経営不振とは?原因や対策、整理解雇の注意点をわかりやすく解説

経営・ビジネス
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多くの企業では経営陣以下、従業員全員が一丸となり、業績を上げるための努力が日々続けられています。こうした努力がよい結果を生み出し順調に業績を伸ばす企業もあれば、残念ながら経営不振に陥ってしまう企業もあります。

本記事では、経営不振の企業に共通する原因を明確にしたうえで、脱却するための方法や、従業員の整理解雇を検討する際の注意点などについて解説します。

経営不振とは?

経営不振とは、企業の業績や利益が一時的に低下している状態を指します。具体的には、売上高や利益が減少し、経営の健全性が損なわれている状況です。

同じように企業の経営状況が悪化している状況を指す「経営難」があります。
経営不振が一時的に業績や利益が低下している状態を指すのに対し、経営難は長期的に深刻な状況が続き、より会社の存続自体が危ぶまれる状態を指します。経営難になると再投資が難しくなるため、最悪の場合、倒産の可能性も生じます。

この記事のポイント

  • 経営不振は企業の業績や利益が一時的に低下した状態で、経営難は長期的な深刻な状況を指し、倒産のリスクを伴う。
  • 経営不振の主な原因には業績不振、資金繰りの悪化、過剰な設備投資、主要取引先の経営不振、人手不足、風評被害などがある。
  • 経営不振から脱却するためにはコスト削減、価格見直し、財務対策、人材採用の見直し、外部専門家のアドバイスを求めることが重要である。

⽬次

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経営不振に陥る原因


企業が経営不振に陥る主な原因は、以下の通りです。

業績不振

経営不振に陥る最大の理由は、売上や利益の減少です。

商品やサービスの質が低下したり、ライバル会社の台頭により市場シェアが奪われたり、原材料の高騰や価格競争による値下げなどが続いたりすると、業績不振に陥ります。その結果赤字になり、経営不振に陥るリスクが一気に高まります。

資金繰りの悪化

売上が減少したり、製造原価や販管費が上昇したりすると、収益が減少します。その結果、毎月必要となる固定経費を下回る収益しか上げられなければ、資金繰りが苦しくなり経営不振に陥ります。

なお、短期的にこうした資金繰りの悪化を解消するための手段として、資産の売却なども考えられますが、抜本的な解決にはなりません。したがって、資金繰りが悪化する原因を明らかにしたうえで、その原因を解決するための対策を検討する必要があるでしょう。

過剰な設備投資

設備投資は企業活動を継続していくうえで必要なものです。しかし、資本力に見合わない過剰な投資を行ってしまうと、設備投資の回収に時間がかかるため、資金繰りが悪化して経営不振に陥ってしまいます。

また、過剰な設備投資を行うと維持費や修繕費、人件費などの固定費も増大するため、さらなる利益圧迫を生みかねません。それ以外にも、設備の稼働率の低下や需要の低迷、技術の進歩、リスク分散の欠如などを生む可能性も考えられます。

主要取引先の経営不振・倒産

主要取引先が経営不振や倒産に陥ると、継続的な売上が見込めなくなり、会社の経営が不安定になります。

また、こうした主要取引先が倒産してしまうと、売掛金や受取手形などの債権の回収に時間がかかり、最悪の場合は回収そのものが難しくなってしまう可能性も考えられます。

その結果、取引先である自社も連鎖的に経営不振に陥る可能性があるため、売上に占める主要取引先の割合を一定以下に抑えるように、あらかじめリスクヘッジをしておかなければなりません。

人手不足によるサービスや品質の低下

日本の企業の多くでは、業種に関わらず慢性的な人手不足が続いています。特に中小企業ではこの傾向が強く、建築業や運送業をはじめさまざまな業種で、人材不足による倒産が増えています。

こうした状況が改善されないままで日々の業務を行えば、従業員1人あたりが負担する仕事量が増えてしまうため、どうしても製品の品質やサービスの質が低下せざるを得ません。その結果、企業競争力が低下し、売上の減少が続くことで、経営不振になる可能性が高まってしまいます。

