2024年版外食・飲食業界M&Aデータブック解説と最新動向
⽬次
- 1. 「外食・飲食業界M&A DATA BOOK 2024」について
- 2. 外食・飲食企業当社成約実績及び成約分析
- 3. 譲渡オーナーそれぞれの決断
- 3-1. CASE①「家族との時間を確保したい。」60代/カフェ運営/年商4億
- 3-2. CASE②「得意な仕事に専念したい。」40代/焼肉店運営/年商10億
- 3-3. CASE③「もっと会社を成長させたい。」50代/複数業態展開/年商20億
- 3-4. CASE④「自社業界の先行き不安。」50代/レストラン/年商2億
- 3-5. CASE⑤「ある日継者者候補がいなくなりました。」80代/回転寿司/年商3億
- 3-6. CASE⑥「先代から受け継いだ店を後世に。」60代/和食/ 年商1億
- 4. 外食・飲食業界M&Aにおける3つの特徴
- 4-1. 1.ポートフォリオ経営の加速を促す0to1М&A
- 4-2. 2.多店舗展開の“崖”を乗り切る成長戦略型М&A
- 4-3. 3.海外市場への参入強化と高まる外食・飲食マーケットへの期待度
- 5. 2024年の外食・飲食のМ&Aの動向
- 5-1. 壱番屋×LFD JAPAN
- 5-2. サンライズ・キャピタル×キルフェボン
- 5-3. コロワイド×日本銘菓総本舗
- 5-4. GOSSO×大高商事
- 5-5. ブロンコビリー×レ・ヴァン
- 5-6. 著者
日本M&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は高橋が「2024年版外食・飲食業界M&Aデータブック解説と最新動向」についてお伝えします。
「外食・飲食業界M&A DATA BOOK 2024」について
「外食・飲食業界M&A DATA BOOK 2024」は、食品業界専門グループが作成した、当社で“初”の外食・飲食業界に特化したМ&A事例を分析した資料となります。
近年の外食・飲食業界におけるM&A件数や特徴をまとめ、最新トレンドを解説しています。実際に支援した外食・飲食業界のM&Aを分析して、経営者の平均年齢や売上規模、譲渡対価などをグラフ付きで説明しています。今回のコラムでは、「外食・飲食業界M&A DATA BOOK 2024」の内容を一部抜粋して解説致します。
外食・飲食企業当社成約実績及び成約分析
2023年の当社実績においては、外食・飲食企業×異業種企業の事例が増加傾向にありました。
新型コロナウイルスの影響が無くなり、インバウンド需要等が復活したことから、外食・飲食産業に対する注目度が増していると考えられます。
外食・飲食業界のМ&Aの特徴として、М&A成約時の譲渡オーナーの年齢が他業界と比べて低い傾向にあります。当社で過去お手伝いをさせて頂いた*外食・飲食企業の譲渡オーナーの平均年齢は56.6歳であり、60歳未満で全体の63%*を占めています。
こういった背景として、外食・飲食業界におけるМ&Aの目的として、後継者不在などを解決するための「事業承継型М&A」よりも、第三者との提携により自社の次なる成長を目指す「成長戦略型М&A」を志向するオーナーが他業界に比べて、多い傾向にあるためと考えています。
会社を成長させるためにМ&Aを行うオーナーが多いことから、М&A成約後、社長もしくは経営陣として残って会社に関与し続けるオーナーが多いことも外食・飲食業界の特徴にあると言えます。
更に、譲渡時点での売上としては平均値11億円、中央値4億円であり、年商5億円未満で全体の約60%を占めています。
「M&A」という言葉のイメージから‘大きい企業がやるもの’という印象を持たれてる方も多くいらっしゃいますが、外食・飲食業界のМ&Aの実態としては中小企業がメインと言えます。
譲渡オーナーそれぞれの決断
外食・飲食企業のオーナーがМ&Aを行う理由は十人十色であり、譲渡オーナーがМ&Aに至る決断は譲渡オーナーごとに異なる背景があります。以下ではいくつかの決断理由を記載させて頂きます。
CASE①「家族との時間を確保したい。」60代/カフェ運営/年商4億
