[M&A事例]Vol.140 医薬品×食品、異色のM&A。120年以上の歴史にカイゼンの風を吹き込む
ジェネリック医薬品の卸売業を営む八戸東和薬品は、異業種のきちみ製麺を譲受けました。約2年経った現在話を伺いました。
譲渡企業情報
譲受け企業情報
※M&A実行当時の情報
広島県呉市で菓子・珍味の製造販売を行う銀の汐が、販路開拓を目的に1社目の会社を譲り受けたのは2021年。その後、M&Aを加速させ現在ではミクシオホールディングスとして10社のグループ企業を束ねるまでに成長し、海外進出も果たしました。成長にドライブをかける原点となった1社目のPMI成功について、ミクシオホールディングスの大塩 義晴社長に伺いました。(取材日:2024年9月26日)
日本PMIコンサルティングによる主なサポート内容
――M&Aを検討された背景や相手先にもとめていた条件を教えてください。
譲受け企業 ミクシオホールディングス 大塩社長:
ミクシオホールディングスの中核会社である銀の汐は、広島県呉市に本社を構え、遊技場向けに菓子、珍味などを製造販売しています。私は2016年に銀の汐の社長に就任しましたが(現在は会長)、販路が遊技場のみであることが最大の課題でした。M&Aを検討した理由は、新たな販路を開拓するため。銀の汐は洋菓子が中心でしたから、洋菓子以外で親和性のある会社を探したい、と考えました。
M&A仲介会社に一通り声をかけましたが、シナジーが期待できる会社とはなかなか出会えず半ばあきらめかけていました。そんなときに日本M&Aセンターから紹介されたのが、埼玉県の三州製菓です。洋菓子が主体の当社に対して主力商品のパスタスナックをはじめ、せんべい、あられ等の高級米菓を手掛けていて、テーマパークや百貨店を販売先に持つ三州製菓は魅力的でした。ただ、当社よりもずっと大きな会社です。規模に躊躇したのですが、思い切ってトップ面談に臨むことにしました。
――三州製菓を譲り受けることを決めたポイントはどこだったのでしょうか?
大塩社長: 三州製菓は埼玉県春日部市の会社で、広島と地理的には離れていましたが、実際にお会いしてみると違和感がまったくなく、直感的に「三州製菓とならばうまくいきそうだ」と感じました。良いご縁かどうかは考えてもわかるものではなく、感じるものなのだと思います。M&Aの目的としていた「銀の汐にとって新たな販路を拡大できる」という確証がもてたわけではありませんでしたが、三州製菓の魅力ある和菓子を銀の汐の販路で売ることは確実にできます。まずはそこからスタートしていこうと考え、決断しました。
――M&Aが成立したのち、日本PMIコンサルティングにPMIのサポートを依頼することを決めた理由はなんだったのでしょうか?
大塩社長:
M&Aは人生はじめての経験ですから、右も左もわかりません。そもそも何に困るのかもわからなかったので、PMIは専門の会社にアドバイスをもらいながら進めたほうがいいと考えたのが一番の理由です。一方で、今後のM&Aのことも頭にあり、三州製菓と良い形で統合できた先には、2社目、3社目とM&Aを進め規模を拡大していきたいという計画を描いていました。そのためには、最初が肝心ですから、ノウハウを得ながら手堅く進めていきたいと考えたことも大きな理由です。
ただ、実は、提案を受けるまでPMIのサポートがあること自体知りませんでした。ありがたい提案を受けたので二つ返事で「お願いします」と答えた記憶がありますが、非常にスピード感をもって進められたのはコンサルタントの皆さんのおかげです。お願いして正解でした。
――PMIは実際にスムーズに進んでいきましたか?
大塩社長:
三州製菓を成長させシナジーを発揮させるためには、何をやらなければいけないのか。最初にしっかりと課題を洗い出し、その課題を解決するための道筋を一緒に描いてもらったことで、PMIはスムーズに進みました。
今振り返って考えると、とくに、人事面でサポートいただいたのは大きかったと思います。PMIで大事になるのはやはり「人」だと考えていましたから、新社長以下の新体制の人選について、力を発揮してくれる人を慎重に選んでいきたい気持ちがありました。もちろん私自身も主要なメンバーと面談は行いましたが、日本PMIコンサルティングの担当者が多くの社員と面談を行ってくれたことで、最も適任だと自信をもって思える人を選ぶことができました。売上の拡大という点においては、コンサルタントの皆さんと投資シミュレーションをして看板商品であるパスタスナックのラインを増設し、生産能力を強化しました。
一方、ボトルネックになっていた工場については、銀の汐で製造部門の責任者を務めていた部下に任せ、彼が中心となって三州製菓の工場の“1億円削減改革” を進めてくれました。さらに、販売サイドの課題として見えてきたのが、「利益」に対する意識の薄さでした。ここについてもまた、日本PMIコンサルティングの担当者が商品別の粗利の見える化、外注先の整理等を一気に進めてくれたことで、スピード感をもって利益を追求する体質に変えていくことができました。
――新たなビジョンについては、日本PMIコンサルティングの担当者と一問一答のやり取りを重ねて完成させたそうですね。
大塩社長:
経営方針策定の一環でビジョンを検討しましょうという話になり、コンサルタントのリードのもと、一時間程度一問一答のような形で話をするというスタイルを何度か繰り返しながら進めていきました。
最終的に出てきたのが“三州製菓の商品力と、銀の汐の収益力を掛け合わせてグローバルニッチ市場に進出する”というビジョンです。こんな形になったのか!と自分でも正直驚きました。というのも、私自身の頭の中には「グローバル」という明確なワードはなく、そんな壮大な目標は想像もしていなかったわけです。「日本の人口は減少傾向だから、国内市場は決して明るいものでない」「では、魅力ある商品をどう活かしていくべきと考えるか?」といった会話の中で、「海外」というキーワードが出てきたのかもしれません。まさかそれがビジョンとして言葉になるとは思ってもいませんでした。
ただ言葉にしたことで、2年後にはインドネシアで高級菓子を製造するTAYS BAKERS(テイズべーカーズ)とのM&Aが現実のものとなったのです。言葉の重さ、言葉にすることの大切さを痛感しました。
――1社目のPMI成功が、2社目以降のM&Aにつながっていったということでしょうか?
