[M&A事例]マレーシア現地企業2社に出資。
自社の戦略に合致する企業と手を組み
国境を越えて配送網を構築

株式会社ニチレイロジグループ本社

譲渡企業情報

  • 社名:
    Litt Tatt Enterprise Sdn.Bhd. (マレーシア)/Litt Tatt Distribution Sdn.Bhd.(マレーシア)
  • 事業内容:
    低温輸送・冷凍冷蔵倉庫/倉庫賃貸・運送車両賃貸及び修繕
  • 売上高:
    約12億円(2社合算)※

譲受け企業情報

  • 社名:
    株式会社ニチレイロジグループ本社(東京都)
  • 事業内容:
    倉庫・運輸関連業
  • 売上高(連結):
    2,245億円※
    グループ従業員数:
    4,609名(海外子会社含む)※

※M&A実行当時の情報

株式会社ニチレイロジグループ本社は、多彩な低温物流サービスで日本の豊かな食生活を支える企業です。国内だけでなく、欧州をはじめ中国やASEANにも配送ネットワークを持ちます。その配送網を実現させているのがM&Aです。2022年4月、マレーシアで低温物流事業を手掛けるLitt Tatt Enterprise Sdn.Bhd.およびLitt Tatt Distribution Sdn.Bhd.(以下、2社を総称してLitt Tatt)へ出資をされたニチレイロジグループの海外戦略をお聞きしました。

株式会社ニチレイロジグループ本社 代表取締役社長 梅澤 一彦 様|Litt Tatt Enterprise Sdn.Bhd. Chairman Mr.Tan Kee Choon|株式会社ニチレイロジグループ本社 執行役員 海外事業推進部長 中村 俊文 様|Litt Tatt Enterprise Sdn.Bhd. Director Mr.Bryan Tan Foo King|Mr.Toh Bok Khey|Mr.Tan Poey Joo

(前列右) 株式会社ニチレイロジグループ本社 代表取締役社長 梅澤 一彦 様 (前列左) Litt Tatt Enterprise Sdn.Bhd. Chairman Mr.Tan Kee Choon (後列右より) 株式会社ニチレイロジグループ本社 執行役員 海外事業推進部長 中村 俊文 様 Litt Tatt Enterprise Sdn.Bhd. Director Mr.Bryan Tan Foo King、Mr.Toh Bok Khey、Mr.Tan Poey Joo

(役職はM&A実行当時)

日本のビジネスモデルをそのまま海外で 展開する一気通貫のサービスが強み

――最初の海外展開は欧州だったそうですね。

譲受け企業 株式会社ニチレイロジグループ本社 中村様: はい。現在、当社は大きく3つのエリアで海外展開を行っています。まずは欧州です。オランダのロッテルダムで港湾型の冷蔵倉庫のビジネスをしている会社を譲り受けたのが最初です。その後、倉庫や運送会社、通関業など関連事業の会社を譲り受けながらドイツ、ポーランド、フランス、イギリスとエリアを広げてきました。 次に中国を含めたアジアでの事業展開を進めています。中国では合弁会社を立ち上げました。 そしてタイやマレーシアといった東南アジアです。タイでは中国と同様に合弁会社を立ち上げ、マレーシアでは2018年に低温物流事業の会社に出資するかたちで進出しました。そして今回、マレーシアでのさらなる事業拡大を目指して、同じく低温物流事業を手掛けるLitt Tattに出資しました。

――海外展開しているエリアでニチレイロジグループ以外にも進出している日系企業はありますか?

中村様: 東南アジアなどでは倉庫事業だけの会社が多いですね。当社では日本のビジネスモデルをそのまま海外で展開することをコンセプトにしています。日本と同じように荷物の保管に加え必要な付加価値サービスをして配送するという「ワンストップサービス」を行っています。こうした一気通貫のサービスを行う会社は少ないので、我々の強みだと思います。

Litt Tattは約190台の自社車両を持ちきめ細かな配送を得意とする

Litt Tattは約190台の自社車両を持ちきめ細かな配送を得意とする

――Litt Tattに出資を決めた理由をお聞かせください。

中村様: Litt Tattはマレーシア国内に6カ所の倉庫と配送拠点を持ち、自社車両をたくさん所有しているため、きめ細かな配送が得意です。一方、すでに出資している低温物流事業の会社は豊富な保管キャパシティをもつので事業上の親和性が高く、共同配送や倉庫の共同利用などお互いの強みを生かした相乗効果が見込めると思っています。運送を行う有力な会社に資本を入れられたことは、今後さらに事業を広げていく上で大きなアドバンテージになったと思います。

