食品製造業界M&Aの歴史と未来予想図

江藤 恭輔

日本M&Aセンター業種特化2部 部長

業界別M&A
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私たちの日々の生活を彩る食品。一口に「食品製造業界」と言ってもその業種は多岐に渡り、農業から食品加工(例えば製糖、製麺、菓子製造、冷凍食品、健康食品など)、飲料に至るまで幅広く深く私達の生活に関わっている業界の歴史や最近の動向をご紹介する。

食品製造業とは

業界定義

食品製造業は、原材料を仕入れ、食料品・飲料品へ加工製造を行い販売する業態だ。

  • 畜産
  • 水産
  • 野菜、果実
  • 調味料
  • パン、菓子類
  • 惣菜
  • 冷凍食品

など取り扱う範囲は多岐にわたる。

事業特性

「食」にまつわる業種だからこその安全性の担保が最重要だ。設備の管理・投資には十二分に注視する必要がある。安全だけではなく、「安心」をアピールすることも不可欠であり、とくに異物混入などの事故があった場合には信頼回復がその急務となる。

また、原材料の価格変化に対応しなければいけない業種である。気象の変動や為替事情によりしばしば打撃を受けることは間違いない。そうでなくとも業界を通して季節性の起伏が存在しており、季節・暦や年中行事、地域行事によって売れ筋は刻一刻と変化する。事業者はこれに応じて人員の稼働を調整したり商品の品質を調整をしたりすることが求められる。

食品製造業界のM&Aの歴史~未来

M&Aに特化して食品製造業界の歴史を俯瞰し、そこから業界の未来を考察していきたい。

初期のM&Aは財閥間のシェア争い

「M&A」という横文字の言葉遣いをすれば、それは最近のことのように見えるかもしれないが、その実、食品製造業のM&Aの歴史は明治にまで遡る。

明治政府が成立するまで210年間も鎖国が続いていた当時の日本は諸外国への遅れを取り戻すためにも、自ら積極的に産業を起こす「殖産興業政策」が推進されていた。
資源の乏しい日本では原材料を輸入し製品を加工・輸出して外貨を稼ぐ必要があったことから、政府によるテコ入れのもと財閥が中心となって貿易商社が設立される。これにより財閥の力は以前に増してより強固なものになっていく。

1886年(明治19年)には物価の安定と低金利による金融政策から、いわゆる「企業勃興」と呼ばれる株式会社設立ブームへ突入。この前後で多くの企業が誕生した。

1885年には“キリンビール”の前身である「ジャパンブルワリー」が、1889年には“アサヒビール”の前身である「大阪麦酒株式会社」が生まれた。1893年には“ヱビスビール”を生産していた「日本麦酒」、1899年には“サントリー”の前身となる「鳥井商店」が成立。日本がビールを輸入から自国生産へとシフトしていく変革期を迎えたのである。

時を同じくして、1888年に現在の“ホテルオークラ”や“大成建設”を生んだ財閥の「大倉組」による「札幌麦酒醸造所」の譲受が行われる。「札幌麦酒醸造所」は“サッポロビール”の前身だ。この譲受が日本初期のM&Aの1つに挙げられると考えられるだろう。
こうした大手資本のビール産業への参入により、個人事業主の多くは大規模な生産体制の構築ができず撤退へと追い込まれ、大手同士でも競争は激化していった。

特に三井系であった「日本麦酒」は経営難に陥り、三井物産の重役であった日本麦酒の馬越恭平社長は内閣に働きかけ、1906年に「国内の過当競争排除」と「輸出の促進」および「資本の集中化」を図るための政府による合併勧告を引き出した。これによりビール業界における業界再編が進み「日本麦酒」「札幌麦酒」「大阪麦酒」が合併。市場占有率が約7割に達する「大日本麦酒株式会社」が誕生したのである。

現在の中国などもそうだが、国力を上げるためにも巨大な再編を行い、世界とわたり合える企業を創っていく過程が産業の成長過程では必要だったのかもしれない。

老舗の技術と味を後世に残す事業承継型M&Aの普及

現在の食品製造業界のM&Aのトレンドとして、大手企業を中心に海外案件を積極的に譲受されている状況は、味の素の例など先述の通りだが、国内のM&Aにおいては後継者不在の老舗企業の技術や味を後世に残すためのM&Aもトレンドの一つだ。悲観的な意味のない、積極的で円満なM&Aが増えてきている。