今まで仕事ばかりしてきました。会社も仕事も好きなので、代表職は退いても顧問として会社に残ります。
事業承継等で出来た時間で家族孝行がしたいと思い決断しました。
CASE②「得意な仕事に専念したい。」40代/焼肉店運営/年商10億
日々の業務に忙殺されるのではなく、私にしかできない業務に専念したいと思いM&Aを決断しました。
今は自分が得意とするクリエイティブな業務に専念出来ています。
CASE③「もっと会社を成長させたい。」50代/複数業態展開/年商20億
一代で年商20億円規模の会社を作れたが、規模に比して内部管理体制に不安があり、今後の上場等を目指すために、組織作りのノウハウを持つ企業との資本提携を決断しました。
CASE④「自社業界の先行き不安。」50代/レストラン/年商2億
新型コロナウイルス感染症の影響で売上が急減し、今後の事業と従業員の継続雇用のために、資本提携先を探したいと思い決断しました。
CASE⑤「ある日継者者候補がいなくなりました。」80代/回転寿司/年商3億
後継者候補であった取締役が若くして亡くなってしまい、自分が育てたブランドを後世に残したいと思い決断しました。
CASE⑥「先代から受け継いだ店を後世に。」60代/和食/ 年商1億
2代目として創業60年超の老舗和食店を運営していましたが、後継者がおらず、自分の代で地域に愛されるお店を無くすことは出来ないと思い決断しました。
前述させて頂いた通り、外食業界においては「成長戦略型M&A」を志向する方が多い傾向にありますが、一方で長年続けている老舗の飲食・外食企業が多いのもまた事実です。
大手信用調査会社の帝国データバンクが公表した全国企業「後継者不在率」動向調査(2023)によると、「後継者がいない」または「未定」とした企業は14.6万社にのぼり、 全国の後継者不在率が53.9%としています。
これまで脈々と繋いできたブランド・技術・味を後世繋ぐためにM&Aを行う企業は今後益々増えるのではないかと考えます。
外食・飲食業界M&Aにおける3つの特徴
2000年頃からM&Aがニュースでも取り上げられることも増え、一般的にも認知度が高まっていき、それに伴い外食・飲食企業のM&Aも増加しました。
当時はゼンショーやコロワイドといった現在国内を代表する外食・飲食企業や、大手PEファンドが中心となりМ&Aを実行していきました。
その後2010年代に入り、業界雑誌を賑わすカリスマ経営者が会社を売却する事例が増え、外食・飲食企業の経営者にとって、М&Aという選択肢が更に深く浸透していきました。
そういった中、直近の外食・飲食業界M&Aの特徴について3つ解説させて頂きます。
1.ポートフォリオ経営の加速を促す0to1М&A
以前は、単一業態を国内に何百店舗展開するという単一業態多店舗展開が主流戦略であったが、昨今は消費者のニーズが多様化したことで業態の多様化が求められ、多業態多店舗展開のポートフォリオ経営を取り入れる企業が増加しています。その結果、業態の立ち上げを自社で行うのではなく、既に確立した業態をМ&Aで取得する経営戦略(0to1М&A)の重要性が増し、外食・飲食市場におけるМ&Aにおいては、店舗数以上に強固なブランド力を持った企業が重宝されやすい傾向にあります。
2.多店舗展開の“崖”を乗り切る成長戦略型М&A
外食・飲食経営においては店舗数が拡大すると、人事・財務など管理コストが増大し、新規出店に偏った投資が困難になり、利益率が急激に減少していく傾向にあり、これまで培ってきた経営ノウハウだけでは、乗り切ることが困難な“崖”が経営者の前に立ちはだかることがあります。
そのような中、30代~40代の若手経営者が自身の会社を成長させるために、大手外食・飲食チェーンや投資ファンドとの資本提携を目論む成長戦略型のM&Aという概念が普及しました。
3.海外市場への参入強化と高まる外食・飲食マーケットへの期待度
2023年の外食・飲食業界においては「海外市場参入に向けたМ&A」と「異業種とのМ&A」が目立ちました。
