2024年6月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

志賀 俊太

日本M&Aセンター業種特化1部/物流業界専門チーム

業界別M&A
更新日:

⽬次

[非表示]

物流業界の2024年6月の公表M&A件数は11件

6月における公表ベースでのM&A(合併・買収)は11件であった。
前年同月の5件から6件の増加となった。

2024年に入り、物流業界の再編が大きく進行している。ロジスティード(旧日立物流)やSGホールディングス、セイノーホールディングスなどの大手物流企業が相次いで大型買収を発表し、それに呼応するようにマイナスイメージの強かった「M&A」も一つの成長戦略として中小企業にも浸透し急激な増加をみせている。

異例のペースで進行する物流・運送業界のM&A

公表ベースでのM&Aは24年の上期で57件と昨年の40件と比較して42・5%の増加と異例のペースで進行している。
拠点や車両を拡充して「2024年問題」に対応する狙いに加え、需要低迷やコスト上昇による経営環境の悪化がM&Aを更に加速させている。

AZ―COM丸和ホールディングスによるC&Fロジホールディングスへの同意なきTOB(株式公開買い付け)を受け、SGHDは協業関係にあるC&FロジHDへのTOBを決めた。

同社によるTOB発表前3カ月の終値の平均値1729円に対して232%のプレミアムを付ける価格で買い付けを行い、最大1200億円を越える買い付け金額が予想される。

日本では珍しい同意なきTOBの増加は、低PBR企業(資本コストを上回る価値を生み出せていない企業)が淘汰され、変化に迫られる物流業界を如実に表している。
東京商工リサーチによると、この数年、運送事業者の倒産件数は増加している。

物流業界の最新動向やM&A事例が良くわかる物流業界M&Aセミナー開催中

需要低迷やコスト上昇の影響を考慮し、大手・中堅グループ入りの選択肢

23年は過去10年間で最多の328件を記録した。

自社単独でドライバーの確保、価格交渉、人件費高騰への対応など多くの課題を全て解決することは困難を極める。

大手や中堅企業の買収意欲が高い今、大手グループ傘下に入り、豊富なヒト・モノ・カネを活用した経営も有効な成長戦略となるだろう。
従業員、取引先を守り、永続的な企業運営を行うための経営戦略として、選択肢の一つとして検討していただく価値は高い。

日本M&Aセンターでは、事業売却をはじめ、様々な手法のM&A・経営戦略を経験・実績豊富なチームがご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

志賀 俊太

志賀しが 俊太しゅんた

日本M&Aセンター業種特化1部/物流業界専門チーム

1988年生まれ、東京都出身。明治大学政治経済学部卒業後、新卒で大手損害保険会社へ入社。大型トラックディーラーを担当し運送会社、バス会社向けの損害保険営業に従事した後、日本M&Aセンターに入社。現在は物流業界専門のM&Aコンサルタントとして年間300社を超える物流企業のM&A支援を行う。運行管理者資格保有(関東貨物第45840号)。

この記事に関連するタグ

「物流業界」に関連するコラム

2024年8月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

業界別M&A
2024年8月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

物流業界の2024年8月の公表M&A件数は8件8月における公表ベースでのM&A(合併・買収)は8件でした。前年同月の7件と比較して1件の増加となります。@cv_button中堅・中小へ広がる物流業界再編の波大手企業をメインプレーヤーとした物流業界における業界再編の波は、中堅中小企業に着実に広がりを見せている。「創業100年・年商100億円」を掲げる八潮運輸は神奈川県に本社を構え自動車部品輸送に強み

2024年7月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

業界別M&A
2024年7月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

物流業界の2024年7月の公表M&A件数は17件7月における公表ベースでのM&A(合併・買収)は17件でした。前年同月の8件から9件の増加となります。@cv_button2023年1~7月のM&A件数は48件であったのに対し、24年の1月~7月のM&A件数は74件と急激に増加しており、先月に続き大手、中小を問わず運送事業を対象としたM&Aがハイペースで進んでいます。まさに「2024年問題」を背景に