風評被害

近年の風評被害は、企業にとって深刻な経営リスクを招く恐れがあります。特にSNSなどで拡散されるデマや否定的情報は、企業の信頼性や評判に影響し、顧客離れを招いてしまいかねません。

こうした急激な顧客離れは深刻な売上減少を招くため、新たな資金調達は難しくなるなど大きな影響が生じます。金融機関での資金調達が困難になれば、企業はさらなる経営不振に陥ってしまうでしょう。

なお、このような負のスパイラルを避けるためには、風評被害が確認され次第、迅速な対応が必要です。事実に基づかないネガティブな情報が拡散されたら、すぐに真実を明らかにし、誤解を解くための努力を行わなければなりません。また、積極的な情報発信で企業の信頼性を高めることも重要です。

経営陣の慢心

経営陣の慢心により、経営不振が起きやすい兆候に対して何の対策もせず放置してしまうと、資金繰りが悪化して経営不振に陥ってしまいます。経営陣は会社の状況に対して常に目を配り、どのような問題があるのかをチェックしなければなりません。内在する問題が顕在化する前に検出し、迅速に対処する必要があります。

経営不振が続くとどうなる?


経営不振の状態が継続すると、倒産の危険性が高まるほか、次のような状況が生じます。

新たな資金調達が難しくなる

経営不振が続くと、売上の減少などにより最終的な収益自体が減少するため、企業の財務状況が悪化します。したがって、金融機関から新たな資金調達を検討する際に、融資の審査を通過するのが難しくなってしまいます。

また、投資家からの出資を呼びかける際も、最初に目を通す書類のひとつが財務諸表であるために、出資による資金調達を期待するのも難しくなるでしょう。

企業価値が下がり事業承継が難しくなる

近年は、価値観の多様化などにともない、業績に関係なく親の会社を継ぐ後継者が減少しています。こうした状況の中で、業績不振により企業価値が下がり続けてしまえば、後継者候補が事業承継をするメリットが減少してしまいます。

これは親族内承継だけに限らず、親族外やM&Aによる事業承継も同様で、業績が悪化してからでは承継のためのハードルが高くなり、最終的には事業承継そのものが難しくなってしまうでしょう。

こうした事態を避けるためには、経営不振に陥らないように細心の注意を払うとともに、業績のよい時に事業承継の準備を進めておくことが大切となります。

人材流出につながる

経営不振により業績が悪化すると、多くの企業では人件費のカットが行われます。しかし、昇給や賞与の額を減らしてしまえば、これまでに時間もコストもかけて育てた大切な人材が社外へ流出してしまいかねません。

また会社が経営不振になると、たとえ表に出さなかったとしても、その状況は従業員にも伝わってしまうものです。こうした雰囲気を敏感に感じ取った社員は会社の将来を悲観し、その結果離職者が増えることも考えられます。

経営不振から脱却するための対策


経営不振に陥った企業が脱却するための主な対策は、以下の通りです。

コスト削減

経営不振から脱却するために最初にまずやるべきことは、コスト削減です。

コスト削減にあたっては、単に製品原価などを見直すだけでなく、業務フローや人件費、販売費及び一般管理費などのあらゆる経費を見直し、徹底的に進めていかなければなりません。

具体的には、まず使用する原材料や資材などの見直しやリースへの切り替え、不要な保険の解約などを行います。それでも間に合わない場合は、人員整理も検討すべきでしょう。

また、人件費については企業が負担する経費の中で最も大きなウェイトを占めるもののひとつであり、効果的に行えば、経営不振から脱却するための道筋が見つかる場合もあります。

ただし失敗すると逆効果となり、大量離職により一気に経営不振が加速してしまうため、人件費の見直しをする前には専門家などを交え、慎重に進めていくのがよいでしょう。

価格の見直し

次に、製品の価格を見直します。製品の販売価格を見直し、売上の改善を図ることも経営不振脱却には有効です。

近年は物価の上昇により、エネルギー価格だけでなく、さまざまな物の値段が高騰しています。こうした物価の高騰を製品価格に転嫁できていないのであれば、経営不振を機に製品価格を見直すとよいでしょう。ただし、その際には得意先に状況を詳しく説明し、理解してもらえるように努力しなければなりません。

