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日本企業がマレーシアに投資をすべき理由8選

坂本 遼介

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坂本遼介

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マレーシアは地味?そんなことはありません!

皆さんはマレーシアにどのようなイメージをお持ちでしょうか。シンガポールほど先進的ではなく、インドネシアやベトナムほど人口が増えているわけでもなく…、どちらかと言えば少々地味に思われることが多いマレーシアですが、実は日本の企業がマレーシアに投資するメリットは多岐にわたります。

ここでは、経済、政治、国際ビジネスの観点から、日本企業がマレーシアに投資すべき理由を8点、詳しく説明したいと思います。

GDP成長率8.7%!マレーシアの経済

まずは経済の側面から、下記の4点で解説します。

市場の拡大

マレーシアは、ASEAN諸国の中でも、最も経済成長が著しい国です。
人口も2022年時点で約3,300万人と多く、中間所得層が増加していることから、市場の拡大が期待できます。2022年にマレーシア中央銀行とマレーシア統計庁は、GDP実質成長率が前年比で8.7%増加したことを発表しており、これは、東南アジア主要国の中では、ベトナムの8.0%を凌いで最も高い成長率です。

また、アメリカの独立系シンクタンク、ミルケン・インスティチュートが2022年に発表した「Global Opportunity Index」では、マレーシアは東南アジア新興国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)において最も魅力のある投資先として選出されています。
参考:Economic and Financial Developments in Malaysia in the Fourth Quarter of 2022(Bank Negara Malaysia)

優れた物流環境

マレーシアには、先進的な物流環境が整備されています。特に、首都クアラルンプールには、空港・港湾・鉄道が集積しており、アジア太平洋地域における物流ハブとしての位置づけが強く、製造業や物流企業にとって非常に魅力的な環境が整っています。

有望な産業

マレーシアは、自動車産業、電気・電子産業、化学産業、製造業など、日本企業にとって有望な分野が多数あります。また、近年では、ICT分野やスマートシティ分野など、新たな分野の拡大が期待されており、今後ますます日本企業にとって魅力的な投資先となる可能性があります。

優秀な人材

マレーシアの労働者の人件費は、近年上昇してはいるものの、依然、日本や欧米諸国と比較して低いのもメリットの1つといえます。2022年5月の改正で、最低賃金は月給では1,500MYR(約45,000円、1MYR=30円の簡易換算)、時給では7MYR(約210円、1MYR=30円の簡易換算)です。また、マレーシアの教育水準も高く、人材の質も高いとされており、技術的な分野でも優秀な人材を獲得しやすいというメリットもあります。
公用語はマレー語ですが、国民の多くが英語を話すため、ビジネス環境でのコミュニケーションにおいても、言語の問題が生じにくいといえます。

親日国マレーシアの政治

続いて政治の側面から、下記の2点です。

日本との強い関係

マレーシアは、アジア太平洋地域において、日本と良好な関係を築いている国の1つです。1981年に首相に就任したマハティール元首相は、日本をはじめとするアジアの先進諸国の発展・成功に学ぶ「ルック・イースト政策」を掲げ経済発展を遂げたこともあり、国民の日本に対するイメージはとてもよく、街中には、無印良品やドン・キホーテなどの日系の店舗や、日本食レストランが並びます。日本企業がマレーシアに進出することで、両国の関係を更に強化し、相互のビジネスの発展につながることが期待できます。

政治的な安定性/関税や税制優遇措置

マレーシアは、政治的な不安定要因が少なく、安定した政治環境を有しています。政府による積極的な投資政策も進み、多くの国と自由貿易協定を締結しており、外国企業にとって有利な関税優遇措置が取られています。また、投資に対する減税措置や資金調達の補助金などの支援措置も存在します。これらの措置を利用することで、日本企業はより有利な投資環境を確保できることが期待できます。

有名テック企業も参入!マレーシアの国際ビジネス

マレーシアでのビジネス環境を国際的に俯瞰して、下記の2点の観点で述べたいと思います

活発な多国籍企業の進出

マレーシアの産業開発、促進を担う主要政府機関である、マレーシア投資開発庁(MIDA)が2022年に発表した「Sustainable Investments For Growth」によると、2022年に行われたマレーシアへの投資のうち、61.7%(1,633億MYR)は外国からの投資でした。

マレーシアにおける外国直接投資(FDI)と国内直接投資(DDI)の比率
マレーシアにおける外国直接投資(FDI)と国内直接投資(DDI)の比率
引用:マレーシア投資開発庁(MIDA)
MIDAの発表をもとに日本M&Aセンターが作成

その内訳の中で、日本はシンガポールに次いで5位です。1位は中国、次いでアメリカ、オランダと、なっており、その他の国として、韓国、イギリス、ドイツ等が挙げられています。つまり、多くの多国籍企業を含む外国企業がマレーシアに進出しており、グローバルなビジネス環境が整っていると言えるでしょう。

アメリカからはIntel、Microsoft、Appleといったテクノロジー企業がマレーシアに拠点を構えて活動をしておりますし、欧州からはドイツからBMWやメルセデスベンツといった自動車メーカー、オランダから日用品、消費財メーカーであるユニリーバ、イギリスからは石油・ガス等のエネルギー関連企業のBP社などがマレーシアで事業展開や生産、研究開発等を行っています。中国からも中国鉄建や、中国通信建設などがマレーシアで多くのインフラプロジェクトに携わっています。

ハラルマーケット

マレーシアは2022年時点で国民の64%がイスラム教を信仰しており、イスラム教の教義に則った製品やサービスであることを証明する「ハラル認証」が普及しています。信頼性の高いハラル認証を行うために、JAKIM(Jabatan Kemajuan Islam Malaysia)という政府機関を擁しており、国内には多くのハラル認証製品(食品、化粧品等)が流通しています。JAKIMは、ハラル認証基準の策定や監査、認証プロセスの管理を行っており、マレーシアのハラル認証は国際的に広く認められています。
また、マレーシアは、イスラミック・ファイナンスの世界的な中心地としても知られており、金融サービスにおいても、イスラム教の教義に則った金融商品やサービスが広く普及しています。
世界中で約18億人と推定されるイスラム教徒に特化したサービスは、非常に大きなマーケットとして昨今注目されており、マレーシアへの進出は大きな市場への足掛かりになるのではないでしょうか。

以上のように、様々な観点から見ても、日本企業がマレーシアに進出・投資するメリットは多く、ますます注目が集まっています。
特に、アジア太平洋地域における重要性が増している現在、マレーシアは多様なビジネスチャンスを提供し、グローバルなビジネスの展開に向けた有望な投資先といえます。

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プロフィール

坂本 遼介

坂本さかもと 遼介りょうすけ

Nihon M&A Center Malaysia Sdn. Bhd

シンガポール、エジプトで幼少期を過ごし、米カリフォルニア大学サンディエゴ校卒業。米系大手コンサルティングファームを経て、2020年日本M&Aセンターに入社。 東南アジア、欧州等の外資系企業と日本企業とのクロスボーダーM&A支援に従事。事業承継のみならず、ファンドEXITや、上場企業カーブアウト案件も実績あり。

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