日医工の上場廃止から考えるジェネリック医薬品卸業界の先行き

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いつもコラムをご愛読いただきありがとうございます。
日本M&Aセンター業種特化事業部の岡田 拓海です。今回は「日医工の上場廃止から考えるジェネリック医薬品卸業界の先行き」についてお伝えします。

日医工の上場廃止が及ぼす医薬品卸業界への影響

2022年12月28日、日医工株式会社は業績不振を理由に申請していた事業再生ADRが成立したことを発表しました。
事業再生案として、国内投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズと、医薬品卸大手のメディパルホールディングスの支援を受け、経営再建を進め、2026年3月期の最終損益黒字化と債務超過の解消を目指すとのことです。

今年3月に第三者割当増資を実施し、田村友一社長は増資後に退任、東証の規定で今年3~4月に上場廃止を予定しております。
今回の上場廃止により、日医工系の卸事業者の多くは取引先持株会で保有している日医工株式の評価損失を被ることが予想され、断続的な医薬品の品薄状態も続いている今、厳しい経営状況を強いられております。

日医工の経営不振の発端は2020年12月に発覚した小林化工の製造上の問題や不正の発覚です。
この不正を始めとし、様々なメーカーへの調査が入り、日新製薬、長生堂製薬、松田薬品工業等が行政処分を受け、日医工にも業務停止命令が下りました。

そのため、ジェネリック医薬品の製造が安定せず、供給不足が続いております。
国はジェネリック医薬品を推奨する一方で、ジェネリック医薬品の品質管理・製造管理の状況を把握すべく、立ち入り調査を厳しくしております。
とはいえ、さらなる厳しい立ち入り調査に踏み切り、仮に各医薬品メーカーでGMP違反が散見されれば、ジェネリック医薬品の供給不足に拍車を掛けることになり得るため、国としても調査には慎重になっているとも思います。

今後、徐々に医薬品メーカーへの調査が進むことが予想される為、ジェネリック医薬品の供給不足の早期解決は難しいと言えるでしょう。
医薬品卸事業者としても、昨今のジェネリック医薬品使用加速の流れから、ジェネリック医薬品の安定供給は業績に大きな影響を及ぼすため、自社で取扱いするメーカーの動向には注視する必要があると思います。

ジェネリック医薬品卸業界の再編の動き

前述の通り、医薬品卸事業は医薬品メーカーの動向により大きく業績が左右されてしまいます。2016年にテバ製薬が武田薬品と合併した際、医薬品卸は武田系の広域卸である株式会社メディセオ(+アルフレッサ株式会社) に一本化となりました。この時、テバ製品をメインで取り扱う多くの医薬品卸業者は販売製品を失い、厳しい状況に追い込まれました。その際、中国・九州地方でテバ製品をメインに扱う医薬品卸事業者である大洋薬品グループ7社は東邦HDに買収される形となり、業界再編を加速させていったのです。東邦HDとしても地域に密着した営業基盤を手に入れ、自社の経営資源を有効活用できる観点から企業価値の向上に繋がっていると言えるでしょう。

今回、日医工の上場廃止と伴い、支援企業としてメディパルホールディングスが候補先として挙がっております。テバ製薬同様、仮に医薬品卸がメディパルホールディングスに一本化されるようになる動きがあれば、同様の出来事が起こる可能性も想定しておかなければいけないでしょう。そうなると、業界再編の動きはさらに進んでいくと考えられます。他社との差別化が難しいこの業界では、後継者不在、先行き不安、自社への成長課題等、様々な理由で資本提携を検討する企業が増えていると感じます。

薬局業界の動向

2020年までは2年に1回の薬価改定が行われておりましたが、2021年から毎年の薬価改定が実施されることとなりました。医薬品卸事業として薬価差益で大きく利益を出すことは難しくなり、今後も厳しい環境が続くと考えられます。
また、直近では調剤薬局の倒産件数が増加傾向にあります。2021年度の調剤薬局の倒産件数は2004年度以降で最多の23件でした。

調剤薬局は個人経営や中小企業が大半で、病院近くに店を構える例が多いため、新型コロナウイルスの感染拡大で病院での受診を控える動きが広がり、収入源である処方箋の枚数が減少したことが響いたと考えられます。