財務対策

財務対策として債務の整理を進めていくのも、経営不振からの脱却には効果的です。金融機関と交渉し、借入金の返済をリスケジュールできれば、資金繰りを劇的に改善できる場合があります。ただし、新たな融資を受けられなくなる可能性もあるため、本当にリスケジュールをするかどうかは専門家などと相談のうえで決めるべきでしょう。

また、不良在庫や不要資産などを処分し、現金化することも有効です。在庫や資産は保有しているだけでさまざまなコストが生じるだけに、売却すればコストの削減も同時に見込めるでしょう。

採用方法や労働環境の見直し

人材の採用方法や労働環境を見直すことも、経営不振からの脱却には有効です。人材確保にコストがかかり過ぎているようであれば、採用方法や労働環境などを見直すことで、低減できる場合があります。

具体的には、人材募集の媒体を紙媒体からWEBへ変更したり、面接や研修などの方法を見直したりすることで、効率よく必要な人材が集められるようになる場合があります。また、労働環境を見直し、従業員が高い目的意識ややりがいがもてるようになれば、定着率を高められるでしょう。

外部の専門家にアドバイスを求める

社内だけで経営不振から脱するよいプランが立案できない場合は、外部の専門家にアドバイスを求めるのも経営不振からの脱却には効果的です。

会社が何故経営不振に陥っているのかわからない場合は、経営不振からの脱却に詳しい専門家から客観的な意見が伺えれば、新たなアイデアや方法が見つけられるでしょう。

また、財務に問題があれば財務の専門家に、採用方法や労働環境など人材の管理に問題があるのであれば人材の管理に詳しい専門家に相談すれば、専門家ならではの視点から新たな解決策を提示してもらえるでしょう。

経営不振から抜け出す有効な手段が見つからない場合は、会社を売却することも選択肢の1つです。日本M&Aセンターでは、様々な事業承継をご支援してきたコンサルタントがご相談を承ります。

経営不振で整理解雇を行う場合の注意点


最後に、経営不振で整理解雇を行う場合の注意点について解説します。

労働者の権利は労働基準法で厳重に守られているため、会社が経営不振だからとはいえ、簡単に整理解雇を行えるわけではありません。
会社が経営不振を理由に整理解雇を行うためには、以下の4要件を満たす必要があります。


人員削減の必要性
人員を削減しなければ会社の存続が危ぶまれる状態であること

解雇回避の努力
労働者の解雇を回避するために、役員報酬の減額やさまざまなコスト削減などを積極的に行ったこと

人員選定の合理性
経営者の権利の濫用ではなく、客観的かつ合理的な基準に基づいて整理解雇を行う人員の選定がなされたこと

解雇手続きの妥当性
労働者や労働組合へ、経営状況や整理解雇の説明を、誠意をもって十分に説明し理解を得る努力を行ったこと

この4要件は非常に厳格に定められています。もし上記の4要件を満たさずに整理解雇を行ってしまうと、訴訟になる可能性もあるため、整理解雇を検討する際には事前に専門家に相談した方がよいでしょう。

終わりに

企業が経営不振に陥った場合には、できるだけ早く適切な対策を講じなければなりません。なぜなら、有効な対策が打てないままでいると、やがて資金繰りは悪化し、最悪の場合は経営難に陥ってしまうためです。

本記事で紹介したように、経営不振から脱却するための方法には様々なものがありますが、いずれが効果的かはそれぞれの状況によって変わります。もし間違った手段をとってしまうと、逆効果となってしまうこともあるため注意が必要です。

最適な方法を選択するためには、外部の専門家に相談し、客観的な意見を求めるのが効果的だといえます。専門家ならではの的確なアドバイスが得られれば、短期間で経営不振から脱却できる可能性も広がるでしょう。

経営不振から抜け出す有効な手段が見つからない場合は、会社を売却することも選択肢の1つです。日本M&Aセンターでは、様々な事業承継をご支援してきたコンサルタントがご相談を承ります。

著者

M&A マガジン編集部

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