ファッション・衣料業界における大手企業のM&Aの事例
⽬次
- 1. TSIホールディングスの事例
- 2. ベルーナの事例
- 2-1. 【2015年以降実施されたベルーナの主なM&A】
- 3. まとめ
- 3-1. 著者
こんにちは。(株)日本М&Aセンター衣料業界専門グループの水上 雄斗です。
当コラムは日本М&Aセンターの衣料業界専門チームのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は近年行われたファッション・衣料業界の代表的なM&Aの事例について解説していきたいと思います。
TSIホールディングスの事例
TSIホールディングスは衣料品の企画・生産・輸入並びに専門店・百貨店への卸売及び直営店での小売販売、飲食事業等を展開するグループの持株会社での売上高は1,544億円(2023年2月)です。
グループ傘下で扱う主なブランドとしては「PEARLY GATES」「NANO universe」「 MARGARET HOWELL」「UNDEFEATED」「STUSSY」等があります。
リーマンショック、東日本大震災をきっかけに低迷していた業績を回復させた大きな要因の一つにM&Aがあります。
TSIホールディングスはアパレル事業以外でのM&Aも数多く行っていますが、ここでアパレル事業に関して行った主なM&Aをご紹介します。
###【TSIホールディングスの主なМ&A】
- 2011年9月 株式会社アルページュを子会社化
- 2016年6月 Laline JAPAN 株式会社を子会社化
- 2017年11月 HUF Holdings, LLCを子会化
- 2018年10月 株式会社上野商会を子会社化
- 2020年3月 Efuego Corpの株式 88%を取得
- 2020年7月 株式会社3ミニッツが展開する ETRÉ TOKYOに関する事業を譲受
直近譲受をしたETRÉ TOKYOは20~30代女性がターゲットのD2Cブランドで、有名インフルエンサーをクリエイティブディレクターとして起用したSNSマーケティングにより成長しました。
TSIホールディングスはブランドポートフォリオの構築を基本戦略としておりETRÉ TOKYOの譲受けはそれらの戦略の一環として行われたもので、ミレニアル世代の顧客層の獲得、D2Cビジネスおよびデジタルマーケティングの拡大を目的として行われました。
TSIホールディングスは2023年2月のEC化率は31%でEC売上高は400億円を超えております。
このように次世代を取り込むコンテンツとしてもEC事業の拡大はアパレル業界としても注力していく動きが活発になっております。
ベルーナの事例
ベルーナは、1980年代より婦人服の通信販売を主軸に成長を続けてきております。
カタログ通販やネット通販を展開するアパレル・雑貨事業、美容や健康分野の化粧品健康食品事業、食品やアルコールを扱うグルメ事業では、ミセス層を主力ターゲットとしています。
上記事業以外にもホテル業やオフィスビルを扱うプロパティ事業、呉服関連事業、看護師向け通販事業、人材紹介サービスを扱うナース関連事業、顧客情報や通販ノウハウを活かしたデータベース活用事業等があり、事業内容は多岐にわたります。
ベルーナはM&Aを上手く活用することにより、このように事業を拡大してきました。
【2015年以降実施されたベルーナの主なM&A】
- 2015年6月 輸入商品の通販・卸事業を展開する丸長(株)の全株式を取得、子会社化 (現・連結子会社)
- 2016年5月 衣装レンタル業を展開する(株)マイムの全株式を取得し、子会社化(現・連結子会社)
- 2016年7月 アパレル通販を展開する(株)ミン等の全株式を取得し、子会社化 (現・連結子会社)
- 2018年6月 和装事業を展開するさが美グループホールディングス㈱に対して公開買付けを実施した結果、子会社化(現・連結子会社)
- 2019年9月 (株)アイシーネットの全株式を取得し、子会社化(現・連結子会社)
- 2020年1月 JOBSTUDIO PTE.LTD.の全株式を取得し、子会社化(現・連結子会社)
- 2021年8月 レディースアパレルECを展開する㈱セレクトの全株式を取得し、子会社化(現・連結子会社)
直近譲受したセレクトは自社ECサイト「Pierrot」を持つ、レディースアパレル企業です。
SNS上で自社の社員が販促を呼びかけて宣伝を行う特徴を持っていました。
ベルーナはセレクトの強みであるSNSによるマーケティングノウハウを手に入れることによって事業拡大していく狙いがありました。
ベルーナはこれ以前にも数多くのM&Aを実施しています。
2000年代から着々と海外進出の土台を築き、EC強化に向けた拠点を設置し、さまざまな分野の企業を子会社化し、カタログ通販主軸の事業から、ネットやリアル店舗での販売の強化にも取り組んでいます。
このようにM&Aを活用することによって、メインターゲットのミセス層に加え、20代から40代にかけてのボリュームを増やし、カタログとネット、リアル店舗を併用してシナジー効果を創出していく戦略です。
まとめ
近年、「SHEIN」等海外発ファストファッションブランドの登場により、価格競争することは困難になってきております。「SHEIN」は実店舗を持たず、ECサイトのみで圧倒的に安いアイテムを大量に素早く消費者に提供しています。
このように低価格帯のファストファッションブランドが好まれる一方、小ロットで質の高いオリジナル商品を好む消費者も増えてきております。単に安いだけではなく、ライフスタイルやブランドイメージ、ブランドストーリーを含めて購入する人も増えてきていることも事実です。
今後、業界で生き残っていくためには他社とは異なる独自性が必要不可欠です。また、他社では扱っていないような技術、オリジナル商品の仕入れルートがあれば、提案力や顧客満足度の向上に常がることができます。現状を打破し、今後事業を拡大していく上での経営戦略の選択肢の一つとしてM&Aを考えてみてはいかがでしょうか。
いかがでしたでしょうか?
今後も衣料業界専門グループから最新の業界情報をお届けさせて頂きます。
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