2024年5月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

業界別M&A
2024年5月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

物流業界の2024年5月の公表M&A件数は10件2024年5月において公表ベースでのM&A(合併・買収・資本参加)は10件であった。2023年5月(8件)と2件の増加になった。@cv_button戦略の中心が「企業買収」へ先月に続きセンコーホールディングスが単月で2件の買収を実施。(2024年1月~5月で5件目)独特の戦略で同業の買収に限らず異業種の譲り受けを加速させている印象だ。今後も既存事業の

2024年4月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

業界別M&A
2024年4月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

物流業界の2024年4月の公表M&A件数は11件2024年4月において公表ベースでのM&A(合併・買収・資本参加)は11件であった。2023年4月(10件)と昨年比では1件の増加になった。2024年問題からみる物流・運送業界M&A4月からトラックドライバーの時間外労働時間上限規制が開始となり、2019年の法改正以降、数年かけて取り組んできた荷主企業との運賃交渉やドライバーの確保、中継拠点の新設など

2024年3月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

業界別M&A
2024年3月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

物流業界の2024年3月の公表M&A件数は10件2024年3月において公表ベースでのM&A(合併・買収・資本参加)は10件であった。2023年3月(7件)と昨年比では3件の増加になった。物流M&Aトピックを考察3月で大きく印象に残っているのはAZ-COM丸和ホールディングスが、C&FホールディングスにTOB(株式公開買い付け)を実施し子会社化を目指すと発表した事例ではないだろうか。アマゾンジャパン

2024年問題とは?物流・トラック運送業への影響をわかりやすく解説

経営・ビジネス
2024年問題とは?物流・トラック運送業への影響をわかりやすく解説

2024年問題は、主に物流・運送業界、建築業界などに様々な影響を及ぼすとされています。本記事では、物流・運送業界における2024年の概要、想定される影響や対策についてご紹介します。2024年問題とは何か2024年問題とは、2024年4月1日から、ドライバーの時間外労働時間の上限が「年間960時間」に設定されることで懸念される諸問題を指します。この背景には後述の働き方改革関連法の施行があります。物流

「物流業界」に関連するM&Aニュース

福岡キャピタルパートナーズ運営ファンド出資のNSトランスポート、九州安芸重機運輸を譲受け

株式会社福岡キャピタルパートナーズ(福岡県福岡市)が運営・管理するナイン・ステーツ・5投資事業有限責任組合が出資する株式会社NSトランスポートは、九州安芸重機運輸株式会社(福岡県福岡市)との間で、九州安芸重機運輸の全株式の譲受に関する株式譲渡契約を締結した。福岡キャピタルパートナーズは、各種ファンドの組成・運営、不動産開発のアレンジ、コンサルティングを行っている。九州安芸重機運輸は、建設機械、建設

NIPPON EXPRESS ホールディングス、ドイツのヘルスケア産業向け物流 Simon Hegele社を買収

NIPPONEXPRESSホールディングス株式会社(9147)は、SHHoldCoGmbH(ドイツ、以下:SimonHegele)の全ての株式を取得することについてSimonHegeleの全株主と合意し、株式譲渡契約を締結することを決定した。NIPPONEXPRESSホールディングスは、NXグループの持株会社。国内外で物流サービスや不動産業を営む同グループ各社の経営管理、およびそれに付帯する業務を

セイノーHD傘下のセイノースーパーエクスプレス、関東エアーカーゴから航空部門事業を承継

セイノーホールディングス株式会社(9076)傘下のセイノースーパーエクスプレス株式会社(東京都江東区)は、東海運株式会社(9380)の連結子会社である関東エアーカーゴ株式会社(埼玉県さいたま市)の航空部門事業を吸収分割により承継する。セイノースーパーエクスプレスは、貨物自動車運送事業、貨物運送取扱事業、港湾運送事業等を行っている。関東エアーカーゴは、一般貨物運送事業を行っている。目的下記①~③を目

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース