M&A仲介とは?FAとの違い、メリット、選び方
⽬次
- 1. M&A仲介とは
- 2. M&A仲介とFAの違い
- 3. M&A仲介をめぐる動向
- 4. M&A仲介を活用するメリット
- 4-1. 専門的なアドバイス、サポートを得られる
- 4-2. 複雑で難しい交渉も間に入って進めてもらえる
- 4-3. 提携先やネットワークを利用して、幅広い候補企業から探せる
- 5. M&A仲介にかかる費用
- 6. M&A仲介会社を選ぶポイント
- 6-1. 情報量やマッチング実績を公開しているか
- 6-2. 業界や地域など自社のニーズに合ったサポートが受けられるか
- 6-3. 安心できる情報管理体制か
- 7. 終わりに
- 7-1. 著者
「M&Aを学ぶ」記事では、M&Aの具体的な検討や実行を進めるにあたって、M&A仲介会社をはじめ様々な相談先が存在することをご紹介してきました。
本記事では「M&A仲介」にフォーカスし、M&A仲介を取り巻く現状、活用するメリット、FAなど他の選択肢との違いについてわかりやすく解説します。
M&A仲介とは
M&A仲介とは、譲渡企業・オーナー(売り手)と譲受け企業(買い手)の間に立ち、中立的な立場で交渉の仲介や助言を行うことを指します。M&A仲介会社はM&A仲介を専業に行う企業を指します。
どちらか一方の会社の立場ではなく、両社の間に立ち、客観的かつ中立的な立場で交渉をサポートする点が特徴と言えます。
また、M&Aの候補先の選定・提案(マッチング)、企業価値の選定、契約内容の検討など、M&Aの各プロセスで専門性を持って対処します。
- M&Aの候補先の選定・提案(マッチング)
- 企業価値の算定
- 実行スキームの助言
- 交渉の仲介・調整
- 買収監査(デューデリジェンス)実行支援
- 各契約書類作成にあたっての助言・作成支援 など
特に中小企業のM&Aでは、候補企業の選定や契約など自社単独でカバーするには限界があるため、多くの場合M&A仲介会社を介して行われることが一般的です。
M&A仲介とFAの違い
M&AにおけるFA(ファイナンシャル・アドバイザー)は、譲渡企業(売り手)もしくは譲受け企業(買い手)のいずれかと契約し、M&A実行を支援する専門家を指します。
M&A仲介会社が当事者両社のメリットの最大化を念頭に支援するのに対し、FAは、契約したいずれか一方の顧客の利益を最大化するために動く点において大きく異なります。
大手金融機関の投資部門やコンサルティング会社、大手会計事務所が、大手上場企業同士のM&A等、規模の大きいM&AでFAの役割を担うケースが多く見られます。
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)とは?M&A仲介との違いも説明
M&Aをスムーズに進めるためには、M&Aの実務を担ってくれる専門的な知識、手順に精通した専門家をパートナーとすることが非常に重要です。M&Aのパートナーには様々な選択肢があります。今回はその選択肢のひとつであるFA(ファイナンシャル・アドバイザー)についてご紹介します。@sitelink)M&AにおけるFA(ファイナンシャル・アドバイザー)とはM&AにおけるFAとは、M&Aの仲介者とは違い「譲受企
M&A仲介をめぐる動向
近年M&Aを支援する事業者が急増する一方で、事業者が支援する内容やサービスの品質が「必ずしも一定でない」という課題が取り沙汰されてきました。
そうした課題を背景に、中小企業庁は2021年8月、中小M&Aガイドラインの遵守の宣言など、一定の要件を満たす仲介会社やFA・仲介業務を行う金融機関のデータを登録・公開するM&A支援機関登録制度を創設しました。
M&A支援機関登録制度とは?メリットや登録要件、流れを解説
中小企業のM&Aを支援するM&A仲介会社やFAなどの事業者は近年増え続けています。一方で、すべての事業者が一定水準以上のサービスを提供できるとは言えない状況です。では、何を基準に会社を選べば良いのでしょうか。こうした中小企業経営者の疑問に応え、安心してM&Aに取り組む基盤を構築するために設けられたのがM&A支援機関登録制度です。本記事では、M&A支援登録制度の内容やメリット、仲介会社選びにどのよう
また、同年10月にはM&A仲介事業者による自主規制団体として、一般社団法人「M&A仲介協会」が設立されました。2023年12月には、M&A仲介業界のあるべき姿を倫理規程として定め、広告・営業、コンプライアンス、契約重要事項説明というM&A支援における重要な3つの領域における自主規制ルールを策定・公表しています。
M&A仲介サービスの品質向上のためにM&A仲介協会が設立
M&A業界の健全な発展と日本経済に貢献するため、一般社団法人「M&A仲介協会」が2021年10月1日に設立されました。日本M&Aセンター、ストライク、M&Aキャピタルパートナーズ、オンデック、名南M&Aの5社代表者の理事で構成。中小M&Aガイドラインをはじめとした法令・制度の啓発と遵守を呼び掛け、人材育成のための教育と研修機会を提供するほか、事業承継とM&Aに関する相談窓口の運営も担います。公正で
このように国、業界を挙げて、中小企業経営者が安心してM&Aに取り組むための基盤づくりが、近年行われています。
M&A仲介を活用するメリット
M&Aの仲介会社を活用する主なメリットは、以下の通りです。
専門的なアドバイス、サポートを得られる
M&A仲介会社は、専門的な知識と経験を持つプロフェッショナル集団です。M&A仲介会社の中には、弁護士や公認会計士、税理士など士業の専門家を社内に擁する会社もあります。彼らはM&A取引のプロセスや戦略に精通しており、経営者に対して専門的なアドバイスやサポートを提供します。
特に中小企業のM&Aでは、成約前に解決・対処しなければならない論点や課題が存在することがあります。M&A仲介会社は、あらかじめ課題やリスクを洗い出し、最小限に抑えるサポートやリスク管理の助言を行います。
また、M&Aを進めるにあたり株価交渉や社員の処遇、引継ぎ方法など、決めなければいけないことは多岐にわたり、また、会社法や各種税法など多くの法律が関係してきます。M&A仲介会社は、契約書や覚書の作成、法的手続きのサポートを行い、経営者は、専門的なアドバイスとサポートを受けることで、迅速かつ効果的な意思決定を行うことができます。
複雑で難しい交渉も間に入って進めてもらえる
M&A取引は複雑で難しい交渉を伴うことがあります。価格交渉や契約条件の調整など、取引の詳細な交渉は経営者にとって負担となることがあります。
当事者同士では難しい複雑なプロセスをワンストップで相談できることも、仲介会社を介するメリットの一つです。
直接交渉ではなく仲介者を介することで、お互い主張すべきことは主張し、冷静に客観的に感情のもつれなく妥協点を見出しやすくなります。仲介者が双方と直接コミュニケーションを行うため、情報の整理や伝達が早く、結果スムーズにM&A成約につながる確率が高まります。
M&A仲介会社を活用することで、経営者は専門的なアドバイスとサポート、広範なネットワークを通じた候補企業の探索、複雑な交渉・調整のサポート、リスク管理の安全性を得ることができます。
提携先やネットワークを利用して、幅広い候補企業から探せる
M&A仲介会社は市場において様々な買い手や売り手との関係を築いており、経営者はその広範なネットワークを活用して幅広い候補企業を見つけることができます。
また、M&A仲介会社は単に相手を見つけるだけでなく、顧客企業の風土に合うか、シナジーを有効に発揮できるのか、経営者のニーズや目標に合致する相手企業を分析したうえで提案を行います。
このように提携先やネットワークの活用、仲介事業者の分析により、経営者は候補企業について多様な選択肢を得ることができ、最適なM&Aを実現することができます。
M&A仲介にかかる費用
一般的にM&A仲介会社に支払う費用として以下の項目が挙げられます。M&A会社によって価格や料金体系、項目の名称が異なるため、内容をふまえ慎重に検討することが必要です。
M&A支援機関ごとに異なりますが、一般的に発生する費用は以下の通りです。
費用の種類 | 内容 |
---|---|
相談料 | 正式に契約をする前の相談時に支払う費用です。大手M&A仲介会社では相談料を無料に設定しているケースが多く見られます。 |
着手金 | M&A仲介会社等とアドバイザリー契約を結んだときに支払う手数料が、着手金です。アドバイザリー契約を結ぶと、本確定な候補企業探しに向けた準備が始まります。 |
月額報酬(リテイナーフィー) | M&A仲介会社によっては、M&Aを検討するスタート段階から月額報酬を支払うケースや、基本合意書締結後から支払うケースがあります。場合によっては長期化するケースもあるため、自社の状況を十分に考えた上で慎重に判断しましょう。 |
中間報酬(中間時金) | 基本合意書が締結された時点で支払う費用が、中間報酬です。仲介会社によって「無料」「一定額(100万円など)」「成功報酬の総額に対して10~20%」のように異なります。 |
成功報酬 | M&Aの最終契約の締結後に支払うのが、成功報酬です。多くのM&A支援機関ではレーマン方式を報酬の計算基準に採用しています。 |
レーマン方式とは?M&Aにおける成功報酬の計算方法、種類を解説
