[M&A事例]Vol.129 深刻なドライバー不足と高齢化で事業継続が困難に。採用力のある会社にグループインしてわずか半年で採用に成功
宮本運輸は、長らく人材不足の課題を抱えていました。事態が深刻化し、採用力のある会社への譲渡を行って半年、採用を含め現状について話を伺いました。
譲受企業情報
※M&A実行当時の情報
物流コンサルティング、物流システム開発および構築、物流センター運用の3つの強みを持つ3PL(サードパーティー・ロジスティクス)で九州をはじめ、近畿、北陸、関東地方に物流拠点を展開する株式会社シーエル。大手が配送をアウトソースするなかで、安心・安定の配送で企業価値を高めるため、自社グループでの基盤構築を目指しています。課題を多く抱える物流業界を3PLで牽引する一人でもある二宮善信社長に、今回のM&Aの先にあるビジョンをお聞きしました。
――平成9年と早い時期から3PLに着目されていますね。
譲渡け企業 株式会社シーエル 二宮様: 株式会社シーエルは3PL企業として創業しました。きっかけは「セブンイレブンジャパンが福岡に進出!」というニュースを聞いて1号店を見に行った時です。雷に打たれたような衝撃を受けました。30坪の売り場面積に3000アイテムが並び、それをわずか5人のスタッフで動かしている。「これからはただものを運ぶのではなく、必要な時に必要なだけ供給する時代が来る」と確信しました。
――二宮社長は物流業界の現状をどう分析されていますか。
二宮様: シーエルを創業した年に総合物流施策大綱が出されました。規制緩和によってそれまでの認可制から許可制に変わり、誰でも5台から運送事業を始められるようになったのです。それによって一気に事業者が増え、価格破壊が起きて過当競争が激化しています。 その上、少子高齢化で荷物の量はどんどん減っています。ドライバーの人手不足も深刻です。とりわけこの業界は3K(きつい、汚い、危険)と敬遠される上に、免許の種類が増えたことでますますなり手が少なくなっている。物流業界は大変な時代に入っているのです。これまで大手の運送会社も半分ほどに減ってしまいました。運送業の80%は赤字とも言われています。
かといって、運送業から3PLに参入しようと思うと、かなりの勉強が必要です。ロジスティクスとは荷主企業に対して現状分析をした上で課題を見つけ出し、改革の提案をすることだからです。製造の在り方から営業の売り方、在庫の持ち方など、会社としてどこがベストかを考えなければいけません。現在は企業にとっても物流格差が企業格差を生むと言ってもいいほど物流を重要視する時代に入りました。これを自社単独で取り組むのは難しい。物流は全面アウトソーシングの時代に突入しているのです。
――御社はこれまでM&Aで4社を譲受けしています。
二宮様: お相手はすべて運送会社です。物流業界は多岐にわたって問題を抱えていますが、日本の地域経済を支えているのもまたトラック輸送です。3PLは荷主となる企業から物流のアウトソーシングを受けてその最適化を作り出します。コスト削減にもつながるため、物流業界では3PLの一人勝ちだと言われるほど、いま急激に成長している分野なのです。ところが、我々が物流センターを作って品質を上げたところで運べなければどうにもなりません。お届けするまでが物流です。それであれば、配送も自前で持とうと運送会社とのM&Aを積極的に進めているのです。アジェクトはM&Aでグループ入りしていただいた5社目の企業となりますが、所有車両台数1000台を目指しています。
――アジェクトをお相手に選ばれた理由をお聞かせください。
二宮様: 今回は関東エリアで自社での配送を持ちたいと検討を始めました。すでに物流センターがあり3PLを展開していましたが、配送については100%外注に任せている状況でした。M&A後すぐに連携が始まり、まもなく当社の物流センターで出荷する7~8割を輸送することになる予定です。 当社は現在、3PLによって約400社の荷物を請け負っていますので、グループに入った会社は、いずれも2年以内には売上が倍になります。経営も安定して新車のトラックを購入することができ、従業員にボーナスを出すこともできる。当社も安定的な輸送が可能になり、お客様にも喜ばれるという好循環が生まれるのです。
また、将来的には営業部隊を東京に移そうと思っています。東京で売上100億円の物流基盤を大至急作りたいのです。今回のM&Aは関東に本格的に進出する出発点となりました。
――今回、物流業界に特化した専任コンサルタントが担当させていただきました。
二宮様: 担当の宮川さんは、業界の事を知りたいと言って私が勧めた本はすべて読んでいました。それだけでなく、運行管理士の資格までとろうとしているんです。運送業には必要な資格ですが、日本M&Aセンターの社員には要らないでしょう。非常に勉強熱心で素晴らしい。120点ですよ。
――最後に御社のビジョンをお聞かせください。
二宮様: 大きな課題を抱えている物流業界においてM&Aはますます盛んになってくると思います。運送業の社長は高齢化していて、後継者不在の会社も多い。それは、業界に夢がないということもあるでしょうし、利益が出ていないということもあるでしょう。利益を出すには物流の合理化が不可欠です。3PLは物流にかかるすべてをアウトソーシングするので、当然輸送もついてきます。集荷に回る必要もなくなるのです。
世間では物流危機だと言われていますが、私は大きなチャンスだと思っています。重要なライフラインですし、なくなることもありません。これから業界内の勢力図は大きく変化し、再編もどんどん進んでいくでしょう。ロジスティクスという概念をもった集団が最適化をどんどん進めていく時代に入ったなと感じています。
こちらのM&A成功事例インタビューは動画でもご覧いただけます。
宮本運輸は、長らく人材不足の課題を抱えていました。事態が深刻化し、採用力のある会社への譲渡を行って半年、採用を含め現状について話を伺いました。
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担当コンサルタント
二宮社長は初めてお会いした時から物流業界全体のビジョンを熱くお話されていて、そのビジョンにアジェクトの描く未来も沿っていました。お互いが明るい未来を描ける、非常にワクワクするご縁組を担当することができて嬉しく思います。