【スーパーマーケット業界の2大巨頭のM&A戦略レポート】セブン&アイHDとイオンの事例を踏まえて
⽬次
- 1. スーパーマーケット業界の概況
- 1-1. スーパーM&A:買い手メリットと期待効果
- 1-2. スーパーM&A:売り手メリットと期待効果
- 2. セブン&アイHD、イオンのM&A戦略を分析
- 2-1. セブン&アイHDのM&A事例
- 2-2. イオンのM&A事例
- 3. まとめ
- 3-1. 著者
こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界支援グループの水上です。
当コラムは日本М&Aセンターの食品専門チームのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回はセブン&アイHDとイオンのM&Aの戦略についてレポートをお送りさせていただきます。
スーパーマーケット業界の概況
スーパーマーケット業界の大手企業はM&Aを通じて、小売のみに留まらず、IT、金融等ビジネス領域を拡大しながら、生活インフラを提供しています。
最近のスーパーマーケット業界のトレンドとして、PB商品の展開やお弁当・お惣菜需要の高まりが挙げられます。
PB商品は、セブン&アイHDでは「セブンプレミアム」、イオンでは「トップバリュ」が展開されている。PB商品はスーパー側だけではなく、消費者にとってもメリットがある商品です。
スーパー側にとってのメリットは卸売業者を挟まずに販売できるため、高利益率を確保することができます。また、製造方法、デザイン等も指定できるため、商品にオリジナリティを持たせることも可能です。
消費者側にとっては安くてより良い商品を購入することができるため、今後も普及していくことが予想されます。
お弁当・お惣菜は、単身高齢世帯や共働き世帯の増加に加え、コロナ禍でテレワークの普及や外出自粛による巣ごもり需要も追い風となりました。
日本の少子高齢化は今後も改善されることは考えにくいため、需要は増加していくことが予想されます。
スーパーマーケット業界の中でも、セブン&アイHDとイオンの両社は数兆円ほどの売上高で圧倒的な規模を誇ります。
近年のスーパーマーケット業界の動向として、セブン&アイHD、イオンの2強のみではなく、その他の企業でもM&Aが活発に行われています。
2018年にはアークスとバローホールディングス、リテールパートナーズが資本提携をし、2019年には新日本スーパーマーケット同盟を発足しました。
最近は、ロシア・ウクライナ問題、原材料価格高騰、円安等で仕入れ価格が大幅に上昇しており厳しい状況が続いていますが、スケールメリット(規模の優位性)を活かして仕入れコストを削減できる会社は、非常に強い価格競争力を持っています。
M&Aを行うことによって以下のようなメリットが挙げられます。
スーパーM&A:買い手メリットと期待効果
・スケールメリットを活かして仕入れコストの削減ができる
・PB商品の販売チャネルを獲得することができる
・進出できていない地域に進出し、シェアを獲得することができる
スーパーM&A:売り手メリットと期待効果
・大手の傘下に入ることで仕入れ価格抑制等でコスト削減できる
・大手のブランド力、商品力等で、集客力向上が期待できる
・IT投資による人員削減、人材教育による生産性向上が可能となる
・個人保証から解放され、創業者利益を獲得することができる
セブン&アイHD、イオンのM&A戦略を分析
ここでは、セブン&アイHDとイオンの最近のM&A事例をご紹介します。
セブン&アイHD、イオンともにスーパーマーケット事業で生み出している利益は会社全体に占める割合のごくわずかだ。M&A等を通じ、複数のセグメントを構築することによって、様々な事業から利益を生み出しています。
セブン&アイHDのM&A事例
セブン&アイHDは2022年度上期の営業利益2,347億円でした。セブン&アイHDの営業利益は国内、海外のコンビニエンスストア事業と金融関連部門で生み出しています。国内コンビニエンスストア事業でそれぞれ1,267億円、1,155億円。金融関連セグメントでの営業利益は193億円で、後述するイオンと比較すると規模は小さくなっています。
セブン&アイHD が2021年5月に、米国でガソリンスタンド併設型のコンビニエンスストア事業を手がける「スピードウェイ」(オハイオ州)を買収しました。全米人口の50%以上が店舗の2マイル圏内に居住しています。結果、2022年2月期に海外コンビニ事業が前年度比2.3倍の5兆1943億2700万円に急拡大したことが売上を押し上げました。
イオンのM&A事例
イオンは2022年度上期の営業利益は958億円でした。イオンの営業利益はディベロッパー、ヘルス&ウェルネス、総合金融部門が大半を生み出しています。中でも、総合金融部門での営業利益は330億円で全体の30%近くを占めています。
イオンは2022年1月に、100円ショップ事業を展開するキャンドゥを子会社しましたが、2022年上期の業績に与える影響は大きくなく、結果的にM&Aでセブン&アイHDとは大きな差がつく形となりました。
セブン&アイHDとイオンの両社とも経営戦略の根幹にM&Aがあります。すでに数十回のM&Aを実施し、ここまで規模を拡大してきました。
両社とも規模を拡大することによって、メーカーとの交渉を有利に進めることができるのです。ここまで規模を拡大し続けている成長の背景には、M&Aをしてきことが要因といっても過言ではありません。
まとめ
今まで、地域密着により顧客を取り込んできた食品スーパーですが、今後は業界や業態の垣根を超えてスーパーマーケット業界の競争は厳しくなることが予想されます。
コンビニエンスストア、ドラッグストア、ネット通販大手企業等もライバルになり、新規参入も増えていきます。
また、デジタル化も進み、消費の形、店舗のあり方も大きく変わってきています。
将来の不安によって、より規模の大きな企業と手を結ぶケースや、後継者不在によるM&Aは今後も引き続き増加すると考えられます。
M&Aは、シナジー効果により事業を更に発展させる可能性を秘めています。一社単独での成長だけではなく、経営戦略の選択肢の一つとして、M&Aを検討してみてはいかがでしょうか。
いかがでしたでしょうか?
今後も食品業界専門チームから最新の業界情報をお届けさせて頂きます。
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