信頼して託してくれた社長と会社のために、自分ができることを全力で
⽬次
神奈川県で70名ほどの社員を抱えるT社のオーナー M社長が日本M&Aセンターの門をたたいたのは2013年のことでした。今回は、M&A成約までの道のりをM社長と二人三脚で進めたM&Aコンサルタント、日本M&Aセンター吉丸のインタビューをお届けします。
後継者は息子?それとも第三者?
迷っているオーナー社長が具体的な判断ができるようなアドバイスを
―M社長から初めて相談を受けたときは、どのようなアドバイスをしましたか? 「まだ具体的に考えているわけではないのですが…」と、事業承継についてのご相談を受けました。今すぐに事業承継をしなくても会社としては問題なかったので、M&Aによる事業承継ありきではなく、会社の現状をよく理解させてもらったうえで、M社長が判断できるような材料をできるだけご提供しようと心掛けました。 初回面談では、事業承継の他社事例などをお伝えしたところ、それまでの漠然とした懸念や先入観もなくなり、検討すべきことや判断すべきことが明確にしていただけたようです。“事業承継”というテーマは、偏った見方や限られた情報だけで判断すべきものではなく、会社の現状や将来を客観的にとらえ、情報を集め、あらゆる選択肢を先入観なく検討したうえで判断すべきものです。その経営判断に必要な材料をご提供することが、私たちM&Aコンサルタントの役割の1つだと考えています。
ニッチな業界のお相手探しは慎重に。
日本M&Aセンター社内に豊富な情報があるので安全に探せる
―M&Aの依頼を受けて、お相手探しはどのように進みましたか? T社は関東圏の産業機器メーカーです。売上高は約10億円ですが、技術力が高く、大手電機メーカーや研究機関など優良な取引先を有していました。かなりニッチな業界でしたので、特徴を伝えただけで会社が特定されてしまう可能性もあり、お相手探しには細心の注意を払いました。 一から候補先を探し打診していくのではなく、既に当社で具体的なニーズを把握している多数の候補先企業の中から確度の高そうな先を選定し、M社長とも協議しながら提案先を選び、個別に提案していくという、慎重な進め方をしました。 ―秘密保持のためですね。でも、非効率ではないのですか? 日本M&Aセンターの社内システムには、当社社員が直接会って把握した膨大なM&A希望企業のニーズが登録されており、その豊富な情報をもとに最初の段階から具体的な候補先を選定することができます。セキュアな状態で多くの情報量を確保できるのが当社の強みです。 ―今回のお相手とのマッチングはどのようなきっかけだったのでしょうか? お相手は上場会社のメーカーで、コア技術が共通する関連業種の強化のためのM&Aを検討していました。そのM&Aニーズが社内システムを通じて当社大阪支社のコンサルタント今井より寄せられました。組み合わせとして、技術面、取引先、販路、海外展開等、双方に相乗効果も期待できそうでした。
譲受け企業は株主への説明責任が必要な上場会社
―マッチング後の進行はどうだったのでしょうか。 買い手企業に対するサポートは先ほどの今井が務めました。今回のM&A(=投資)で、将来どれだけの利益を生むのか、その為の投資金額として適切か、が特に関心の強い点だと思います。
そこで、T社の強みやこれまでの研究機関との取引実績、他社と比較した場合の優位性などマーケティングの視点からの提案資料をまとめ、また、決算書などの財務的な数字だけではなくM&A実施後の事業上の想定シナジー効果を可視化するなど、ロジカルな裏付け資料の作成をサポートしました。こうした論理的な裏付けを伴う資料のサポートが必要になる場面もかなりあります。 単に引き合わせるだけではなく、組み合わせの相手によって価値を見出す部分も違うので、的確に顧客ニーズを把握したうえで的を射た提案、サポートをすることが重要です。こうした対応力は、M&Aコンサルタントとして、そしてM&A仲介会社としてのノウハウや経験がものを言うと思います。
最後のアドバイスはディスクロージャー。
必ず社長自身の言葉で
―M&A終了後、最後のアドバイスはどんなものでしたか? 最終契約の締結後、ディスクロージャー(社員・取引先への発表)についてです。内容はもちろん、社長自らの言葉で会社と社員の将来の発展のために、今M&Aを決断したことの意義を伝えてください、とアドバイスいたしました。譲受け企業側からも社長自ら従業員説明会の場に参加していただき直接話をしてくれたことが、さらなる後押しになったと思います。結果として社員の方々にもM&Aの全体像をよく理解していただくことができ、社員の皆様は今でも従来どおり活躍されています。 ―M&Aコンサルタントに求められる姿勢は。 M&Aの支援をするコンサルタントとしては、「冷静に事態を見極める」面と、「情熱と自信を持って交渉を進める」面の両方を持ち合わせていないといけないと思います。さらにM&Aは、相手あっての取り組みでもあり、関係当事者も複数あるため、思った通りに進まないこともよくあります。従って、ポイントとなるであろう事項やタイミングをできるだけ事前に想定し、それに対する対処策まで考えておかなければなりません。 そして何よりも、クライアントファースト。信頼してM&A仲介を託してくれた社長に対して、自分ができることはすべて、全力でやりきることが私の使命、責任だと思って取り組むことが重要です。