[M&A事例]Vol.129 深刻なドライバー不足と高齢化で事業継続が困難に。採用力のある会社にグループインしてわずか半年で採用に成功
宮本運輸は、長らく人材不足の課題を抱えていました。事態が深刻化し、採用力のある会社への譲渡を行って半年、採用を含め現状について話を伺いました。
譲渡企業情報
※M&A実行当時の情報
株式会社アジェクトは埼玉県を中心に運送事業を手掛ける会社です。大型車、4t車、2t車、ワンボックス(1t車)を取り揃え、あらゆる荷量やロットに応えられるのが強みです。社長の青木浩二氏は1代で同社を成長させてきましたが、近年、管理体制に悩みを抱えるようになりました。2024年に迫る時間外労働規制や業界の先行き不安もあり、自社の体質改善や企業価値向上を模索した末に、2021年9月、福岡県に本社がある株式会社シーエルと資本業務提携を結びました。現在も社長を続ける青木氏にM&Aをするまでの経緯をお聞きしました。
――青木社長は2007年4月、26歳で運送業をはじめ、同年12月には株式会社アジェクトとして法人化しました。経営は順調でしたか。
譲渡企業 株式会社アジェクト 青木様: 最初は苦労の連続でした。リーマンショックの年に起業したこともあり、最初の5年ほどはキャッシュフローのことばかり考えていたと思います。従業員に給料を支払って自分は無給という時期もあったほどです。軌道に乗ったと思えるようになったのは10年を過ぎた頃でしょうか。上場企業との取引が確立できて、従業員も定着していきました。
――青木社長は現在40歳です。売り上げの推移を拝見しても順調に経営をされていると思いますが、今回、どのような経緯で譲渡を決意されたのでしょうか。
青木様: おかげさまでコロナ禍の巣ごもり需要もあり2020年は売上前年比140%、2021年はそこからさらに140~150%増と業績を伸ばすことができました。ただ、順調な売上の裏で、管理体制が追い付かず行政処分を受けてしまったのです。従業員も40人ほどに増えていて、果たして自分のやり方が今後も通用するのか、このまま自分のやり方を貫いても従業員に迷惑をかけるのではないかと思うようになりました。そこで、資本力があって労務管理もしっかりした会社と組むのも一つの手ではないかと、M&Aで譲渡することを決断したのです。
――M&Aについてはかねてからご存じだったのですか。
青木様: 言葉は知っていましたが、具体的な内容までは把握していませんでした。そこで、まずは知識を得ようとM&Aに関する本を読んだり、セミナーに足を運んだりしました。そんな時に日本M&Aセンターのセミナーに参加して、M&Aが企業戦略や事業承継のための友好的な方法だと知りました。一気に関心が高まり、後日、直接相談に行きました。 担当いただいた山本さんは真摯に私の話に耳を傾けてくれました。実は、他の仲介会社にも話を聞きに行ったのですが、真っ先に料金体系の話をされたり、十分にヒアリングをする前から相手企業を提案されたりしたんです。山本さんはそうしたこともなく、「どんな事にお困りですか」とアジェクトや私自身の悩みを親身になって聞いてくれたことが非常に嬉しかったです。
――M&Aを進めるにあたり重要視した点はどこですか。
青木様: 1番は従業員とその家族が幸せになれるかどうかです。それが社長である私の使命ですから。そのためには、現在の一般貨物輸送だけではない付加価値を見出していかなければいけません。2024年に迫る時間外労働規制の問題もそうですが、国や行政の法改正による締め付けは年々厳しくなっています。これまでのように荷物をただ運ぶだけではいずれ立ち行かなくなってしまう。私たちも新たにチャレンジしていかなければならないのです。そこで、物流全般をトータルで請け負う3PL(サードパーティー・ロジスティクス)事業を手掛ける企業をお相手として探していました。
――譲受け企業の株式会社シーエルは3PLの草分け企業です。まさに希望通りのお相手ですね。
青木様: はい。ですが、一番の決め手となったのは二宮善信社長の人柄です。それまでは事業内容や企業理念などを注視して見ていましたが、二宮社長とお会いしてビジョンをお聞きした時に、「この社長についていけば安心だな。自分がやりたいことを実現する近道になる」と感じたんです。シーエルは多くの運送会社を子会社にもつグループ企業です。3PLで物流業界を変えていこうというビジョンに共感しました。 もう一つ決め手となったのはグループ企業の幹部の方の言葉でした。実は、私は以前にも一度M&Aを試みて、従業員や取引先に開示したあとでブレイクしてしまったことがあるのです。そのため今回は非常に慎重に検討を進めていたので、何度もシーエルを訪ねていました。そのときにお会いしたある子会社の幹部の方が、「アジェクトさん。シーエルを選ばなかったら後悔するよ」と言われたんです。実際にグループに入られた方が言うのだから間違いないと思い、安心して決断できました。
――2度目の開示での従業員の皆さん、取引先の反応はいかがでしたか。
青木様: 従業員への開示はまず私から管理監督者に一人ずつ説明し、その後、彼らから管理するグループメンバーに私の思いを伝えてもらいました。反発もなく、離職者も出ませんでした。取引先はより好意的で、新しい体制を聞いて仕事をいただいたくらいです。
――M&A後は順調にスタートされましたか。
青木様: 2021年10月1日に新体制がスタートし、10月末にはグループとして新しい仕事を受注しました。2022年3月下旬~4月までに新たに2拠点、営業所も開設しました。また、資本力のある会社の子会社になりましたので、従業員に対してはより手厚い福利厚生が提供できるようになりました。 一番うれしかったのは、創業以来、初めて新卒社員を迎えることができたことです。グループ企業として企業規模が大きくなったことで採用にもプラスの影響が出ています。
――青木社長は現在も社長を続投されていますが、新たなスタートを切られたアジェクトのビジョンをお聞かせください。
青木様: まずは3PL事業を担えるだけの土台作りに取り組みたいと思います。例えば新たに始めた倉庫業でも、荷役、保管、発送代行から少しずつ携わってノウハウを身に付けていきたいですね。 当初はM&Aを機に社長を退任するつもりでした。一番の目的は従業員とその家族が幸せになる環境を作ることでしたので、私自身は肩書がなくなってもアジェクトで企業人の一人として能力やスキルを高めていければいいと思ったのです。ところが二宮社長の勧めで社長を続けることになりました。それであれば、社長を担わせていただく間は責任をもって陣頭指揮を執っていきたいと思います。あと10年社長を務めるとしても50歳です。その間に自分が去った後でもうまく会社が回っていくような組織体制を構築するとともに、次のアジェクトを担う人物も育てていきたいですね。
こちらのM&A成功事例インタビューは動画でもご覧いただけます。
宮本運輸は、長らく人材不足の課題を抱えていました。事態が深刻化し、採用力のある会社への譲渡を行って半年、採用を含め現状について話を伺いました。
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担当コンサルタント
地の利があるアジェクトの対応力と3PLですでにお客様を多く持つシーエルとが手を組むことで、今後、関東での事業が強固なものになっていく事が見込まれるマッチングでした。今まで以上に青木社長が夢に邁進して、運送業界でますます活躍されるのを祈っています。