収益性の高い調剤薬局のM&A件数は増加している一方で、譲受企業を探すことができない調剤薬局は廃業や倒産の選択肢を取らざるを得ないのが現状です。
調剤報酬改定を経て、大手調剤薬局の収益性が悪くなってきているため、収益性の高い調剤薬局の譲受ニーズは高い一方、収益性の低い調剤薬局の譲受は難しくなっています。

調剤薬局の倒産が増えると医薬品卸事業者として懸念をしなければならないといけないことは貸倒損失です。
規模感にもよりますが、1件でも取引先が倒産することがあれば、年間の利益が無くなってしまうことも十分に起こり得る貸倒損失が発生します。
そのため、取引先である調剤薬局の状況もしっかりと知る必要があるのではないでしょうか。

2022年の医薬品卸事業のM&A事例

【売】株式会社日医工青和×【買】株式会社エヌ

譲渡企業は創業55年の青森県に本社を置く、医薬品卸事業を中心とする企業。
譲受企業は北海道で調剤薬局を中心に運営している株式会社ナカジマ薬局の持株会社。

【売】株式会社宮崎温仙堂商店×【買】アルフレッサホールディングス株式会社

譲渡企業は創業120年以上の長崎県に本社を置く、医薬品卸事業を中心とする企業。
譲受企業は東京に本社を構え、業界2番手の企業。売上高は2兆5000億円程。

【売】株式会社東七×【買】株式会社メディパルホールディングス

譲渡企業は創業110年の長崎県に本社を置く、医薬品卸事業を中心とする企業。
譲受企業は売上高3兆円超の東京に本社を構える業界最大手企業。

医薬品卸事業のM&Aの環境は今後もさらに厳しくなることが予想されます。
販売する医薬品の供給が安定していない状況では、M&Aにおける相乗効果は期待しにくいことが一つの要因にもなっているでしょう。

そのため、現状では医薬品卸事業単独で行っている企業同士の資本提携は難しいとも感じます。
譲受企業の多くは、販路としての調剤薬局の運営をしていることが多い傾向にあります。
上記の事例の中でも、株式会社エヌ、アルレッサHD株式会社は自社で調剤薬局を構えております。株式会社メディパルホールディングスでは自社で調剤薬局を持っておりませんが、大手調剤薬局であるクオールHD株式会社の筆頭株主でもあります。自社単独での成長が難しいこの業界では、周辺事業の進出や他社との提携等の事業戦略がとても重要な戦略の一つになります。弊社でも医薬品卸事業者が調剤薬局の譲り受けをする事例や、逆に調剤薬局が医薬品卸事業者を譲受事例も出てきています。今後も続くことが予想されるジェネリック医薬品不足や薬価の引き下げ等の業界環境を踏まえ、周辺事業への進出や他社との連携も視野にいれていくべきではないでしょうか。
まとめ
医薬品卸業界は広域卸4社に集約され、業界再編は落ち着き始めています。
しかし、ジェネリック医薬品卸事業者に焦点を当ててみると、地方に地場の企業が各メーカーの色を出しながら、事業を展開しており、業界再編が完了したとはまだまだ言い難い状況です。
今後は外部要因の変化に対応した再編の動きが出てくるだろうと予想されます。仕入れ先である医薬品メーカー、販売先である病院や調剤薬局業界の動きに注目し、常に情報収集していく必要があります。

重要なのは、最新かつ正しい情報を仕入れ、有事の際にすぐに動けるように準備をしておくことです。
日本M&Aセンターでは各業種に特化したコンサルタントを配置しており、日頃より多くご相談をいただいております。

まずは無料の株価算定や、譲渡企業様の案件の問い合わせなど、無料で承っております。お気軽にお問い合わせくださいませ。

著者

日本M&Aセンター 業種特化事業部コラム制作担当

日本M&Aセンター  業種特化事業部コラム制作担当 

業種特化事業部はIT、建設・設備工事、住宅・不動産、食品、調剤薬局、物流、製造、医療・介護といった各業界に特化し、日々新たな案件に取り組んでいます。各コンサルタントのノウハウや知見を集め、有益な情報発信に努めてまいります。

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