M&A仲介会社などに支払う成功報酬は、多くの場合「レーマン方式」という計算方法によって算出されます。本記事ではレーマン方式の概要や具体的な計算方法、メリット、注意点などについて解説します。日本M&AセンターではM&Aに精通した弁護士・公認会計士・税理士など専門家を含めた盤石の体制で安全・安心のM&Aをサポート致します。成功報酬など、詳しくはコンサルタントまでお問合せください。無料相談はこちらM&A
M&Aでは仲介会社への費用のほか、外部の弁護士や公認会計士・税理士などにデューデリジェンス(買収監査)を依頼する際の費用などが発生します。
M&A仲介会社を選ぶポイント
実際にM&Aの仲介会社を選ぶ際、気を付けておきたいポイントは以下の通りです。
情報量やマッチング実績を公開しているか
M&Aの成否が決まる大きな要素の1つは、相手企業を見つけ出すマッチングです。最適な相手と出会えなければ、当然ながらM&Aの目的を達成することができません。
しかし自社単独で多くの候補企業を見つけ出すことは困難であるため、企業情報を持つ金融機関などの情報ネットワークを保有するM&A仲介会社をパートナーに選定することが成功に近づく一歩になります。
提携先・外部ネットワークの数、成約件数を公開しているかどうかも、仲介会社選定時の目安になります。
また情報量だけでなく、最適なマッチング、企業同士の引き合わせをどのように行っているのか、マッチングの仕組みなども見ておくと良いでしょう。
業界や地域など自社のニーズに合ったサポートが受けられるか
M&Aは各業界で企業が求めるニーズや、シナジーを創出しやすいお相手の条件など、様々な側面で異なります。
M&A仲介会社によって、得意とする業界や地域があります。そのため、自社の業界、隣接業界、エリアでの実績の有無を、事例インタビューなどから確認することも、仲介会社選びの判断材料の1つになります。
また、M&Aのプロセスにおいてサポートする範囲が異なるのも注意点です。 大手仲介会社の多くは、案件の組成、相手先となる候補企業の抽出、交渉、デューデリジェンス、契約書類の作成、そしてM&A後の統合と一気通貫したサービスを提供しています。
選定する際に、自社のニーズにあったサポートを提供してくれるか、M&Aサービスの流れ、範囲の確認も外せないポイントです。
M&Aの進め方とは?検討からクロージングまで、流れやポイントを解説
M&Aは、検討を始めてから実行までの間にやるべきことが多く、その全容を正しく理解することは簡単ではありません。本記事では、M&A仲介会社の支援を受けた場合のM&Aの進め方について、「1.初期検討・相談」「2.マッチング・候補企業の検討」「3.面談・基本合意」「4.最終条件調整・成約」の主なフェーズごとに、押さえておきたいポイントを含めてご紹介します。参考:M&Aの全体の流れ(日本M&Aセンター)P
安心できる情報管理体制か
M&Aは「秘密保持に始まり、秘密保持に終わる」と言われるほど、情報の取り扱いに細心の注意が必要です。
M&Aの交渉中に、何らかの事情で情報が外部に漏れてしまうことになれば、M&Aが破談に終わるだけでなく、取引先への影響や、インサイダー取引など企業経営に深刻なダメージを及ぼすことも覚悟しておかなければなりません。
そのような事態を防ぐためには、情報管理が徹底されている会社かどうかを見極めるため、組織としてどのように情報管理を行っているのか、日ごろの取り組みを含めてM&A仲介会社にヒアリングを行うことも重要です。
NDA(秘密保持契約)とは?概要のメリット・注意点を解説
他の企業と業務提携を開始する時、取引を開始する時など、自社の機密情報を開示する必要に迫られる場面は少なくありません。このような場合、情報漏洩のリスクを回避するため、開示前に取引相手とNDA(秘密保持契約)を締結することが一般的です。本記事ではNDA(秘密保持契約)の概要や締結時に確認すべきポイントなどをご紹介します。日本M&AセンターではM&Aに精通した公認会計士・税理士・弁護士など専門家を含めた
また前述のM&A支援機関登録の有無も、重要な判断材料の1つになります。
終わりに
以上、M&A仲介の役割や、メリットなど概要をご紹介しました。 M&A仲介会社を選ぶ際は、手数料や知名度だけでなく、「情報量やマッチング実績を公開しているか」「自社のニーズに対応したサポートが受けられるか」「安心できる情報管理体制か」という視点で選定することがポイントです。
また、多岐にわたるM&A実行プロセスの中で、情報漏洩など予期せぬ出来事にも経験豊富な仲介会社が間に立っていれば、臨機応変に対応することができ安心して進められます。