M&Aはどこに相談できる?相談先の種類と選び方
いざ、M&Aについて情報収集を始めようとするとき、「信頼のおける人、M&Aに詳しい人に話を聞いてみよう。」と考える方は多いのではないでしょうか。
M&Aには高度な論点が複雑に絡み合い、高い専門性や知識が必要とされるため、当事者だけで進めることは難しく、一般的にはM&A仲介会社をはじめ、様々な専門家が関係してきます。
本記事ではM&Aの相談先の種類とその選び方について紹介します。どのような相談先があるのか、参考になさってください。
この記事のポイント
- M&Aの相談先には、売り手と買い手の当事者、M&A仲介会社、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)、税理士、公認会計士、弁護士、金融機関などが含まれる。
- M&A仲介会社は中立的に交渉をサポートし、FAは一方の利益を最大化する役割を担う。士業の専門家は財務や法務の面で支援する。
- M&Aの相談先を選ぶ際は、成約実績、料金体系、プロセスの確認が重要であり、信頼できる専門家を選定することが成功の鍵となる。
⽬次
M&Aの専門家とは
M&Aをサポートする支援機関は、M&A件数に比例して急増しており、中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録している支援機関の数は3,000近くあります(2024年10月時点)。そのうち最も多い支援機関の種類はM&A仲介会社です。
※中小企業庁「M&A支援機関登録制度に係る登録フィナンシャル・アドバイザー及び仲介業者の公表(令和6年度公募 9月分)について」別紙2 より引用・抜粋
M&Aの相談先の特徴(仲介会社・FA)
M&Aの専門家には様々な種類の専門家が関わります。以降は、専門家の種類別にそれぞれの特徴・概要を紹介します。
M&A仲介会社
中小企業のM&Aでは、日頃から会社の税務面などサポートしてもらっている顧問税理士や、取引のある銀行など金融機関を通じて、M&A仲介会社の紹介を受けるケースが多く見られます。
M&Aの仲介会社とは、譲渡企業と譲受け企業の間に着任し、中立的な立場で交渉の仲介・助言を行う者を指します。
サポートの範囲や得意とする業種、エリアなどは仲介会社によって異なります。
大手の仲介会社は、相手先となる候補企業の抽出、交渉、デューデリジェンス(買収監査)、契約にあたっての助言、M&A後の統合、とワンストップでM&Aを支援する傾向にあります。
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)
FA(ファイナンシャルアドバイザー)とは、譲渡企業、あるいは譲受け企業のどちらか一方と契約し、M&A実行を支援する専門家です。
契約したいずれか一方の顧客の利益を最大化するために動く、という点でM&A仲介と大きく異なります。
M&Aの計画から交渉、スキーム立案・クロージングまでの幅広い範囲でアドバイスを行い、M&A実行を支援します。FAは、大企業同士のM&Aで利用されるケースが多くあります。
M&Aの相談先の特徴(財務や法務の専門家)
中小企業の経営者にとって、身近な相談先として税理士・弁護士など士業の専門家を思い浮かべる人が多いでしょう。
税務面、法務面での総合的なアドバイスが受けられ、セカンドオピニオンとしての役割も期待できます。
税理士・公認会計士
中小企業庁の中小企業白書(2020年版)によると、M&Aの情報収集・相談先として「税理士・公認会計士」が経営者から最も多く挙げられています。
顧問税理士など、自社の内情を細部にわたり把握している相手であれば、相談もスムーズに進められるという安心感の大きさがその理由の1つとも考えられます。
彼らは財務・税務のアドバイザーとしてM&Aを支援し、また、算出された企業価値評価の妥当性を検証するなどの役割を果たします。
弁護士
税理士や公認会計士と同様に、顧問弁護士を相談相手に選ぶケースも多くあります。
近年ではM&Aに関する専門的なサービスを提供する弁護士事務所が増えており、M&Aのプランニングから、ストラクチャリング、法務デューデリジェンス、契約書の作成・交渉支援、対当局折衝、各国競争法届出対応、開示に関する助言、株主総会対応、クロージング支援、そしてポスト・マージャー・インテグレーション(PMI)の支援まで、M&Aのあらゆる局面での支援が期待できます。
