物流大再編時代到来 運送事業の生き残りポイントを解説するオンラインセミナーを開催
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モデレーターを務めるLOGISTICS TODAY代表取締役の赤澤 裕介社長
日本M&Aセンターは物流ニュースサイト「LOGISTICS TODAY」 と共催で、中小物流企業向けオンラインセミナーを11月、開催しました。「物流2024年問題」による業界内への問題提起と規制措置の解説、これからの物流企業に必要な経営姿勢や取り組みが紹介されたほか、日本M&Aセンター 物流業界専門グループのコンサルタントがM&Aを含めた選択肢について説明しました。
物流2024年問題による経営の難しさ
物流業界では2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働時間の上限が規制され、輸送能力の低下とドライバーの収入減が懸念されています。モデレーターを務めるLOGISTICS TODAY代表取締役の赤澤 裕介社長は「昨今の物流業界は規制措置の動きが激しく、従来の考えや経営手法が通用せず運送会社の経営難易度が上がっている」と語りました。国内約63,000社のトラック運送事業者のうち、車両保有台数が100台以上の事業者は全体の約2%で、10台以下の中小企業が半数以上を占めています。「少ない保有台数では利益確保が難しく、より厳しい法令遵守が求められていく」と舵取りの難しさを指摘。「独禁法・下請け法の適用拡大の可能性」については、全国のトラック運送事業者のうち7割超が下請け事業者を利用しており、実現すれば不当な運賃据え置きや荷待ち問題が改善されると期待する一方、管理簿の作成事務作業の増加などの課題に言及しました。
規制措置は「ドライバーの働き方改革」のため
国土交通省 物流・自動車局貨物流通事業課トラック事業適正化対策室の佐藤 和義室長は、「他業種に比べ運送業は不規則で長時間勤務が多く、支援策の根本的な目的はドライバーの働き方改革」と強調しました。規制措置による輸送能力の不足について、2030年には約34%が不足すると予想。これらの問題解決のために策定された「物流革新に向けた政策パッケージ」を解説しました。盛り込まれている「標準的運賃の周知徹底等による商慣行の見直し」では、下請け事業者の各手数料等が考慮されておらず、運送事業者が適切な運賃を受け取っていないことを改善するためと指摘し、「下請け次数を考慮した荷主への運賃清算交渉を、運送事業者へ推進する」と話しました。実際の運賃交渉の割合は、2021年度の52%から2023年度は75%に増加しています。
国の支援策を解説する国土交通省トラック事業適正化対策室 佐藤 和義室長(右)と、モデレーターの赤澤社長(左)
これからの経営には「コンプライアンス遵守と人材の定着」が重要
金沢市で社員75名、車両数約70台を保有する「野々市運輸機工」の吉田章社長は「ドライバーの労働環境改善のため、これからの中小物流企業にはコンプライアンス遵守と人材採用・育成・定着が最重要」と主張しました。自社で取り組む「中継輸送」と「ジョブローテーション」の例を挙げ、「中継輸送は、運送時の往路は通常通り、復路では途中にある中継箇所で荷物を降ろしドライバーを帰宅させ、翌日別のドライバーが近隣の配送先を回る仕組み。100時間近かった残業時間を30時間程度に減らすことができた。他にも同業他社と連携して混載便を活用した『メタル便』など、2024年問題対応型の新しい物流サービスと、社員が成長と幸せを感じられる組織づくりを目指す」と語りました。
物流業界専門M&Aコンサルタントが語る、業界の未来予想図
日本M&Aセンター物流業界専門グループの荒瀬 貴文コンサルタントは、物流業界の現状を「多くの中小物流企業の最優先事項は利益の確保であり、運賃交渉、人材採用や育成、DX化まで対応が追いついていない」と話し、「企業の存続や発展のためM&Aを糸口とした打開策も選択肢として認識してもらいたい」と呼び掛けました。2024年の物流業界全体のM&A公表件数は、過去最多を記録。買収金額が100億円以上の大型M&A案件も8件と最も多く「大手による業界再編が加速している」と分析しました。日本M&Aセンターへの譲渡相談においても、30代から40代の経営者が増えており、その年商規模も拡大傾向にあります。一方で大手企業は外注を減らし、自社の物流事業や事業領域の拡大のためにM&A戦略を活用。物流業務を内製化する企業と外注する企業の二極化が見込まれ、アウトソーシングも増加すると予想します。モデレーターの赤澤社長は、業界大手企業の再編が中小企業にも影響を及ぼす可能性を示唆し「物流格差が企業格差となり、単独では生産性や賃金アップ、人手不足への取り組みは困難な場合が多い。チームを組んでM&Aで解決していくのは自然な流れ」と業界の展望を語りました。
左からモデレーターの赤澤社長、野々市運輸機工の 吉田社長、日本M&Aセンター荒瀬コンサルタント
中小物流企業の存続と発展のために
日本M&Aセンターには、変化の激しい物流業界においてM&Aを活用した経営支援を行う「物流業界専門グループ」があります。運行管理者資格などを保有するメンバーが「M&Aを通じて全国の物流を繋ぎ、現場・企業が世界に誇れる新しい業界を創る」をミッションに、これまで200件以上のM&A成約を支援してきました。今後も経営セミナーやM&A情報をご提供していきます。
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