2018年5月28日の日経新聞朝刊では、2017年度に倒産、休業した企業数が過去最多に上った背景は「経営者の高齢化と後継者不足」であり、さらに廃業予定の中小企業の3割が「他社と比べて業績が良い」と答えているという調査結果が報告されている。つまり業績は上々だが、高齢化・後継者不足を理由に会社を畳むことを余儀なくされている経営者が非常に多いということだ。

こうした潮流の中、老舗企業を含めた中小企業の事業を存続させるための有効な打開策としてM&Aが活発になってきたのだ。

食品製造業よりも先に業界再編が進んでいた食品卸業界を見てみよう。同業界では企業が他社との差別化を図るために、優れた技術を持つ老舗の食品製造業を譲受するケースが多数見受けられる。たとえば、南九州最大手の業務用食品卸売事業者である「西原商会」は、1948年創業の老舗製麺事業者である「五島製麺」を2018年に譲受している。

五島製麺は全国でも珍しい低温熱成冷風乾燥での製法により、高い品質を誇る。これにより西原商会は競争力のある商材を新たに自社の販売ルートへ乗せることができた。

SNS×スモールマス市場。最新の食品製造M&A

今後も国内の人口減少を受けての海外進出や、高い技術や収益力がありながらも後継者不在の企業を存続させるためのM&Aは、よりいっそう活発になっていくことだろう。

しかしM&Aが活発になる理由はそれだけではない。

今度はまた違った尺度から意思決定されたM&Aの例を見てみよう。

食品製造業は商品の差別化が難しい。さらに、せっかく良い商品が開発できてもプロモーションにもコストが掛かりすぎる。かといってこのコストは無視できないのが現状だ。SNSが発達する現代において、味だけではなくビジュアルもまた無くてはならない存在になっている。

SNSの普及やビッグデータ解析の技術進展で、消費者の年齢層や性別、所得水準などによって多岐にわたる好みや嗜好に合わせた商品開発が可能になってきているのも事実だ。

たとえば花王は2015年ごろからこれを「スモールマス市場」と呼びマーケティングなどに生かし始めている。

「スモールマス」とは、マス(大多数)とまではいかないものの、一定の規模の市場が見込める消費者の層や集団をさす言葉と解釈できよう。共鳴するファンを持つ一定規模の市場は無数にあり、不特定多数に向けた量産型のマス市場の対極にある市場である。

この市場の商品として、食品製造業界でも、たとえば2017年に投資ファンドのジャフコが、バルセロナ発祥のアート・キャンディ・ショップ「PAPABUBBLE」を譲受された。PAPABUBBLE のキャンディは、口の中でほろほろと溶けていく食感や、ほんのり香る上品な甘さがあり、また季節の変化に合わせ材料の配合や熱加減を調整することで光沢を出しており、まるで宝石のようなビジュアルが特徴だ。

さらに、ショップでは、職人が手作りでキャンディを作っている姿を見ることができる。大きな鍋 から出てきた液体をボードの上に流し、豪快に練り・伸ばし、鮮やかにカットしていくのだ。こうしたパフォーマンスを間近で見られるショップは、さながら小さな劇場のようであると言われておりSNSなどでも話題のショップとなっている。

「アート・キャンディ」のような特定のスモールマス市場に対して、ブランド力のある商材の価値は、付加価値も高く、プロモーションが自然発生的にも起きやすい。高い収益性に繋がる可能性があるのだ。

こうしたブランドをゼロから創りあげることは当然難しく、M&Aで譲受されることは非常に大きなメリットがあると言える。

また、譲渡される企業にとっても、SNSなどで急拡大するにつれ、自社だけでの管理体制に限界が訪れるケースも多い。より大きな資本と組むことで成長を加速させていくことができるようになるのだ。こうした利害の一致から成立するM&Aがこれからは食品製造業で増えてくることは想像に難くない。