金融機関
中小企業で譲渡を検討する場合、自社の経営状況をよく知り、取引する銀行、証券会社、信用金庫などがM&Aの最初の相談先になるケースは少なくありません。
M&Aにおいて金融機関はアドバイザーとして専門的な助言やサポートを行うことがあります。
地域の金融機関に相談するメリットとしては、豊富なネットワークを生かした候補先が期待できることが挙げられます。
M&Aの相談先を選ぶポイント
M&Aの相談相手として専門家に複数種類があることを紹介しました。
実際にどの専門家をM&Aのパートナーとして選ぶべきか、ここからはパートナー選びの基準となるポイントを紹介します。
成約実績を確認する
多くの譲渡オーナーにとって、M&Aは初めての、そして最初で最後の決断となります。そのため、実績豊富で信頼のおける専門家にM&Aのサポートを任せることが重要になります。それには実際に成約に至った実績数、事例を手掛かりに、公表されているものが無ければ担当者に確認するようにしましょう。
事例も業種、エリアなどの視点で内訳を見ていく必要があります。
特に医療法人など特殊業種は、独自の事業部を組織するなど力をいれているケースが見られます。他にも、製造業に強い、飲食業に強いなど専門家によっては得意とする領域を持つケースがあります。
また、今後事業を展開していく上で、自社が今後注力するエリアに専門家が対応しているか、どれくらいの成約実績があるかも、特に地方を基盤とする企業にとっては特に重要な指標となります。
特定のエリアに特化しているのか、全国的にネットワーク、実績が豊富なのかを確認するようにしましょう。
また、M&Aで重要なのは、候補企業を探し出すための情報網、ネットワーク、そして最適な企業を引き合わせるマッチング力も不可欠です。
自社の状況を俯瞰し、幅広い候補先から相手探しを行いたいと考えるならば、全国にネットワークを保有する専門家が最有力候補になるでしょう。
料金体系を確認する
専門家によって料金体系、報酬などの仕組みが異なります。
M&A仲介会社の場合、譲渡オーナーは提携仲介契約書を締結します。このタイミングで着手金が発生する場合もあります。成功報酬はレーマン方式によって算出される場合が一般的です。料金体系を理解した後は、料率も確認しておきましょう。
M&Aのプロセスを確認する
各ステップの説明はもちろん、いつ何が必要になるのか、どのくらい時間がかかるのか、納得するまで説明を受けましょう。
M&Aでは特に譲渡オーナーが安心してプロセスを進める環境が非常に重要です。担当者は最後まで関与するのか、どのような体制、役割分担で支援してもらえるのかを確認してみましょう。質問を重ねることで相手の経験値も把握することができます。
各専門家による支援内容を比較し、納得できるパートナーを選ぶようにしましょう。
終わりに
以上、M&Aの相談先、パートナーとなるM&Aの専門家についてご紹介しました。ご自身の周りに候補として思い浮かぶ専門家に、まずはコンタクトをとって話を聞いてみることをお勧めします。
M&Aは成約するまでに数十回におよぶ面談、数百にわたる電話やメールでのやりとりが行われます。自社の思いやビジョンを伝え、理解してくれているか、想いを汲み取ってくれる相手なのかは話をしてみないとわかりません。
譲渡企業、譲受企業の相性が重要であることはもちろんのこと、M&A仲介会社をはじめとする専門家との相性も非常に重要ということを念頭に、選定されることをお勧めします。
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MAVITA Vol.4では、M&A支援機関を特集。M&Aを検討する際の選択肢の解説と、実際にM&Aを決断した経営者のその後をご紹介。
- 特集 M&A、どこに頼む?
- 01 M&A仲介会社
- 02 金融機関 銀行・証券会社・信用金庫など
- 03 税理士・会計事務所
- M&A事例紹介 譲渡企業インタビュー
- 中村工芸株式会社 顧問 中村 眞理子 様
- 事業承継・引継ぎ支援センター
ほか