大塩社長:
三州製菓を譲り受けたのが2021年7月のことです。PMIの早い段階でビジョンを掲げ、経営方針を策定したことで進むべき道がクリアになり、その経営方針に基づいて早期に製造ラインの拡大を実行したことも功を奏しました。1年目で目標を達成し、2年目には通期で黒字化を果たし、社員に対してM&Aの成果を数字でしっかりと示せたことも次への布石となりました。
2022年4月にホールディングス化し、その後集中的にシナジーが期待できる3社のM&Aを実行し、おかげさまでグループの規模は大きく拡大しています。1社目のPMI成功が、確実に2社目以降のM&AとPMIの成功へつながっていったと思います。日本PMIコンサルティングにサポートをお願いしていなければ、自分たちの力だけで経営方針やビジョンをつくることは間違いなくできませんでしたし、そもそも提案をいただかなければその必要性を感じることもなかったと思っています。
――PMIで大切にされていることは何ですか。
大塩社長:
一番は「人」を見ることです。M&Aの検討段階である程度は財務面などの課題はわかりますが、お相手企業にどんな人がいらっしゃるかはM&Aをしてみなければわからないので、PMIはM&Aに本腰を入れて考えはじめます。
私にとって大切なのは働いてくれている社員の方から「M&Aしてよかったな」と思ってもらえることです。社員がより働きやすい環境づくりに力を入れることが、会社としても良い方向にいくと考えています。
――そのためにどんな取り組みをしていますか。
大塩社長:
社内のキーマンだけでなく、できるだけ多くの社員と面談の機会を持つことです。特に、不満を聞くことで改善のヒントを得ています。実際に、会議が多くそれが形式的になっているという話を数人から受けたので、すぐにテコ入れして会議を撤廃した事例もあります。
新しく何かを始めるのは時間がかかりますが、今あるものをやめるのはすぐにできるじゃないですか。早くできることから優先的に取り組むことで、社員の皆さんからM&A後に会社がいい方向に変わっている実感をもってもらいやすいのではないかと思います。
M&A直後は私もPMIに関与しますが、方向性が決まったら当社グループから派遣した役員やその会社に任せています。一度決めたやり方にこだわる必要もないと思うので、うまくいかなければすぐに別の手を打ち、体制を柔軟に変えながらベストな方法を探っています。
――日本PMIコンサルティングの伴走へのご感想はいかがでしょうか?
大塩社長: 譲渡する側か、譲り受ける側かによって、モノの見え方は全く違うはずです。初めてのM&Aで一番迷ったのが、相手企業にどこまで踏み込んでよいかの判断です。その点、公平な立場で両方を見ているPMIのプロに相談できてよかったと心から思います。ここまでやるとやり過ぎなのか、もう少し踏み込んでもよいものか、その匙加減を相談できたのは本当に助かりました。特に初めてのM&Aの際には、ぜひPMIにおいてもプロの支援を活用することをおすすめします。
――今後の展望をお聞かせください。
大塩社長:
グループが10社にまでなり、現在は売上100億円、利益10億円を目標に掲げていますが、おかげさまでその目標は達成の目途がつくところまできています。
また、三州製菓の商品企画力の高さを改めて感じているところです。今現在もすでに、三州製菓で企画したものをグループ内で製造するなどのスキームはできていますが、今後は人材の交流等もこれまで以上に活発化させ、グループ間で連携することでお互いの強みを生かしていけたらと思います。とくに、三州製菓の社長はいつもあちこち飛び回っているようなエネルギッシュな人なので、これからはグループ全体でどうシナジーを出していくかといったところでも力を貸してもらいたいと考えています。
加えて、グループ内のシェアードサービス化に着手し、より効率よく本業に注力できるようホールディングス体制の強化を進めていきます。
ジェネリック医薬品の卸売業を営む八戸東和薬品は、異業種のきちみ製麺を譲受けました。約2年経った現在話を伺いました。
120年以上温麺の製造を行う「きちみ製麺」が譲渡先に選んだのは、ジェネリック医薬品の卸売業の会社でした。成約から約2年経った現在について伺いました。
有名アイスクリームの製造を手掛ける竹下製菓は、アイス製造会社やパン製造会社を譲受けを行っています。同社に積極的に資本提携を進める理由を伺いました。
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株式会社日本PMIコンサルティング 佐古 光(日本M&Aセンターグループ)
海外進出の知らせを聞いたとき、「あの時描いたビジョンが実現した!」と、とても嬉しく感じました。同時に、PMIにおけるビジョンの重要性を再認識したことを覚えています。大きな投資に対する大塩社長の「決断力」と「実行力」は非常に印象的で、これらがビジョンの実現に繋がったと感じています。ミクシオホールディングス様のさらなる発展を心から楽しみにしております。