近年のM&Aの実情

さて、ここからは2017年から2020年までの食品製造業界におけるM&Aの実情を振り返っていこう。

件数は高水準で推移

2017年、食品業界においては143件のM&Aが実行された。リーマンショック以降、2011年には約70件まで落ち込んだ食品業界M&Aの件数も、2013年以降は100件前後と高水準で推移しており、2017年については、2016年の135件から更に伸長する結果となった。
なお、業態別の内訳としては、外食案件が32件(23%)、食品製造案件が56件(40%)、小売業案件が13件(9%)、食品卸案件が32件(23%)となった。

高水準の件数推移の背景としては、「人口減少による国内市場の縮小及び多様化」・「高度化する消費者ニーズへの対応」の2点が挙げられる。
業務用食品卸大手のトーホーは、2015年12月にグループとして初めてシンガポールのマルカワトレーディングを買収し海外進出を果たしたのに続いて、2017年1月に同じくシンガポールのトモヤ・ジャパニーズ・フード・トレーディングを買収し、同地域でのシェア拡大を実現した。
2010年、国内企業が外国企業を買収した事例はわずか9件であったのに対して、2016年、2017年は共に28件まで増加しており、大手企業の買収対象の矛先が海外企業に向けられている実態が顕著に現れている。

また、これまで平準化されたサービスを低価格で提供して来た外食業界においても、中食産業の成長が著しい中、多様化・高度化する顧客ニーズに対応すべく、M&Aを活用してポートフォリオ経営を加速させている。

丸亀製麺を展開するトリドールホールディングスは、2017年に4件のM&Aを実施。そのうちの一件は、当社として初の取り組みとなる立飲み居酒屋業態「晩杯屋」であり、時代背景に順応したさらなる業態拡充を実現した。
美食米門やヴァンパイヤカフェなどのアルコール業態を中心に展開するダイヤモンドダイニングホールディングスは、カフェなどのノンアルコール業態に強みを持つ商業藝術の全株式を取得。幅広い顧客層の消費マインドに対応すべく、外食産業のM&A件数がなおも高い水準で推移している。

2018年の食品業界は国内で158件のM&Aが実施された(公表ベース、in-in・in-outのみ、out-inは除く。MARRより)。この件数は、 2017年の138件を超えて、過去最多を更新する数値だった。
業態別に見ていくと、食品製造業で約38%、飲食業で約25%、食品卸売業で約23%、食品小売業で約14%となっており、2017年から引き続き、食品製造業が最も高い割合を占めている。傾向として、業態を跨いだM&Aが増えており、問屋の中抜きや卸の外食進出、6次産業化などによる業界の垣根をなくす動きがM&Aに大きく表れている。

老舗の伝統を後世に残す、事業承継型M&Aが進化した2018年

日本国内には、創業100年を超える老舗企業が約27,000社あると言われている。それらの企業の中には、その地域の文化の発展に貢献し、非常に重要な役割を担ってきた会社も少なくない。
しかし、昨今の後継者不足による休廃業の波は、同じく老舗企業にも襲い掛かってきており、2017年は廃業・清算件数が過去最高を記録した。2015年3月には、国内約30%のシェアを誇り海外でも多くの愛用者を持つ1932年創業のチョークメーカー、羽衣文具が後継者不在及び代表の体調不良を理由に廃業している。

休廃業企業の増加は、それだけ日本の伝統が失われることにもつながるが、2018年は老舗企業の伝統の技や味・文化を後世に残すための進化した承継型M&Aが数多く実行された。

練馬区に本店を構え、都内で5店舗を展開する創業1950年の和菓子店、「あわや惣兵衛」は、駅構内などでシュークリームチェーンを展開する洋菓子のヒロタのグループ企業となった。
あわや惣兵衛にとっては、ヒロタが自社工場内に有する和菓子の製造ラインを活用し、生産性の向上を図ることができるほか、商品企画力の増強や人材の補完、共同での店舗開発を実現していくという狙いがあった。ヒロタは本件M&Aにより、自社商品ラインナップの拡充を実施していく。

