【連載「会計事務所のための補助金解説」②】初めてでも分かる補助金の基本
※本記事は、中小企業の経営者から経営、事業承継についてご相談を受ける機会の多い、会計事務所のご担当者に向けた連載記事です。
皆さんこんにちは。株式会社湘南フロンティアで補助金サポーターをしております、藤井と申します。
会計事務所向けに補助金を分かりやすく解説する活動を行っております。
皆さん、顧問先のお客様に補助金の説明をサラッとできたら、その後のサポートにつなげやすいと思いませんか?
今回は「補助金とはそもそも何か?」という疑問に対して解説します。補助金のポイントをまとめた内容ですので、顧問先の経営者へ補助金制度を説明する際の参考になさってください。
この記事のポイント
- 補助金は経営者にとって、プロジェクト費用の一部が後に交付される魅力的な制度であり、特に新規事業の資金負担を軽減する役割がある。
- 補助金申請には、事業計画書の作成や公募要領の理解、事務手続きの厳守が必要で、採択後も資料整理が重要である。
- 補助金サポートの料金相場は、着手金5万~15万円、成功報酬が補助金額の10~15%であり、採択後の支援は含まれないが、費用対効果は大きい。
⽬次
補助金=お金を払った後にもらえるお金
補助金とは、経営者が取り組んだプロジェクトの費用を支払ってから、その一部が補助金として交付される制度のことです。(交付には申請手続きを経て、採択されることが条件となります。)
例えば、あなたがカフェのオーナーだとします。新しく、自家製アイスクリームを開発してメニューに加えたいと考えています。
当然、アイスクリームを作るための機械が必要となりますが、もし導入できれば、売上を年間300万伸ばすことができるとします。仮に、アイスクリームを作るための機械の経費が60万円だったとしましょう。
この時、補助金の上限が50万円かつ補助率が2/3の「小規模事業者持続化補助金」に申請し、審査が通れば、40万円(60万円×2/3)がプロジェクト終了後に国から交付されます。
つまり、本来60万円かかる予定だったプロジェクトを、実質20万円(機械の導入費用60万円-補助金40万円)で実現することができます。
補助金は経営者の特権
では「誰」が申請できる制度なのでしょうか?
実は、 補助金は「経営者のみ」が申請することができます 。言い換えると、従業員は申請することができません。
補助金は税金を使う制度でありながら、経営者だけが申請できるので、いわば経営者の特権と言えます。
補助金は毎年、数百種類募集されています。もし新しく展開するプロジェクトの費用を補助金で抑えることができれば、経営者にとって心強いと思いませんか?
そのうえ、補助金の申請自体は無料で行うことができます。
知り合いの経営者の中には、補助金を計8回活用して、事業を拡大していると話していました。
このことからも、補助金の活用を知っている人は、どんどん使いこなして会社の成長につなげていることが分かります。
補助金はどんな場合に使えるか?
補助金には、必ず押さえなければならないポイントが3つあります。
1)補助金で申請したプロジェクトは、採択されてから始めなければならない
「来月機械を購入するために補助金が欲しい」という経営者の声をよく耳にします。しかし残念ながら、その費用を補助金の対象にすることができません。
なぜなら、補助金は採択されて交付決定(「事業を進めてよい」と国から許可が降りること)されるまでに、約半年ほどかかるからです。
補助金は半年後〜1年後に支払う経費を洗い出した上で申請しましょう。
2)補助金には厳格な審査があり、通過しない場合もある
補助金サポーターの仕事は、あくまで「経営者の企画を資料にまとめるお手伝いをすること」です。
言い換えると、社長の持っている企画の良し悪しで補助金の採択率が変わります。意外かもしれませんが、採択されやすい事業計画書の特徴は「補助金の活用が無くても、黒字が見込める企画」です。
なぜなら、補助金の審査では多くの場合「収益性や事業が成功する見込み」などが審査対象になるからです。補助金がもらえなくても黒字、補助金が活用できればさらに黒字が期待できる。そんな企画が求められています。
補助金の採択を約束することはできませんが、採択率を上げるよう「企画(事業計画)を磨く」ことはできます。
補助金サポーターは実現性が高くどんどん黒字になっていくような企画、事業計画を経営者と一緒に作っていくことが大切です。
3)採択されても、事務手続きをおろそかにしたらアウト
事業計画書が無事に採択されても、まだ安心はできません。
補助金が交付されるためには、様々な事務手続きを進めなければなりません。
複数社の見積もりを比較検討して、より低価格な会社に業務を依頼したり、発注書や納品書などを整理したりと、何かと手間がかかります。
社内に経理担当がいる会社であれば問題ありませんが、創業間もない企業では、書類の管理やチェック体制が整っていないことも多いです。
手続きを行うにあたって、提出書類の体裁、見積書の有効期限が切れる前に契約しているか等、厳しくチェックする必要があります。
補助金の事務局に書類を提出すると、山のように修正依頼が来ることも珍しくありません。補助金の財源は税金なので、書類の管理・提出準備を厳密に行わなければなりません。
補助金サポーターの間では、採択を勝ち取るよりも、資料整理が大変だと言う人もいるくらいです。
資料整理をおろそかにすると、当然補助金は交付されません。
顧問先と定期的に打ち合わせをする機会があるのであれば、資料整理の状況確認は行いやすいでしょう。
補助金サポートの料金相場
筆者が考える、一般的な補助金サポートの料金相場は以下のとおりです。
- 成功報酬:補助金額の10%~15%
ここで紹介する「着手金」は事業計画書の作成サポート費用です。 補助金サポーターに依頼でき*業務範囲は、計画書の作成支援、公募申請に必要な書類のチェック、スケジュール管理などが挙げられます。
なお、あくまで「採択する」という目的のため、 採択後の支援は含んでいません 。
経営者側としてのリスクは着手金ですが、万が一、不採択になっても返金はされません。
また、補助金サポートには補助金の採択を確約するサービスもありません。
しかし、大型の補助金で採択された場合であれば、1000万円~2000万円規模の投資を一度にコストカットすることが可能です。スムーズな申請をサポートしてもらい、先行投資額を実質大幅に抑えることができるので、申請する企業側からすると、費用対効果が大きいと言えるでしょう*。
最後に
補助金の概要はイメージできましたでしょうか?
経営者に補助金のルールやメリット、デメリットをしっかり伝えた上で提案できれば、顧問先との信頼関係構築や、業務領域拡大にもつなげられるでしょう。
ぜひ、顧問先への提案内容の1つとして、参考になさってください。
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