[M&A事例]早めの準備がスムーズな承継につながった

有限会社山陽ツール  前代表取締役会長 筒井 汎 様

譲渡企業情報

  • 社名:
    有限会社山陽ツール(山口県)
  • 事業内容:
    機械工具卸
  • 従業員数:
    2名

有限会社山陽ツール様は、切削工具に特化することで、充実した商品を展開。幅広いニーズにこたえ、アフターフォローも充実した企業様です。従業員承継を検討しましたが、引継ぐ意思はなく断念しM&Aを決断。2017年6月、京都市の建材・金属材料等卸売業を営むKamogawa社とM&Aを実施。筒井様に自身の事業継承、自社の経営・M&A戦略について、日本M&Aセンター上席執行役員の雨森が伺いました。

(左)日本M&Aセンター 雨森 良治(右)有限会社山陽ツール 前代表取締役会長 筒井 汎 様

(左)日本M&Aセンター 雨森 良治 (右)有限会社山陽ツール 前代表取締役会長 筒井 汎 様

勤め先の倒産を機に家族会議を経て起業

日本M&Aセンター(以下MA)雨森: まず起業された経緯についてお聞かせください。

筒井様: 実家を早く出たいという若気の思いが強く、東京の大学を卒業後、そのまま東京で商社に勤めていました。しかし様々な経験をしていく中で、やはり親の近くにいたいという気持ちが強くなり、山口へと帰ったのです。帰郷後はとにかくいろいろな仕事をしてみました。 そんな中、地元で業暦50年以上経つ老舗の機械工具屋さんとご縁があり、勤めることになりました。ところがちょうど3代目に代替わりしたころから経営が傾きはじめ、遂には倒産してしまったのです。ですから、私が起業したきっかけは勤め先の倒産によるものでした。

MA雨森: そのとき、すでに50代手前だったわけですね。起業に不安はありませんでしたか。

筒井様: そりゃもう不安だらけでした。ゼロからの起業に仕入先は取引をしてくれるのか、業態的に運転資金が必要になるが銀行は融資を引き受けてくれるのか等々、サラリーマンが起業するのは大変、ということはわかっていましたので。家族会議を開き、娘2人に起業することと生活が安定しないかもしれないことを伝えました。「近い将来生活が厳しくなるかもしれないから何かあっても暮らしていけるように手に職をつけて専門職になりなさい」と。幸い2人とも医療系の職に従事しており、少なくとも生活に困ることはなさそうです。一方で、娘婿を会社に入れて継がせるという選択肢はこのとき既になくなったなという自覚もありました。

60歳を目前にしてM&Aの相談に行ってみた

MA雨森: 今から10数年前にM&Aの相談に行かれたようですね。

筒井様: 当時はまだ珍しかったと記憶しています。とある銀行からM&Aの相談窓口を設置したとの案内が入り、関心があったので、自社の決算書を持って訪問しました。すると担当者からかえってきた株価の試算額は、私が想定していた「下限の金額の半分」しかありませんでした。これには相当ショックを受けました。長年苦労してやってきた会社の評価が取るに足りないものでは報われない、と。しかし、これを機に少しずつで良いので「会社をよくしていこう」と思うようになり、振り返るとその後力を入れてきた経営の原点はここにあるのだと感じています。少なくとも中小企業のオーナーは、自社の時価についてM&Aをするしないに関わらず知っておくことは大事だと思いますね。

事業承継の選択肢 従業員承継も考えるが…

筒井様: 早い時期からM&Aについて意識をしていましたが、社内で承継してもらえないかという選択肢は残していました。自分が会長となり妻を役員から外す代わりに、社内から社長を選出し、しばらく様子を見ました。ポストがついたことでモチベーションがあがったことはプラスだったのですが、資金繰り等、自分でやらないと気がかりで完全に任せることは出来ませんでした。こうして従業員の雇用や家族を守るために「自社の事業承継=M&A」となり、あとはタイミングを見極めることになりました。

専門家に任せることもひとつの手段

MA雨森: M&Aを検討する中で当社を選ばれた理由は何だったのでしょうか。

日本M&Aセンター 雨森 良治

日本M&Aセンター 雨森 良治

筒井様: 偶然入っていた持株会の幹事であった野村證券さんから、日本M&Aセンターを紹介していただき、野村證券が紹介してきた企業なら信用できると思い、相談することにしました。買い手に私が求めたものはシンプルで、従業員の雇用を守ることと、150社近くある取引先を守ること、でした。会社の価値をよりわかってくれるという意味では地元の企業のほうが良いと自分では想像していました。 また私の場合、過去のトラウマもあり、3代目の社長だといくら会社が良くても「長者三代」が頭をよぎりうまく話を進められなかったかもしれません。日本M&Aセンターは多くの買い手企業のニーズが蓄積されているようで、全国レベルで候補先を提示してくれました。これを自分や知り合いに頼んで探せるかと言われると難しいと思いますし、条件交渉についてもうまく対応できなかったであろうことを考えると、日本M&Aセンターのような任せられる仲介会社を使うメリットは大きいと考えます。

きちんと評価される形で送り出すのが”親心”

MA雨森: これから事業承継を検討される方にアドバイスをお願いします。

筒井様: 息子さんがいらっしゃるオーナー経営者のほうがむしろ事業承継の悩みは深いかなと思いますが、いらっしゃらない、もしくは息子さんに任せることが難しそうな場合は、以下の3点が重要かと思います。

  1. まず自社の価値を知ること
  2. 早めに専門家に相談し事業承継のイメージをもっておくこと
  3. 譲渡の前に自社の価値を高める期間として3~5年くらいの余裕をもつこと

せっかく苦労して作り上げた自分の会社ですから、きちんと評価される形で送り出してやるのが、”親心”なのではないでしょうか。

広報誌「next」 vol.10
next vol.10

M&A成功インタビューは、 日本M&Aセンター広報誌「next vol.10」にも掲載されています。

広報誌「next」バックナンバー

M&A実行年月
2017年6月30日
日本M&Aセンター担当者コメント

田中 文規 (山陽ツール様 担当)

田中 文規(山陽ツール様 担当)
田中 文規(山陽ツール様 担当)

筒井様と初めてお会いしたとき、ご自身の経験をふまえ「従業員の雇用を守ってあげたい」と強く願われておりました。本件、進めるにあたっては、その意向に沿うべく役員、従業員への開示は慎重に行い、その結果、役員、従業員の方々にも満足いただける縁談になりました。筒井様が早くに事業承継対策をなされたことが、このたびの縁談につながったと思います。このような機会に携われたことを大変光栄に思います。

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