ほかにも創業1866年の老舗酒造事業者であり、山形県で全国的に有名な「沖正宗」を製造する浜田は、関西圏で不動産賃貸事業を中心にワイナリーやホテル・レストランなどを子会社に持つレゾンディレクションの子会社となった。
レゾンディレクションは、様々な食に関するグループ企業を傘下に保有しており、相互発展を目標に国内トップクラスの知名度を誇る浜田より株式を譲り受け、浜田の150年の伝統を守った。

M&Aが老舗企業の存続と発展を実現する非常に有効な手段ということは、徐々に世の中に認知されてきている。このきっかけとなったのは2014年に実施されたなだ万とアサヒグループHDのM&Aであったと言えよう。

なだ万は言わずと知れた日本屈指の老舗料亭であり、その起源は江戸時代にまで遡る。

アサヒグループHDはなだ万を取得することで、高級料亭の経営手法を獲得し、自社の顧客である飲食企業に提供すると共に、なだ万が持つ海外展開のノウハウをも獲得した。各種メディアにおいては、組み合わせの意外性から驚きの声が方々からあがると共に、老舗企業のあり方を大きく変えるM&Aとして、大きく取り上げられた。

今後も、後継者不在で継続困難な状況に陥る企業は増加の一途を辿るばかりであり、それらの企業を存続させて、伝統と文化、技術や味を後世に残すためのM&Aも増えていくだろう。

2020年食品業界M&Aの総括と2021年の展望

2020年に実施された食品業界M&Aの件数は、公表ベースで133件となり、コロナウイルスの影響で経済活動が長期間停滞していた事実を鑑みると、実質的には増加傾向にあると言える(過年度:2018年144件、2019年135件)。業態別の件数については以下の通りとなる。

食品・外食関連業界M&A件数
レコフM&Aデータベースより、当社作成 /※各業態別の数字は、譲渡側をベースに集計

2020年は、特に外食業界において、コロナ禍により緊急事態宣言が発令され、飲食店の時短営業やソーシャルディスタンスの確保が急務となった。結果として座席数は減少し、営業時間や営業日も縮小を余儀なくされるなど非常に厳しい経営環境が続いた。

その結果、M&A市場における企業価値の下落や、大手外食企業の買収意欲の減退などが目立ち、それぞれの水準は近年で過去最低レベルだ。

一方で、外食の機会が減り、中食の割合が大きく増加した中で、巣籠り需要のプチ贅沢品やEC販売により外出の機会を減らせるようなサービスを展開している事業者では、当然売上が大きく増加した。そのような企業をターゲットとしたM&Aが増え、結果的に製造部門では、ここ3年で過去最高の水準となったのもまた事実である。

小売り業態については、2020年はどの企業も過去最高の売上水準をマークする会社が殆どであったことから、本業が多忙過ぎて、一旦M&Aの動きが鈍化したと考えられる。

2021年については、1月早々から2度目の緊急事態宣言が発令され、再度外食業界を中心に、大きく経済活動が停滞している。この流れは、ワクチンが国民全員に行き渡る2021年中旬ごろまで続くことが予想される。

そのため、食品製造業においては、引き続きM&Aが活発に実施されることが考えられるだろう。一方、昨年減少に転じた外食業界においても、4月以降、政府系金融機関から調達されたコロナ融資の返済がスタートする企業が多く出てくるため、このままキャッシュフローがジリ貧になるのを待つ前に、譲渡を決断する企業が増えてくるのではないだろうか。

また、大手企業側においても、一旦買収意欲が低減していた状況の中から、アフターコロナを見据えた次の投資を、本来の収益力を鑑みると割安で取得できる現状で、次の事業の柱を育てるべく買収を決断する企業が増えてくるだろう。

さらに、最近の動向として、全く外食とは関係ないIT企業や製造業など、異業種から外食企業を買収したいといったニーズや問い合わせも増えており、それらの企業による外食企業へのアプローチも、過年度から比べて大きく増えて行く事が予想される。そのため、上述の大手企業によるM&Aの再開と相まって、今年度外食は、非常に注目の業界と言える。

主な食品製造業のM&A事例紹介(2020年)

