【今注目されているD2Cとは?】ファッション・衣料業界のM&Aシリーズ 第四章
⽬次
- 1. そもそもD2Cとは?
- 1-1. SNSの普及
- 1-2. 消費者のニーズの多様化
- 2. アパレルD2CのM&Aの事例
- 2-1. 「yutori」の事例
- 2-2. 「AnyMind Group」と「LÝFT」の事例
- 3. まとめ
- 3-1. 著者
日本М&Aセンター衣料業界専門チーム(衣料・ファッション・アパレル業界専門)の水上です。
当コラムは日本М&Aセンターの衣料業界専門チームのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は水上が「今注目されているD2Cとは?アパレル業界M&A最新事例」というテーマでお伝えします。
そもそもD2Cとは?
D2Cとは「Direct to Consumer」の略称です。
企業がAmazonや楽天等の大手プラットフォームや小売店等を挟まずに、SNSや自社ECサイトを通じて直接消費者に商品を販売するビジネスモデルです。中間業者を挟まない為、柔軟性もありかつ効率よく商品を販売することができます。商品をダイレクトに顧客に届けることができる、顧客と直接やり取りができる、生きた顧客のデータを取得できる等のメリットが挙げられます。
D2Cが今注目されている背景は様々ありますが、大きくは2点あると考えられます。
SNSの普及
X(twitter)やInstagram等のSNSの利用者が増加し、今後も拡大が見込まれます。数多くのインフルエンサーが誕生し、企業も公式アカウントを作って参入しています。
SNSのライブ配信でダイレクトに消費者にアピールすることもできますし、広告等もピンポイントで訴求しやすくなっています。消費者と直接コミュニケーションを取り易くなったことが要因の一つだと言えます。
消費者のニーズの多様化
現代社会においてはSDGs意識の向上等も起因し、従来までの単純に機能性が優れている、価格が安いものを購入するという消費者の価値観に少しずつ変化が生まれてきています。ブランドの提供する商品の価値や開発までのストーリーなどに共感してもらえることが、購入の一つのポイントになっています。
アパレルD2CのM&Aの事例
「yutori」の事例
2018年に創業、現在はZOZOの傘下で「古着女子」の運営や「9090」、「SPOON」をはじめとする複数のD2Cブランドを手掛けております。
yutoriは現在では21ブランドを展開し、SNSでの総フォロワーは260万人を超えており、2023年のIPO達成を目指し事業規模を拡大しています。
2022年にはA.Z.Rを吸収合併、「F-LAGSTUF-F」(以下、フラグスタフ)の事業を譲り受けました。A.Z.Rは2020年創業でストリートテイストをメインにした8ブランドを展開しておりました。
店舗数に関して、yutori参入前は2店舗でしたが、参入後に8店舗と1年で6店舗増えています。
フラグスタフは2014年に立ち上げ、ミリタリーやアウトドアの要素を含んだストリートウェアを展開しています。
yutoriに参画することで、フラグスタフのものづくりとyutoriが保有しているInstagram、Tiktok等のSNSマーケティング、商品開発で連携をしながら更なる拡大を目指しています。
「AnyMind Group」と「LÝFT」の事例
2020年5月にインフルエンサーマーケティング事業を展開する「AnyMind Group」と、フィットネスブランド事業を展開する「LÝFT」が資本提携をしました。
AnyMind Groupは2023年3月にグロース市場に上場し、EC・D2C、マーケティング支援などの事業を展開しています。
LÝFTは、日本有数のフィットネスインフルエンサーであるエドワード加藤氏がプロデュースを行っているD2Cフィットネスアパレルブランドです。
AnyMind Groupとしては今後、マーケティングにおけるインフルエンサーの起用だけではなく、個のブランド化、流通を最大化し、インフルエンサービジネスのアップデートを考えています。
LÝFTの今後の展開の可能性として、日本国内での事業展開の加速に加えてAnyMind Groupのグローバルチャネルを活用することで、海外進出を実現できる可能性が高まります。
まとめ
特にアパレル業界においてはD2Cとの相性は非常に良い業界です。ブランドイメージやコンセプト、商品開発のストーリーが重視されています。
ブランドとしてどのようなメッセージを発信しているのか、コンセプトやストリーに共感できるかといった点が、消費者が最終的に購入を決める際の大きなポイントとなります。
SNS等を通じて、ブランドメッセージを直接、消費者に届けることができます。自社ブランドの熱狂的なファンを増やすことがD2Cの成功にも繋がります。
国内のアパレル業界の市場規模はピーク時だったバブル期より縮小しています。
市場規模が縮小していく中で、ユニクロ、ZARA等のSPA企業(製造~小売まで一貫して行う企業)が増えアパレル業界での競争は激しくなってきています。
アパレル業界の市場規模が縮小する一方で、D2Cの市場規模は拡大しております。
業界で生き残っていく為の手段の一つとして、今後もアパレル業界においてD2Cビジネスは注目されていくと考えられます。
今回紹介した事例のように他社と手を組むことによって、自社にないリソースの活用、ノウハウを取り込むことで成長のスピードを加速させることもできます。このようにアパレルD2Cが絡むM&Aは今後も増えていくと予想されます。
いかがでしたでしょうか?
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