創業200年の老舗食品製造業がМ&Aで次の300年を目指す
⽬次
- 1. 創業200年の老舗食品製造業がМ&Aを決意した日
- 1-1. 後任の派遣など引継ぎがしっかりできる企業
- 1-2. 自社所属している市場外のプレイヤー
- 1-3. 自社にない販路を持っている企業様、
- 2. 創業300年の食品製造業を目指してМ&Aで更なる成長を
- 3. 最後に
- 3-1. 著者
日本М&Aセンター食品業界専門グループの高橋です。
当コラムは日本М&Aセンターの食品業界専門グループメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は、創業200年の老舗食品製造業がМ&Aで次の300年を目指した事例について執筆させて頂きます。
創業200年の老舗食品製造業がМ&Aを決意した日
2020年の某日、とある老舗食品製造業のA社から事業承継のご相談を受けました。
A社は創業200年を超えている企業様で、地域の食材を使った商品を展開するなど、まさに地域を代表する食品製造業でありました。
そういった中、社長は7代目として会社経営をされておりましたが、「後継者不在」、「作っている食品の市場規模の縮小」、「役員である親族の体調不良」などから今後の企業の存続と発展を考え、当社にご相談を頂きました。
社長としては、会社の存続と発展のためには、自分たちとは違った強みを持つ企業とのМ&Aが必要不可欠だと考えている一方で、親族の中には一部反対の声があがりました。
反対されている一番の理由としては、「他の会社のグループになることに対する、得体の知れない不安感」という点でした。この問題に対して、社長は一人一人に対して、手紙を書くなど、なぜМ&Aをする決断に至ったのか、今の会社にとっていかにМ&Aという手段が重要か、ということを必死に説明され、当時は渋々ではあったものの、何とか合意を得ることが出来、お相手探しを始めることとなりました。
##社長が掲げたМ&Aにおけるお相手探しの3つの条件
社長が求めるМ&Aパートナーとしては、下記を条件に挙げられました。
後任の派遣など引継ぎがしっかりできる企業
自社所属している市場外のプレイヤー
自社にない販路を持っている企業様、
1に関しては、もっとも重要視されており、既存の社員の中から経営陣に引き上げることは難しく、会社運営を継続していくためには最も重要な要素として捉えられておりました。
2に関しては、自社が所属している食品業界がクローズドなマーケットで、市場のプレイヤーも限定されているため、一度話が漏れると一気に広まってしまうリスクを考え、シナジーは見込みやすいものの避けてお相手を探す方針となりました。
3に関しては、М&Aを通じて自社単独では実現できない成長を目指すという目的の中で、自社の商品を更に拡販できる可能性を持ったパートナーと組むのがベストではないかということで、上記の3点を軸にお相手探しをスタートしました。
しかし、お相手探しを始めた当初は、自社が扱っている商品が、現代の日本においてはあまり食べられなくなってきている商品であったため、なかなか具体的な候補先が出てこない日々が続いており、この当時の社長としては、なかなかお相手が出てこないことに対する焦りや不安など様々な葛藤があったかと思います。
それでも、会社や従業員のことを考えたときに、当初掲げた3つの条件を変えることは良くないと考え、自社にとって最良のパートナーを探し続けることとなりました。
そういった中、ご相談を頂いてから約1年後に急成長中の食品卸の会社様から、自社のパートナーとなって欲しいとの意向が上がることとなります。
創業300年の食品製造業を目指してМ&Aで更なる成長を
こちらの食品卸の会社様は、とある小売ビジネスを展開しいてる上場企業と業務提携を行っており、そちらの会社の食品卸を一手に担っている急成長中の会社様でした。
社長も40代と若く、事業意欲が旺盛で、A社の社員にはないアグレッシブさを持っており、A社の社員にとって刺激になるであろうということ、自社とは違った販路を活用して成長しているということもあり、この会社と手を組む事が出来れば、良い形で会社が生まれ変わることが出来、次の成長も実現できるであろうと、面談を重ねる中でA社の社長は考えていき、М&Aを決意することとなりました。
M&A当日にはA社の社長、奥様、娘様も集まり、株の引渡しを行うこととなりましたが、無事М&Aが終わったあとのA社の社長は晴れ晴れとした表情をされており、創業200年の企業を次の若い経営者に託すことが出来、これまでの重責から解放された瞬間でもあったかと思います。
最後に
創業200年を超えている企業は日本で約1,200社しかなく、世界的に見ると、創業200年を超えている企業数は日本で世界の約60%を占めており、A社は日本のみならず、世界を代表する老舗食品製造業の1社であります。
今回のМ&Aを通じて、日本に約600社しかない創業300年の会社となるために、更なる成長が出来るのではないかと信じております。
日本にはまだまだ、後世に残すべき老舗の食品企業様が数多くあるかと思います。我々はそういった企業様を1社1社未来に繋いでいきながら、日本の食文化を維持・発展させることに一助となれればと思っております。
いかがでしたでしょうか?
今後も食品業界支援室から最新の業界情報をお届けさせて頂きます。
次回のコラムは食品業界支援室 図斉よりお送りいたします。
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