デジタルマーケティング業界のM&Aについて

馬 俊飛

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馬俊飛

日本M&Aセンター東日本事業法人4部

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デジタルマーケティングイメージ

皆さん、こんにちは。日本M&AセンターIT業界専門チームの馬 俊飛と申します。

私は大学でデータサイエンスを専攻後、当社に新卒入社しました。入社以降は一貫してIT業界のM&Aのご支援を行っております。

IT業界と一言で言っても非常に領域の広いセクターとなりまして、受託開発、SESは勿論、直近ではデジタルマーケティング、データアナリティクスと様々な業種がM&Aの対象 となっております。

その中でも本日はデジタルマーケティング業界につきまして、M&A動向や今後の展望をお伝えできればと思います。

デジタルマーケティングとは?

デジタルマーケティングとは、インターネットやモバイルデバイス、ソーシャルメディアやその他のデジタルチャネルを通じて、製品やサービスを宣伝し、販売するためのマーケティング活動を指します。

デジタルマーケティングは、検索エンジン最適化(SEO)や検索連動型広告、ソーシャルメディアマーケティング、コンテンツマーケティング、メールマーケティング、アフィリエイトマーケティング、インフルエンサーマーケティングなど、様々な方法で実施されます。

デジタルマーケティングは、 従来のマーケティング方法と比較して、効果計測がしやすい という利点から、より効果的で費用対効果が高く、世界中の潜在的な顧客にアプローチすることができるというメリットがあります。

具体的なデジタルマーケティングの施策は?

デジタルマーケティングには様々な施策があります。以下に代表的な施策をいくつか挙げてみます。

1. 検索エンジン最適化(SEO)

検索エンジン最適化は、ウェブサイトのコンテンツや構造を最適化することで、検索エンジンの検索結果で上位に表示されるようにする施策です。

2. 検索連動型広告

検索連動型広告は、特定のキーワードを検索したユーザーに対して、関連する広告を表示する広告手法です。

3. ソーシャルメディアマーケティング

ソーシャルメディアマーケティングは、ソーシャルメディア上でコンテンツを配信することで、ユーザーの関心を引き、製品やサービスを宣伝する施策です。

4. コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングは、ウェブサイトやブログなどで有用な情報やエンターテイメントを提供することで、ユーザーの興味を引き、製品やサービスを宣伝する施策です。

5. メールマーケティング

メールマーケティングは、メールを通じて製品やサービスを宣伝する施策です。メールの送信先は、購入履歴や登録情報などから特定されたターゲット層に限定されるケースもあります。

6. アフィリエイトマーケティング

アフィリエイトマーケティングは、自社製品やサービスを提供している他の企業のウェブサイト上で広告を出し、リンクをクリックして商品を購入した場合に報酬を支払う施策です。

7. インフルエンサーマーケティング

インフルエンサーマーケティングは、有名人や専門家などの影響力のある人物に、製品やサービスを体験してもらい製品やサービスを宣伝してもらう施策です。

これらの施策を組み合わせることで、効果的なデジタルマーケティングを実施することができます。

デジタルマーケティングとアナログ広告の違いとは?

デジタルマーケティングと一般的なマス広告の主な違いは、広告の媒体やチャネル(オンラインかどうかなど)が異なることです。

一般的なマス広告は、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ポスターや看板などの伝統的な媒体を使用します。

これらの広告媒体は、広告主が対象とするターゲット層によって制限されることがあります。
また、効果を測定することが困難である場合があります。

一方、デジタルマーケティングは、インターネットやモバイルデバイス、ソーシャルメディア、電子メール、検索エンジンなどのデジタル媒体を使用して、よりターゲットを絞った広告を行うことができます。

また、デジタルマーケティングは、広告効果を測定することが比較的容易であり、リアルタイムでキャンペーンの成果を評価し、必要に応じて改善することができます。

さらに、デジタルマーケティングでは、ユーザーがオンライン上で行動したデータを収集し、その情報を分析することができます。これにより、より効果的なターゲット広告を作成し、費用対効果を高めることができます。

総合的に言えば、デジタルマーケティングは、よりターゲットを絞った広告を行い、効果的な広告を作成するためのデータを収集し、その効果を測定することができる点で、従来の広告と比較して優れていると言えます。

デジタルマーケティングの市場動向は?

デジタルマーケティングの日本での市場規模は、急速に拡大しています。以下に、日本のデジタルマーケティング市場に関するいくつかのデータを示します。

リサーチ会社のIDC Japanによると、2020年の国内デジタルマーケティング関連サービス市場は、前年比2.6%増の4,305億円であり、2020年~2025年の年間平均成長は7.2%、2025年の市場規模は6,102億円になる見込みです。

同社ではデジタルマーケティング業界をITサービス市場、ビジネスサービス市場に分けており、同ITサービス市場は、マーケティングプラットフォームの導入需要、周辺システムとの連携開発やデータ統合の需要により、2020年~2025年に年間平均成長率が 3.2%で、2025年に2,296億円となる見込みです。

同ビジネスサービス市場は、ビジネスコンサルティングサービス需要の高まりを背景に、2020年~2025年にCAGR 10.2%で成長し、2025年に3,806億円になると予測しています。

参考URL:IDC「国内デジタルマーケティング関連サービス市場予測を発表」

また、オンラインショッピングの急速な普及により、リターゲティング広告や商品レコメンド型広告、データドリブンマーケティングなど、顧客の行動履歴を活用した広告手法が注目されています。

これらのデータからも、日本のデジタルマーケティング市場が拡大していることがわかります。
今後も、オンラインビジネスの発展やスマートフォンの普及により、デジタルマーケティングの重要性が高まっていくことが予想されます。

デジタルマーケティング業界のM&A動向は?