<M&A スケジュール>
TOP面談
2021年4月21日
基本合意契約の締結
2021年6月30日
最終契約日
2022年4月12日

日本は人口が減っていく厳しい時代に マーケットを海外で作り出さなければならない

――これまで多くの海外企業と手を組んでこられましたが、相手企業を決める上でのポイントはありますか。

中村様: 一番のポイントは我々の戦略に合致するかどうかです。もちろんオーナーの人柄も大事です。また、国によっては二重帳簿、三重帳簿が当たり前のところもありますので、財務の健全性もチェックします。

――Litt Tattの検討を進める上で大変だったことは何ですか。

中村様: コロナ禍の渡航制限で現地に行くことがままならなかったことです。直接会ったり車両を見たりすることができず見極めに苦労しました。ただ、Webミーティングを多く取り入れたことで議論は十分に尽くせたと思います。思ったほど不便さもなく、もともと海外は頻繁に行き来できないのでWebはかえって有効でした。

Litt Tattの倉庫を視察。マレーシア国内に計6カ所ある

Litt Tattの倉庫を視察。マレーシア国内に計6カ所ある

――今回、マイノリティ出資の形でM&Aを行いましたね。これまでとの違いを感じますか。

中村様: タイや中国では合弁会社を一から立ち上げましたが、今回は出資ですのですでに事業をしているわけです。我々が入り込んで主導しなくても事業が進められるというのは大きな利点です。

――PMI(M&A成立後の統合プロセス)にはどう取り組まれていますか。

中村様: 必ず行うのはビジョンの共有です。相手はほとんどがオーナー企業ですので、ビジョンを共有するということ自体が初めてという場合も多々あります。グループ内の企業とのシナジーをいかに発揮できるかという点を考えることも重要です。運送事業をLitt Tattにシフトしていくことで保管事業をさらに伸ばせるというシナジー効果を見込んでいます。特に今後投資を検討していくうえでは、しっかりと連携してすすめていきたいと考えております。

――最後に、海外M&Aを検討する企業へアドバイスをお願いします。

中村様: 日本は少子高齢化が進み、人口は減っていく一方です。それは、長期的にみれば、日本国内のマーケットの伸びは限定的であるということです。 ですから、マーケットを海外で作っていかなければなりません。当社もその考えのもと、海外のマーケットを増やしてきました。日本国内だけを見ていても厳しい時代だという認識を持つということですね。

2022年4月12日に日本とマレーシアをつないで成約式が行われた

2022年4月12日に日本とマレーシアをWebでつないで成約式が行われた

日本M&Aセンター担当者コメント

Nihon M&A Center Malaysia Sdn. Bhd. 尾島 悠介 (株式会社ニチレイロジグループ本社様 担当)

Nihon M&A Center Malaysia Sdn. Bhd. 尾島 悠介(株式会社ニチレイロジグループ本社様 担当)

ニチレイロジグループ本社様は海外M&Aの経験も豊富で、M&Aへの取り組み方針や体制が整っております。そのため、外資規制やコロナ禍の影響も受けましたが、スピード感を持った意思決定とニチレイロジグループ本社様の戦略やビジョンを対象会社に定期的に共有することで、友好的に案件を進めることができました。M&Aを通じて海外事業を促進させ、世界No.1を目指すニチレイロジグループ本社様のさらなるご発展をお祈りいたします。

海外事業部 In-Out推進課 福島 裕樹 (株式会社ニチレイロジグループ本社様 担当)

海外事業部 In-Out推進課 福島 裕樹(株式会社ニチレイロジグループ本社様 担当)

コロナ禍においても現地視察を行い、対象会社のオーナー様と非常に良い関係が早い段階で構築できたことにより、外資規制の絡む複雑なスキーム交渉に対してオーナー様の協力が得られたことが、成約の要因として非常に大きかったと感じています。今後も積極的に海外展開をされると伺っておりますが、本件がニチレイロジグループ本社様の発展に寄与することを心より願っております。

企業戦略部 チーフ 山中 康寛 (株式会社ニチレイロジグループ本社様 担当)

企業戦略部 チーフ 山中 康寛(株式会社ニチレイロジグループ本社様 担当)

本件は、ニチレイロジグループ本社様の海外事業戦略に合致した、非常に戦略的なM&Aです。コロナ禍、また複雑なスキームとなる中で、緻密に戦略を組み立て、粘り強く交渉されることでM&Aに至りました。現地駐在者と日本サイドがフラットに連携し、複数件の海外M&Aを同時並行で実行されており、まさにグローバル企業のあるべき姿だと感じました。

※役職は取材時

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