業の出来事として、

①ペッパーフードサービス

主力の「ペッパーランチ」事業を、国内投資ファンドJ-STARへの売却を実施し、売却で得た資金で、もう一方の主力事業「いきなり!ステーキ」の立て直しの財源化

こちらの動きは、「事業の選択と集中」における、既存事業の資産化によるコア事業の強化の動きであり、こういった動きは2021年も各社加速していくと想定されます。

大手居酒屋チェーンの和民

居酒屋業態の店舗を多数閉め、焼肉をメインにした店舗へ生まれ変わることを発表。
先述させて頂いたとおり、業態別の優劣の差が広がり、パラダイムシフトが発生している中で、既存事業に固執するのではなく、事業そのものを時流に合わせて変化させていく動きも、事業再構築補助金などの後押しによって、更に加速していくものと想定されます。

また、パラダイムシフトが発生している環境下でも、収益性が高いビジネスモデルを保持している企業はFC加盟の問い合わせが急増しており、年間で数十店舗単位で新店を増やす外食企業も出てくることが想定されます。

すかいらーくの宅配

テイクアウト売上の最大化を企図したストアポートフォリオの再構築を実施
2020年8月時点ですかいらーくは約 2,800 店でテイクアウトを、約 1,500 店で宅配サービスを行っていましたが、コロナ禍においてそのニーズと認知度が飛躍的に高まり、売上の前年比も飛躍的に伸びたことにより、全国に立地する店舗を宅配・テイクアウトの拠点として最大限活用する方向性で宅配対象エリアを個店別に見直し、業態転換・エリア再編成により空白エリアを解消に向けた、出店立地の見直しなどを行っております。

これまでイートインが前提の出店戦略だったのが、これからはデリバリー・テイクアウトにおける商圏の適正化が出店戦略においては求められてくるかと思います。

2021年は大手を中心に資本提携が加速

2021年に入り、大手企業を中心として、外部パートナーとの資本提携が加速していきました。

  • 2021年2月:物語コーポレーション × アドバンテッジパートナーズ
    ファンド支援で既存店の集客強化・海外出店支援・各種オペレーション改善による生産性の向上を実現に向けた資本提携

  • 2021年2月:エー・ピーホールディングス × オイシックス・ラ・大地
    債務超過の解消を行い、事業ポートフォリオの転換、人件費・固定費の削減のための措置を行い、子会社を含めオイシックスの製造工場の活用など協力体制を構築し、収益性の向上を実現に向けた資本提携

  • 2021年2月:ロイヤルホールディングス × 双日
    総合商社の国内外ネットワーク・ノウハウを活用し、親和性の高い事業を推進するための資本提携

といった戦略を各社が取られています。

これらは一部の事例ではございますが、いままでと同じ戦い方をしていてはこのパラダイムシフトを乗り越えることは困難かと思います。

戦い方を変化に向けて、1社単独で実現することだけが必ずしも正解ではなく、自前で実現するのか?M&Aによる買収で実現するのか?譲渡をすることで大手の傘下入りを行い実現するのか?といった選択肢を持って、戦い方を検討していくことが「企業の存続と発展」のためには、より重要な時代かと思います。

M&Aの考え方は前々から変化してきており、従来は親族承継・社員小計が出来なかったため、仕方なくM&Aをするといった後ろ向きな姿勢から、後継者がいても、“成長戦略の加速” “業界再編”に対応するチャンスとしてM&Aをするといった前向きな姿勢を持たれる方が増えています。

このような背景の中、2020年の外食業界のМ&A件数は、2019年よりも減少したもの過去上位の件数を記録しております。


コロナウイルスの影響が落ち着かない中で、1社単独での戦いからの脱却に向けて、2021年も引き続き、業界内でのM&Aは同水準で行われていくと想定されます。

2020年の外食企業M&A事例

ここからは、2020年に起きた外食業界の注目M&A事例について解説をさせて頂きます。

ミールワークス × アークランドサービス

~業態開発力×展開ノウハウによる新たな事業拡大化~
ミールワークスは2014年設立、タイ料理専門店「マンゴツリー」やシーフードレストラン「ダンシングクラブ」を中心に展開している企業です。