海外市場参入に向けたМ&Aにはおいては、ゼンショーによるスノーフォックス・トップコの買収や、トリドールによるフルハムショアの買収など、海外大型案件のМ&Aが相次いだ。
ゼンショーはスノーフォックス買収発表時から株価を倍以上に上昇させ、時価総額は1兆円を記録しました。
異業種とのМ&Aに関しては、上場企業の異業種やPEファンドが中堅・中小外食企業への投資を積極的に行っており、外食・飲食業界以外からコロナ明けの外食・飲食マーケットに対する期待度が高まっています。
2024年の外食・飲食のМ&Aの動向
最後に、「外食・飲食業界M&A DATA BOOK 2024」には掲載されていませんが、2024年3月末時点での2024年の主な外食・飲食のМ&A事例を紹介いたします。
壱番屋×LFD JAPAN
LFD JAPANは2014年設立した、「博多もつ鍋 前田屋」を福岡市内で4店舗経営している会社となります。「博多もつ鍋 前田屋」は多くのメディアに取り上げられており、有名人・野球選手御用達の地元民から愛されるもつ鍋専門店として有名なお店です。ココ壱番屋などを展開する上場企業の壱番屋は既存店舗の活性化に加えて、新たな業態を開発・育成していくことでグループ力の強化と企業価値の向上を図るとしています。
サンライズ・キャピタル×キルフェボン
香港に所在するCLSAキャピタルパートナーズがアドバイザーを務める日本特化型ファンドであるサンライズ・キャピタルは、フルーツタルト専門店のキルフェボンの全株式を取得しました。キルフェボンは四季折々のフルーツを使ったタルトを企画・製造・販売しており、日本国内で11店舗展開しています。サンライズ・キャピタルは事業成長支援と経営基盤強化に取り組むとしています。
コロワイド×日本銘菓総本舗
日本銘菓総本舗は売上高約60億円、地域銘菓・名産品の事業承継のプラットフォーム企業として2018年に設立された、PEファンドであるアドバンテッジパートナーズの投資先企業となります。日本銘菓総本舗は「チーズガーデン」「クリオロ」「グリンデルベルグ」などのブランドを有しており、ふかや花園プレミアム・アウトレットや麻布台ヒルズといった一等地に旗艦店を出しています。コロワイドは国内・海外への出店で事業成長を図り、グループの既存事業の新たな事業機会につなげるとしています。
GOSSO×大高商事
大高商事は2009年設立した、ちゃんぽんを主力メニューとする「じげもんとん」「じげもんちゃんぽん」をプロデュース・ライセンス店含め、首都圏中心に34店舗展開している会社です。GOSSOは「0秒レモンサワー仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」など10ブランド約100店舗を展開しており、「じげもんちゃんぽん」の日本全国と海外展開を目指すとしています。
ブロンコビリー×レ・ヴァン
レ・ヴァンは1990年設立、売上高12億の愛知県下で「とんかつ かつ雅」などとんかつ専門店を11店舗展開している会社とおなります。ブロンコビリーはステーキ業態に続く第2の業態として「とんかつ かつひろ」をオープンしており、「とんかつ業態」の愛知県下での営業基盤を確固たるものとし、同業態の成長基盤を固める。グループ成長を目指すとしています。
ここ数年アルコールを伴う業態をメインにしている外食・飲食企業のM&Aは消滅状態にありましたが、新型コロナウイルスの影響が落ち着き、壱番屋×LFD JAPANやGOSSO×大高商事といった事例のように、売手側・買手側の双方でアルコールを伴う業態をメインにしている外食・飲食企業のМ&Aが復調する兆しが見えてきた2024年の始まりとなりました。
また、サンライズ・キャピタル×キルフェボンやコロワイド×日本銘菓総本舗の事例のように、PEファンドが関与するМ&Aや、ブロンコビリー×レ・ヴァンのように、外食・飲食の上場企業が、地域の有名店を買収していく動きも2023年に引き続き増加傾向にあることも予想されます。
いかがでしたでしょうか?
外食・飲食業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。