デジタルマーケティング業界のM&A(合併・買収)は、近年非常に活発に行われています。

デジタルマーケティングは、急速に成長している市場であり、企業間の競争が激しくなっているため、M&Aは業界内でより強い地位を獲得するための一つの手段として活用されています。

具体的には、デジタルマーケティングの分野では、大手IT企業やマーケティングエージェンシーが中心となって、新しいテクノロジーやサービスの開発・買収、新しい市場進出や顧客層の拡大、競合他社の排除などを目的に、M&Aを行っています。

また、M&Aにより、デジタルマーケティングの市場において、企業が持つ技術やサービスの補完・強化が可能となり、より多角的なサービスの提供やグローバル展開が進むことも期待されています。

総じて、デジタルマーケティング分野においてM&Aが盛んであり、今後も市場の拡大や競争激化に伴い、M&Aは一層活発化することが予想されます。

デジタルマーケティング業界の代表的なM&A事例は?

下記は、2015年以降での代表的なデジタルマーケティング領域でのM&A事例となります。

1.電通グループによるディグ・イントゥ社の買収(2022年)M&A事例

【ディグ・イントゥ社概要】
・社名:(現社名)株式会社ディグ・イントゥ
・本社所在地:北海道札幌市中央区南1西2-5 南一条Kビル7F
・設立:2018年1月
・従業員数:185名(2022年5月時点)
・事業内容:デジタルマーケティング領域における運用およびオペレーション業務

同社は2018年1月の設立当初より、電通デジタルのデジタル広告運用業務(運用型広告の入稿から運用、レポーティング、効果分析から改善)を支援し、事業規模を拡大してきました。

本件M&Aを通じ、電通デジタルとともに業務領域の拡張、運用品質の向上、北海道以外の拠点を含めた地方人財の採用など、連携強化による事業のさらなる拡大を図ることで成長戦略を加速させていく狙いです。

2.ニューラルポケットによるフォーカスチャネルの買収(2021年)M&A事例

ニューラルポケット社は、エッジ端末へのAI実装技術、幅広い物体·人物認識技術、高度な独自AIライブラリなど最先端画像解析技術の活用した事業を展開している東証上場企業です。

2019年より大型の商業施設、オフィスビル、地方自治体を中心にAIカメラを搭載したデジタルサイネージを数多く展開していました。

フォーカスチャネル社は都心部の大型ハイグレードマンションのエントランスを中心にサイネージ広告事業を展開するマンションサイネージの先駆者(リーチ人数10万人超)として急拡大している企業です。

高所得者層をターゲットとした明確なターゲッティングが大きな特徴となっています。本件子会社化に伴い、ニューラルポケット社の保有するAI技術・広告配信 技術提供で、広告サイネージ事業の更なる成長を推進する狙いがあります。

譲渡価格は250百万円で、当該取得対価に加えて、業績の達成割合に応じて条件付対価 (アーンアウト対価)を株式取得の相手先に支払う合意がなされています。

デジタルマーケティング業界の今後のトレンドは?

今後のデジタルマーケティング領域でのM&Aについては、商流の獲得、クロスセル・アップセル商材の取り込みはもちろんのこと、最新技術の獲得も大きな狙いになると考えています。

直近では、下記の2つのテーマがトレンドになるのではないかと思います。

1. プライバシー保護の強化

プライバシー保護に関する法律が世界的に強化されており、アドテク業界もこの動きに対応する必要があります。

例えば、クッキー(Cookie)を利用した広告ターゲティングが難しくなってきており、代替技術として、クッキーレス(Cookieless)広告配信の技術が注目されています。
DMPを活用した広告配信等注目されておりますが、この流れがさらに加速するのではないでしょうか。

2.バーチャルコンテンツの拡大

バーチャルコンテンツは、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)などの技術を活用した、仮想的なコンテンツです。

近年では、ARを利用した広告や、VRを活用した商品体験などが注目されています。
没入感のある映像は購買意欲の喚起にも効果的ではないかと言う話もあり、ホットなトピックかと思います。

まとめ

今回は具体的なM&Aの事例に触れさせていただきました。

私自身、1ヵ月で約50社以上のIT企業の経営者の方々とお会いさせていただいている中で、デジタルマーケティングへの事業拡大を考えているものの、人材面を中心に社内における既存アセットが不足していると良くお聞きします。

このような課題に対して、時間を買うという文脈でのM&Aは有効な経営オプションの一つだと考えております。

IT企業の経営者の方々には、事業を拡大していく上で、重要な選択肢としてM&Aをぜひとも検討いただきたいと考えています。

当社はIT業界のM&Aだけでも累計350件以上の成約実績があり、業界に精通したコンサルタントが多数在籍しています。実績のあるIT業界専門のM&AチームでIT業界の経営者の皆様の課題解決をサポートさせていただければと思います。

IT業界のM&Aをご検討の際には、ぜひとも当社に一度ご相談いただければと思います。

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著者

馬 俊飛

俊飛しゅんひ

日本M&Aセンター東日本事業法人4部

北京出身。父は日系企業として初の中国人社長として、ソフトウェア開発会社を経営。慶應義塾大学環境情報学部卒業。在学中、米カリフォルニア大学バークレー校への留学を経て、新卒で日本M&Aセンターに入社。入社以来一貫してIT・ソフトウェア業界を専門にM&Aの支援に取り組んでいる。

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