今回のM&Aを通じて、アークランドサービスHDグループの飲食店の経営ノウハウ、フランチャイズチェーン本部の運営ノウハウと、ミールワークスの業態プロデュースのノウハウなどを結集させることで、新たな事業の拡大に繋げるとの目論見のもとM&Aを実行されております。

大将軍 × 木曽路

~地域一番焼肉企業×しゃぶしゃぶ日本一企業~
大将軍は国産牛にこだわっているのが特徴で、千葉県を中心に高級業態の「大将軍」や中価格帯の「くいどん」など38店展開している企業です。

木曽路は自社ブランドの焼肉店「じゃんじゃん亭」を東海地区に15店持っており、買収で木曽路に占める焼き肉事業の売上比率を現在の約5%から20%程度に引き上げとされております。今後は大将軍のブランドを東海地区で展開することも視野に入れており、木曽路は冬期に売り上げが偏る一方、焼き肉は夏期の売り上げが比較的大きい、会社全体の業績の季節変動を小さくし、焼き肉事業をしゃぶしゃぶに次ぐ柱にする考えのもとM&Aを実行されております。

大黒商事×壱番屋

~地方の超有名店舗 × チェーン展開企業~
大国商事は北海道の有名ジンギスカン店「大黒屋」を運営されている企業です。

オーナーは67歳であり、自身の夢であった多店舗展開を実現できる会社との資本提携を望んでおりました。
壱番屋はカレーハウス「CoCo壱番屋」のチェーン展開を行っており、既存ビジネスのカバー率の高止まりによる成長鈍化が生じており、新たな成長戦略の模索している中で、本件М&Aを実行されております。

一品香 × イートアンド

~老舗の味の継承し、マルチチャネルで販売~
一品香は1955年に創業し、国内におけるタンメン発祥の店とされており、横浜市内を中心に11店舗を展開している企業です。

イートアンドホールディングスは餃子専門店「大阪王将」を中心に、ラーメン、ベーカリー、カフェなど多様な業態で全国に480店舗あまりを展開している企業様で、「横濱一品香」の伝統と老舗の味を取り込むことで、既存事業とのシナジー(相乗効果)創出(既存店舗でのクロスセル・冷凍食品化)を期待してM&Aを実行されました。

SASAYA × 雄渾キャピタル・パートナーズ

~ファンドよる支援で成長企業が次のステージを目指す~
SASAYAは2008年設立、大阪を中心に備長炭「やきとり坂上家」、炭屋キッチン「やまや」、蛸焼とおでん「くれ屋」などの複数ブランドを展開しており、社員独立制度などを積極的に活用している成長企業です。

雄渾キャピタル・パートナーズは、優良ファンドとして知られたヴァリアント・パートナーズ創業者の櫻井氏と、日興プリンシパルインベストメンツ出身の阿部氏が立ち上げた、ミッド/スモールキャップの独立系PEファンドで、原則として議決権の過半数を取得し、3~5年の投資期間中に企業価値の向上を目指すという目的のもとM&Aを実行されました。

この他にも、多くのM&Aが実行されましたが、いずれも1社単独で戦うのではなく、お互いの強みを活かして、共に成長していくという「協調戦略」のもとM&Aを実行されています。

今回の新型コロナウイルスは外食業界に多大な影響を与えていますが、これを期に自分たちだけで乗り切ろうとせず、M&Aで外部資本活用し、今まで以上に大きな成長を目指されるもの良いのではと思います。

いかがでしたでしょうか?
2週間に1回に渡って今後も食品業界支援室から最新の業界情報をお届けさせて頂きます。
次回のコラムは食品業界支援室図斉よりお送りいたします。

食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。

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また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

著者

高橋 空

高橋たかはし そら

日本M&Aセンター業種特化2部/食品業界専門グループ

1991年9月、神奈川県生まれ青山学院大学経営学部卒業後、株式会社船井総合研究所にてフードビジネス専門のコンサルティングに従事した後、日本M&Aセンターに入社。食品業界専門グループにて、食のベンチャー企業のイグジット支援から創業100年を超える老舗企業の事業承継支援まで幅広くM&A支援に携わる。

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