3月【売】ポテトかいつか×【買】カルビー
3月【売】鎌倉ニュージャーマン×【買】モロゾフ
3月【売】香り芽本舗×【買】ヨシムラ・フード・HD
5月【売】コスミックダイニング×【買】アークランドサービスホールディングス
6月【売】浅野屋×【買】日本みらいキャピタル
7月【売】豚まんの店幸崎×【買】クリエイツ
9月【売】松山製菓×【買】西原商会
10月【売】トリアノン洋菓子店×【買】21LADY
12月【売】スカイフーズ×【買】竹下製菓
12月【売】ファミール製菓×【買】鈴木栄光堂

2020年に実施された食品製造業における主な成約事例は上記の通りである。
これらの事例からも分かる通り、かまくらカスターなどを主要商品とする鎌倉ニュージャーマン、ひじきふりかけの香り芽本舗、軽井沢で展開する老舗ベーカリー浅野屋、別府のソウルフードとして長く愛されてきた豚まんの店幸崎、粉末ジュースやスナック菓子を得意とする松山製菓、テレビチャンピオンなどでも優勝経験のある都内老舗洋菓子店、トリアノン洋菓子店、一口サイズの小粒なアイスを得意とするスカイフーズなど、直接消費者の口に届けられる製品を作っており、巣籠り需要のプチ贅沢品を取り扱う企業をM&Aによりグループ化する事例が非常に目立った年だったと言える。

主な飲食業のM&A事例紹介(2020年)

2月【売】竹若×【買】あさくま 
3月【売】ミールワークス×【買】アークランドサービスHD
4月【売】雪村×【買】グルメ杵屋
6月【売】SASAYA×【買】雄渾キャピタル・パートナーズ
7月【売】ペッパーフードサービス×【買】J・STAR
7月【売】大戸屋HD×【買】コロワイド
8月【売】FTGカンパニー×【買】Limグループ
10月【売】時計台観光×【買】鴨田誓一氏 ⑨ 11月【売】大将軍×【買】木曽路
11月【売】大将軍×【買】木曽路
12月【売】一品香×【買】イートアンドホールディングス

外食業界については、2020年はコロナ禍による大幅な需要減少に伴い、M&Aにおいても、多くの案件が成約に至らなかった。日本M&Aセンターにおいても、ディールがスタートしたものの、譲渡企業の急激な業績悪化や買い手である大手外食企業の買収意向の減退により、多くのM&A案件がブレイクした。

また、成約したディールのサイズ感についても、規模の大きなM&Aは大戸屋HDやペッパーフードサービスの2件を除き、数十億規模の案件は殆ど見られなかった。

一方で、年度後半の10月~12月にかけては、上述の通り次の事業の柱を獲得すべく、大手企業のM&Aに対する意欲が一定の回復を見せ、上場企業による買収が増加傾向に転じた。

また、人工知能を活用したマーケティング開発事業を軸にグローバル展開するLimグループが、オーナーズビーフを日本で初めて採用した焼肉店「YAKINIKU FUTAGO 17th St.」を展開するFTGカンパニーを買収するなど、これまでの外食企業ではノウハウを持たない、新しいマーケティング・集客のノウハウを融合させ業績の向上を実現できるIT企業などの買収が、今後の動向を示唆する特徴的な案件であったと言える。

著者

江藤 恭輔

江藤えとう 恭輔きょうすけ

日本M&Aセンター業種特化2部 部長

1982年12月、宮崎県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、大手金融機関にて約10年法人営業に従事した後、2015年10月、日本M&Aセンターに入社。その後、食品業界専門グループを立ち上げ、大手外食企業のM&Aを中心に、数多くの食品関連M&Aを手掛ける。2023年4月には同グループを部署に昇格させ、メンバー全員で、全国の優れた食文化の存続と発展をサポートしている。代表的な成約実績は、トリドールHDとアクティブソース(立ち飲み居酒屋晩杯屋)、トリドールHDとZUND(ラーメンずんどう屋)、サッポロライオンとハンエイ(餃子専門店である大阪王)、佐賀県の老舗アイス菓子メーカーである竹下製菓と生クリームパンメーカーの清水屋食品、PEファンドであるエンデバー・ユナイテッドと関西レストランチェーンのアートオブウォー・バサラダイニングの資本提携など。

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